【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
94 / 276
第二部

44 エレナの役割は稀代の悪女?

しおりを挟む
「ねぇ、エレナ。アイラン様が『優勝したらご褒美にわたしをあげる』って言ってらした気がするんだけど……。僕の聞き間違いだったりしない?」

 お兄様が目を見開いてわたしに尋ねる。

「聞き間違いじゃないと思うわ」
「……そのまんまの意味なのかなぁ? ユーゴの思う様にさせないためには、僕が勝っちゃえばいいのはわかるし、じっちゃま達に文句言わせないためには、僕が頑張る理由づけも必要なのは分かるんだけど。どうしよう? アイラン様は本気なのかな?」

 お兄様は頭を抱える。

「……情熱的な夜を過ごしたいとかだったりしないかな」
「エリオット。相手は一国の王女で十四歳の少女だぞ。外交問題に発展する様なマネをするな」

 お兄様の浅はかな発言を殿下が窘めるのはもっともだわ。

「お前は婚約者もいないのだし、アイラン王女に望まれているのなら貰い受ければいいではないか」
「ちょっと殿下、勝手な事言わないでよ! 相手は一国の王女様だよ? 僕なんかじゃ釣り合いが取れません」
「情熱的な一晩を過ごすよりもよっぽど正しい行いだろう。大陸一の大国の侯爵家の跡取りと、王族とはいえ側妃の産んだ王女だ。それほど不釣り合いというわけではあるまい」
「不釣り合いだよ! 残念ながら、我が家は侯爵家の中でも、名ばかり侯爵家なんて馬鹿にされてるくらいなんだ。他国の王女様の降嫁先になんて相応しい訳がない!」
「どうしたの? そんな卑下されるなんてお兄様らしくないわ」

 普段ナルシストでロマンチストでポジティブなお兄様にしては珍しくネガティブだ。

「もしかして、お兄様はお父様達みたいに恋愛結婚されたいの? だから今までたくさんご縁談のお申し込みがあったのにお断りされてたの?」

 わたしの発言にお兄様はキョトンとする。
 イケメンのキョトン顔は可愛い。

「違うよ。エレナだってわかってるでしょ? 我が家は昔よりは領地の運営が上向いて来たとはいっても、農業や畜産が主な産業でそんな大きな稼ぎはない。困窮はしていなくても、お姫様や高位貴族のお嬢様を満足させられるほど裕福じゃないんだ。だから僕がまだ婚約相手を決めてなかったのは、王宮に勤める様になったら女官の中で優秀であまり贅沢に興味ない女性を探そうと思ったんだ」
「……そうなのね」

 せっかくイケメンなのになんていうか夢もロマンもない……

「そうそう。だから、別に政略結婚だってなんだってうちの利益になったり、国益になって殿下に恩が売れるなら一介の貴族の息子として受け入れるよ。でもイスファーンからしたらうちみたいな家に王女様を輿入れさせても国益にはならないでしょ? 反対されるのがオチなのにさ……」

 そっか、アイラン様だけが盛り上がってるだけで、どうせイスファーンの王室から断られるのが分かりきっているのにっていうのがお兄様の本音なのね。

 だって下手したらアイラン様を誑かしたなんて言われて、あちらの王室から裁かれる可能性がある。
 ……お兄様はネネイに証言されたら逃げ隠れできないくらいアイラン様の事誑かしてたものね。

「反対されなければ娶るつもりはあるのか?」
「え?」

 殿下がお兄様に尋ねる。

「アイラン様をですか? まぁ、反対されなければ……」

 お兄様の発言に驚いて目を見開く。

「待って! お兄様はアイラン様の事どう思ってるらっしゃるの?」
「えっ? 可哀想な可愛い子猫ちゃん?」
「……そうじゃなくて。お兄様はイスファーンの人たちがお兄様とアイラン様のご結婚を祝福されるなら結婚してもいいと思ってらっしゃるの?」
「そりゃ、祝福されるならね。だってアイラン様は僕に懐いてて可愛いじゃない? それに異国の王女様が我が家に嫁いでくれるなんて箔がつくよ。しかもイスファーンとはこれから積極的な交易が始まるんだ。僕がアイラン様と結婚すれば、イスファーンと交易したい貴族たちがこぞって僕に頭を下げに来るんだよ。そんな機会願ったりかなったりでしょ?」

 そうだ。お兄様はそういう人だった。
 わたしと殿下は顔を見合わせてため息をつく。

「エリオット。大丈夫だ。我が国の侯爵領では納税の義務はあるが国の政務官を置かずに独自の自治を認められている。国からの介入が求められるイスファーンの部族の族長よりも国内における地位は高い。上手く説明すれば祝福されるさ」
「そうね。お兄様は優秀な上に殿下の幼馴染だもの。将来は王宮内で要職に着くのは決まったも同然で、しかも妹であるわたしは王太子殿下の婚約者だわ。このままいけばお兄様は未来の国王の義兄になる予定だもの。アイラン様がお兄様と結婚すれば、イスファーン王室にとっては大国であるヴァーデン王室の後ろ盾を手に入れる事が出来るのだから、そう悪い話じゃないはずよ。ね、殿下。そうでしょ?」
「……そっ……そうだな」

 わたしの発言に殿下は躊躇いのあるうわずった声で返事をし、動揺が伝わる。

 やばい。
 何も考えずに発言したけれど、考えてみるとかなりしたたかな発言よね……
 きっと殿下はエレナと結婚なんてしたくないはずなのに、この流れでエレナと結婚する前提の話をされても否定できない。
 お兄様にアイラン様と結婚する様に言ったのは殿下だ。
 エレナと近々婚約破棄を考えてるからやっぱり考え直せなんて言えない。

 外堀を埋めるというか退路を断つというか……
 したたかな発言に、エレナは悪役令嬢じゃなくてとんでもない策略家で稀代の悪女なんだと気がついて、破滅フラグからは逃げられない事を思い知った。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...