259 / 276
第五部
53 領地の土産物屋は振り回される【サイドストーリー】
しおりを挟む
がらんとした店で過ごさねばいけなくなったのは、自分がまんまと美女に鼻の下を伸ばしていたからだということを思い出す。
店主は自業自得だったとため息をつく。
とはいえ少しの仕事と聞いていたはずなのに、これほど仕事を押し付けられるとは思わなかった。
(くそっ。ただより高い物はないってわかっていたのに)
目の前の役人は店主の後悔など気にも留めず、先ほどまで印刷していた依頼をうけて作成した本を確認してしていた。
「頼まれた仕事は終わりましたよ」
「上出来だ。では、こちらは国内の礼拝堂に配布するように」
「は?」
「配布の際は子どもたちの勉強に使うようにと説明も忘れぬようにしろ」
「ちょ、待ってくれ。配布って誰が」
役人の男は黙って店主を指さした。
「はっ? えっ? これから稼ぎ時で、若様とイスファーンのお姫様の版画を……」
「王都でこれほどまで広い店舗を構えるのだ。少しくらい働いてもらわないといけない」
「はぁあ⁈ えっ? すでにもうめちゃくちゃ働いてますよ! 王太子様がお気に召すような挿絵を描くように絵師に依頼をしたのも俺だし、印刷して製本したのだって俺だ! 俺の本職は土産屋で印刷工じゃないんだぞ。どれだけ大変だったと思ってんだ!」
店主は言葉が乱れていることに気が付いたが、そんなこと気にしていられなかった。
「ご苦労なことだ。あとひと踏ん張りだな。明日には出発できるよう馬車はこちらで用意している」
「なっ勝手なこと……」
役人の男は返事も聞かず、見本を一冊手に取ると去っていった。
***
(なんだよ。南の街道沿いの町を海まで往復するだけだったじゃねぇか。びびらせやがって。国内の礼拝堂なんていうから本気で全ての礼拝堂巡りをさせられるのかと思ったぜ)
一年以上の旅を覚悟した店主は、十日ぶりに王都に戻ってきた。
迎えにきた馭者が店主の旅支度を見て困惑していたのを思い出しただけで腹立たしい。
(にしても、あの野郎。揶揄うような嫌がらせしやがって。俺になんか恨みでもあんのか? あいつの言うことを聞かずに美女の誘惑に負けたからか?)
繁華街から少し離れた停留所で馬車から降ろされた店主は毒を吐きながら歩く。
(しかしまぁ、王都ってのは祭りでもないのにすごい人手だな)
さっさと店に帰って休みたいところだが、王都に来てからも仕事ばかりで歩く暇もなかったため安全な近道を知らない。店主は嫌でも混雑した道を行くしかない。
繁華街に近づくにつれ、身動きが取れないほどに混雑していた。
押し寄せる人々は興奮しており何かを見ようと必死に背を伸ばしていた。
「なんかあったんすか」
店主は隣に立っている男に話しかけた。怪訝な顔で見返される。
「ここ数日王都は大騒ぎだってのに知らないのか?」
「いやぁ。仕事で十日ほど王都を離れてていたもんでね」
「なるほどな。じゃぁ驚くぜ」
にやりと笑った男は店主の背中を馴れ馴れしく叩く。
「王太子殿下がここ数日お忍びで視察している」
「はぁ。視察?」
「驚いただろ? 王太子っていや感情のない操り人形で貴族のお偉いさんたちの言いなりで俺たち庶民のことなんて虫けらほどにも思っていないなんて噂だったのに、庶民の生活を知ろうと女官を連れて歩いてるんだ」
「女官? って女の役人だよな?」
「ああそうだ。王太子が惚れるのも無理がないくらいのいい女らしいぜ」
「は? 王太子が惚れてる? 勘違いじゃないか?」
王太子が惚れている相手は侯爵家のお嬢様だ。女官なんかじゃない。
「それがさぁ、見たこともないくらい綺麗な女官らしいんだけど、そんだけじゃなくて王太子相手にはっきり意見を言うんだけど、出店の店員なんかには優しくて手を取って笑いかけたりすんだってよ。それで今日もいらした王太子殿下御一行を一目見ようと集まってるってわけさ」
隣の男の発言を皮切りにほかの野次馬たちも口々に王太子と噂の女官について知っていることを話し出す。
「私腹を肥やすシーワード子爵の悪事を、民のために突き止めるようにと王太子様にお願いしてくれたらしいぞ」「じゃあ景気が良くなったのもその噂の女官のおかげだな」
「なんでも隣国との貿易が始まるってんで貴族のお偉いさんだとかでっけぇ商会なんかが好き勝手言ってるのを王太子様が調整を買って出てお忙しくされてたのをお手伝いされたのがその女官様らしい」「王太子様のお手伝いをされるってくらいだ。ずいぶん優秀なんだ」
「俺は直接見たわけじゃないが聞いた話によると市場を視察にいらした際に胡桃の菓子を試食をすることになって、その女官が毒見をした食べかけを王子が食べたらしい」「心を通わせてらっしゃる証拠だ」
「王太子殿下と女官様はまるであの芝居から出てきたみたいじゃないか!」
店主は噂話を聞きながら領都の店に来たあの美しい女官を思い出す。
とんでもなく綺麗で、でも王太子付きの役人相手でも臆することなく意見を言い、店主に助け舟を出してくれた。
(そりゃいい女だったけど。だからって……そんなはず……じゃぁ俺は今まで何のために……)
落ち着けと頭では冷静に考えても「騙された」という気持ちで、はらわたが煮えくり返る。
店主は人混みをかき分け前に進む。悪態をつかれようが押し返されようがひるまない。
背の高い王太子は人混みの中心で見つけることができた。あのいつも冷静で感じの悪い王太子付きの役人もいる。
……そして、そのそばには美しい女官がいた。
「王太子殿下!」
いてもたってもいられず店主は声を上げた。王太子には声が届かない。役に立たないと噂の治安維持隊が店主を取り押さえようと近づいた。
「王太子殿下‼︎」
拘束しようとするのを振り払い、伸ばせば手が届く距離まで近づく。王太子は店主の声にゆっくりと振り返る。
背の高い王太子の影に隠れて小柄な女官が立っていた。
その小柄な女性は栗色の豊かな髪にに翠色の大きな瞳が美しかった。
(女官の制服を着ているがこの方は女官なんかじゃない。俺だってトワインの民だ。見間違えるわけがない……)
礼拝堂で祈りをささげる石像がそのまま命を与えられたようなその姿を毎日自分で印刷しながら見ていたのだ。
「エ……むぐぅっ――」
「ごめんなさいね。お忍びなの。騒いではいけないわ」
細くしなやかな人差し指が唇に触れる。困ったように微笑む目の前の女官に店主は顔を赤らめる。
観衆はうっとりとしたため息をつくものや、声にならない悲鳴を上げるものが続出した。
(あぁ。女神さまのご加護だ)
民衆が噂する女官の正体を知った店主は心の中で祈りをささげた。
──そして。店主の男が歯ぎしりの音に顔を上げ嫉妬にまみれた王太子と目が合うまで、もう幾ばくも無い。
店主は自業自得だったとため息をつく。
とはいえ少しの仕事と聞いていたはずなのに、これほど仕事を押し付けられるとは思わなかった。
(くそっ。ただより高い物はないってわかっていたのに)
目の前の役人は店主の後悔など気にも留めず、先ほどまで印刷していた依頼をうけて作成した本を確認してしていた。
「頼まれた仕事は終わりましたよ」
「上出来だ。では、こちらは国内の礼拝堂に配布するように」
「は?」
「配布の際は子どもたちの勉強に使うようにと説明も忘れぬようにしろ」
「ちょ、待ってくれ。配布って誰が」
役人の男は黙って店主を指さした。
「はっ? えっ? これから稼ぎ時で、若様とイスファーンのお姫様の版画を……」
「王都でこれほどまで広い店舗を構えるのだ。少しくらい働いてもらわないといけない」
「はぁあ⁈ えっ? すでにもうめちゃくちゃ働いてますよ! 王太子様がお気に召すような挿絵を描くように絵師に依頼をしたのも俺だし、印刷して製本したのだって俺だ! 俺の本職は土産屋で印刷工じゃないんだぞ。どれだけ大変だったと思ってんだ!」
店主は言葉が乱れていることに気が付いたが、そんなこと気にしていられなかった。
「ご苦労なことだ。あとひと踏ん張りだな。明日には出発できるよう馬車はこちらで用意している」
「なっ勝手なこと……」
役人の男は返事も聞かず、見本を一冊手に取ると去っていった。
***
(なんだよ。南の街道沿いの町を海まで往復するだけだったじゃねぇか。びびらせやがって。国内の礼拝堂なんていうから本気で全ての礼拝堂巡りをさせられるのかと思ったぜ)
一年以上の旅を覚悟した店主は、十日ぶりに王都に戻ってきた。
迎えにきた馭者が店主の旅支度を見て困惑していたのを思い出しただけで腹立たしい。
(にしても、あの野郎。揶揄うような嫌がらせしやがって。俺になんか恨みでもあんのか? あいつの言うことを聞かずに美女の誘惑に負けたからか?)
繁華街から少し離れた停留所で馬車から降ろされた店主は毒を吐きながら歩く。
(しかしまぁ、王都ってのは祭りでもないのにすごい人手だな)
さっさと店に帰って休みたいところだが、王都に来てからも仕事ばかりで歩く暇もなかったため安全な近道を知らない。店主は嫌でも混雑した道を行くしかない。
繁華街に近づくにつれ、身動きが取れないほどに混雑していた。
押し寄せる人々は興奮しており何かを見ようと必死に背を伸ばしていた。
「なんかあったんすか」
店主は隣に立っている男に話しかけた。怪訝な顔で見返される。
「ここ数日王都は大騒ぎだってのに知らないのか?」
「いやぁ。仕事で十日ほど王都を離れてていたもんでね」
「なるほどな。じゃぁ驚くぜ」
にやりと笑った男は店主の背中を馴れ馴れしく叩く。
「王太子殿下がここ数日お忍びで視察している」
「はぁ。視察?」
「驚いただろ? 王太子っていや感情のない操り人形で貴族のお偉いさんたちの言いなりで俺たち庶民のことなんて虫けらほどにも思っていないなんて噂だったのに、庶民の生活を知ろうと女官を連れて歩いてるんだ」
「女官? って女の役人だよな?」
「ああそうだ。王太子が惚れるのも無理がないくらいのいい女らしいぜ」
「は? 王太子が惚れてる? 勘違いじゃないか?」
王太子が惚れている相手は侯爵家のお嬢様だ。女官なんかじゃない。
「それがさぁ、見たこともないくらい綺麗な女官らしいんだけど、そんだけじゃなくて王太子相手にはっきり意見を言うんだけど、出店の店員なんかには優しくて手を取って笑いかけたりすんだってよ。それで今日もいらした王太子殿下御一行を一目見ようと集まってるってわけさ」
隣の男の発言を皮切りにほかの野次馬たちも口々に王太子と噂の女官について知っていることを話し出す。
「私腹を肥やすシーワード子爵の悪事を、民のために突き止めるようにと王太子様にお願いしてくれたらしいぞ」「じゃあ景気が良くなったのもその噂の女官のおかげだな」
「なんでも隣国との貿易が始まるってんで貴族のお偉いさんだとかでっけぇ商会なんかが好き勝手言ってるのを王太子様が調整を買って出てお忙しくされてたのをお手伝いされたのがその女官様らしい」「王太子様のお手伝いをされるってくらいだ。ずいぶん優秀なんだ」
「俺は直接見たわけじゃないが聞いた話によると市場を視察にいらした際に胡桃の菓子を試食をすることになって、その女官が毒見をした食べかけを王子が食べたらしい」「心を通わせてらっしゃる証拠だ」
「王太子殿下と女官様はまるであの芝居から出てきたみたいじゃないか!」
店主は噂話を聞きながら領都の店に来たあの美しい女官を思い出す。
とんでもなく綺麗で、でも王太子付きの役人相手でも臆することなく意見を言い、店主に助け舟を出してくれた。
(そりゃいい女だったけど。だからって……そんなはず……じゃぁ俺は今まで何のために……)
落ち着けと頭では冷静に考えても「騙された」という気持ちで、はらわたが煮えくり返る。
店主は人混みをかき分け前に進む。悪態をつかれようが押し返されようがひるまない。
背の高い王太子は人混みの中心で見つけることができた。あのいつも冷静で感じの悪い王太子付きの役人もいる。
……そして、そのそばには美しい女官がいた。
「王太子殿下!」
いてもたってもいられず店主は声を上げた。王太子には声が届かない。役に立たないと噂の治安維持隊が店主を取り押さえようと近づいた。
「王太子殿下‼︎」
拘束しようとするのを振り払い、伸ばせば手が届く距離まで近づく。王太子は店主の声にゆっくりと振り返る。
背の高い王太子の影に隠れて小柄な女官が立っていた。
その小柄な女性は栗色の豊かな髪にに翠色の大きな瞳が美しかった。
(女官の制服を着ているがこの方は女官なんかじゃない。俺だってトワインの民だ。見間違えるわけがない……)
礼拝堂で祈りをささげる石像がそのまま命を与えられたようなその姿を毎日自分で印刷しながら見ていたのだ。
「エ……むぐぅっ――」
「ごめんなさいね。お忍びなの。騒いではいけないわ」
細くしなやかな人差し指が唇に触れる。困ったように微笑む目の前の女官に店主は顔を赤らめる。
観衆はうっとりとしたため息をつくものや、声にならない悲鳴を上げるものが続出した。
(あぁ。女神さまのご加護だ)
民衆が噂する女官の正体を知った店主は心の中で祈りをささげた。
──そして。店主の男が歯ぎしりの音に顔を上げ嫉妬にまみれた王太子と目が合うまで、もう幾ばくも無い。
19
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw
さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」
ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。
「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」
いえ! 慕っていません!
このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。
どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。
しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……
*設定は緩いです
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる