もう二度と乙女ゲームはしない

こうやさい

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それはそれでそれでも

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「工房を?」
「ええ、一度見てみたいと思って」
 怪訝そうな彼に努めてにこやかに答える。
「記憶を取り戻す手ががりにはならないと思うが」
「そうなの?」
「確か来たことはなかったはず」
「そう」
 来て欲しくなかったのかもしれない。
 そんな場所にヒロインを住まわせる可能性があるのかと思うと、愛人であるからとか、される行為が行為とはいえ、妬む気持ちが湧いてくる。

「だが、このところ籠もりきりだったし、気分転換にいいかもしれないな」
 けれどそうあっさりと返されて惚ける。えっと、大切な場所なんじゃ。
 ……ちなみに籠もりがちだったのは最初は単純に恐くて、ちょっとなれてきてからも当然常識がないし知り合いに会っても分からないしで問題が出るからだけど。
 バッドエンドで離婚された場合、不審に思われる事は少ない方がいい。
 ……そうじゃなくともこちらが耐えられなくて離婚を言い出すかもしれないし。

 きっとアトリエにはヒロインの姿があふれているんだろうなと思う。
 きっと沢山の絵を描いているだろう。
 それを片付けかくしているかどうかはしらないけれど。

 あの絵は線だけの色も塗られていない簡素といえば簡素なものだったけれど。
 どんなスチルよりも美しかった。
 それだけでわかりきったようなものだけど。
 はっきりとけりをつけたかった。

「何時行く?」
「そちらの都合のいいときで」
 片付けたいというならそれでも止めない。
 まだあたしとの生活を続けてくれる気があるのならそれはそれでそれでも嬉しいだろう。
「不用意にその辺のものに触らないなら今からでもいいが?」
 完全に素に見える。マジで自覚ない。ヒロインのことは置いておいても何かしら不都合はないのだろーか?
「じゃあそれで」
 それでも行くけど。
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