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16 宿屋で宿泊
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今日は野営でなくて、街道沿いの宿屋で宿泊することになった。
勇者と聖女のご一行の予定の日時は先んじて周知されているから、私たちは割と大所帯なんだけどいつも御用達の宿屋があり、部屋が取れないということは絶対にない。
私は慣れない営業スマイルを浮かべつつ、集まっている人たちに手を振った。そうしたら、拍手と大きな歓声が聞こえて聖女様コールまで……アイドルじゃないよ!
……うん。魔物を倒すための救世の旅については、百回以上事故もなく無事だからと皆慣れ過ぎなんだと思うんだよね。
聖女だけど、芸能人が来た訳じゃないんだから……この世界では、似たようなものなのかもしれないけど。
今回の聖女である私は、宿屋の中でも最高級の部屋を用意されることになる。馬鹿王子エセルバードだとしても、そこには異論がないようで慣例に従ってはいる。
けど、王族の彼はそれに準じる程度の部屋を用意して貰えるので、お互いに距離を取っているテントでは離れることが出来るけど、宿屋の部屋では階数も同じで近い部屋になってしまう。
「何か目に見えて役に立つような能力があれば、他国へ行く際に伴う愛人にしてやっても良かったのに……本当に、何をどうしても際立つところのない普通の女だな。残念だ」
部屋の扉を開こうとした私を下から舐めるように見たエセルバードは、残念だと言わんばかりにため息をつきつつ言った。
強い怒りが心の中にわき上がったものの、魔法の言葉「あれは、三歳児」を心の中で何度も唱えた。
若い頃に城中で司祭様を斬ってしまったというジュリアスも、今の私と似たような殺意を感じたんだろうと思う。
「そうですか。物凄く……残念ですね」
あんたの、その頭の中がね!
ふるふると震えて引きつる口元を手で押さえつつ私は無理ににっこり笑ったら、向こうは変な表情になって部屋の中に入って行った。
エセルバードにはお付きの人も一応は居るんだけど、その人たちは控え室のような部屋へ入ったようだ。大変そう。ご苦労が忍ばれる。
やれやれと肩を竦めた私が部屋に入ろうとしたところで、後ろから声がしたので振り向いた。
「聖女様。荷物をお持ちしたんですが……今、大丈夫ですか?」
「あ。ジュリアス。ありがとう!」
私の荷物を手に部屋まで来てくれたのは薄暗い室内でも、彼の周囲の空気がきらめくような錯覚が起こるイケメン騎士ジュリアス。
さっきとは私のテンションが天と地ほども違うのは、私の中の好感度がそのくらい違うだけの話です!
「……殿下に、何か言われましたか?」
前の姿であればジュリアスは私に暴言を吐く度にエセルバードに説教してくれていたんだけど、今は何の役職もない騎士ということになっているから口は出せない。
だから、ジュリアスは私が不快な思いをしていないか、いつも気にしてくれている。
「いつものことです。エセルバードって、私のこと嫌いなんですかね?」
扉を開けた私は身振りで部屋に入って貰えるように彼を促して、ジュリアスは手に持っていた荷物を部屋の机の上に置いていた。
「逆だと思いますよ……エセルバード殿下は、今回の聖女と結婚したいと思っていたようですから」
勇者と聖女のご一行の予定の日時は先んじて周知されているから、私たちは割と大所帯なんだけどいつも御用達の宿屋があり、部屋が取れないということは絶対にない。
私は慣れない営業スマイルを浮かべつつ、集まっている人たちに手を振った。そうしたら、拍手と大きな歓声が聞こえて聖女様コールまで……アイドルじゃないよ!
……うん。魔物を倒すための救世の旅については、百回以上事故もなく無事だからと皆慣れ過ぎなんだと思うんだよね。
聖女だけど、芸能人が来た訳じゃないんだから……この世界では、似たようなものなのかもしれないけど。
今回の聖女である私は、宿屋の中でも最高級の部屋を用意されることになる。馬鹿王子エセルバードだとしても、そこには異論がないようで慣例に従ってはいる。
けど、王族の彼はそれに準じる程度の部屋を用意して貰えるので、お互いに距離を取っているテントでは離れることが出来るけど、宿屋の部屋では階数も同じで近い部屋になってしまう。
「何か目に見えて役に立つような能力があれば、他国へ行く際に伴う愛人にしてやっても良かったのに……本当に、何をどうしても際立つところのない普通の女だな。残念だ」
部屋の扉を開こうとした私を下から舐めるように見たエセルバードは、残念だと言わんばかりにため息をつきつつ言った。
強い怒りが心の中にわき上がったものの、魔法の言葉「あれは、三歳児」を心の中で何度も唱えた。
若い頃に城中で司祭様を斬ってしまったというジュリアスも、今の私と似たような殺意を感じたんだろうと思う。
「そうですか。物凄く……残念ですね」
あんたの、その頭の中がね!
ふるふると震えて引きつる口元を手で押さえつつ私は無理ににっこり笑ったら、向こうは変な表情になって部屋の中に入って行った。
エセルバードにはお付きの人も一応は居るんだけど、その人たちは控え室のような部屋へ入ったようだ。大変そう。ご苦労が忍ばれる。
やれやれと肩を竦めた私が部屋に入ろうとしたところで、後ろから声がしたので振り向いた。
「聖女様。荷物をお持ちしたんですが……今、大丈夫ですか?」
「あ。ジュリアス。ありがとう!」
私の荷物を手に部屋まで来てくれたのは薄暗い室内でも、彼の周囲の空気がきらめくような錯覚が起こるイケメン騎士ジュリアス。
さっきとは私のテンションが天と地ほども違うのは、私の中の好感度がそのくらい違うだけの話です!
「……殿下に、何か言われましたか?」
前の姿であればジュリアスは私に暴言を吐く度にエセルバードに説教してくれていたんだけど、今は何の役職もない騎士ということになっているから口は出せない。
だから、ジュリアスは私が不快な思いをしていないか、いつも気にしてくれている。
「いつものことです。エセルバードって、私のこと嫌いなんですかね?」
扉を開けた私は身振りで部屋に入って貰えるように彼を促して、ジュリアスは手に持っていた荷物を部屋の机の上に置いていた。
「逆だと思いますよ……エセルバード殿下は、今回の聖女と結婚したいと思っていたようですから」
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