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17 SNSのない世界の住人

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「えっ?! けど……」

 ジュリアスは苦笑してそう話し、私はまさかの事実が発覚して驚いた。

「そうですね。エセルバード殿下も、他国へ婿入りさせられる彼なりには理由をわかっているようでして……異世界からやって来た聖女と結婚出来れば、王に喜ばれこの国に留まれますから」

「え。聖女と結婚出来れば……? どういうことですか?」

「通常……異世界から喚んだ聖女は、元の世界に戻ることを望みます。我らの国では、それを引き留めることは禁じられています。どんなに素晴らしい祝福の能力をその聖女が持たれていてもです」

「あ……そういう」

 確かに手をかざせばたちどころに怪我が治ってしまうような素晴らしい治癒能力なら、こちらの世界に残って、それを役立てて欲しいと思ってしまうだろう。

「ええ。そうです。ですが、聖女本人がこちらの世界に残りたいと思うなら、別です。誰かと結婚して子どもを設ければ、祝福の能力は受け継がれることもある……結婚相手は、感謝されるでしょう」

 ジュリアスは何気なく壁にもたれて、腕を組んで私へ微笑んだ。

「……だとすると、なんでジュリアスは私が結婚したいと言ったのに、受け入れてくれないんですか?」

 私は大きなベッドの上に、ぽふんと音をさせて座った。異世界の聖女の価値の高さを知った上で、彼の行動が良くわからなくなった。

 ジュリアスは私と結婚したら、皆から感謝されるんでしょう? どうして彼は、即答で良いと言わないのかどうしてもわからない。

 少しでも利を考える人なら、すぐに頷くはずだもの。

「……聖女様は、ご両親やご友人と会えなくなっても良いんですか。この異世界に留まるということは、彼らと会えなくなるということですよ」

 見るからに情に厚そうなジュリアスは、異世界に残ることになる私の身内は良いのかということを聞きたいらしい。

「両親は……本当に、ここ一年でも数えるほどしか会話しなくて。二人とも仕事で精一杯で……私が居なくなると大学のたっかい学費払わなくて済むし、ほっとするかもしれません。友人と呼べる人は、いっぱい居ます。けど、単にいいねし合うだけの仲で、そんなに深い話もしないから、私の方も別に未練とかないです」

「……いいねし合うだけ? どういうことですか?」

 SNSのない世界の住人、ジュリアスは私当然を聞いても訳がわからない様子。まあ、それも当たり前だよね。

 あまりにこの世界とは、常識が違い過ぎるもの。

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