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01 騎士団長
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白い床石の上をコツコツと靴音をさせて、私は大広間に続く廊下を歩いていた。
私は今夜、城で開かれる夜会へと行く。
そして、そこで婚約者である第三王子レスター・ラルストンに、婚約破棄をされるのだ。
こうして足取りを重く感じるのは、私がその事実を知っているから……悪役令嬢クラウディア・エズモンドとして転生している事実に気が付いたのが、ほんの数日前のこと。
今夜に婚約破棄されてしまうことは、もう防ぎようもなかったのだ。
私は乙女ゲームの世界の悪役令嬢で、その役割の通りに、ヒロインであるマリアに対し様々な嫌がらせしてきた。
今更、そんな私が何を言えば良いのだろうか……中身が変わったので、それは私ではありません知りませんなどと言えるはずもなかった。
「クラウディア様……」
背後から名前を呼びかけられて、私は振り向いた。
「まあ……オルランド……」
そこに居たのは、王立騎士団長オルランド・フィンリー。フィンリー公爵家の次男で……レスターと婚約しなければ、私は彼と結婚していただろうと両親からも聞いていた。
黒い短髪に青い目キリッとした精悍な顔立ち、整ってはいるけれど生真面目な性格が出ていて、凜とした佇まいが魅力的な人だ。
実はオルランドも、乙女ゲームの中のヒーローの一人。生真面目で素敵な騎士団長。今回、マリアはメインヒーローである第三王子レスターを選んだから、彼のヒロインマリアへの好感度は高くないのだろう。
だって、もし彼がマリアのことが好きなのなら、彼女に嫌がらせばかりした私のことが嫌いで憎らしいはずだけれど、無表情で平静なままで私を見つめている。
……いえ。オルランドとはもう何年も話していないので、何を考えているかわからないわ……それに、彼は乙女ゲーム内でも無表情がデフォルトで、感情が出にくい人だった。
「クラウディア様。あの場所へは、行ってはいけません」
「……え?」
私はオルランドは何を言っているのだろうと思った。だって、夜会会場である大広間はすぐそこだ。
私の正装姿を見れば行き先はわかるだろうし、開始時間は迫っているし、大方の貴族たちは入場済みだ。
「……あの場所へ行けば、クラウディア様の名誉が……酷く汚されることになります」
私はオルランドが何を言わんとしているのかを、ここで理解することが出来た。
何故だかわからないけれどオルランドは、私がマリアを虐めた罪でこれからレスター殿下から婚約破棄されることを知っているのだ。
「仕方ないわ。それだけのことをしたもの……私は甘んじて、受け入れるつもりよ」
記憶の中の私は嫉妬に駆られて、とんでもないことを仕出かしていた。階段から落としたり池に落としたり、馬車の車輪に細工をしたり……。
私の悪事の犠牲者となるところだったマリアがいま生きていて怪我も負っていないことを、神様に感謝しなければならない。
「いけません! それに、この状況で婚約破棄などと信じられません……俺はクラウディア様が悪いことをしたとはとても思えないのです。婚約者が居ながらにして他の女性に目を移すならば、嫉妬されて当然のことです……どちらの女性に対しても失礼です。もし、愛する人が出来てしまったと言うのなら、まずは婚約者クラウディア様と婚約解消をしてから行動すべきでしょう」
そういえば、騎士の家系で幼い頃から厳しく躾けられたオルランドは、とても真面目だった。
婚約者に愛する人が出来てしまった私の立場を知った上で、オルランドは同情してくれたのかもしれない。
私は今夜、城で開かれる夜会へと行く。
そして、そこで婚約者である第三王子レスター・ラルストンに、婚約破棄をされるのだ。
こうして足取りを重く感じるのは、私がその事実を知っているから……悪役令嬢クラウディア・エズモンドとして転生している事実に気が付いたのが、ほんの数日前のこと。
今夜に婚約破棄されてしまうことは、もう防ぎようもなかったのだ。
私は乙女ゲームの世界の悪役令嬢で、その役割の通りに、ヒロインであるマリアに対し様々な嫌がらせしてきた。
今更、そんな私が何を言えば良いのだろうか……中身が変わったので、それは私ではありません知りませんなどと言えるはずもなかった。
「クラウディア様……」
背後から名前を呼びかけられて、私は振り向いた。
「まあ……オルランド……」
そこに居たのは、王立騎士団長オルランド・フィンリー。フィンリー公爵家の次男で……レスターと婚約しなければ、私は彼と結婚していただろうと両親からも聞いていた。
黒い短髪に青い目キリッとした精悍な顔立ち、整ってはいるけれど生真面目な性格が出ていて、凜とした佇まいが魅力的な人だ。
実はオルランドも、乙女ゲームの中のヒーローの一人。生真面目で素敵な騎士団長。今回、マリアはメインヒーローである第三王子レスターを選んだから、彼のヒロインマリアへの好感度は高くないのだろう。
だって、もし彼がマリアのことが好きなのなら、彼女に嫌がらせばかりした私のことが嫌いで憎らしいはずだけれど、無表情で平静なままで私を見つめている。
……いえ。オルランドとはもう何年も話していないので、何を考えているかわからないわ……それに、彼は乙女ゲーム内でも無表情がデフォルトで、感情が出にくい人だった。
「クラウディア様。あの場所へは、行ってはいけません」
「……え?」
私はオルランドは何を言っているのだろうと思った。だって、夜会会場である大広間はすぐそこだ。
私の正装姿を見れば行き先はわかるだろうし、開始時間は迫っているし、大方の貴族たちは入場済みだ。
「……あの場所へ行けば、クラウディア様の名誉が……酷く汚されることになります」
私はオルランドが何を言わんとしているのかを、ここで理解することが出来た。
何故だかわからないけれどオルランドは、私がマリアを虐めた罪でこれからレスター殿下から婚約破棄されることを知っているのだ。
「仕方ないわ。それだけのことをしたもの……私は甘んじて、受け入れるつもりよ」
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婚約者に愛する人が出来てしまった私の立場を知った上で、オルランドは同情してくれたのかもしれない。
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