待ち伏せされた悪役令嬢、幼馴染み騎士団長と初恋をやり直す。

待鳥園子

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02 悪役令嬢

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「……そうであっても、誰かを傷つけたりすることは許されないわ」

 悪役令嬢のつらいところだ。誰しも未来の伴侶たる婚約者へ別の異性が近付くことを嫌悪して当然だと思う。けれど、真実の愛に目覚めた二人からすると、私ことが悪役であって……。

「それはそうですね。ですが、喜ぶべきことに、すべて未遂に終わりました。クラウディア様。現に例の女性は、何事もなく、元気にしているではないですか……」

 オルランドは私の言葉に食い下がるように言った。

 彼は真面目で律儀な性格で、悪事を仕出かした私にも情状酌量の余地ありと言ってくれるのは素直に嬉しい。

 けれど、真意がわからないのだ。私は第三王子レスター殿下……つまり、王族の婚約者で、今夜この夜会で婚約破棄を免れたところで、彼らと会うことをいつまでも逃げ続けることは許されない。

 いつかはレスター殿下に婚約破棄されてしまう。もうこれは覆せない事実だった。

「何が言いたいの? オルランド。わからないわ……とにかく、私はもう行かないと……」

 私はドレスの裾を持って急ぐことにした。もうすぐ国王陛下が現れて、夜会の開始を告げるだろう。いくら婚約破棄されるからと、悠々と遅刻することは躊躇われた。

 たとえその後に、自分の名前が地に落ちてしまうことがあるとしても。

「……お待ちください」

 オルランドは去ろうとする私の手を取り引き留めた。そこまでするなんて思って居なくて、驚いてしまった。

 それに、これをする理由がまったくわからない。

 だって、彼と話したのは数年振り。レスター殿下と婚約するとなって、元婚約者候補だったオルランドとは関わらないように両親から言い含められたのだ。

 オルランド側もそれからよそよそしくなったから、同じようなことを親から言われたのかもしれない。

「オルランド……どうしたの?」

「俺と一緒に行ってください。せめて、傍でお守りしたいのです」

 じっと見つめられて、ますます状況がわからなくなった。オルランドとの幼い頃、私たちは仲が良かったけれど、そういう関係では決してなかったもの。

「……私は婚約者が居るのよ。オルランド。貴方が何を言われてしまうか」

「レスター殿下がクラウディア様を大事にされていれば、俺とて何も言う必要もなかったし、貴女のことを諦められたのです。共に行きましょう。彼も婚約者以外をエスコートしているではないですか」

 熱っぽく語られて私は口に手を当てた。だって、これは、まるで私のことを……。

「オルランド? ……あの」

「どうしてですか。クラウディア様は、何故、自分だけが悪いと思っているのですか。婚約者が居たのに、別の女性を優先するなど、怒って当然です。俺ならば絶対にしません。王子と婚約したからと初恋を諦めたのに……まさか、こんな結末が待っているなんて……」

 切なそうに言い言葉をなくしてしまったオルランドを見て、私は胸が詰まる思いだった。

 オルランドが……初恋を諦めたって、私のことよね? ええ。話の流れ的にはきっとそうだわ。

 騎士団長オルランド・フィンリーの初恋は悪役令嬢クラウディア・エズモンドだったということ……? いえ。彼らが幼馴染みであったことは、乙女ゲーム内でも言及があったわ。

 幼い頃の初恋相手だった……? 幼い頃のオルランドとの記憶はうっすらとあるばかり……もしかしたら、オルランドと婚約していたかもしれないと、そう言われた両親からの話はやけに覚えている。

 クラウディアはもちろん、婚約者のレスター殿下のことが好きになり、だからこそ彼に近付くマリアに嫌がらせを重ねた。女性の恋の記憶は上書き……もし、綺麗な初恋であったとしてもそうかもしれない。

 オルランドはその間もずっと、クラウディアのことが好きだったということ……? 別に嫌いで会わなくなったわけでもないし、好ましく思って居る異性ならそうなってしまいそう。

 ……もし、私の記憶が戻らずに、悪役令嬢クラウディア・エズモンドのままだったとしたら……? 嫉妬に理性を失い性格極悪になってしまっているクラウディアなら、オルランドから呼び止められても、夜会会場に向かっていたかもしれない。

 私が……記憶を取り戻したから、何事かと立ち止まっただけで……そうよ。

 転生した記憶がなければ、こんな会話を交わすこともなかったんだわ。
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