モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子

文字の大きさ
38 / 43

38 ひどい雨の中①

しおりを挟む
「ちょっと、有馬さん、来てもらって良い?」

 私は次の日の放課後、急いでバイトに向かう寧々ちゃんを見送ってゆっくりと通学バッグを出して帰る準備をしていたところに、夕凪さんとその友達だろう二人が話しかけて来た。

 今日は鷹羽くんはすぐに部活に行ったみたいだ。明日試合って言ってたし、私に夕凪さんの矛先が向いていて良かった、とちょっとほっとした。

「何? 言いたいことあるなら今ここで言って欲しい」

 私は夕凪さんの可愛い顔に目を向けて行った。わざわざ人気のない場所で囲まれるのわかっていて、誰が着いて行ったりするんだろう?

 三人はちょっと顔を見合わせたけど、教室に残っているのが少数だし、わざわざ止めてくるような正義感の持ち主は居ないと判断したようだ。

「……良いわ。鷹羽くんに近づくのやめてくれる? 昨日もゲームセンターまで着いて来て、何のつもり?」

「なんで、夕凪さんがそんなことを私に言うの?」

 ぐっと言葉につまったように夕凪さんは一瞬黙ったけど、長い睫毛の大きな目で私を睨みつけた。

「有馬さんと鷹羽くんは似合わないもの」

「夕凪さんとは似合うの?」

 淡々と言い返す私にイラつくように両脇の二人が続けて言う。

「美穂の方が鷹羽くんに似合うって言ってるのよ。あんた邪魔なのよ」

「そうよ、美穂の方が可愛いし頭も良い。有馬さんとは大違い」

 くすくすと三人で笑い出す。教室に残っているクラスメートたちも、私たちの不穏なやりとりを見てなんだか、ざわざわとしだした。

 誰かが教室を出ていく気配がした。喧嘩をしていると、先生を呼びに行ったのかもしれない。

「夕凪さんは鷹羽くんと、付き合っているの?」

 夕凪さんは今まで余裕のあった顔に眉を潜めて険しい顔をした。わかっている、私がこんなこと言うなんて思わないよね?

「貴方には関係ないでしょ」

「……何の権利があるかわからないけど、夕凪さんに、似合わないてんて言われる筋合いないから」

 ぴしゃりと言った私の言葉に三人は顔を見合わせた。

 モブで文句を言わないだろうと踏んで居た私から思ったような反応を得られなかったみたいで、戸惑っているみたいだ。

「おい。何をしてんだよ」

 と、勢い込んで入って来たのは行高だった。夕凪さんも名前も知らない二人も驚いたような顔をしている。

「ゆっきー……これは……」

 私は行高は夕凪さんにも、ゆっきーって呼ばれてるんだななんて場違いなことをのんびり考えたりしていた。

「俺の彼女に何の用だよ、夕凪に三笠に、近藤。澪になんかしたらタダじゃ済まさない」

 私たちは四人共、動きが固まってしまった。

 そうか。そういうことになってたし、付き合うふりをやめようって、ちゃんと私は言ったつもりなんだけど行高の中では継続中なのか。

「え? ゆっきー、有馬さんと付き合っているの?」

「そうだよ。この前から」

 私はどうしようか、心の中でめちゃくちゃ揺れていた。

 このまま、付き合っていることにしてしまえばこの場は丸く収まる。でも、鷹羽くんのことは……。

「なんだ、そうなの? 誤解してたわ」

「それならそうと、早く言えば良いのに……」

 口々に言って教室を出ていく三人組を見つめて、行高に目を移した。

「タイミング、考えて」

「……は? どういうこと?」

 私はうーん、と手を組んだ。参った。

 教室ではないところで、三人に囲まれた方が良かったかも。

 残ったクラスメート達の冷やかす声や視線に耐えられなくて、私は通学バッグを手に持ってその場を後にした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

処理中です...