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17 イセカイテンセイ①
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「お前の城に……俺の婚約者が、不当に閉じ込められていると言うのに、何故その状況で諦められると言うんだ。ふざけるなよ」
私はリアム殿下から慌てて離れて、そんな私たち二人をヴィクトルは冷静に見ていた。
「既にレティシアは、貴方の婚約者ではないですよ。殿下。それはお忘れなく。それに、ここに滞在しているのは彼女の希望です」
二人は真剣な眼差しで睨み合い、私はとても居心地が悪かった。いいえ。私は浮気はしていない。記憶を失った上で、色々と勘違いがあっただけで。
「俺はもう何もかも、わかっているぞ。お前……レティシアが記憶を失っている事情を知りつつ、利用したな?」
「……いいえ?」
詰め寄るリアム殿下をいなすように、ヴィクトルは軽く微笑んだ。
「嘘を言え。お前はレティシアをよく知る幼馴染だと言うのに、彼女の記憶喪失を指摘できないはずがない。どうして、嘘をついたんだ」
「え。幼馴染? そうなの?」
……ヴィクトルって、私の幼馴染だったの? どういうこと?
「ええ。それはまあ、言えば話がややこしくなると判断したので、仕方ないですよ。久しぶりに会った大事な幼馴染が、あんなにもひどい目に遭っていることを知ればね」
「だから、必要あっての演技だったんだ……これで、すべての誤解が解けただろう? レティシア、俺と帰ろう」
「あっ……あ、私?」
そっか……そうだよね。私、リアム殿下に嫌われていたりした訳でもなくて、むしろ皇太后から守ってくれるために、あの大掛かりな演技をしていたんだから……。
「いえ。レティシアは僕と、デストレに居た方が良いですよ。悪くなっていた皇太后の体調は持ち直したそうなので、レティに風当たりが強くなります」
彼が私を『レティ』と呼んだその時、私には不思議と幼い頃の光景が見えた。
ヴィクトルと思しき可愛い男の子と、私はこの花畑で遊んでいる。
「……え? あ……ヴィー? ……あ。ヴィクトル。私たち…………ここで、幼い頃を過ごしたことがあったのね」
幼い記憶が蘇り、軽く痛む頭を押さえた私に、ヴィクトルは頷いた。
「記憶が、戻り出しているようですね……すぐに戻りますよ。お気に入りの席も変わらないし、好物のスープもそのままでした。きっと記憶を失っても、一時的なものであろうと思っていました」
あ。貴族令嬢レティシア・ルブランとしての記憶が、ゆっくりとでも私に戻って来ているということ?
「そっか……良かった」
もしかしたら、私はレティシアでもなんでもなくて、現代から魂が入り込んだだけかと思っていたから……なんだか安心した。
「ええ。記憶が戻ってから、ゆっくりとどちらと結婚するか決めてください。今ならそれが出来ますよ。君を婚約者にと望み王命を出して貰った王太子は、事情があったと言えど、レティシアを手放しています」
「……何を世迷言をほざく。婚約者は俺で、レティシアは俺と結婚するつもりだったんだ」
リアム殿下は立ち上がり、怒りの表情でヴィクトルを睨んだ。
「レティシアは本当は、幼なじみの僕のことが好きなんです。貴方との婚約を受け入れたのは、王命で仕方なくです。本来あるべきものが、元通りになるだけの話ですよ」
「ふん。その強気はレティシアに記憶が戻れば、すぐにフラれて終わる。覚悟しておけ」
「……記憶が戻る前にだって、彼女を落としても良いですよ。皇太后の問題が終わるまでは、どうせ全てを明かせないんですから」
ヴィクトルの言う通りに、私は皇太后が生きている間は、元婚約者リアム殿下と結ばれることは難しいもんね……。
「お前……ふざけるなよ?」
「何をどう言い訳しようが、現在の二人は婚約破棄した王太子とされた公爵令嬢であることをお忘れなく?」
肌がピリつく一触即発な慣れない状況に、恋愛未経験喪女だった私は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
しゅっ……修羅場ー! ここまで私視点で何の悪いこともしていないんだけど、何だか浮気していたような気持ちになるのは何故ー!
私はリアム殿下から慌てて離れて、そんな私たち二人をヴィクトルは冷静に見ていた。
「既にレティシアは、貴方の婚約者ではないですよ。殿下。それはお忘れなく。それに、ここに滞在しているのは彼女の希望です」
二人は真剣な眼差しで睨み合い、私はとても居心地が悪かった。いいえ。私は浮気はしていない。記憶を失った上で、色々と勘違いがあっただけで。
「俺はもう何もかも、わかっているぞ。お前……レティシアが記憶を失っている事情を知りつつ、利用したな?」
「……いいえ?」
詰め寄るリアム殿下をいなすように、ヴィクトルは軽く微笑んだ。
「嘘を言え。お前はレティシアをよく知る幼馴染だと言うのに、彼女の記憶喪失を指摘できないはずがない。どうして、嘘をついたんだ」
「え。幼馴染? そうなの?」
……ヴィクトルって、私の幼馴染だったの? どういうこと?
「ええ。それはまあ、言えば話がややこしくなると判断したので、仕方ないですよ。久しぶりに会った大事な幼馴染が、あんなにもひどい目に遭っていることを知ればね」
「だから、必要あっての演技だったんだ……これで、すべての誤解が解けただろう? レティシア、俺と帰ろう」
「あっ……あ、私?」
そっか……そうだよね。私、リアム殿下に嫌われていたりした訳でもなくて、むしろ皇太后から守ってくれるために、あの大掛かりな演技をしていたんだから……。
「いえ。レティシアは僕と、デストレに居た方が良いですよ。悪くなっていた皇太后の体調は持ち直したそうなので、レティに風当たりが強くなります」
彼が私を『レティ』と呼んだその時、私には不思議と幼い頃の光景が見えた。
ヴィクトルと思しき可愛い男の子と、私はこの花畑で遊んでいる。
「……え? あ……ヴィー? ……あ。ヴィクトル。私たち…………ここで、幼い頃を過ごしたことがあったのね」
幼い記憶が蘇り、軽く痛む頭を押さえた私に、ヴィクトルは頷いた。
「記憶が、戻り出しているようですね……すぐに戻りますよ。お気に入りの席も変わらないし、好物のスープもそのままでした。きっと記憶を失っても、一時的なものであろうと思っていました」
あ。貴族令嬢レティシア・ルブランとしての記憶が、ゆっくりとでも私に戻って来ているということ?
「そっか……良かった」
もしかしたら、私はレティシアでもなんでもなくて、現代から魂が入り込んだだけかと思っていたから……なんだか安心した。
「ええ。記憶が戻ってから、ゆっくりとどちらと結婚するか決めてください。今ならそれが出来ますよ。君を婚約者にと望み王命を出して貰った王太子は、事情があったと言えど、レティシアを手放しています」
「……何を世迷言をほざく。婚約者は俺で、レティシアは俺と結婚するつもりだったんだ」
リアム殿下は立ち上がり、怒りの表情でヴィクトルを睨んだ。
「レティシアは本当は、幼なじみの僕のことが好きなんです。貴方との婚約を受け入れたのは、王命で仕方なくです。本来あるべきものが、元通りになるだけの話ですよ」
「ふん。その強気はレティシアに記憶が戻れば、すぐにフラれて終わる。覚悟しておけ」
「……記憶が戻る前にだって、彼女を落としても良いですよ。皇太后の問題が終わるまでは、どうせ全てを明かせないんですから」
ヴィクトルの言う通りに、私は皇太后が生きている間は、元婚約者リアム殿下と結ばれることは難しいもんね……。
「お前……ふざけるなよ?」
「何をどう言い訳しようが、現在の二人は婚約破棄した王太子とされた公爵令嬢であることをお忘れなく?」
肌がピリつく一触即発な慣れない状況に、恋愛未経験喪女だった私は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
しゅっ……修羅場ー! ここまで私視点で何の悪いこともしていないんだけど、何だか浮気していたような気持ちになるのは何故ー!
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