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35 独り言
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クインは、今からでも何もかもを明かせば遅くないと言った。けれど、私は何もかもがもう遅いと首を振った。
ギャレット様は婚約者だった私に好意的に近付き、そういう感情を素直に表現してくれた。自分勝手にそれを裏切っただけの私は、彼に何を言うことが出来るだろうか。
貴族学校に通うあの子は、どうしても明日提出しなければならない課題が残っているからと、心配そうに帰って行った。
私も寝巻きで見送りする訳にもいかなくて、着替えはしたものの、またすぐに自室に戻り、ぼんやりとベッドに座っていた。
「……あー……これは、勝手な独り言なんだが」
「……イーサン。何の用?」
いきなり聞こえて来た声に、私は人の部屋に勝手に入って……を飲み込んだ。だって、ここはイーサンが所有する邸で、私はまだ彼の妻でもない。
こんな頼りない立場で、彼に対しどんな文句が言えるって言うの。
「いや、ミスヴェアの王太子が珍しく父王に逆らったという、噂を聞いてね」
「え。ギャレット様が……? どんな噂話なの?」
このイーサンもそうだけど、私の前で誰もがギャレット殿下の話をしなくなった。
だって、イーサンの持つお金に目がくらみ、ギャレット様を捨てた女だと思われているもの。そんな嫌な人物の前で、可哀想な彼の話をする訳がない。
イーサンがここで彼の話をしたことに驚いた。だからこそ、よほどのことが起こったのだろうと、そう思った。
「あいつは次の婚約者にと勧められたバイロン家のベルセフォネとだけは、結婚しないと言い張った。王は婚約者に逃げられた直後だから無理もないとそれを許し、王妃は自分の言うことの聞かない王太子について、不満を募らせている。まあ……仕方ない。生さぬ仲の義理の息子だしな」
「……え?」
ギャレット様は、既にベルセフォネ嬢を受け入れたんだと思っていた。それを聞いて私はぽかんとなったんだけど、イーサンはそれを見て鼻で笑った。
「あの王妃も、ローレンも。王子を見くびり過ぎじゃないか。おそらくだが、王妃がべルセフォネを婚約者にするために君をあてがったことも、今は全て理解している。だが、それを明かし王妃を責めれば、君がまた嫌な思いをする。だから、何も言わずに黙っているんじゃないか」
「……そんな……嘘でしょう」
「今まで何も言わず良い子で王太子をやって来た男の、初めての反抗だ。だというのに、それが原因で殺されてしまうとは、俺も流石に夢見が悪くなりそうでね」
「止めてよ。何言ってるの。縁起でもない」
私は何を言い出したのかと、イーサンを睨み付けた。口の上手い彼でも、言って良いことと悪いことがある。
「いいや、これは嘘じゃない。王妃に殺されるかもしれないぞ。あの人は俺を人と思っていないからな。物同然だ。叙爵の話を聞きに行ったら、大事な話を誰が聞いているのかも気にせずしてくれたよ。今はギャレット殿下は、気分を変えるために離宮へと旅行中だと……失恋旅行だろ。どう考えても」
王妃にしてみれば、平民であるイーサンを人と認識していないっていうこと? ひどい。そういう国民が居なければ、彼女だって王族だと大きな顔が出来ないはずだ。
ギャレット様は婚約者だった私に好意的に近付き、そういう感情を素直に表現してくれた。自分勝手にそれを裏切っただけの私は、彼に何を言うことが出来るだろうか。
貴族学校に通うあの子は、どうしても明日提出しなければならない課題が残っているからと、心配そうに帰って行った。
私も寝巻きで見送りする訳にもいかなくて、着替えはしたものの、またすぐに自室に戻り、ぼんやりとベッドに座っていた。
「……あー……これは、勝手な独り言なんだが」
「……イーサン。何の用?」
いきなり聞こえて来た声に、私は人の部屋に勝手に入って……を飲み込んだ。だって、ここはイーサンが所有する邸で、私はまだ彼の妻でもない。
こんな頼りない立場で、彼に対しどんな文句が言えるって言うの。
「いや、ミスヴェアの王太子が珍しく父王に逆らったという、噂を聞いてね」
「え。ギャレット様が……? どんな噂話なの?」
このイーサンもそうだけど、私の前で誰もがギャレット殿下の話をしなくなった。
だって、イーサンの持つお金に目がくらみ、ギャレット様を捨てた女だと思われているもの。そんな嫌な人物の前で、可哀想な彼の話をする訳がない。
イーサンがここで彼の話をしたことに驚いた。だからこそ、よほどのことが起こったのだろうと、そう思った。
「あいつは次の婚約者にと勧められたバイロン家のベルセフォネとだけは、結婚しないと言い張った。王は婚約者に逃げられた直後だから無理もないとそれを許し、王妃は自分の言うことの聞かない王太子について、不満を募らせている。まあ……仕方ない。生さぬ仲の義理の息子だしな」
「……え?」
ギャレット様は、既にベルセフォネ嬢を受け入れたんだと思っていた。それを聞いて私はぽかんとなったんだけど、イーサンはそれを見て鼻で笑った。
「あの王妃も、ローレンも。王子を見くびり過ぎじゃないか。おそらくだが、王妃がべルセフォネを婚約者にするために君をあてがったことも、今は全て理解している。だが、それを明かし王妃を責めれば、君がまた嫌な思いをする。だから、何も言わずに黙っているんじゃないか」
「……そんな……嘘でしょう」
「今まで何も言わず良い子で王太子をやって来た男の、初めての反抗だ。だというのに、それが原因で殺されてしまうとは、俺も流石に夢見が悪くなりそうでね」
「止めてよ。何言ってるの。縁起でもない」
私は何を言い出したのかと、イーサンを睨み付けた。口の上手い彼でも、言って良いことと悪いことがある。
「いいや、これは嘘じゃない。王妃に殺されるかもしれないぞ。あの人は俺を人と思っていないからな。物同然だ。叙爵の話を聞きに行ったら、大事な話を誰が聞いているのかも気にせずしてくれたよ。今はギャレット殿下は、気分を変えるために離宮へと旅行中だと……失恋旅行だろ。どう考えても」
王妃にしてみれば、平民であるイーサンを人と認識していないっていうこと? ひどい。そういう国民が居なければ、彼女だって王族だと大きな顔が出来ないはずだ。
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