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49 居ない
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イーサンはそれを聞いて気持ち良いくらい大笑いし、その時になんとなく二人で同時に後ろを確認したらギャレット様は居なかった。仕事しに行ってしまったみたい。
お仕事が忙しいのに、悪いことをしてしまった。けど、こういう行動にも彼の愛情を感じて、心が温かくなる。
「……え?」
視線を正面に戻した私はとある人物を前にして、思考停止してしまった。彼がこんな場所に居るなんて、全く思いもしていなかったからだ。
「ん? ローレン。知り合いか? あの人は……かなり、顔色が悪いようだ。倒れそうじゃないか?」
イーサンの言葉の通り、頼りない足取りで周囲を見回していた彼の体はぐらりと傾いだ。
「っ……! お父様!」
思わず彼を呼んだ声が、悲鳴のようでもあった。私が走って駆けつけると、お父様は焦点の合わない目つきでクインの名を呼んでいた。
「クインが……クインが居ないんだ……連れて行かれた。どこにも居ない。僕の息子なんだ」
「……クインが? 居なくなったって……お父様? どういうことなの?」
今は弟クインは、貴族学校へ通っている時間のはずだ。だから、お父様がここでクインを探しているのはおかしい。もしかしたら、お酒を飲み過ぎて錯乱状態になっているのかもしれない。
「ローレン。これは……おかしいぞ。対処しないと危険だ。すぐに医者の元へ連れて行こう。おい! こっちに来い!」
お父様の様子を見たイーサンが、彼の用心棒として雇われている何人かを呼んだ。屈強な男性が二人でお父様を運び、イーサンが乗ってきた馬車へと運び込んだ。
共に乗り込んだイーサンと私は、とにかく楽な姿勢になるようにとお父様の体を動かした。
イーサンは何を思ったのか、お父様の長袖を捲り上げ、厳しい表情で言った。
「おい。ローレン。これで何も思わなかったのか。彼の様子はおかしい。こうなってしまうまで……気がつかなかったのか?」
「え? ……お父様はお母様が亡くなって……賭け事に嵌まり、お酒に頼るようになったわ。それから私は借金取りが家に続々と来るようになって……お父様はそんな時にも、賭け事を……だから、だから私……」
イーサンは泣きそうになった私に対し、これは言い過ぎたと思ったらしい。何度か大きく息をつくと、ぐったりとしていたお父様の肘の裏あたりを指さした。
「君は、そうか。育ちが良いからな。見たことがなかったのから仕方ない……ローレン。落ち着いて聞くんだ。見ろ。お前の父は、誰かに注射を打たれている。だから、今まで変だったんだ……何故だ。メートランド侯爵家は、誰かの恨みを買うような家系ではない。先代までは堅実な領地経営と、派閥に与せぬ貴族として政治的にも信用があったはずだ。何故だ」
「……お父様……そんな……」
イーサンの緊迫した雰囲気を見ると、それは致命的な間違いだったのだろう。私……まったく、そんなことに気がつかなかった。
お仕事が忙しいのに、悪いことをしてしまった。けど、こういう行動にも彼の愛情を感じて、心が温かくなる。
「……え?」
視線を正面に戻した私はとある人物を前にして、思考停止してしまった。彼がこんな場所に居るなんて、全く思いもしていなかったからだ。
「ん? ローレン。知り合いか? あの人は……かなり、顔色が悪いようだ。倒れそうじゃないか?」
イーサンの言葉の通り、頼りない足取りで周囲を見回していた彼の体はぐらりと傾いだ。
「っ……! お父様!」
思わず彼を呼んだ声が、悲鳴のようでもあった。私が走って駆けつけると、お父様は焦点の合わない目つきでクインの名を呼んでいた。
「クインが……クインが居ないんだ……連れて行かれた。どこにも居ない。僕の息子なんだ」
「……クインが? 居なくなったって……お父様? どういうことなの?」
今は弟クインは、貴族学校へ通っている時間のはずだ。だから、お父様がここでクインを探しているのはおかしい。もしかしたら、お酒を飲み過ぎて錯乱状態になっているのかもしれない。
「ローレン。これは……おかしいぞ。対処しないと危険だ。すぐに医者の元へ連れて行こう。おい! こっちに来い!」
お父様の様子を見たイーサンが、彼の用心棒として雇われている何人かを呼んだ。屈強な男性が二人でお父様を運び、イーサンが乗ってきた馬車へと運び込んだ。
共に乗り込んだイーサンと私は、とにかく楽な姿勢になるようにとお父様の体を動かした。
イーサンは何を思ったのか、お父様の長袖を捲り上げ、厳しい表情で言った。
「おい。ローレン。これで何も思わなかったのか。彼の様子はおかしい。こうなってしまうまで……気がつかなかったのか?」
「え? ……お父様はお母様が亡くなって……賭け事に嵌まり、お酒に頼るようになったわ。それから私は借金取りが家に続々と来るようになって……お父様はそんな時にも、賭け事を……だから、だから私……」
イーサンは泣きそうになった私に対し、これは言い過ぎたと思ったらしい。何度か大きく息をつくと、ぐったりとしていたお父様の肘の裏あたりを指さした。
「君は、そうか。育ちが良いからな。見たことがなかったのから仕方ない……ローレン。落ち着いて聞くんだ。見ろ。お前の父は、誰かに注射を打たれている。だから、今まで変だったんだ……何故だ。メートランド侯爵家は、誰かの恨みを買うような家系ではない。先代までは堅実な領地経営と、派閥に与せぬ貴族として政治的にも信用があったはずだ。何故だ」
「……お父様……そんな……」
イーサンの緊迫した雰囲気を見ると、それは致命的な間違いだったのだろう。私……まったく、そんなことに気がつかなかった。
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