もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア

文字の大きさ
20 / 116
第一部

19

しおりを挟む
メリシャと神官が笑い合う光景に背を向けた枢機卿は顔を引き締めて、教会の外へと足を向けた。それに歩幅を合わせて神官も追随する。

辿り着いた先では、学園生や入学生が教材を購買する商会が見えていき、その惨状が露わとなった。
商会周囲には異臭を放つゴミが散らかり、先日まで清潔を保っていた商会とは全く違う光景が広がっている。商会前では従業員と思われる男女が掃除を行い、その中には教材を買いに行った際に立ち会った者も作業をしていた。
立ち往生する周辺の住民から話を聞くべく、近寄っていくと、聞かずとも震える声で聞こえてくる。

「…騒がしいと思ったら、野良犬がゴミを置いてくのを見たぜ!」

「俺も見たよ。何かの前兆かね…」

「…私は鳥がゴミを落としていったのを見たよ。普段は大人しいのに、何であんな事を…」

「早く片付かないかね。店を開けたいんだども。教会の人に頼まないのかね?」

様々な会話が途切れ途切れで聞こえるが、どれも要領を得られず、問題が増えてしまった。だが先日の神獣ネリの行動から察するに、行動する何かが商会側にあったと分かっているため、近付くこともせず遠目に眺めるのみに留めた。
追随していた神官はそんな枢機卿と同じく、その光景の前で動じなかった。教会側では、今回の件に関係ある商会に枢機卿が立ち寄っていた事が明らかになっているため、その関係だろうと予測されていた。

「今回の件は彼ら自身が招いた結果だろう。」

「ですね。教会側でこの件に関する依頼は受けない方向で調整いたしましょう。少なくとも彼らに救いが生まれることを願いましょう。」

その後、商会周辺は空き家が増えたり、悪い噂を聞くことが増えていった。そして後日、枢機卿がネリに伺いを立てると、メリシャから離れた場所で白状した。
教材を買いに行った際に、受付が男爵と知って質の悪い教材を荷物に混ぜていたらしい。その事に苛つき、直接手を下せない代わりに、周辺で暮らす生き物に悪戯を仕掛けたと聞かされ、枢機卿としては複雑な想いを抱えた。
見当違いであるが、先に気付きたかったという想いに駆られる枢機卿。


それから二日後、社交界参加への招待状が届けられた。王族からの手紙とあって、拒否権のないメリシャと枢機卿は準備を急ぐ事となった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

婚約者を寝取った妹にざまあしてみた

秋津冴
恋愛
 一週間後に挙式を迎えるというある日。  聖女アナベルは夫になる予定の貴族令息レビルの不貞現場を目撃してしまう。  妹のエマとレビルが、一つのベットにいたところを見てしまったのだ。  アナベルはその拳を握りしめた――

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

処理中です...