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第一部
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それから数日後、再び家族会議。
「お兄様。例の件、お受け致しますわ。」
「良いのかい?これを推し進めるという事は我が家以上の高位貴族から目をつけられてしまうよ。」
「お兄様、お忘れですか?私に友人は数人で十分なのですわ。我がサルウシャ伯爵家は貴族至上主義な貴族の方々と違い、民を選ばないという家訓があるではないですか。」
「いや。誰もお祖父様が決めたからといって、守る必要はないんだけど。」
サルウシャ伯爵家は元々、ある商会が一代で築いた珍しい貴族家であった。
貴族が尊いと思い込む貴族至上主義者が多いこの国で唯一といっても良いかもしれない。
同時に上にも下にも敵だらけという点を除けば、問題はないに等しい。
「それに学園で寂しい思いをするんじゃないかって、心配しているんだ。だから」
「ではお兄様は、教会庇護下の子供と高位貴族の子供が居たとして、どちらを助けるのですか?」
「もちろん、そんな事は決まって…。はぁ。分かったから怒らないでおくれ、エイサ。」
その後も兄による念入りな確認が相次ぎ行われたが、最終的に心配性な口を塞ぎ、エイサは支度をするのだった。
学園の昼休憩で、メリシャは普段からお気に入りだったテラスに誰かが座っている事に遠目から気が付き、別の場所へ向かおうと歩み出していた。
(なあ、ネリ。)
(なんだ、ルー。)
(アレ。見えてるよな?)
(見えてるな。メリシャ様に教えるか?)
(面倒くさそうだし、放っておこう。)
(そうだな。なんか企んでそうだし、足止めしとこうか。)
テラスから離れるメリシャに付き添う神獣はそんな会話をしつつ、短時間だけテラスが封じ込まれるのだった。
何かを叫んでいる気配が存在していても神獣が張った結界なだけあり、外には一切の音が響かないという完璧な防音性能を発揮した。
その日、別の広間で友人と食事を行うのだった。
一方、件のテラスでは。
伯爵令嬢エイサと、昼食会というセッティングを行なった侍女がメリシャを待ち続けていた。
「エイサ様。閉じ込められたようですが、何かのトリックでしょうか?」
「へ?」
「それにしても、例の御令嬢が来ませんね。少し様子を見てきましょう。」
「…頼みましたわ。」
数分もせず息を乱して戻ってきた侍女を訝しむエイサ。
「お嬢様。御方を怒らせたのでしょうか。」
「いえ?初対面でしてよ、私は。」
「完全に聖魔法でテラスごと封じられました。つまり脱出不可って事ですね…。」
その日、エイサとその侍女は結界が解除されるまでテラスに留まらざるを得なくなったのだった。
「お兄様。例の件、お受け致しますわ。」
「良いのかい?これを推し進めるという事は我が家以上の高位貴族から目をつけられてしまうよ。」
「お兄様、お忘れですか?私に友人は数人で十分なのですわ。我がサルウシャ伯爵家は貴族至上主義な貴族の方々と違い、民を選ばないという家訓があるではないですか。」
「いや。誰もお祖父様が決めたからといって、守る必要はないんだけど。」
サルウシャ伯爵家は元々、ある商会が一代で築いた珍しい貴族家であった。
貴族が尊いと思い込む貴族至上主義者が多いこの国で唯一といっても良いかもしれない。
同時に上にも下にも敵だらけという点を除けば、問題はないに等しい。
「それに学園で寂しい思いをするんじゃないかって、心配しているんだ。だから」
「ではお兄様は、教会庇護下の子供と高位貴族の子供が居たとして、どちらを助けるのですか?」
「もちろん、そんな事は決まって…。はぁ。分かったから怒らないでおくれ、エイサ。」
その後も兄による念入りな確認が相次ぎ行われたが、最終的に心配性な口を塞ぎ、エイサは支度をするのだった。
学園の昼休憩で、メリシャは普段からお気に入りだったテラスに誰かが座っている事に遠目から気が付き、別の場所へ向かおうと歩み出していた。
(なあ、ネリ。)
(なんだ、ルー。)
(アレ。見えてるよな?)
(見えてるな。メリシャ様に教えるか?)
(面倒くさそうだし、放っておこう。)
(そうだな。なんか企んでそうだし、足止めしとこうか。)
テラスから離れるメリシャに付き添う神獣はそんな会話をしつつ、短時間だけテラスが封じ込まれるのだった。
何かを叫んでいる気配が存在していても神獣が張った結界なだけあり、外には一切の音が響かないという完璧な防音性能を発揮した。
その日、別の広間で友人と食事を行うのだった。
一方、件のテラスでは。
伯爵令嬢エイサと、昼食会というセッティングを行なった侍女がメリシャを待ち続けていた。
「エイサ様。閉じ込められたようですが、何かのトリックでしょうか?」
「へ?」
「それにしても、例の御令嬢が来ませんね。少し様子を見てきましょう。」
「…頼みましたわ。」
数分もせず息を乱して戻ってきた侍女を訝しむエイサ。
「お嬢様。御方を怒らせたのでしょうか。」
「いえ?初対面でしてよ、私は。」
「完全に聖魔法でテラスごと封じられました。つまり脱出不可って事ですね…。」
その日、エイサとその侍女は結界が解除されるまでテラスに留まらざるを得なくなったのだった。
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