10 / 17
問題発生① 嘘偽りのない正直な気持ちを伝えます
しおりを挟む
広間に戻ってきた阿王達は、皆一様に興奮で顔を赤らめていた。
「黎明様、雨をありがとうございます!この国の王として多大なる感謝を申し上げる」
阿王に続いて、皆がそこに跪く。
「番に出会えた喜びで思わず力が入りすぎてしまったが、雨の勢いもじきに弱まる。三日三晩は降り続くと心得よ。」
感謝の言葉と拍手喝采が巻き起こり、黎明はそれを満足げに眺めた後、私を抱いたまま立ち上がった。
「さてそれでは義理も果たしたところで、我はカナと共に我が宮へ行き番ってくる。宮はどこだ?」
げ。
「え、やだ!」
そう言うと黎明はやたら嬉しそうにする。
「カナ、宮が嫌なら、あの洞穴に戻るか?あの奥には、我が丹精込めて作った巣があるぞ。」
違う、そうじゃない。
番うって・・番うってそういうことだよね・・!?
いやいや無理でしょう。
確かにすごい美形ではある。
でも元は虎だよ?
「私は番になることを了承した覚えはありません!」
ピシッと黎明の顔が固まり、阿王が焦った声を出した。
「ちょっ・・おい、おま!何言って・・あ、あーっと、黎明様。番様が少し混乱されているようですので、隅の方で、少し番様と話すお許しを・・ええ、2人きりにならないように、もちろん女官を同席させますし、黎明様の視界の範囲内で・・はい、はい。ありがとうございます。なるべく短時間で済ませますので、はい。では・・ちょっとコッチ来い!ほら早くっ!集合!集合だっ!」
阿王が手招きしながら小走りで広間の奥に向かっていく。
いや、私も早く行きたいんだけれども。
黎明は床に下ろしてくれたけれど、足に巻きついた尻尾がなかなか離れなくてですね。
「ほら、黎明。いい加減、早く離して。」
尻尾をペンペン叩いているとようやく離れた。
見上げた黎明の虎耳がペタンと折れて悲しげで、ちょっと可哀想な気がしてくる。
◇
広間の奥の隅っこで、阿王と宰相と、女官の4人で円陣になった。
女官はキリッとした一重の美人で、初めてみる顔だ。
宰相が、この女官は今後私の側付きになる瑛仙だと紹介してくれる。
王家に縁のある由緒正しい家の出で、元は優秀な官吏らしい。
口火を切ったのは阿王だ。
「おい、お前、晴れて番になったんだろ?何のつもりだ?嫌がらせなのか?」
「晴れても何も、私は最初っから、番になんてなりたくないって言ってたし。」
私以外の3人が、困惑したように顔を見合わせる。
‥何?
怪訝な顔をする私に、阿王が語りかけた。
「照れ隠しとかじゃなくて、本当に嫌なのか?もう一度あの顔をよく見てみろ。女だったら10人が10人、揃いも揃って一目惚れしそうな顔だぞ?俺に無理強いされたのが癪で、それで番になりたくないなんて、心にもないことを言ってるだけじゃないのか?」
壇上の黎明に目を向けると、こっちを見ていたらしくバッチリ視線が合う。
さっきとは打って変わって、虎耳がピンっと立っているところを見るに、こちらの話に聞き耳を立てているに違いない。
「な?な?急にこの国に連れてこられて、意に反することをされて蟠りもあるだろうが、そこに関しては謝る。悪かった。国情に追い詰められていたとはいえ、そこは俺たちが悪かった。何なら正式な謝罪の場を設ける。謝るから、な?それと神獣に対する本当の気持ちを捻じ曲げて話すのは違うだろ?それはそれ、これはこれだ。我が国に対する不満はまずは置いといて、置いといて、だぞ?」
話しの合間、しきりに両手で見えない箱を持ち、横に置く仕草をする阿王。
「わかったな?よし、さあ!安心して、黎明様に対する本当の、正直な気持ちを話してみろ。」
私は頷いた。阿王も頷く。
一応ではあるが謝ってくれたし、ジェスチャー付きで、非常にわかりやすく話してくれた阿王に、私も報わねば。
スゥーと息を吸って、声を張る。
「嫌なものは嫌だし黎明と番うなんて絶対無」
「バカバカ言葉を選べ!お前国を滅ぼす気か!皆まで言うな!」
壇上の方から急激に紫色の発光が強まったのと、焦った阿王が私の言葉を遮ったのはほぼ同時だった。
正直にって言われたから言ったのに!
「黎明様、雨をありがとうございます!この国の王として多大なる感謝を申し上げる」
阿王に続いて、皆がそこに跪く。
「番に出会えた喜びで思わず力が入りすぎてしまったが、雨の勢いもじきに弱まる。三日三晩は降り続くと心得よ。」
感謝の言葉と拍手喝采が巻き起こり、黎明はそれを満足げに眺めた後、私を抱いたまま立ち上がった。
「さてそれでは義理も果たしたところで、我はカナと共に我が宮へ行き番ってくる。宮はどこだ?」
げ。
「え、やだ!」
そう言うと黎明はやたら嬉しそうにする。
「カナ、宮が嫌なら、あの洞穴に戻るか?あの奥には、我が丹精込めて作った巣があるぞ。」
違う、そうじゃない。
番うって・・番うってそういうことだよね・・!?
いやいや無理でしょう。
確かにすごい美形ではある。
でも元は虎だよ?
「私は番になることを了承した覚えはありません!」
ピシッと黎明の顔が固まり、阿王が焦った声を出した。
「ちょっ・・おい、おま!何言って・・あ、あーっと、黎明様。番様が少し混乱されているようですので、隅の方で、少し番様と話すお許しを・・ええ、2人きりにならないように、もちろん女官を同席させますし、黎明様の視界の範囲内で・・はい、はい。ありがとうございます。なるべく短時間で済ませますので、はい。では・・ちょっとコッチ来い!ほら早くっ!集合!集合だっ!」
阿王が手招きしながら小走りで広間の奥に向かっていく。
いや、私も早く行きたいんだけれども。
黎明は床に下ろしてくれたけれど、足に巻きついた尻尾がなかなか離れなくてですね。
「ほら、黎明。いい加減、早く離して。」
尻尾をペンペン叩いているとようやく離れた。
見上げた黎明の虎耳がペタンと折れて悲しげで、ちょっと可哀想な気がしてくる。
◇
広間の奥の隅っこで、阿王と宰相と、女官の4人で円陣になった。
女官はキリッとした一重の美人で、初めてみる顔だ。
宰相が、この女官は今後私の側付きになる瑛仙だと紹介してくれる。
王家に縁のある由緒正しい家の出で、元は優秀な官吏らしい。
口火を切ったのは阿王だ。
「おい、お前、晴れて番になったんだろ?何のつもりだ?嫌がらせなのか?」
「晴れても何も、私は最初っから、番になんてなりたくないって言ってたし。」
私以外の3人が、困惑したように顔を見合わせる。
‥何?
怪訝な顔をする私に、阿王が語りかけた。
「照れ隠しとかじゃなくて、本当に嫌なのか?もう一度あの顔をよく見てみろ。女だったら10人が10人、揃いも揃って一目惚れしそうな顔だぞ?俺に無理強いされたのが癪で、それで番になりたくないなんて、心にもないことを言ってるだけじゃないのか?」
壇上の黎明に目を向けると、こっちを見ていたらしくバッチリ視線が合う。
さっきとは打って変わって、虎耳がピンっと立っているところを見るに、こちらの話に聞き耳を立てているに違いない。
「な?な?急にこの国に連れてこられて、意に反することをされて蟠りもあるだろうが、そこに関しては謝る。悪かった。国情に追い詰められていたとはいえ、そこは俺たちが悪かった。何なら正式な謝罪の場を設ける。謝るから、な?それと神獣に対する本当の気持ちを捻じ曲げて話すのは違うだろ?それはそれ、これはこれだ。我が国に対する不満はまずは置いといて、置いといて、だぞ?」
話しの合間、しきりに両手で見えない箱を持ち、横に置く仕草をする阿王。
「わかったな?よし、さあ!安心して、黎明様に対する本当の、正直な気持ちを話してみろ。」
私は頷いた。阿王も頷く。
一応ではあるが謝ってくれたし、ジェスチャー付きで、非常にわかりやすく話してくれた阿王に、私も報わねば。
スゥーと息を吸って、声を張る。
「嫌なものは嫌だし黎明と番うなんて絶対無」
「バカバカ言葉を選べ!お前国を滅ぼす気か!皆まで言うな!」
壇上の方から急激に紫色の発光が強まったのと、焦った阿王が私の言葉を遮ったのはほぼ同時だった。
正直にって言われたから言ったのに!
146
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
「ひきこもり王子」に再嫁したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、素直に従うことにしました
ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。
選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。
そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。
クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。
しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。
※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
『あなたを捨てたのは、私です』 〜冷酷公爵を追い出した元恋人ですが、隠し子ごと溺愛されています〜
ria_alphapolis
恋愛
「あなたを捨てたのは、私です」
そう告げて、公爵である彼を追い出した日から数年。
私は一人で、彼との子どもを育てていた。
愛していた。
だからこそ、彼の未来とこの子を守るために、
“嫌われ役”になることを選んだ――その真実を、彼は知らない。
再会した彼は、冷酷公爵と噂されるほど別人のようだった。
けれど、私と子どもを見るその瞳だけは、昔と変わらない。
「今度こそ、離さない」
父親だと気づいた瞬間から始まる、後悔と執着。
拒み続ける私と、手放す気のない彼。
そして、何も知らないはずの子どもが抱える“秘密”。
これは、
愛していたからこそ別れを選んだ女と、
捨てられたと思い続けてきた男が、
“家族になるまで”の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる