"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria

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問題発生① 嘘偽りのない正直な気持ちを伝えます

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広間に戻ってきた阿王達は、皆一様に興奮で顔を赤らめていた。

「黎明様、雨をありがとうございます!この国の王として多大なる感謝を申し上げる」

阿王に続いて、皆がそこに跪く。

「番に出会えた喜びで思わず力が入りすぎてしまったが、雨の勢いもじきに弱まる。三日三晩は降り続くと心得よ。」

感謝の言葉と拍手喝采が巻き起こり、黎明はそれを満足げに眺めた後、私を抱いたまま立ち上がった。

「さてそれでは義理も果たしたところで、我はカナと共に我が宮へ行き番ってくる。宮はどこだ?」

げ。

「え、やだ!」

そう言うと黎明はやたら嬉しそうにする。

「カナ、宮が嫌なら、あの洞穴に戻るか?あの奥には、我が丹精込めて作った巣があるぞ。」

違う、そうじゃない。

番うって・・番うってそういうことだよね・・!?
いやいや無理でしょう。

確かにすごい美形ではある。
でも元は虎だよ?

「私は番になることを了承した覚えはありません!」

ピシッと黎明の顔が固まり、阿王が焦った声を出した。

「ちょっ・・おい、おま!何言って・・あ、あーっと、黎明様。番様が少し混乱されているようですので、隅の方で、少し番様と話すお許しを・・ええ、2人きりにならないように、もちろん女官を同席させますし、黎明様の視界の範囲内で・・はい、はい。ありがとうございます。なるべく短時間で済ませますので、はい。では・・ちょっとコッチ来い!ほら早くっ!集合!集合だっ!」

阿王が手招きしながら小走りで広間の奥に向かっていく。

いや、私も早く行きたいんだけれども。

黎明は床に下ろしてくれたけれど、足に巻きついた尻尾がなかなか離れなくてですね。

「ほら、黎明。いい加減、早く離して。」

尻尾をペンペン叩いているとようやく離れた。

見上げた黎明の虎耳がペタンと折れて悲しげで、ちょっと可哀想な気がしてくる。





広間の奥の隅っこで、阿王と宰相と、女官の4人で円陣になった。

女官はキリッとした一重の美人で、初めてみる顔だ。

宰相が、この女官は今後私の側付きになる瑛仙えいせんだと紹介してくれる。

王家に縁のある由緒正しい家の出で、元は優秀な官吏らしい。

口火を切ったのは阿王だ。

「おい、お前、晴れて番になったんだろ?何のつもりだ?嫌がらせなのか?」

「晴れても何も、私は最初っから、番になんてなりたくないって言ってたし。」

私以外の3人が、困惑したように顔を見合わせる。

‥何?

怪訝な顔をする私に、阿王が語りかけた。

「照れ隠しとかじゃなくて、本当に嫌なのか?もう一度あの顔をよく見てみろ。女だったら10人が10人、揃いも揃って一目惚れしそうな顔だぞ?俺に無理強いされたのが癪で、それで番になりたくないなんて、心にもないことを言ってるだけじゃないのか?」

壇上の黎明に目を向けると、こっちを見ていたらしくバッチリ視線が合う。

さっきとは打って変わって、虎耳がピンっと立っているところを見るに、こちらの話に聞き耳を立てているに違いない。

「な?な?急にこの国に連れてこられて、意に反することをされてわだかまりもあるだろうが、そこに関しては謝る。悪かった。国情に追い詰められていたとはいえ、そこは俺たちが悪かった。何なら正式な謝罪の場を設ける。謝るから、な?それと神獣に対する本当の気持ちを捻じ曲げて話すのは違うだろ?それはそれ、これはこれだ。我が国に対する不満はまずは置いといて、置いといて、だぞ?」

話しの合間、しきりに両手で見えない箱を持ち、横に置く仕草をする阿王。

「わかったな?よし、さあ!安心して、黎明様に対する本当の、正直な気持ちを話してみろ。」

私は頷いた。阿王も頷く。

一応ではあるが謝ってくれたし、ジェスチャー付きで、非常にわかりやすく話してくれた阿王に、私も報わねば。

スゥーと息を吸って、声を張る。

「嫌なものは嫌だし黎明と番うなんて絶対無」

「バカバカ言葉を選べ!お前国を滅ぼす気か!皆まで言うな!」

壇上の方から急激に紫色の発光が強まったのと、焦った阿王が私の言葉を遮ったのはほぼ同時だった。

正直にって言われたから言ったのに!




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