12 / 17
寝台での攻防。
しおりを挟む
阿王が準備したのは、同じ敷地内にある離宮だった。
広い宮であるにも関わらず、人の気配がほとんどしない。
なんなら、この宮に来てからは瑛仙さんの姿しか見ていない。
不思議に思い聞いてみると、「神獣様はご自分の宮に番様以外の人が入るのを嫌いますので、基本的に、宮には番様をお世話する女官を数名程度しか置かないのです。」だそうだ。
◇
食堂には豪勢な食事が準備されていて、お腹がペコペコだった私は喜んで席に着いた。
と言っても、黎明が私から離れないし、なぜか食堂には大きな椅子が一脚しかなかったので、結果的に椅子の上で胡坐になった黎明の上に私が座る形で落ち着いた。
こちらの世界のご飯は普通においしいし、知らない食材もほとんどないようだった。
エビのチャーハンに味しみしみの角煮、揚げた魚とおこげのあんかけ、シャキシャキの野菜炒め、卵と干し貝柱入りのスープ・・春巻きの中にはお餅まで入っている。
こんなに美味しいのに、両腕を私の腰にがっちり回している黎明は食事は要らないという。
その割に、私が食べるごとに「カナ、それ何?美味しいの?」と都度聞いてくる。
説明するのも面倒で、そのたびに口に放り込んであげると、黎明が幸せそうに首筋に顔をこすりつけてきた。
やめれ、食べにくい。
お腹いっぱいになったところで、デザートに出てきたのが好物の桃で、頑張って食べてしまう。
一切れ一切れが大きくて甘くてジューシーで、口に含むたびに夢心地だ。
お腹いっぱいでお茶を啜っていると、お皿を片付ける瑛仙に微笑まれた。
「お口に合うようで、ようございました」
ちなみに、私より絶対年上なのに、彼女からは”さん付け”で呼ぶことを丁重にお断りされた。
「温泉もいつでも入れますので、お申し付けください」
そういえば、屋外温泉があるって言ってたなー。
実は私は大の温泉好きなのでワクワクする。
黎明はお風呂に入るのは嫌がったので(虎だから?)、私はすんなりお風呂に入り、ゆっくり寛げた。
◇
お風呂上りでポカポカいい気持ちで脱衣所を出た途端、すぐに黎明に抱き上げられてビックリした。
と、黎明が動きを止める。
「匂いが消えてる‥」
小さくそう呟いてからはあっという間に寝室に連れていかれ、大きな寝台の上で組み敷かれた。
て、展開が早すぎる!
「黎明?ちょっと!?」
「カナ、匂いを付けるだけだから」
そう言って指を絡ませて手を縫い付けると、私とピッタリ体を密着させた。
頭ひとつ分、身長の高い黎明にそうされてしまうと、私はもう動けない。
そればかりか、頭や顔、首筋にちゅ、ちゅ、ちゅ、と口づけの雨が降る。
ちゅ、ちゅ、ちゅ‥
「れいめ‥黎明!ちょっと‥」
抵抗を試みた私だったが、黎明はビクともしない。
匂いを付けるって・・恐らくマーキングってことだろう。
最初は、それ位なら・・と我慢しようと思ったのに、角度を変えて、何度も何度も繰り返しキスされるのは思った以上に恥ずかしい。
うぅ、首筋くすぐったい‥私首が弱いのに。
「ふふ、真っ赤だよ?カナ・・意識してくれた?」
ちゅ、ちゅ、ちゅ‥ペロ‥ハム‥
耳たぶを舐めらた上に食まれて、身体がビクッと跳ねた。
「あ、黎明!コラ!」
「カナ、カナ‥番いたい、番いたい‥番おう?」
耳の中に吹き込まれる囁き声。
明らかにそれっぽい雰囲気になってきていて、私はカッと目を見開いた。
「黎明!だーかーらー!そういうことはしません。ほら、マーキング終わったんなら起こして!」
何度目かの呼びかけに、渋々黎明が体を起こす。
「ほら離れて!今日はもう疲れたから私は寝ます。黎明は出ていって。」
「・・我も、カナと共寝する。」
「ダメよ。一緒に寝ないって言ってるでしょ。」
「せっかく番と会えたのに、離れるなどあり得ぬ!番うのが無理でも、共寝だけは譲れぬ!」
神獣側の理屈なのか、黎明は折れなかった。
「それに、カナ!カナとくっついて寝ないと、神力が回復しないのだ!」
‥番って、そんなワイヤレス充電みたいな便利機能ついてんの?
必死に主張されて、それでも渋る私に、黎明は新たな提案をしてきた。
「カナ、この姿ならどうだ?」
そう言うと、輪郭がとけて黎明が再び白虎の姿に戻る。
しかも、最初に会った時の大きさではなく、普通の虎のサイズだ。
「わ・・!」
目の前で横たわる白虎。ふわふわの毛皮・・!
お腹を撫で撫ですると、気持ちよさそうに紫の目を細める。
「ふわぁ・・!!」
実は私は、昔から無類の動物好きである。
幼少期から猫や犬を飼いたかったが、家の方針で手が出せず、ひたすら憧れだけで終わった。
つまり、抑圧された動物愛を拗らせて拗らせて、今日を迎えたのだ。
「れ、黎明!ブラッシングしてあげる!」
櫛で全身ブラッシングしてあげると、黎明は気持ちよさそうにされるがままになっている。
念入りにブラッシングした後、黎明は寝台の枕の位置でゴロリと横になった。
「え、いいの?」
ドキドキしながら、黎明のお腹に頭を預ける。
フワフワで柔らかいし暖かい。
何より、黎明の深い呼吸に合わせて上下する動きがまるでゆりかごのようでうっとりする。
合わせて尻尾でトントンされて、私は穏やかに眠りについた。
広い宮であるにも関わらず、人の気配がほとんどしない。
なんなら、この宮に来てからは瑛仙さんの姿しか見ていない。
不思議に思い聞いてみると、「神獣様はご自分の宮に番様以外の人が入るのを嫌いますので、基本的に、宮には番様をお世話する女官を数名程度しか置かないのです。」だそうだ。
◇
食堂には豪勢な食事が準備されていて、お腹がペコペコだった私は喜んで席に着いた。
と言っても、黎明が私から離れないし、なぜか食堂には大きな椅子が一脚しかなかったので、結果的に椅子の上で胡坐になった黎明の上に私が座る形で落ち着いた。
こちらの世界のご飯は普通においしいし、知らない食材もほとんどないようだった。
エビのチャーハンに味しみしみの角煮、揚げた魚とおこげのあんかけ、シャキシャキの野菜炒め、卵と干し貝柱入りのスープ・・春巻きの中にはお餅まで入っている。
こんなに美味しいのに、両腕を私の腰にがっちり回している黎明は食事は要らないという。
その割に、私が食べるごとに「カナ、それ何?美味しいの?」と都度聞いてくる。
説明するのも面倒で、そのたびに口に放り込んであげると、黎明が幸せそうに首筋に顔をこすりつけてきた。
やめれ、食べにくい。
お腹いっぱいになったところで、デザートに出てきたのが好物の桃で、頑張って食べてしまう。
一切れ一切れが大きくて甘くてジューシーで、口に含むたびに夢心地だ。
お腹いっぱいでお茶を啜っていると、お皿を片付ける瑛仙に微笑まれた。
「お口に合うようで、ようございました」
ちなみに、私より絶対年上なのに、彼女からは”さん付け”で呼ぶことを丁重にお断りされた。
「温泉もいつでも入れますので、お申し付けください」
そういえば、屋外温泉があるって言ってたなー。
実は私は大の温泉好きなのでワクワクする。
黎明はお風呂に入るのは嫌がったので(虎だから?)、私はすんなりお風呂に入り、ゆっくり寛げた。
◇
お風呂上りでポカポカいい気持ちで脱衣所を出た途端、すぐに黎明に抱き上げられてビックリした。
と、黎明が動きを止める。
「匂いが消えてる‥」
小さくそう呟いてからはあっという間に寝室に連れていかれ、大きな寝台の上で組み敷かれた。
て、展開が早すぎる!
「黎明?ちょっと!?」
「カナ、匂いを付けるだけだから」
そう言って指を絡ませて手を縫い付けると、私とピッタリ体を密着させた。
頭ひとつ分、身長の高い黎明にそうされてしまうと、私はもう動けない。
そればかりか、頭や顔、首筋にちゅ、ちゅ、ちゅ、と口づけの雨が降る。
ちゅ、ちゅ、ちゅ‥
「れいめ‥黎明!ちょっと‥」
抵抗を試みた私だったが、黎明はビクともしない。
匂いを付けるって・・恐らくマーキングってことだろう。
最初は、それ位なら・・と我慢しようと思ったのに、角度を変えて、何度も何度も繰り返しキスされるのは思った以上に恥ずかしい。
うぅ、首筋くすぐったい‥私首が弱いのに。
「ふふ、真っ赤だよ?カナ・・意識してくれた?」
ちゅ、ちゅ、ちゅ‥ペロ‥ハム‥
耳たぶを舐めらた上に食まれて、身体がビクッと跳ねた。
「あ、黎明!コラ!」
「カナ、カナ‥番いたい、番いたい‥番おう?」
耳の中に吹き込まれる囁き声。
明らかにそれっぽい雰囲気になってきていて、私はカッと目を見開いた。
「黎明!だーかーらー!そういうことはしません。ほら、マーキング終わったんなら起こして!」
何度目かの呼びかけに、渋々黎明が体を起こす。
「ほら離れて!今日はもう疲れたから私は寝ます。黎明は出ていって。」
「・・我も、カナと共寝する。」
「ダメよ。一緒に寝ないって言ってるでしょ。」
「せっかく番と会えたのに、離れるなどあり得ぬ!番うのが無理でも、共寝だけは譲れぬ!」
神獣側の理屈なのか、黎明は折れなかった。
「それに、カナ!カナとくっついて寝ないと、神力が回復しないのだ!」
‥番って、そんなワイヤレス充電みたいな便利機能ついてんの?
必死に主張されて、それでも渋る私に、黎明は新たな提案をしてきた。
「カナ、この姿ならどうだ?」
そう言うと、輪郭がとけて黎明が再び白虎の姿に戻る。
しかも、最初に会った時の大きさではなく、普通の虎のサイズだ。
「わ・・!」
目の前で横たわる白虎。ふわふわの毛皮・・!
お腹を撫で撫ですると、気持ちよさそうに紫の目を細める。
「ふわぁ・・!!」
実は私は、昔から無類の動物好きである。
幼少期から猫や犬を飼いたかったが、家の方針で手が出せず、ひたすら憧れだけで終わった。
つまり、抑圧された動物愛を拗らせて拗らせて、今日を迎えたのだ。
「れ、黎明!ブラッシングしてあげる!」
櫛で全身ブラッシングしてあげると、黎明は気持ちよさそうにされるがままになっている。
念入りにブラッシングした後、黎明は寝台の枕の位置でゴロリと横になった。
「え、いいの?」
ドキドキしながら、黎明のお腹に頭を預ける。
フワフワで柔らかいし暖かい。
何より、黎明の深い呼吸に合わせて上下する動きがまるでゆりかごのようでうっとりする。
合わせて尻尾でトントンされて、私は穏やかに眠りについた。
154
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
「ひきこもり王子」に再嫁したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、素直に従うことにしました
ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。
選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。
そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。
クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。
しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。
※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
『あなたを捨てたのは、私です』 〜冷酷公爵を追い出した元恋人ですが、隠し子ごと溺愛されています〜
ria_alphapolis
恋愛
「あなたを捨てたのは、私です」
そう告げて、公爵である彼を追い出した日から数年。
私は一人で、彼との子どもを育てていた。
愛していた。
だからこそ、彼の未来とこの子を守るために、
“嫌われ役”になることを選んだ――その真実を、彼は知らない。
再会した彼は、冷酷公爵と噂されるほど別人のようだった。
けれど、私と子どもを見るその瞳だけは、昔と変わらない。
「今度こそ、離さない」
父親だと気づいた瞬間から始まる、後悔と執着。
拒み続ける私と、手放す気のない彼。
そして、何も知らないはずの子どもが抱える“秘密”。
これは、
愛していたからこそ別れを選んだ女と、
捨てられたと思い続けてきた男が、
“家族になるまで”の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる