14 / 17
神獣を説得します!(必死)
しおりを挟む
黎明がポンと膝を手で打ち、私を抱いたまま立ち上がった。
「そうであれば我は今すぐにでもカナと」
やばいっ!貞操の危機!
「黎明!黎明お座り!フガッ!」
「カナ!その愛らしい声を他の者に聞かせてくれるな!」
口を塞がれながらも何度もジェスチャーで床を指さし続けると、黎明は渋々座ってくれた。
形勢不利なこの状況の中、神獣の番にならずに済む方法を考えないといけない・・!
そんなのすぐに考えつくわけもなく、ここはとりあえず時間稼ぎだ。
・・よし。
私は立ち膝になって、黎明の耳に口を近づけヒソヒソと話した。
「この人たちにも聞かせたい大事な話があるから、話させて。あと、目を見て話したいから簾を上げてほしいの。おねがい。」
ムスッとしている黎明だったが、私の目の下まで袂を掲げると、簾を上げてくれた。
「私から皆さんに、お願いがあります。」
私はまず黎明を見上げた。
「私の世界では貞淑が美徳とされていて、番うとかそういうことは結婚するまではしない、というのが世間一般的な常識なの。結婚する前にそううことをすると幸せになれないって言われていて・・」
私は佑太と付き合っていたわけで、そんな昔の”常識”や”貞淑さ”は勿論持ち合わせていないけれども、こっちだって必死である。
黎明が鼻を鳴らした。
「結婚など人風情の決め事であろう。番となればそんなもの・・」
「わ、私の夢なの!花嫁さんになるのが!だからまずは結婚式をしたいな!ちゃんと順番を守りたいの‥」
コテン、と首を傾げて上目遣いをしてみた。
「子どもの頃からの夢なの・・黎明。黎明にしか叶えられないでしょ?」
「叶えよう。」
食い気味に合わせてきた黎明。よしよし。
「そうと決まれば…遵景、今日中に結婚式の準備を頼む」
「はい、ちょっと待とうか。」
即日で結婚式を挙げられる可能性を考えていなかったのは私が悪いとして、この、”待て”ができないのは虎だからなのか?犬の神獣だったら待てたのか?
私は「協力してくれないと、絶対に言うこときかないぞ」という圧を込めて阿王に目配せした。
「ああっと、黎明様。そう言うことではなくて、ですね。」
急に振られた阿王がアタフタしている。
「あー、結婚式の準備というのはめちゃくちゃ時間がかかるんですよ。な?魯伯?こないだ結婚した、お前のとこの息子も苦労してたもんな?」
宰相が鼻を膨らませて頷いた。
「ええ、ええ。あれは本当に家をあげての一大事でありますから!衣裳合わせ程度でしたら、まだ当人たちはキャッキャキャッキャと楽しそうにしておりましたよ。ですが日取りを決めて、式場、宴会場を予約したらそこからは怒涛の展開です。披露宴の場合は招待状から料理から、とにかく決めることが多すぎる!金さえかければ理想の式はできますが、やはり予算との相談になりますし!披露宴の招待客を誰にするか、席順をどうするかが一番の悩みどころでしたな。」
「準備にはどれくらいかかる?」
「我が息子夫婦は、1年かけておりましたな」
その宰相の返事に、即番推進派代表、藝實が反応する。
「ハンッ!神獣様、耳を貸しまするな!神獣様も番様も披露宴に招待するような親族は居られぬ!ということは、結婚式だけ開けばよいのです!それなら急げば準備はひと月もあれば済みますぞ!」
それを諫めたのは阿王だった。
「藝實、結婚式だけにしたとしても、ひと月では無理だ。」
「そんなことはありません陛下!神殿の準備と衣装の準備さえすればよいのです!」
「しかし番様のあの髪では、結い上げは無理だろう?」
「へ‥?」
阿王の視線を追って、宰相と藝實さんの視線が私のショートヘアに向かう。
結い上げ・・??
阿王がこちらに向かって居住まいを正した。
「黎明様、番様、結婚式の準備は急ぎ始めましょう。ですが、我が国では花嫁は結婚式で髪を結い上げるのが慣例となっております。髪を結い上げることが婚姻した証、つまり人妻の証なのです。」
黎明が「人妻‥よい響きだ!」と呟き、ゴクリと小さく喉を鳴らした。
「今の番様の髪の長さでは、結い上げはおろか、結うこともできません。式を挙げるには、髪を伸ばすための時間が必要です。鬘という手もありますが‥」
阿王がチラッと私に目配せしてきたので、私は慌てて黎明に縋った。
「黎明!私、一生に一度の結婚式なのに、鬘は嫌・・!自前の髪で結い上げて、それで結婚式をして、名実ともに黎明の本当のお嫁さんになりたいの。」
私の髪を黎明がゆっくり撫でる。
「・・しかしいくらカナの頼みでも、髪が伸びるまでなど到底待てぬぞ?」
「ご安心を。我が王家に伝わる神泉の水に髪を伸ばす効能があります。毎日飲めば3、4か月ほどあれば十分髪は伸びるでしょう」
「3、4か月か‥」
真剣に考えだした黎明を、宰相が後押しする。
「黎明様、番様の花嫁衣装となれば、悩んでしまって、ひと月ではとても決めきれますまい。番様を結婚式でどのように着飾らせるか考える時間は楽しいものですぞ?花嫁修行の期間にもあてられますし、3、4ヶ月などあっという間です!」
「・・わかった。他ならぬカナの頼みなら仕方ない。」
渋々ではあるものの頷いてくれた黎明。
よ、良かった!
「そうであれば我は今すぐにでもカナと」
やばいっ!貞操の危機!
「黎明!黎明お座り!フガッ!」
「カナ!その愛らしい声を他の者に聞かせてくれるな!」
口を塞がれながらも何度もジェスチャーで床を指さし続けると、黎明は渋々座ってくれた。
形勢不利なこの状況の中、神獣の番にならずに済む方法を考えないといけない・・!
そんなのすぐに考えつくわけもなく、ここはとりあえず時間稼ぎだ。
・・よし。
私は立ち膝になって、黎明の耳に口を近づけヒソヒソと話した。
「この人たちにも聞かせたい大事な話があるから、話させて。あと、目を見て話したいから簾を上げてほしいの。おねがい。」
ムスッとしている黎明だったが、私の目の下まで袂を掲げると、簾を上げてくれた。
「私から皆さんに、お願いがあります。」
私はまず黎明を見上げた。
「私の世界では貞淑が美徳とされていて、番うとかそういうことは結婚するまではしない、というのが世間一般的な常識なの。結婚する前にそううことをすると幸せになれないって言われていて・・」
私は佑太と付き合っていたわけで、そんな昔の”常識”や”貞淑さ”は勿論持ち合わせていないけれども、こっちだって必死である。
黎明が鼻を鳴らした。
「結婚など人風情の決め事であろう。番となればそんなもの・・」
「わ、私の夢なの!花嫁さんになるのが!だからまずは結婚式をしたいな!ちゃんと順番を守りたいの‥」
コテン、と首を傾げて上目遣いをしてみた。
「子どもの頃からの夢なの・・黎明。黎明にしか叶えられないでしょ?」
「叶えよう。」
食い気味に合わせてきた黎明。よしよし。
「そうと決まれば…遵景、今日中に結婚式の準備を頼む」
「はい、ちょっと待とうか。」
即日で結婚式を挙げられる可能性を考えていなかったのは私が悪いとして、この、”待て”ができないのは虎だからなのか?犬の神獣だったら待てたのか?
私は「協力してくれないと、絶対に言うこときかないぞ」という圧を込めて阿王に目配せした。
「ああっと、黎明様。そう言うことではなくて、ですね。」
急に振られた阿王がアタフタしている。
「あー、結婚式の準備というのはめちゃくちゃ時間がかかるんですよ。な?魯伯?こないだ結婚した、お前のとこの息子も苦労してたもんな?」
宰相が鼻を膨らませて頷いた。
「ええ、ええ。あれは本当に家をあげての一大事でありますから!衣裳合わせ程度でしたら、まだ当人たちはキャッキャキャッキャと楽しそうにしておりましたよ。ですが日取りを決めて、式場、宴会場を予約したらそこからは怒涛の展開です。披露宴の場合は招待状から料理から、とにかく決めることが多すぎる!金さえかければ理想の式はできますが、やはり予算との相談になりますし!披露宴の招待客を誰にするか、席順をどうするかが一番の悩みどころでしたな。」
「準備にはどれくらいかかる?」
「我が息子夫婦は、1年かけておりましたな」
その宰相の返事に、即番推進派代表、藝實が反応する。
「ハンッ!神獣様、耳を貸しまするな!神獣様も番様も披露宴に招待するような親族は居られぬ!ということは、結婚式だけ開けばよいのです!それなら急げば準備はひと月もあれば済みますぞ!」
それを諫めたのは阿王だった。
「藝實、結婚式だけにしたとしても、ひと月では無理だ。」
「そんなことはありません陛下!神殿の準備と衣装の準備さえすればよいのです!」
「しかし番様のあの髪では、結い上げは無理だろう?」
「へ‥?」
阿王の視線を追って、宰相と藝實さんの視線が私のショートヘアに向かう。
結い上げ・・??
阿王がこちらに向かって居住まいを正した。
「黎明様、番様、結婚式の準備は急ぎ始めましょう。ですが、我が国では花嫁は結婚式で髪を結い上げるのが慣例となっております。髪を結い上げることが婚姻した証、つまり人妻の証なのです。」
黎明が「人妻‥よい響きだ!」と呟き、ゴクリと小さく喉を鳴らした。
「今の番様の髪の長さでは、結い上げはおろか、結うこともできません。式を挙げるには、髪を伸ばすための時間が必要です。鬘という手もありますが‥」
阿王がチラッと私に目配せしてきたので、私は慌てて黎明に縋った。
「黎明!私、一生に一度の結婚式なのに、鬘は嫌・・!自前の髪で結い上げて、それで結婚式をして、名実ともに黎明の本当のお嫁さんになりたいの。」
私の髪を黎明がゆっくり撫でる。
「・・しかしいくらカナの頼みでも、髪が伸びるまでなど到底待てぬぞ?」
「ご安心を。我が王家に伝わる神泉の水に髪を伸ばす効能があります。毎日飲めば3、4か月ほどあれば十分髪は伸びるでしょう」
「3、4か月か‥」
真剣に考えだした黎明を、宰相が後押しする。
「黎明様、番様の花嫁衣装となれば、悩んでしまって、ひと月ではとても決めきれますまい。番様を結婚式でどのように着飾らせるか考える時間は楽しいものですぞ?花嫁修行の期間にもあてられますし、3、4ヶ月などあっという間です!」
「・・わかった。他ならぬカナの頼みなら仕方ない。」
渋々ではあるものの頷いてくれた黎明。
よ、良かった!
108
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
「ひきこもり王子」に再嫁したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、素直に従うことにしました
ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。
選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。
そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。
クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。
しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。
※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
『あなたを捨てたのは、私です』 〜冷酷公爵を追い出した元恋人ですが、隠し子ごと溺愛されています〜
ria_alphapolis
恋愛
「あなたを捨てたのは、私です」
そう告げて、公爵である彼を追い出した日から数年。
私は一人で、彼との子どもを育てていた。
愛していた。
だからこそ、彼の未来とこの子を守るために、
“嫌われ役”になることを選んだ――その真実を、彼は知らない。
再会した彼は、冷酷公爵と噂されるほど別人のようだった。
けれど、私と子どもを見るその瞳だけは、昔と変わらない。
「今度こそ、離さない」
父親だと気づいた瞬間から始まる、後悔と執着。
拒み続ける私と、手放す気のない彼。
そして、何も知らないはずの子どもが抱える“秘密”。
これは、
愛していたからこそ別れを選んだ女と、
捨てられたと思い続けてきた男が、
“家族になるまで”の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる