216 / 336
第216話 イズモに飛ぶ
しおりを挟む
「ユウ、ユウ!! 大変だユウ。私はすぐ、イズモに行かなければいけないのだ、一緒に来い!!」
「ふぁあ?」
朝8時57分。俺の就寝時間中に、そんなアホなことを言ってくる魔人はひとりしかいない。
「起きろ、ユウ!! すぐに行くぞ。すぐに着替えろ、いや、もうそのままでもいい。なんならふりちでご~ん」
「ふぁあ?」
「ハルミ姉さんってば、朝っぱらから過激なこと言わないの!」
傍若魔人は、俺が寝ぼけている間にミヨシに殴られたようである。しかしなにが起こったのかさっぱり分からない。誰か説明してくれ。
「ふぁあ?」
「それでは通じないと思うノだ」
「ふぁあ」
どうして、9時までのたかが3分が待てないのかと。
「たかが3分ぐらい早起きしても良いと思うのだヨ?」
そして朝ご飯である。
「もぐもぐもぐ。それで、なにがどうしたって?」
「ハルミはどうやら転職の神殿みたいなのヨ」
「もぐっ? ぐっぐっぐっくっぅげほっげほっ」
「それで、次の職業に就くためきゅぅぅぅぅ」
「もげげ、もごごんでるぐぅぅ、のにふぐぅのはなぐぐを」
「落ち着いて。はいユウ、お茶」
「ぐっぐびぐびぐびびび はぁはぁ俺が苦しんでいるときに無視して普通に話をすんな! ありがとう!!」
「だからハルミを連れてイズモに戻るノだ」
「だからそれを説明しろと」
「私のレベルが上がったのだ。上がったら上位職へのクラスチェンジが可能になるだろ? そのときが来たのだ。この私が上位職に就けるのだ。だからすぐに行こう!」
「可能になるだろって、そんな説明いままで1度も聞いたことねぇよ」
そりゃ、いま思い付いたんだもの。その場しのぎの達人より。
「いま誰か変なこと言ったか? ハルミはいつも大事な部分をすっ飛ばすんだから。ミヨシ、事情は聞いてるか?」
「だいたい聞いてるよ。姉さんね、夜中に毎日出かけてなにをしているのかと思ったら、魔物狩りをしていたのよ」
「魔物狩りを夜中にか? 真っ暗でよくそんなことができるものだな」
「それを助けたのが、ミノオウハルなのよ」
「へぇ。ミノオウハルにそんな隠れた能力があったということか」
「それがややこしくて。なんでもあのグジョウで、ユウたちを助けた仙人がいたそうだけど」
「ああっ!!! 思い出した! そうだ、あのとき、俺たちを助けてくれたクドウという仙人がいたんだ。たしかハルミにぶっ飛ばされて消えたと聞いていたが、そいつがなにかしたのか?」
「ぶ、ぶ、ぶっ飛ばしたの?! その人が、姉さんのミノウオウハルに憑いたみたいよ?」
「仙人が憑くなよ!! 亡霊か! 憑依霊か! ハルミに危険はないのか?」
「それは大丈夫みたい。姉さんにじゃなくて、憑いたのはミノウオウハルのほうよ。だけどそれで、魔物まで斬れるようになったそうなの」
「あれ? ハルミは魔物は斬れなかったっけ?」
「そうだ、斬れなかったのだ。いや、まったく切れないわけではないが、ミノオウハルは魔法防御のかかったものは苦手だったのだ。だから魔物狩りはいつもニホン刀でやっていたのだ」
「そうだったのか。ということはクドウ? そこにいるのか?」
刀に話かけるというまぬけな図である。しかしそこにクドウ仙人がいるというなら仕方がない。これがミヨシに騙されていたのなら、すっごいアホの子だな、俺。
しかし、ちゃんと返事が来た。良かった。
「ユウか。俺はここだ。鞘の中は快適だぞ?」
「か、快適なのか。それは良かったな。あのときは世話になった。しかし、お前はそれで良いのか? もう自由に歩くことも空を飛ぶこともできなくなったのだろう?」
「ああ、かまわない。俺の代わりにハルミが歩いてくれるし、走ってくれる。しかも俺は全然疲れない。むしろありがたいぐらいの話だ」
あらそ。もともとが引きこもり仙人だ。それで問題はないのだろう。本人が気に入っているならそれでいいか。
「それでミノウオウハルにお前が憑いたことで、魔法に対する攻撃力をハルミが得た、ということであってるか?」
「おそらくあっている。この1ヶ月の間いろいろ試したが、俺が見つけた魔物をハルミに斬れと指示すると、その通りに斬れているのだ。俺が見える範囲の魔物ならなんでも斬れる。遠くても威力が全然変わらない。これはすごい刀だな。俺は夜でも昼間のように見えるから、夜の魔物狩りはそれはもう楽しいものだぞ。こんどお主も行くか?」
「俺は行かねぇよ。だけど、ハルミの経験値がやたら溜まった理由は良く分かった。夜ならライバルもいなくて狩り放題だろうな」
「そうなのだ! 夜の狩りはすごいぞ! 狩り放題だ。私はもう楽しくて楽しく楽しくて」
「楽しいのはいいが、仕事はどうしたんだ?」
「え?」
「まさか、あれから1度も行ってないなんてことは」
「あああ、あれは、あれはあれであれはだな。いまはまだしばらく当分お休みでやっとかめなのだ」
「名古屋弁が出てるぞ。行ってないのか」
「……うん」
「それで夜中に起きて魔物退治して、昼間はずっと寝ていると」
「……うん」
なんという元気な引きこもりだこと。
「おい、クドウ。ハルミがこうなったのはお前の影響じゃないのか?」
「おいおい。責任転嫁はよせ。俺はただ行きたくないところに行くべきじゃないと、暗示をかけているだけだ」
「お前のせいじゃねぇか!! よし、ミノオウハルからクドウを追い出そう」
「ちょっ!!! ちょっとちょっと待て待て。なにを、なにをする気だ」
「そうだな、ちょっと窯で」
「窯?」
「アツアツに熱して、もう1回ゼンシンにたたき直してもらおうかぐぇぇぇぇ」
「ユ、ウウ。頼む、それだけは止めてくれ! これは私にとって大切な刀なのだ。もう分身とも言える刀なのだ。寝食を共にする相棒なのだ。私は新たな力を得たのだ。それだけは止めてくれ」
「ぐぅぅぇぇ。それなら仕事に行くぐぇぇぇ。手を離せ!!」
「ユウ。俺の本体はすでに溶岩の中に消えてなくなった。追い出されたら俺は行くところがないのだ。お主のことならなんでも言うことを聞くから、このままにさせてくれないか」
「そうか。それなら、明日からこの女に仕事に行かせろ。それが条件だ」
「うぅ、分かった。そうしよう」
「わぁぁぁぁぁ、せ、せ、センちゃん、そんなの酷いよぉ」
せんちゃん? 誰だ、それ?
「あ、そうだ! つい忘れてしまったが、そんなことよりもユウ。私とイズモに行くのだ」
「今ごろになって話が最初に戻ったんかよ。お前のレベルが上がったのと、それとなんの関係があるんだ?」
「ハルミは経験値が溜まって、クラスチェンジが可能なところまできたのだヨ。しかし、そのためには転職の神……イズモの神殿で必要な義務を果たせねばならないのだ。その手伝いをユウに頼んでいるのだヨ」
「いま転職って聞こえたのだが」
「気のせいだヨ?」
「絶対に気のせいじゃない。しかし、自分のことなんだから、ひとりで行けばいいではないか。俺は忙しぐぇぇぇ だからいちいち首を絞めるな!!」
「良いではないか、どうせ暇なのだろう」
「俺の話は聞く気なしか! 俺はまだこれからいろいろと」
「冬の間は、それほどすることはないでしょう、所長」
「ああベータか。そうはいってもな、俺がここを離れたら」
ベータとはすでに周知の仲である。あれから1ヶ月も経っているからな。その辺の描写は省略ということで。
「たいして問題はないだろ、ユウ。お前もこのところ休みらしい休みを取ってないのではないか? あっちにも良い温泉があるらしいぞ」
「エースは人ごとだからそんな気楽なこと言いやがって、休みなら取りたいがこいつのお供で行ったら面倒なことになる予感しかしない」
「ユウはそもそもイズモの太守のくせに ボソッ」
「ハルミ、なんかそれっぽいこと言ったか?!」
「今年になってから1度も行ってないのだろ? 太守のくせにボソッ」
「ハルミはそのボソッ攻撃止めろ。その理由のほとんどがお前のせいだろうが!」
「だから、私のせいでイズモに行かせてやると言っておるのだ」
「なにが行かせてやるだ。恩に着せやがってこのやろう。うまいことこじつけたつもりか」
「ちょうど良いではないか。ワシらも休みを取って、イズモ見学としゃれ込もうではないか」
「じじいは温泉って聞くとすぐに行きたがるやつだな」
「そういえば、今日は会社の創立記念日だったような?」
「ソウ、それいま作っただろ。お前までそっちに染まりやがったのか」
「じゃ、シキ研も休みにするか!」
「エースも乗ってんじゃねぇよ! お前はいつからそんなキャラになったんだ。100人も部下をいきなり休みにしてどうすんだ」
「私、まだイズモに行ったことないのよ。出かけるときはいつもハルミ姉さんばっかりでずるい」
「お前を連れて行くと、他の連中が餓死するだろ」
「あら。いまは料理人も増えたから、問題ないわよ?」
ああ、そうだった。深刻な人手不足はもう解消されたんだったな。むしろ多過ぎて人件費がまかなかまかまかもやもや。金が足りないのだ。そのためにも稼がないといけないのが俺の立場なのだが。
「ウエモンとスクナはイズモに行ったままよね」
「ゼンシンなんかしょっちゅう行ってるわよね」
「だけど、私はどこにも連れて行ってくれないわよね」
ミヨシのよねよね3連続攻撃である。これに耐えられやつがいたら怒らないから出ておいで。ってか出てきやがって助けてくださいお願いします。
「じゃあ、みんなで行ってくれば?」
し~ん。
あれ? 俺、なんか空気読んでないこと言っただろうか?
「よっしゃーー!! 所長のお許しが出たぞ。みんなで行こう!」
いやいやいや。お許しはしていない。俺だけ置いて勝手に行けと。
「じゃあ、今日は臨時休業ってことで、みんなに連絡するわね」
「おい、すぐにめっきラインを止めよう。窯はまだ温度上げる前か? ならすぐに……」
こいつらマジだ。このままだと本当にタケウチもシキ研も臨時休業になってしまう。
「ハルミ、オウミ。こっちに来い。すぐに飛ぶ」
「どこへ飛ぶノだ?」
「お前は話を聞いてなかったのかよ! イズモに決まってんだろ!」
また社員旅行になってしまいそうだったので、慌てて俺はハルミとオウミだけ連れて、イズモに飛んだのであった。なんか前にも似たようなことがあったような。
「ところで、俺はイズモでいったいなにをするんだ?」
「お主は話を聞いてなかったノか」
「お前に言われたくねぇよ!!」
「ふぁあ?」
朝8時57分。俺の就寝時間中に、そんなアホなことを言ってくる魔人はひとりしかいない。
「起きろ、ユウ!! すぐに行くぞ。すぐに着替えろ、いや、もうそのままでもいい。なんならふりちでご~ん」
「ふぁあ?」
「ハルミ姉さんってば、朝っぱらから過激なこと言わないの!」
傍若魔人は、俺が寝ぼけている間にミヨシに殴られたようである。しかしなにが起こったのかさっぱり分からない。誰か説明してくれ。
「ふぁあ?」
「それでは通じないと思うノだ」
「ふぁあ」
どうして、9時までのたかが3分が待てないのかと。
「たかが3分ぐらい早起きしても良いと思うのだヨ?」
そして朝ご飯である。
「もぐもぐもぐ。それで、なにがどうしたって?」
「ハルミはどうやら転職の神殿みたいなのヨ」
「もぐっ? ぐっぐっぐっくっぅげほっげほっ」
「それで、次の職業に就くためきゅぅぅぅぅ」
「もげげ、もごごんでるぐぅぅ、のにふぐぅのはなぐぐを」
「落ち着いて。はいユウ、お茶」
「ぐっぐびぐびぐびびび はぁはぁ俺が苦しんでいるときに無視して普通に話をすんな! ありがとう!!」
「だからハルミを連れてイズモに戻るノだ」
「だからそれを説明しろと」
「私のレベルが上がったのだ。上がったら上位職へのクラスチェンジが可能になるだろ? そのときが来たのだ。この私が上位職に就けるのだ。だからすぐに行こう!」
「可能になるだろって、そんな説明いままで1度も聞いたことねぇよ」
そりゃ、いま思い付いたんだもの。その場しのぎの達人より。
「いま誰か変なこと言ったか? ハルミはいつも大事な部分をすっ飛ばすんだから。ミヨシ、事情は聞いてるか?」
「だいたい聞いてるよ。姉さんね、夜中に毎日出かけてなにをしているのかと思ったら、魔物狩りをしていたのよ」
「魔物狩りを夜中にか? 真っ暗でよくそんなことができるものだな」
「それを助けたのが、ミノオウハルなのよ」
「へぇ。ミノオウハルにそんな隠れた能力があったということか」
「それがややこしくて。なんでもあのグジョウで、ユウたちを助けた仙人がいたそうだけど」
「ああっ!!! 思い出した! そうだ、あのとき、俺たちを助けてくれたクドウという仙人がいたんだ。たしかハルミにぶっ飛ばされて消えたと聞いていたが、そいつがなにかしたのか?」
「ぶ、ぶ、ぶっ飛ばしたの?! その人が、姉さんのミノウオウハルに憑いたみたいよ?」
「仙人が憑くなよ!! 亡霊か! 憑依霊か! ハルミに危険はないのか?」
「それは大丈夫みたい。姉さんにじゃなくて、憑いたのはミノウオウハルのほうよ。だけどそれで、魔物まで斬れるようになったそうなの」
「あれ? ハルミは魔物は斬れなかったっけ?」
「そうだ、斬れなかったのだ。いや、まったく切れないわけではないが、ミノオウハルは魔法防御のかかったものは苦手だったのだ。だから魔物狩りはいつもニホン刀でやっていたのだ」
「そうだったのか。ということはクドウ? そこにいるのか?」
刀に話かけるというまぬけな図である。しかしそこにクドウ仙人がいるというなら仕方がない。これがミヨシに騙されていたのなら、すっごいアホの子だな、俺。
しかし、ちゃんと返事が来た。良かった。
「ユウか。俺はここだ。鞘の中は快適だぞ?」
「か、快適なのか。それは良かったな。あのときは世話になった。しかし、お前はそれで良いのか? もう自由に歩くことも空を飛ぶこともできなくなったのだろう?」
「ああ、かまわない。俺の代わりにハルミが歩いてくれるし、走ってくれる。しかも俺は全然疲れない。むしろありがたいぐらいの話だ」
あらそ。もともとが引きこもり仙人だ。それで問題はないのだろう。本人が気に入っているならそれでいいか。
「それでミノウオウハルにお前が憑いたことで、魔法に対する攻撃力をハルミが得た、ということであってるか?」
「おそらくあっている。この1ヶ月の間いろいろ試したが、俺が見つけた魔物をハルミに斬れと指示すると、その通りに斬れているのだ。俺が見える範囲の魔物ならなんでも斬れる。遠くても威力が全然変わらない。これはすごい刀だな。俺は夜でも昼間のように見えるから、夜の魔物狩りはそれはもう楽しいものだぞ。こんどお主も行くか?」
「俺は行かねぇよ。だけど、ハルミの経験値がやたら溜まった理由は良く分かった。夜ならライバルもいなくて狩り放題だろうな」
「そうなのだ! 夜の狩りはすごいぞ! 狩り放題だ。私はもう楽しくて楽しく楽しくて」
「楽しいのはいいが、仕事はどうしたんだ?」
「え?」
「まさか、あれから1度も行ってないなんてことは」
「あああ、あれは、あれはあれであれはだな。いまはまだしばらく当分お休みでやっとかめなのだ」
「名古屋弁が出てるぞ。行ってないのか」
「……うん」
「それで夜中に起きて魔物退治して、昼間はずっと寝ていると」
「……うん」
なんという元気な引きこもりだこと。
「おい、クドウ。ハルミがこうなったのはお前の影響じゃないのか?」
「おいおい。責任転嫁はよせ。俺はただ行きたくないところに行くべきじゃないと、暗示をかけているだけだ」
「お前のせいじゃねぇか!! よし、ミノオウハルからクドウを追い出そう」
「ちょっ!!! ちょっとちょっと待て待て。なにを、なにをする気だ」
「そうだな、ちょっと窯で」
「窯?」
「アツアツに熱して、もう1回ゼンシンにたたき直してもらおうかぐぇぇぇぇ」
「ユ、ウウ。頼む、それだけは止めてくれ! これは私にとって大切な刀なのだ。もう分身とも言える刀なのだ。寝食を共にする相棒なのだ。私は新たな力を得たのだ。それだけは止めてくれ」
「ぐぅぅぇぇ。それなら仕事に行くぐぇぇぇ。手を離せ!!」
「ユウ。俺の本体はすでに溶岩の中に消えてなくなった。追い出されたら俺は行くところがないのだ。お主のことならなんでも言うことを聞くから、このままにさせてくれないか」
「そうか。それなら、明日からこの女に仕事に行かせろ。それが条件だ」
「うぅ、分かった。そうしよう」
「わぁぁぁぁぁ、せ、せ、センちゃん、そんなの酷いよぉ」
せんちゃん? 誰だ、それ?
「あ、そうだ! つい忘れてしまったが、そんなことよりもユウ。私とイズモに行くのだ」
「今ごろになって話が最初に戻ったんかよ。お前のレベルが上がったのと、それとなんの関係があるんだ?」
「ハルミは経験値が溜まって、クラスチェンジが可能なところまできたのだヨ。しかし、そのためには転職の神……イズモの神殿で必要な義務を果たせねばならないのだ。その手伝いをユウに頼んでいるのだヨ」
「いま転職って聞こえたのだが」
「気のせいだヨ?」
「絶対に気のせいじゃない。しかし、自分のことなんだから、ひとりで行けばいいではないか。俺は忙しぐぇぇぇ だからいちいち首を絞めるな!!」
「良いではないか、どうせ暇なのだろう」
「俺の話は聞く気なしか! 俺はまだこれからいろいろと」
「冬の間は、それほどすることはないでしょう、所長」
「ああベータか。そうはいってもな、俺がここを離れたら」
ベータとはすでに周知の仲である。あれから1ヶ月も経っているからな。その辺の描写は省略ということで。
「たいして問題はないだろ、ユウ。お前もこのところ休みらしい休みを取ってないのではないか? あっちにも良い温泉があるらしいぞ」
「エースは人ごとだからそんな気楽なこと言いやがって、休みなら取りたいがこいつのお供で行ったら面倒なことになる予感しかしない」
「ユウはそもそもイズモの太守のくせに ボソッ」
「ハルミ、なんかそれっぽいこと言ったか?!」
「今年になってから1度も行ってないのだろ? 太守のくせにボソッ」
「ハルミはそのボソッ攻撃止めろ。その理由のほとんどがお前のせいだろうが!」
「だから、私のせいでイズモに行かせてやると言っておるのだ」
「なにが行かせてやるだ。恩に着せやがってこのやろう。うまいことこじつけたつもりか」
「ちょうど良いではないか。ワシらも休みを取って、イズモ見学としゃれ込もうではないか」
「じじいは温泉って聞くとすぐに行きたがるやつだな」
「そういえば、今日は会社の創立記念日だったような?」
「ソウ、それいま作っただろ。お前までそっちに染まりやがったのか」
「じゃ、シキ研も休みにするか!」
「エースも乗ってんじゃねぇよ! お前はいつからそんなキャラになったんだ。100人も部下をいきなり休みにしてどうすんだ」
「私、まだイズモに行ったことないのよ。出かけるときはいつもハルミ姉さんばっかりでずるい」
「お前を連れて行くと、他の連中が餓死するだろ」
「あら。いまは料理人も増えたから、問題ないわよ?」
ああ、そうだった。深刻な人手不足はもう解消されたんだったな。むしろ多過ぎて人件費がまかなかまかまかもやもや。金が足りないのだ。そのためにも稼がないといけないのが俺の立場なのだが。
「ウエモンとスクナはイズモに行ったままよね」
「ゼンシンなんかしょっちゅう行ってるわよね」
「だけど、私はどこにも連れて行ってくれないわよね」
ミヨシのよねよね3連続攻撃である。これに耐えられやつがいたら怒らないから出ておいで。ってか出てきやがって助けてくださいお願いします。
「じゃあ、みんなで行ってくれば?」
し~ん。
あれ? 俺、なんか空気読んでないこと言っただろうか?
「よっしゃーー!! 所長のお許しが出たぞ。みんなで行こう!」
いやいやいや。お許しはしていない。俺だけ置いて勝手に行けと。
「じゃあ、今日は臨時休業ってことで、みんなに連絡するわね」
「おい、すぐにめっきラインを止めよう。窯はまだ温度上げる前か? ならすぐに……」
こいつらマジだ。このままだと本当にタケウチもシキ研も臨時休業になってしまう。
「ハルミ、オウミ。こっちに来い。すぐに飛ぶ」
「どこへ飛ぶノだ?」
「お前は話を聞いてなかったのかよ! イズモに決まってんだろ!」
また社員旅行になってしまいそうだったので、慌てて俺はハルミとオウミだけ連れて、イズモに飛んだのであった。なんか前にも似たようなことがあったような。
「ところで、俺はイズモでいったいなにをするんだ?」
「お主は話を聞いてなかったノか」
「お前に言われたくねぇよ!!」
0
あなたにおすすめの小説
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる