231 / 336
第231話 光の公子
しおりを挟む
ハルミとタノモは気を失っている。タランチェラはユウコに対処できる相手ではないらしい。俺にいたっては論外である。
そうだ! オウミはどうした? あいつならこの程度の中ボスぐらい。
「きゅぅぅぅ」
壁の隙間に刺さっていた。
「お前はこんな大事なときに、なにやってんだぁ!」
「ハ、ハルミが驚いて我を放り投げたノだ。それでいまココ」
「いまココはいいから、なんとかしろよ!」
「この向きだと奴が攻撃できないノだ。お主こそなんとかするノだ」
オウミは、タランチェラとハルミたちとの間の壁に刺さっている。いや、刺さっているのは枝なのだが。その枝先に結びつけられた糸の先で、オウミがぶらぶらと揺れている。
平時でなら可愛い絵なのであるが、いまはそれどころではないのだ。
オウミはちょうど俺たちのほうを向いているために、タランチェラのいる方向とはまるで逆だ。だからどうにもできない、そういうことのようだ。柔らかい関節なので首だけ後ろを向く曲ことは可能だが、後ろに攻撃はできない構造らしい。役に立たない関節である。
「ユウコ。ひとっ走り行ってオウミを回収できるか?」
「うん、無理」
ですよね。かと言って俺だって素早さはたいして変わらんし、オウミにたどり着く前に確実に溶かされるだろう。
ん? あの蜘蛛野郎、ケガしているのか。足のつけ根辺りから体液が流れている。どこかにぶつけたのか、逃げる途中でハルミが斬ったのかも知れない。
しかし、足はたくさんある。1本ぐらい痛めても動きが鈍くなるようなことは期待できないな。
素早さの低い俺たちでは、どうにも……待てよ。ケガをしているか。それならもしかして。
「ユウコ。ナオールはまだあるよな?」
「うん、はいどうぞ」
「あと3つぐらい出しておいてくれ」
「はい。行ってらっしゃい」
「俺がなにをしようとしているのか、お前に分かるのか?」
「なんとなく」
「そういうとこだけは鋭いんだな」
「うん、それもエルフの心意気で」
「またそれかよ。戦うのは不本意だが行ってくる。俺が合図したら残りのナオールをあいつに向かってぶん投げてくれ」
「分かった」
俺はナオールの入った瓶のフタを開け……開け……ぐぐぐぐぬぬぬっ。ダメだ開かない。もういいやこのまま投げてやれ。落ちたら割れるだろ。
俺はナオールを手に持つと、脱兎のごとくタランチェラに向かって歩き出したのこのこのこ。
「ずいぶんと遅い脱兎なノだ」
「やかましい。こっち見んな」
「そっちしか見えないノだ」
走ったりすると、たどり着く前に体力が尽きるから歩くしかないのだ。のこのこのここのはのこ。
そしてここなら届く……かどうかは分からんが、これ以上近づくのは怖い、というところまで行くと、手榴弾投げよろしくえいやぁぁっと瓶を放り投げた。
それはタランチェラの足下で弾ける……はずであったのだが、ちょっとだけ届かなかったようだ。ずっと手前に落ちてそこに止まってしまった。せめて割れやがれ!
??? という表情のタランチェラを見て俺は言った。う、うむ、作戦は成功である。
「ユウコ、いまだ。フタを開けて全部投げろ!!」
「え? いまだって言われても? どの辺がいまだなの?」
「いいから、ともかく投げろ!!!」
「フタを、フタを開けるの、ちょっと待って、そんなこと急に言われても、きゅきゅと、はい、まず1本、ぽいっ。きゅきゅ、はい2本目ぽいっ。あぁもう面倒くさいきゅきゅきゅ。わぁぁぁぁぁ。そらそらそれそらっ!!!!」
10本ほどのナオールがあちこちに飛び散った。3本くらいはハルミを直撃した。もう、ぐだぐだである。
だがユウコがでたらめに投げたうちの1本が、偶然にもタランチェラに当たった。
……あんなでかい的に当たるのが偶然って、どんだけノーコンだよ。イップスこじらせた藤浪か。
しかし、少なくともユウコの肩は俺より強いようだ。タランチェラは一瞬ビクってなったが、垂れてきた水を嘗めると、意外とおいしいものだとすぐに気がついた。
そして夢中になってそこら中に無節操に飛び散ったナオールを嘗め始めた。
「どこからどこまでがどんな作戦なノだ?」
その隙に俺はハルミの亡骸を踏み越えて、オウミの元に歩いて行った、てくてくのこのこ踏み踏み。
「急いだほうが良いと思うノだ。あと、なんか踏んでいるノだ。しかもそれは亡骸ではないノだ」
そしておもむろに壁に刺さっているオウミ(と小枝)を抜き取ると、それをタランチェラに向かって投げつけた。
「なんで投げるノだぁぁぁ!!!!」
あ。いや、なんとなく。
それは見事にタランチェラにヒットし、目と目の間の毛むくじゃらの髭みたいなところにくさっと突き刺さった。
タランチェラにとっては、おいしい水を飲んでいたら目の前にうっとおしいオウミが出現したことになる。当然、激おこである。
「我がうっとおしいわけではないノだ。お主がわぁぁぁお、こんなところに投げわぁぁぁお」
タランチェラがなんとか振り払おうと首を左右に振るごとに、オウミが右に行ったり左に行ったりしている。ちょっと愉快な絵である。
「ごらぁぁぁ、わぁぁお。愉快ではないわぁぁぁお。早く我をわあぁぁぁぁお、助けるわぁぁぁお」
「と言われましても」
「ハルミのわぁぁお。持っているわぁぁぁおで、こいつをわぁぁぁお、刺すノわぁぁぁおだ」
ハルミの持っている? 巨乳か? それが武器か!?
「お主はアホか! わぁぁお。ミノわぁぁぁオウわぁぁぁハルわぁぁルノわぁぁぁお」
「そうか分かった! 皆まで言うな。ミノオウハルだな。これをどうするって?」
「皆まで言ったではわぁぁぁおないか! わぁぁお早くすわぁぁおるノだ。目が回るわぁぁぁぁおるノだ」
俺は倒れているハルミの鞘から、ミノオウハルを引き抜いた。そして……どうすりゃいいんだ?
「早くわぁぁぁおするノだわぁぁぁお」
「ユウさん、それ、遠くのものが斬れるんでしょ?」
そうか! ユウコ、ナイス助言だ。ここで俺が思いきり奴を斬るつもりで振ればいいんだな!
「ちょっと待て! それは我のほうを向いわぁぁお、ているようわぁぁぁおな気がするノわぁぁぉおだ」
しかし俺たちは忘れていた。ミノオウハルを使えるのはハルミだけであったことも、そのハルミでさえもクラスチェンジしてからは使えなくなっていることも。
しかししかし、忘れていたとかそういう問題でさえなかったようである。
やぁぁぁ!! とばかりにミノオウハルを一閃すると見事に。俺の手をすり抜けて吹っ飛んだ。そしてオウミを頭から貫いた、
「ぎゃぁぁぁぎゃぁぁぁぁぎゃぁぁノだぎゃぁぁぁぁ」
かに見えたが、実際にはタランチェラの頭に突き刺さったのであった。
「おおおおおお驚いたノだノだ。死ぬかと思ったノだ。気をつけるノだ。我に刺さるとこだったノだノだノだ」
「俺はてっきり死んだと思ったぞ」
「自分でやっておいて、その言い方は酷いノだ!!」
「それもそうだ、すまんかった」
「そうなのだが。言っていることは正しいのだが、なんか違うノだ……おいおい、ユウ。まだこやつもぞもぞ動いているノだ。 とどめを刺すノだ」
「えぇっと。もうミノオウハルはないし。次はニホン刀を投げれば良いのかな?」
「もう投げるのはよすノだ!! 我の命がともしぶノだ。ミノオウハルを持って呪文を唱えるノだ」
「ともしぶなんて日本語はねぇよ。風前の灯火って言えよ」
「我をその灯火にしてはならないノだ!! そんなことはいいから早くこっちに来て呪文を唱えよ」
「いや、俺は魔法は使えないって知ってるだろうが」
「呪文は我が教えるノだ。ミノオウハルを掴んでそれを復唱すれば良いノだ」
「復唱すればいいのか? お前の魔力を使うってことなのか。そらならやってみよう」
俺はゆっくり近づいて、ともしぶオウミの目の前にあるミノオウハルの柄を掴んだ。
「それで、呪文とは?」
「光よ、来い! と」
「光よ、来い!」
その瞬間であった。ミノオウハルから数珠のように連なった光の珠が次々に飛び出しては、俺の手の辺りで砕け散って行った。
「な、なんだ、なんだこれ。ミノオウハルが俺の手を離さない。わぁぁぁお」
「振り回されている我の気持ちが少しは分かったノか?」
「わぁぁお。分かった分かった。わぁぁぁお、分かったから停めてくりゃりゃりゃ」
俺の手から離れたそれは、まるで炸裂した花火の親星(花火の一番外側の花弁のこと)のように拡散し、部屋中を黄金色に染めた。
光の珠はそれで止まることはなく、アルファ粒子のように壁も天井も床も突き抜けて、あっという間にダンジョン全体を光で埋め尽くした。
「うわぁぁぁお。ま、眩しい!! なんだなんだこれ。なんも見えねぇ。ここはどこだ。アレはナニ。ナニはアレ。お金なんかはちょっとでいいのだぁぁ。だめだ。俺はここで気を失う流れだ。あぁん、もうだめ……くたっ」
ユウコ「な、なによ、いまの……くたっ」
ハルミ:もともと気を失っている。
タノモ:もともと気を失っている。
「ああぁ、驚いたなもう。すごい威力だったノだ。我まで浄化されるかと思った。あやうくともしぶところだったノだ。あれじゃタランチェラごとき、影も形もなくなっているだろう……あれ? おいおい、それどころじゃないノだ!? このダンジョンの魔物。気配がまったくしなくなった。まさか、全滅させたのか!? たった1発で!? ここは50階層ぐらいあるはずなノだが?!」
しーん。
「気配がない。ま、まさかここまでの威力があるとは……。こんなこと、我にもミノウにも無理だ。アメノミナカヌシノミコトだって1発では無理だろう。やはりこやつはミノウが言っていた通りだったノか。あのアマテラスに繋がる血筋・光に愛された光の公子なノか」
「だとすると、我はとんでもない呪文を教えてしまったことになる。これからは……いったいなにが起こるノだろう?」
(あ、それ以上言わないように)
「そ、そうなノか。ともかく愉快……やっかりなことが起こりそうだ。人間界とは楽しいもノだな。……さて、もう退治するものもなくなったし長居は無用だ。こやつらを連れて帰るとするノだ。ひょ……あ?」
「待て待て待て待て!! オウミ!! お前か!! あたしの手下どもを皆殺しにしたのは!!!!」
「お、お、お主は!?」
そうだ! オウミはどうした? あいつならこの程度の中ボスぐらい。
「きゅぅぅぅ」
壁の隙間に刺さっていた。
「お前はこんな大事なときに、なにやってんだぁ!」
「ハ、ハルミが驚いて我を放り投げたノだ。それでいまココ」
「いまココはいいから、なんとかしろよ!」
「この向きだと奴が攻撃できないノだ。お主こそなんとかするノだ」
オウミは、タランチェラとハルミたちとの間の壁に刺さっている。いや、刺さっているのは枝なのだが。その枝先に結びつけられた糸の先で、オウミがぶらぶらと揺れている。
平時でなら可愛い絵なのであるが、いまはそれどころではないのだ。
オウミはちょうど俺たちのほうを向いているために、タランチェラのいる方向とはまるで逆だ。だからどうにもできない、そういうことのようだ。柔らかい関節なので首だけ後ろを向く曲ことは可能だが、後ろに攻撃はできない構造らしい。役に立たない関節である。
「ユウコ。ひとっ走り行ってオウミを回収できるか?」
「うん、無理」
ですよね。かと言って俺だって素早さはたいして変わらんし、オウミにたどり着く前に確実に溶かされるだろう。
ん? あの蜘蛛野郎、ケガしているのか。足のつけ根辺りから体液が流れている。どこかにぶつけたのか、逃げる途中でハルミが斬ったのかも知れない。
しかし、足はたくさんある。1本ぐらい痛めても動きが鈍くなるようなことは期待できないな。
素早さの低い俺たちでは、どうにも……待てよ。ケガをしているか。それならもしかして。
「ユウコ。ナオールはまだあるよな?」
「うん、はいどうぞ」
「あと3つぐらい出しておいてくれ」
「はい。行ってらっしゃい」
「俺がなにをしようとしているのか、お前に分かるのか?」
「なんとなく」
「そういうとこだけは鋭いんだな」
「うん、それもエルフの心意気で」
「またそれかよ。戦うのは不本意だが行ってくる。俺が合図したら残りのナオールをあいつに向かってぶん投げてくれ」
「分かった」
俺はナオールの入った瓶のフタを開け……開け……ぐぐぐぐぬぬぬっ。ダメだ開かない。もういいやこのまま投げてやれ。落ちたら割れるだろ。
俺はナオールを手に持つと、脱兎のごとくタランチェラに向かって歩き出したのこのこのこ。
「ずいぶんと遅い脱兎なノだ」
「やかましい。こっち見んな」
「そっちしか見えないノだ」
走ったりすると、たどり着く前に体力が尽きるから歩くしかないのだ。のこのこのここのはのこ。
そしてここなら届く……かどうかは分からんが、これ以上近づくのは怖い、というところまで行くと、手榴弾投げよろしくえいやぁぁっと瓶を放り投げた。
それはタランチェラの足下で弾ける……はずであったのだが、ちょっとだけ届かなかったようだ。ずっと手前に落ちてそこに止まってしまった。せめて割れやがれ!
??? という表情のタランチェラを見て俺は言った。う、うむ、作戦は成功である。
「ユウコ、いまだ。フタを開けて全部投げろ!!」
「え? いまだって言われても? どの辺がいまだなの?」
「いいから、ともかく投げろ!!!」
「フタを、フタを開けるの、ちょっと待って、そんなこと急に言われても、きゅきゅと、はい、まず1本、ぽいっ。きゅきゅ、はい2本目ぽいっ。あぁもう面倒くさいきゅきゅきゅ。わぁぁぁぁぁ。そらそらそれそらっ!!!!」
10本ほどのナオールがあちこちに飛び散った。3本くらいはハルミを直撃した。もう、ぐだぐだである。
だがユウコがでたらめに投げたうちの1本が、偶然にもタランチェラに当たった。
……あんなでかい的に当たるのが偶然って、どんだけノーコンだよ。イップスこじらせた藤浪か。
しかし、少なくともユウコの肩は俺より強いようだ。タランチェラは一瞬ビクってなったが、垂れてきた水を嘗めると、意外とおいしいものだとすぐに気がついた。
そして夢中になってそこら中に無節操に飛び散ったナオールを嘗め始めた。
「どこからどこまでがどんな作戦なノだ?」
その隙に俺はハルミの亡骸を踏み越えて、オウミの元に歩いて行った、てくてくのこのこ踏み踏み。
「急いだほうが良いと思うノだ。あと、なんか踏んでいるノだ。しかもそれは亡骸ではないノだ」
そしておもむろに壁に刺さっているオウミ(と小枝)を抜き取ると、それをタランチェラに向かって投げつけた。
「なんで投げるノだぁぁぁ!!!!」
あ。いや、なんとなく。
それは見事にタランチェラにヒットし、目と目の間の毛むくじゃらの髭みたいなところにくさっと突き刺さった。
タランチェラにとっては、おいしい水を飲んでいたら目の前にうっとおしいオウミが出現したことになる。当然、激おこである。
「我がうっとおしいわけではないノだ。お主がわぁぁぁお、こんなところに投げわぁぁぁお」
タランチェラがなんとか振り払おうと首を左右に振るごとに、オウミが右に行ったり左に行ったりしている。ちょっと愉快な絵である。
「ごらぁぁぁ、わぁぁお。愉快ではないわぁぁぁお。早く我をわあぁぁぁぁお、助けるわぁぁぁお」
「と言われましても」
「ハルミのわぁぁお。持っているわぁぁぁおで、こいつをわぁぁぁお、刺すノわぁぁぁおだ」
ハルミの持っている? 巨乳か? それが武器か!?
「お主はアホか! わぁぁお。ミノわぁぁぁオウわぁぁぁハルわぁぁルノわぁぁぁお」
「そうか分かった! 皆まで言うな。ミノオウハルだな。これをどうするって?」
「皆まで言ったではわぁぁぁおないか! わぁぁお早くすわぁぁおるノだ。目が回るわぁぁぁぁおるノだ」
俺は倒れているハルミの鞘から、ミノオウハルを引き抜いた。そして……どうすりゃいいんだ?
「早くわぁぁぁおするノだわぁぁぁお」
「ユウさん、それ、遠くのものが斬れるんでしょ?」
そうか! ユウコ、ナイス助言だ。ここで俺が思いきり奴を斬るつもりで振ればいいんだな!
「ちょっと待て! それは我のほうを向いわぁぁお、ているようわぁぁぁおな気がするノわぁぁぉおだ」
しかし俺たちは忘れていた。ミノオウハルを使えるのはハルミだけであったことも、そのハルミでさえもクラスチェンジしてからは使えなくなっていることも。
しかししかし、忘れていたとかそういう問題でさえなかったようである。
やぁぁぁ!! とばかりにミノオウハルを一閃すると見事に。俺の手をすり抜けて吹っ飛んだ。そしてオウミを頭から貫いた、
「ぎゃぁぁぁぎゃぁぁぁぁぎゃぁぁノだぎゃぁぁぁぁ」
かに見えたが、実際にはタランチェラの頭に突き刺さったのであった。
「おおおおおお驚いたノだノだ。死ぬかと思ったノだ。気をつけるノだ。我に刺さるとこだったノだノだノだ」
「俺はてっきり死んだと思ったぞ」
「自分でやっておいて、その言い方は酷いノだ!!」
「それもそうだ、すまんかった」
「そうなのだが。言っていることは正しいのだが、なんか違うノだ……おいおい、ユウ。まだこやつもぞもぞ動いているノだ。 とどめを刺すノだ」
「えぇっと。もうミノオウハルはないし。次はニホン刀を投げれば良いのかな?」
「もう投げるのはよすノだ!! 我の命がともしぶノだ。ミノオウハルを持って呪文を唱えるノだ」
「ともしぶなんて日本語はねぇよ。風前の灯火って言えよ」
「我をその灯火にしてはならないノだ!! そんなことはいいから早くこっちに来て呪文を唱えよ」
「いや、俺は魔法は使えないって知ってるだろうが」
「呪文は我が教えるノだ。ミノオウハルを掴んでそれを復唱すれば良いノだ」
「復唱すればいいのか? お前の魔力を使うってことなのか。そらならやってみよう」
俺はゆっくり近づいて、ともしぶオウミの目の前にあるミノオウハルの柄を掴んだ。
「それで、呪文とは?」
「光よ、来い! と」
「光よ、来い!」
その瞬間であった。ミノオウハルから数珠のように連なった光の珠が次々に飛び出しては、俺の手の辺りで砕け散って行った。
「な、なんだ、なんだこれ。ミノオウハルが俺の手を離さない。わぁぁぁお」
「振り回されている我の気持ちが少しは分かったノか?」
「わぁぁお。分かった分かった。わぁぁぁお、分かったから停めてくりゃりゃりゃ」
俺の手から離れたそれは、まるで炸裂した花火の親星(花火の一番外側の花弁のこと)のように拡散し、部屋中を黄金色に染めた。
光の珠はそれで止まることはなく、アルファ粒子のように壁も天井も床も突き抜けて、あっという間にダンジョン全体を光で埋め尽くした。
「うわぁぁぁお。ま、眩しい!! なんだなんだこれ。なんも見えねぇ。ここはどこだ。アレはナニ。ナニはアレ。お金なんかはちょっとでいいのだぁぁ。だめだ。俺はここで気を失う流れだ。あぁん、もうだめ……くたっ」
ユウコ「な、なによ、いまの……くたっ」
ハルミ:もともと気を失っている。
タノモ:もともと気を失っている。
「ああぁ、驚いたなもう。すごい威力だったノだ。我まで浄化されるかと思った。あやうくともしぶところだったノだ。あれじゃタランチェラごとき、影も形もなくなっているだろう……あれ? おいおい、それどころじゃないノだ!? このダンジョンの魔物。気配がまったくしなくなった。まさか、全滅させたのか!? たった1発で!? ここは50階層ぐらいあるはずなノだが?!」
しーん。
「気配がない。ま、まさかここまでの威力があるとは……。こんなこと、我にもミノウにも無理だ。アメノミナカヌシノミコトだって1発では無理だろう。やはりこやつはミノウが言っていた通りだったノか。あのアマテラスに繋がる血筋・光に愛された光の公子なノか」
「だとすると、我はとんでもない呪文を教えてしまったことになる。これからは……いったいなにが起こるノだろう?」
(あ、それ以上言わないように)
「そ、そうなノか。ともかく愉快……やっかりなことが起こりそうだ。人間界とは楽しいもノだな。……さて、もう退治するものもなくなったし長居は無用だ。こやつらを連れて帰るとするノだ。ひょ……あ?」
「待て待て待て待て!! オウミ!! お前か!! あたしの手下どもを皆殺しにしたのは!!!!」
「お、お、お主は!?」
0
あなたにおすすめの小説
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
一流冒険者トウマの道草旅譚
黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。
しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。
そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる