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第294話 話はインフラ整備に?
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「ユウさん、ご飯よー」
「それで、魔ネコは繁殖力は強いのか?」
「条件さえそろえば、じゃかすか産むのよ。ほら、この4番目の試験なんか1回で7匹も産んでいますでしょ」
「なるほど。カップリングのときにメスのほうをちょっと痛めつけると、多産になる傾向があるわけか」
「ええ。それも物理的ではなくて、恐怖を与えるほうが良い結果が出てるわ。ほら、それはこちらのデータに」
「こいつらは朝っぱらから飯も食わないでなにやってんだ?」
「ハタ坊、昨日の続きのようだヨぱくぱくぱく」
「ご飯だって言えば、いつもならすぐに飛んでくるのにねぇ」
「まったく、飽きもせずに良く続くものなノだめっさめっさ」
「もう。おにぎりにしてあげたから、話ながら食べてね。はいどうぞ」
「あ、ありがとスクナ。ひょいぱく、もぐもぐ。しかし問題はそれで全部真っ白になるかどうか、ということだがむぐむぐ」
「それなのよ、問題ははぐはぐ。どうしても一定の数は、部分的に元の色が残ってしまうのよねぱくぱく」
「しっぽだけ茶色では画竜点睛を欠くなもさもさ。そもそもそれじゃ高く売れない。1年以上ダンジョンに置いてもダメなのか? もっしもっし」
「その試験はまだやってないのずずっ。というのはね、魔ネコって生まれて1年以上が経つと、言葉を覚える能力が急激に劣ってしまうのよ、ほら、ここにその試験にデータがもっさもっさ」
「うぅむ。なるほどもさもさ。それではイッコウにならないから意味がないな。もにもに」
なんだ、もにもにって?
きゃぁぁぁぁぁ!!! ばしっ!!
「痛たたたた。な、なん、なんだなんだ? いま、なにが起こった?!」
「イズモ公。いま、思いっきりスクナの胸を揉んでいたわよ?」
お、お、驚いた驚いた。ちょっと痛かった。初めてだ、初めて揉まれた。ユウコさんの気持ちがちょっと……サイズが違い過ぎて分からないけど! でも驚いた。思わず殴っちゃった。Aカップだって揉めるのよね。
「あたたた。スクナの胸だったのか。すまん、ちょうど良い感じの膨らみだなって思っだだだだだだだっ。改めて殴るなよ!」
「も、もう。セ、セ、セクハラですよ、セクハラ」
「だから、すまんと言ってあだだだだ、分かった分かったもうしません!」
はぁはぁはぁ。触るなら人のいないとこで触りやがれはぁはぁ。
「ちょっと、私のスク姉に無闇に触らないでくれる?!」
「お前の胸には興味ない」
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
「ややこしくなるから、タッキーはこっちにいてね」
「もう!! それなら私もスク姉のおっぱいをもごぉぉぉん」
「くだらない対抗するんじゃないの!」
「痛たたたた、はぁい」
そんなこんなで、ふたりのマッドサイエンティストにとっての楽しい時間は過ぎて行った。そして午後になって、昨日呼び出した銀行の頭取さんがやって来た。お楽しみは一時中断である。
「初めまして。私は17銀行・頭取のジンキチです。ジンちゃんと呼んでください」
「えらく砕けた人がきたぞ、おい?」
「騙されないで、イズモ公。それがその男の手口だから」
どんな手口よ?
「またまた、イリヒメ様はお口が悪い。私は人を騙したことなんかありませんよ。人を騙すぐらいなら腹を切りますよ、服だけ」
「服だけかよ!!」
「ね? こういう人なのよ」
分かったような、まるで分からないような。
「それで、本日の火急な呼び出しはいったいどのような用件でしょうか。金利はいただいたばかりなので、その話ではありませんよね。それとさっきからツッコんでくるこの少年はどこのどなたでしょう?」
「紹介するわ、ジンちゃん。こちらイズモ公のユウ・シキミ様です」
「これはこれは。その若さでイズモ公……あれ? ユウ・シキミって、どこかで聞いたようなお名前ですね」
「こちらではシキ研の所長と言ったほうが通りがいいかもな。初めまして、俺がユウだ」
「シキ研? ユウ様? ユウ……ユウってあの!?」
「なんだ知ってたのか」
「それはもう。こちらでは超有名ですよ。傲慢でわがままで自分勝手で自分には甘く他人には厳しい上司にしたくないナンバー1という」
「イリヒメ。俺、帰っていいか?」
「ジンちゃん。それ、もうすでにやったネタだから、イズモ公には受けてないようですよ」
いや、受けるとか受けないとか、そういうことじゃないと思うの。
「あっちゃー、そうでしたか。つかみに大失敗しました、申し訳ありません。それでは改めまして、ユウ様……とお呼びすれば良いでしょうか。私は17銀行頭取のマナベ・ジンキチと申します。ユウ様のご活躍は私ごときものにも、伝わっておりますよ」
「あ、そ。どうせろくでもないことだろ?」
「潰れかかっていたタケウチ工房をわずか数ヶ月で建て直したどころか、半年も経たないうちにチュウノウ1の大企業に育て上げ、さらにトヨタ家を巻き込んでシキ研という研究所を作り、そこでも数々の商品を作り育てているという、伝説のお人とうかがっております」
「お、おう。そうか」
ユウさん、ちょっと自慢気。私もなんか嬉しい。
「そんなお方にお目通りがかない、恐悦至極に存じます。私はしがない銀行の頭取でございます。以後お見知りおきいただきますようお願い申し上げます」
「めんどくさい敬語はやめてくれ。作者も苦手なジャンルなんだ」
「はい、承知しました。それでは丁寧語にて承ります。それで本日のご用件というのは、イリヒメ様ではなく、ユウ様のご用件ということでしょうか?」
「両方だ」
「両方?」
「つまり、イリヒメが17銀行で借りている借金は、シキ研が一括返済することにした」
「えっ? ということは」
「そう、ここはシキ研の傘下に入る。同時にイリヒメ研究所という会社を立ち上げる」
「そ、そう。そうでしたか」
ジンキチさん、とても残念そう。そりゃそうでしょうね。
お金を貸すことで利益を出す銀行にとって、一括返済は貸し倒れのリスクがなくなる代わりに、借り手(つまり客)もいなくなってしまうことを意味する。
その上にここの金利はとびっきり高かったから、ハイリスクだがハイリターンの顧客を失ったのだ。それはかなりのダメージでしょうね。でもそれは、ユウさんじゃないけど仕方のないことね。
「ジンちゃん、なにか問題でも?」
「い、いえ。こちらにはなにも問題はありません。それでは、返済の手続きの書類を用意しますので、少しお待ちいただけますか」
「ああ、契約に関しては後日にしてくれ。こちらもそういうことを専門に扱う部門があるから、そこにやらせるつもりだ」
専門部門って言っているけど、それレクサスさんのことよね? あの人はトヨタの人なのに、ユウさんが勝手に使っていいのかしら? なんかまた一波乱ありそうな予感がするのだけど。
「分かりました。ではどちらまで出向きましょうか」
「ハザマ村のシキ研まで来てもらえるといいのだが。場所は分かるか?」
「ええ、それはもう。チュウノウでは有名ですから。それでは2,3日のうちに書類を用意してうかがいます。返済はそのときにいただけますね」
「ああ、そのときまでに用意させておく」
「はい、ではこの続きはそちらにうかがったときにいたしましょう」
「じゃ、そゆことでよろしく。イリヒメ、さっきの続きをやろう」
「あ、うん。私はそれでいいけど、ジンちゃんはいいの?」
「それで、ユウ様」
「なんだ、まだなにか用事か?」
「こちらにはもう資金の御用はありませんか?」
「俺に借金をしろと?」
「はい、そうです」
「やけにはっきり言うな。自分でまかなえるんだから、わざわざ借りる必要はないだろ」
「例えば、ここはあまり流通に恵まれた土地とは言い難いと思うのですが」
「えっと。まあ、そうか、な?」
「ここでイッコウを生産するとして、それを運搬する方法はあるのですか?」
「それは、その、あるのか、な? いままでどうしてたっけ?」
「いままでイッコウはカゴに入れてゲートでハクサン家まで運んでいたそうですね。伝書ブタはサカイの商人に依頼してました」
「ええ、これからもそうするつもりですけど」
「でも、これから取り引きも生産も増やすのでしょう? 人手に頼っていては、すぐに限界が来ませんか。イッコウまでサカイの商人に運搬を頼むと、運送費がバカになりません。それにエサや消耗品、設備を作るなら資材も買う必要が」
「待った待った。ジンちゃんはなにが言いたいんだ? 単刀直入に言ってくれないか」
「つまり、ここから商品を売ったり資材を買ったりするのに、どんな運送方法があるのでしょうか、と」
言われて見ればそれは確かにネックだ。ヤサカの里がどうして急に困窮してしまったのかといえば、仕入れの流通経路を、月に2回だけのサクラン現象に頼っていたからだと言っていい。
あれはとても不安定な流通だったのだ。どうしてあんな現象が起きるのか分かっていないのに、それに頼り切ることのリスクの高さ。イリヒメの最大の失策は、それを考慮しなかったことだと言ってもいいぐらいだ。
「ふむ。スクナ、どう思う?」
「私にも流通のことは良く分かりません。現状なら、ハタ坊がいるからイッコウでも伝書ブタでもいくらでも運べるでしょう。でも、ハタ坊だっていずれはアイヅに帰るのでしょう? そうなったとき、ここはまた危機に瀕することになります」
「その通りだな。運送をいつまでも眷属だけに頼るわけにはいかないな。そこは俺の苦手な分野だ。ジンちゃん、その言い方だと、なにか腹案があるようだな?」
「待ってました! あ、いえ。なんでもありません。私どもにまかせていただけるのでしたら、方法はございます」
「どんな方法ですか?」
「道を作ればいいのです」
「おい、インフラ整備の話まで出てきちゃったぞ。あれはミノウの仕事じゃないのか?」
「こらこら、無茶を言うでないヨ。そんな大がかりな土木作業をやったら我は死んじゃうヨ」
「俺の経験値になるかな?」
「そういうことを考えるな、と言っているのだヨ。それが簡単ならとっくにやっているヨ。我だって道を作って、線路を引いて、地下を掘って、リニア新幹線を走らせたいヨ」
「リニア新幹線はともかく、道ぐらい作れないのか?」
「道1本作るのに、どれだけの魔力がいると思っているだのヨ。洪水のとき、堤防の決壊箇所を塞ぐだけでひぃひぃ言ってたのを忘れたのかヨ」
「いや、そのとき俺はホッカイ国にいて見てないから。だけど、魔王にも無理だってのは良く分かった。ということは」
「この申し出には乗るべきだと思うヨ」
「と、ミノの魔王がそう言っているわけだ」
「ヨ?」
「それ、お前の都合だよな?」
「経済の活性化というのだヨ」
「それで、魔ネコは繁殖力は強いのか?」
「条件さえそろえば、じゃかすか産むのよ。ほら、この4番目の試験なんか1回で7匹も産んでいますでしょ」
「なるほど。カップリングのときにメスのほうをちょっと痛めつけると、多産になる傾向があるわけか」
「ええ。それも物理的ではなくて、恐怖を与えるほうが良い結果が出てるわ。ほら、それはこちらのデータに」
「こいつらは朝っぱらから飯も食わないでなにやってんだ?」
「ハタ坊、昨日の続きのようだヨぱくぱくぱく」
「ご飯だって言えば、いつもならすぐに飛んでくるのにねぇ」
「まったく、飽きもせずに良く続くものなノだめっさめっさ」
「もう。おにぎりにしてあげたから、話ながら食べてね。はいどうぞ」
「あ、ありがとスクナ。ひょいぱく、もぐもぐ。しかし問題はそれで全部真っ白になるかどうか、ということだがむぐむぐ」
「それなのよ、問題ははぐはぐ。どうしても一定の数は、部分的に元の色が残ってしまうのよねぱくぱく」
「しっぽだけ茶色では画竜点睛を欠くなもさもさ。そもそもそれじゃ高く売れない。1年以上ダンジョンに置いてもダメなのか? もっしもっし」
「その試験はまだやってないのずずっ。というのはね、魔ネコって生まれて1年以上が経つと、言葉を覚える能力が急激に劣ってしまうのよ、ほら、ここにその試験にデータがもっさもっさ」
「うぅむ。なるほどもさもさ。それではイッコウにならないから意味がないな。もにもに」
なんだ、もにもにって?
きゃぁぁぁぁぁ!!! ばしっ!!
「痛たたたた。な、なん、なんだなんだ? いま、なにが起こった?!」
「イズモ公。いま、思いっきりスクナの胸を揉んでいたわよ?」
お、お、驚いた驚いた。ちょっと痛かった。初めてだ、初めて揉まれた。ユウコさんの気持ちがちょっと……サイズが違い過ぎて分からないけど! でも驚いた。思わず殴っちゃった。Aカップだって揉めるのよね。
「あたたた。スクナの胸だったのか。すまん、ちょうど良い感じの膨らみだなって思っだだだだだだだっ。改めて殴るなよ!」
「も、もう。セ、セ、セクハラですよ、セクハラ」
「だから、すまんと言ってあだだだだ、分かった分かったもうしません!」
はぁはぁはぁ。触るなら人のいないとこで触りやがれはぁはぁ。
「ちょっと、私のスク姉に無闇に触らないでくれる?!」
「お前の胸には興味ない」
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
「ややこしくなるから、タッキーはこっちにいてね」
「もう!! それなら私もスク姉のおっぱいをもごぉぉぉん」
「くだらない対抗するんじゃないの!」
「痛たたたた、はぁい」
そんなこんなで、ふたりのマッドサイエンティストにとっての楽しい時間は過ぎて行った。そして午後になって、昨日呼び出した銀行の頭取さんがやって来た。お楽しみは一時中断である。
「初めまして。私は17銀行・頭取のジンキチです。ジンちゃんと呼んでください」
「えらく砕けた人がきたぞ、おい?」
「騙されないで、イズモ公。それがその男の手口だから」
どんな手口よ?
「またまた、イリヒメ様はお口が悪い。私は人を騙したことなんかありませんよ。人を騙すぐらいなら腹を切りますよ、服だけ」
「服だけかよ!!」
「ね? こういう人なのよ」
分かったような、まるで分からないような。
「それで、本日の火急な呼び出しはいったいどのような用件でしょうか。金利はいただいたばかりなので、その話ではありませんよね。それとさっきからツッコんでくるこの少年はどこのどなたでしょう?」
「紹介するわ、ジンちゃん。こちらイズモ公のユウ・シキミ様です」
「これはこれは。その若さでイズモ公……あれ? ユウ・シキミって、どこかで聞いたようなお名前ですね」
「こちらではシキ研の所長と言ったほうが通りがいいかもな。初めまして、俺がユウだ」
「シキ研? ユウ様? ユウ……ユウってあの!?」
「なんだ知ってたのか」
「それはもう。こちらでは超有名ですよ。傲慢でわがままで自分勝手で自分には甘く他人には厳しい上司にしたくないナンバー1という」
「イリヒメ。俺、帰っていいか?」
「ジンちゃん。それ、もうすでにやったネタだから、イズモ公には受けてないようですよ」
いや、受けるとか受けないとか、そういうことじゃないと思うの。
「あっちゃー、そうでしたか。つかみに大失敗しました、申し訳ありません。それでは改めまして、ユウ様……とお呼びすれば良いでしょうか。私は17銀行頭取のマナベ・ジンキチと申します。ユウ様のご活躍は私ごときものにも、伝わっておりますよ」
「あ、そ。どうせろくでもないことだろ?」
「潰れかかっていたタケウチ工房をわずか数ヶ月で建て直したどころか、半年も経たないうちにチュウノウ1の大企業に育て上げ、さらにトヨタ家を巻き込んでシキ研という研究所を作り、そこでも数々の商品を作り育てているという、伝説のお人とうかがっております」
「お、おう。そうか」
ユウさん、ちょっと自慢気。私もなんか嬉しい。
「そんなお方にお目通りがかない、恐悦至極に存じます。私はしがない銀行の頭取でございます。以後お見知りおきいただきますようお願い申し上げます」
「めんどくさい敬語はやめてくれ。作者も苦手なジャンルなんだ」
「はい、承知しました。それでは丁寧語にて承ります。それで本日のご用件というのは、イリヒメ様ではなく、ユウ様のご用件ということでしょうか?」
「両方だ」
「両方?」
「つまり、イリヒメが17銀行で借りている借金は、シキ研が一括返済することにした」
「えっ? ということは」
「そう、ここはシキ研の傘下に入る。同時にイリヒメ研究所という会社を立ち上げる」
「そ、そう。そうでしたか」
ジンキチさん、とても残念そう。そりゃそうでしょうね。
お金を貸すことで利益を出す銀行にとって、一括返済は貸し倒れのリスクがなくなる代わりに、借り手(つまり客)もいなくなってしまうことを意味する。
その上にここの金利はとびっきり高かったから、ハイリスクだがハイリターンの顧客を失ったのだ。それはかなりのダメージでしょうね。でもそれは、ユウさんじゃないけど仕方のないことね。
「ジンちゃん、なにか問題でも?」
「い、いえ。こちらにはなにも問題はありません。それでは、返済の手続きの書類を用意しますので、少しお待ちいただけますか」
「ああ、契約に関しては後日にしてくれ。こちらもそういうことを専門に扱う部門があるから、そこにやらせるつもりだ」
専門部門って言っているけど、それレクサスさんのことよね? あの人はトヨタの人なのに、ユウさんが勝手に使っていいのかしら? なんかまた一波乱ありそうな予感がするのだけど。
「分かりました。ではどちらまで出向きましょうか」
「ハザマ村のシキ研まで来てもらえるといいのだが。場所は分かるか?」
「ええ、それはもう。チュウノウでは有名ですから。それでは2,3日のうちに書類を用意してうかがいます。返済はそのときにいただけますね」
「ああ、そのときまでに用意させておく」
「はい、ではこの続きはそちらにうかがったときにいたしましょう」
「じゃ、そゆことでよろしく。イリヒメ、さっきの続きをやろう」
「あ、うん。私はそれでいいけど、ジンちゃんはいいの?」
「それで、ユウ様」
「なんだ、まだなにか用事か?」
「こちらにはもう資金の御用はありませんか?」
「俺に借金をしろと?」
「はい、そうです」
「やけにはっきり言うな。自分でまかなえるんだから、わざわざ借りる必要はないだろ」
「例えば、ここはあまり流通に恵まれた土地とは言い難いと思うのですが」
「えっと。まあ、そうか、な?」
「ここでイッコウを生産するとして、それを運搬する方法はあるのですか?」
「それは、その、あるのか、な? いままでどうしてたっけ?」
「いままでイッコウはカゴに入れてゲートでハクサン家まで運んでいたそうですね。伝書ブタはサカイの商人に依頼してました」
「ええ、これからもそうするつもりですけど」
「でも、これから取り引きも生産も増やすのでしょう? 人手に頼っていては、すぐに限界が来ませんか。イッコウまでサカイの商人に運搬を頼むと、運送費がバカになりません。それにエサや消耗品、設備を作るなら資材も買う必要が」
「待った待った。ジンちゃんはなにが言いたいんだ? 単刀直入に言ってくれないか」
「つまり、ここから商品を売ったり資材を買ったりするのに、どんな運送方法があるのでしょうか、と」
言われて見ればそれは確かにネックだ。ヤサカの里がどうして急に困窮してしまったのかといえば、仕入れの流通経路を、月に2回だけのサクラン現象に頼っていたからだと言っていい。
あれはとても不安定な流通だったのだ。どうしてあんな現象が起きるのか分かっていないのに、それに頼り切ることのリスクの高さ。イリヒメの最大の失策は、それを考慮しなかったことだと言ってもいいぐらいだ。
「ふむ。スクナ、どう思う?」
「私にも流通のことは良く分かりません。現状なら、ハタ坊がいるからイッコウでも伝書ブタでもいくらでも運べるでしょう。でも、ハタ坊だっていずれはアイヅに帰るのでしょう? そうなったとき、ここはまた危機に瀕することになります」
「その通りだな。運送をいつまでも眷属だけに頼るわけにはいかないな。そこは俺の苦手な分野だ。ジンちゃん、その言い方だと、なにか腹案があるようだな?」
「待ってました! あ、いえ。なんでもありません。私どもにまかせていただけるのでしたら、方法はございます」
「どんな方法ですか?」
「道を作ればいいのです」
「おい、インフラ整備の話まで出てきちゃったぞ。あれはミノウの仕事じゃないのか?」
「こらこら、無茶を言うでないヨ。そんな大がかりな土木作業をやったら我は死んじゃうヨ」
「俺の経験値になるかな?」
「そういうことを考えるな、と言っているのだヨ。それが簡単ならとっくにやっているヨ。我だって道を作って、線路を引いて、地下を掘って、リニア新幹線を走らせたいヨ」
「リニア新幹線はともかく、道ぐらい作れないのか?」
「道1本作るのに、どれだけの魔力がいると思っているだのヨ。洪水のとき、堤防の決壊箇所を塞ぐだけでひぃひぃ言ってたのを忘れたのかヨ」
「いや、そのとき俺はホッカイ国にいて見てないから。だけど、魔王にも無理だってのは良く分かった。ということは」
「この申し出には乗るべきだと思うヨ」
「と、ミノの魔王がそう言っているわけだ」
「ヨ?」
「それ、お前の都合だよな?」
「経済の活性化というのだヨ」
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