異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第308話 誤魔化しの多いあまちゃん

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 俺は、アチラとイリヒメを連れてイズモにやってきた。あまちゃんに確認と情報収集するためである。そこにはオオクニとスセリもいた。

「前章の、ネコウサかー!? ってヒキはいったいなんのためだったノだ?」


「あまちゃん。もしかして。ネコウサは識の魔法が使えるんじゃないのか?」
「使えるよ?」

「つ、つか、使えるよ、じゃねぇよ!! あっさり言いやがって。なんで最初にそれを言わないんだ!!」
「なんで言う必要があるんじゃ。ワシは聞かれておらんぞ?」

「俺の関係者は全部スキャンしたと言ってたじゃないか」
「ああ、したぞ。人間はな」
「だから……はい? 人間は?」

「さすがのワシでも、魔物までスキャンする気にはなれんぞ。お主と関わった魔物がどれだけいると思っているのだ」
「ま、魔物は外したの……か。あ、それもそうか。ネコウサは魔物だったな」
「間違ってませんわね」

「あら、そちらは新しい女の子ですの? 縛ってもいい?」
「なにそれ怖いっ」

「あ、こいつはイリヒメだ。オオクニならまだ覚えてるだろうが、かつて政権をかけて争ったことがあるそうだな」

「「誰?」」

「お前ら冷たいな」
「お主がそれを言うノか?」

「1,000年以上も前のことですからね。負けたほうは歴史から消えるのが普通のことです」
「ということは、我らと争った神の一族か。すまん、対象が多過ぎて思い出せない」

「オオクニ様。あれは私にとっては黒歴史。無理に思い出さなくて良いのです。それより、今日は聞きたいことがあってまいりました」

「聞きたいこと、というと?」
「例えばですが。法力で作られたダンジョンに、修法をかけた仏像を奉納したとします」

「たとえにしてはえらく具体的なような」
「そのダンジョンの大気には、ある物質が蔓延します。そこに魔物が住み着くとなぜか体調不良となります。そのため、魔物は岩を囓って岩と一緒に体内に溜まったものを排泄します」

「頑丈な歯じゃの」
「むしろ丈夫なお尻というべきですわ」

「そこは気にしないで! ところがその排泄物は半透明のキレイな結晶で、さらにそれに魔力を込めると色や形も変化するという不思議な特性を持つのです」

「器用なうんこですこと」
「コホン! うんこではありません。生成物と言いましょう」
「さっきあなたが排泄物って」

「言ってません」
「言ったわよ!」
「そんなことはいい。続きを話せ」

「はい、それは変化するだけでなく、魔力によって形や色が定着するのです」
「ふむふむ」

「ところがさらに不思議なことに、定着したはずの生成物に、識の魔法使いが魔力を込めると」
「込めると?」
「こんなものができるノだ。ふわふわ、ふわふわ」

「「「おおおうわぁおっ!!!」」」

「う、浮かんでおるだと!? そ、それ、ワシにもくれぬか!」
「あら、私だって欲しいですわよ」
「それ、中国の古い文献で見たぞ。筋斗雲って言うんじゃないか。俺も欲しいぞ」

「みんなで欲しがるなよ。どうしてこんなものができるのか、それを聞きに来たんだ。これは偶然のたまものだ。まだ作る方法がはっきり分からんのだ」

「分からんって、それを作ったときと同じことをするだけじゃろ?」

「その正確な再現が困難だから調査をしてるんだ。ネコウサはもう有機物を食べちゃったし、あのダンジョンから離れたしスクナの眷属になったし。魔力をかけたオウミはあのとき使い過ぎて魔力酔いになってしまったし。ダンジョンもハルミが切り刻んでしまったから、以前とまったく同じとは限らないし」

「ネコウサがなにを食べちゃったって?」
「ダンジョンを斬り刻んだやつがいるのか?」
「魔王が魔力酔いになるほど魔法を使っただと?」

「「「なんだ、それ?!」」」

「それはこちらに置いといて。私がお聞きしたいのはですね、法力と修法に魔法――この場合は識の魔法――を混ぜ合わせたとき、なにが起こるのか、ということなのです」

「「「んなもん分かるわけないだろうが!」」」

 あらそ。そうだろうとは思ったが。

「つまり、この世界ではまだ誰もやったことがないということだ、イリヒメ」
「そういうことですわね、ユウ」

「その通りじゃよ。魔力も法力も修法も、かけた結果は似ていても、それぞれが排他的事象改変能力じゃ。混ざるなんてことはあり得ない。そんなことで時間を取られても仕方なかろう。すっぱり諦めてもっとこの国の利益になること」

「「ということは、発見すれば天下を取れるなますね!!」

「取れるなますね、じゃないぞ。お前らはなんでそっちの方向で意気投合するんだよ」
「オオクニには分からんのか。これは世紀の大発見なんだぞ」

「だから、それは再現できれば、の話であろうが」
「お前もさっき欲しいって言っただろうが」

「欲しいって言ったのはあの筋斗雲の……え? いまの話は、その話だったのか?!」
「そうだ。このふわふわ……あれ? オウミはどこ行った?」

「すこすこすこぴー」
「漂って窓にぶつかってたのか。そこは日当たりが良いせいかひなたぼっこ状態だな。ふわふわの上で寝てやがる」
「気持ちよさそうですわね」

「この通り、これができたらすごいことになると思わんか?」
「それは確かに。空を飛べるなんて、限られたものだけの特権」

「安眠布団ができるじゃないか」
「そんな程度のことかよ?!」

「すこすこぴよー」
「魔王だって熟睡できます! なんてね」
「誰が販促コピーを考えろと」
「一家に1枚ふわふわを!」
「一般販売するつもりなのか!?」

「売れないものを俺が考えるわけないだろ」
「しかしそれ、オウミ以外にも乗れるのか?」

 あっ!? オオクニはたまに鋭いな。確認したことなかった。

「オウミ、ちょっと降りて」
「すぴすぴすぴぴー」

「イリヒメ。こいつをつまんでその辺に置いてくれ」
「はいはい。オウミ様、こちらに移動ちまちょうね。あらら、良い子でちゅねー」

「誰が子守をしろと。オウミをどけてもふわふわは浮いているな」
「これに私たちが乗れるかどうか、ということですが」
「直径で15cmぐらい、厚みは10cm。うん、人間が乗れるわけないな」
「手で持ってみましょう。ふんす!」

「どこかで聞いたかけ声だ」
「ふわふわなだけに、やかましいです。あれ、手で簡単に捕まえられますね」

「一人ボケツッコみした?! それにつかまって浮く、なんてことはできそうか?」
「このサイズではそれもきついですが、それよりも、手に持つとただの綿を掴んでいるような感触になるのね。浮力なんてまったく感じませんよ」

「どれどれ。あ、ほんとだ。これはただの綿だ。しかし、むにぃっ。ちぎることはできないな。柔らかいのに固い、不思議な材質だ」

「それなら色を付けてみたらどうなるので~ん痛いっ」
「ごらぁ、お主ら!! 我のふわふわにまたもや狼藉か! しかも、さっきとやってることが全然変わっていないノだ!!」

「あ、オウミ、おはよう」
「おはようではないノだ。もうこのふわふわに触ることは禁止するノだ」
「はむっ」
「咬むのも禁止なノだ!!!」
「あぁぁ、しょっぱい!」

 どこのザルツ歯磨き粉だよ。

「それはオウミにしか乗れないのか?」
「それは我にも分からないノだ。でも、これは我のものなノだ。他のものを乗せたりはしないノだ」

「諦めたほうがよさそうじゃの」
「そうは行くか。材料はそろっている。あとは組み合わせだけだ。ここにはそのヒントがないかと思って来たんだが」

「ヒントはありませんでしたわね。でも、あまちゃんにはもっと大事なことを教えていただきましたわ」
「え? ワシ、そんなこと言ったっけ?」

「ええ、こうおっしゃいましたわよ」

『魔力も法力も修法も、かけた結果は似ていても、それぞれが排他的事象改変能力じゃ。混ざるなんてことはあり得ない』

「ってね」

「「ということは、発見すれば天下を取れるなますね!!」

「またそれですのね」
「まるでユウがふたりになってしまったようじゃの」

 できないと皆が思うからこそ、できたらすごいことになるのだ。

「あ! そういえば。ユウさんに連絡しないといけないことがあるのよ」
「ふわふわが量産できたら、この国の歴史が変わ……なんだ、スセリ?」

「あなた、クラスチェンジができるだけの経験値が貯まっているようですわよ。この際、しておいたらどう?」
「クラスチェンジ? 俺がか」

「あ、ああ、そうじゃった。もう試練なんかはいくつもやっておるから、新たにする必要はない。すぐにでもクラスチェンジできるぞ。受けてみるか?」

「クラスチェンジって、俺はもともとなんだったんだ? 冒険者じゃないし、ハルミのような剣士でもない」
「それはワシにも分からん。カイゼン士かの?」

「カイゼン士か。それはいい。もらえるものならもらっておこうかな」
「そうか、それならこちらの部屋に来るが良い」

「分かった。イリヒメ、すぐ戻ってくるから待っていてくれ」
「早く帰ってきてね、なんかあの女の人、私を見る目つきが尋常じゃないのよ」

「スセリ。こいつは拘束禁止だ。また今度ユウコを連れてきてやる……から……ユウコ? あれ? あいつ、どうしたんだっけ? ハルミの試練を始めるときは一緒にいたような?」

「お主、また忘れたのか。238話でアイヅに忘れてきたと言っておっただろう。あれから迎えにいっておらんのか?」
「ああっ、あははは。すっかり忘れてたわ」

「お主の秘書ではなかったのか。忘れてたわ、で済む問題か」
「いや、あいつは置いてけぼりキャラだから」
「いいのかそれで?!」

「こ、これが終わったら迎えに行く、ことにする」
「可哀想なユウコ殿じゃの」
「足踏みマットにしていたお前が言うな」


「では、こちらの部屋に来い」
「誤魔化しやがったな。ほいほい」

 そして儀式は完了した。

「早いわね!?」
「ああ、いつも通りだ定期」
「なにが変わったの?」
「レベルが1になったらしい」

「クラスチェンジですものね。それで?」
「良く分からん」
「なにそれ?」
「まあ、なんだか知らんけどクラスはチェンジしたんだろ?」

「いいの、そんなことで?」
「別に俺が困ることはないし、いいんじゃないか?」

「アメノミナカヌシノミコト様?」
「あー、ユウはな。カイゼン士2.0になったということで」

「そんなweb2.0みたいなこと言われても」
「SNSでも作ったたろか、って感じ?」

「まあ、そういうことじゃな」
「どういうことよ!?」
「ま、まあ、どうでも良いではないか」

「なんか、最近のあまちゃんは、誤魔化してばっかりだな ボソッ」
「そそそそんなことないんだからね」

(ユウの危険過ぎるステータスを下げるためにやった、なんてこと言えるはずなかろう)

「俺に特になにも変わったことはないようだ。それと、これ以上ここにいても新しい情報は得られないようだ。イリヒメ、ヤサカに帰ろう」
「だから、その前にユウコを迎えに行けとあれほど」

「あ、ああ。1段落したら行く。その前に」
「まだすることがあるのか?」
「アチラに再現試験をやってもらおうと思ってな」

「あの、僕。ここになにしに来たのでしょうか?」
「作者が構成を間違えたんだよ、いつものことだ。気にするな」
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