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第309話 冒険者編 終わったみたいですよ?
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「ふわふわについて、いままでのところを、ちょっとまとめてみますわね」
「あ、ああ。やってくれ、イリヒメ」
「ふわふわはアチラが作った。スクナの自転車はミノウ様が作ったけど、それを動かせるようにしたのはネコウサ。もしくは使えるようにした」
「そうだな」
「ということは、自転車にせよふわふわにせよ、宙に浮かせるアイテムを作るのには、識の魔法が必要ではあるけれど、魔力はそれほど必要ではない?」
「それはどうだろう。本人の魔力は少なくても、精霊の力を使うのが識だそうだから、それを使ったのかも知れない」
「でも、レベルが低いのでは使える精霊の力も少ないのでなくて?」
「ハルミはほとんどない魔力で、鉄とかをじゃんじゃん斬ってたからなぁ」
「それは魔刀のほうに魔力があったからでは?」
「なるほど、そうかも知れない。そうすると、どうなる?」
「魔王の杖? からふわふわにするのには、たいして魔力は必要ないということでしょ?」
「そういうことになるな。それまでには膨大な魔力やら法力やらが投入されているが」
「最後のほんのちょっとの一押しをしただけよね?」
「そうとも言えるな。すると?」
「あの、ふわふわは、最終形態ではないかしら」
「最終形態? あれで打ち止めってことか?!」
「そう。ほら、あの水晶ってね、魔力を注ぐと最初はどんどん色が変わるでしょ。そして最後には透明の結晶になる。そのとき、形状も変えられるわけだけど、そうしてできたものに、識の魔法をほんのちょっぴり加えると」
「ふわふわになるのか。だとするとあの自転車はどういうことだ? 形状を保ったまま浮いているぞ?」
「あ、そうか。あれは不思議ね。もしかして、最終形態に行く途中で止まっている状態なのかしら?」
「ミノウの魔力を込めてできた自転車。それを操っているのが魔力には乏しいネコウサか。最終形態になる少し前の段階と考えれば納得できるな」
「ということは?」
「あの自転車、いつかはふわふわになってしまうのか」
「かも知れない、って話ですけどね」
「だとすると、このふわふわの増産はわりと簡単なのかも知れないな」
「そうなるわよね。ああぁ、私、この実験もやってみたいわぁ。ユウ、予算なんとかならない?」
「うむ。ふわふわに誰にでもが乗れるようにする、という条件を付けさせてもらうが、それなら年200万出させよう」
「よっしゃぁ!! それでやってみるわ」
まるで雲に乗るような話である。いや、例えではなく現実的に。
しかし、もしあれを人が自由に乗り降りできるようになれば、アラビアンナイト的魔法の絨毯が、この地で誕生することになるのだ。絨毯ではなく雲だけど。
これが普及すれば、足の不自由な人、病人、お年寄りには福音となるだろう。歩くのが嫌いなふとっちょさんにも使ってもらえるだろう。これはカイゼンではない。社会の革新だ。そして、俺はボロ儲けだわははは。
そうなれば、もう馬車なんて必要がなくなるかもな、あはははは。
ノだ
「そんな予算は出せませんよ!!」
ノだ
「良いではないか、良いではないか」
ノだ
「良くありませんって。うちの事業を根本からぶち壊すようなこと止めてください」
ノだ
「それは考え方ひとつだ。壊れるどころか、事業拡大になるんだぞ」
ノだ
「どうしてですか?」
ノだ
「道の整備されたところは馬車のほうがずっと早い。しかし」
ノだ
「ふわふわは道の悪いところもそれなりに運べるんだよ」
ノだ
「トヨタ家で、その両方を作れと?」
ノだ
「いや、そうじゃない」
ノだ
「両方じゃないと言いますと?」
ノだ
「ハイブリッドだよ」
ノだ
「なんですって?」
ノだ
「世界で最初のハ」
ノだ
「ブリッドの馬」
ノだ
「車を作る」
ぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぇ ほほほほよにょんにょんよん~
「あれ、オウミ、接続が切れちゃったぞ? お前、まだ完全回復してなかったのか」
「途中で、切れた、ノだ。ふわふわの移動で、魔力を使い過ぎたノだ。魔力をかけたまま寝たのが、失敗だったノだふにゃふにゃ」
ふわふわは動かすのにはわずかな魔力で良いそうだが、それでもずっと使い続けると消耗するわけだ。まあ、ゆっくりお休み。
「ということで、レンチョンは難色を示した」
「はぁ、ダメですか」
「まあ、落胆するな。完全にダメというわけではなさそうだ。200万ぐらいなんとかなるだろう。あの水晶をイリヒメが誰かに売るという手もあるぞ」
「それなんだけど、ユウ」
「なんだ?」
「現在のダンジョンの管理者って、ネコウサの妹なのでしょう?」
「ああ、そうだ。それが?」
「その子、私の眷属になってくれないかしら?」
意外な申し出であった。イリヒメは神である。神と魔物は、本来なら触れあう対象ではない。神の眷属ならもっと他に――例えば龍神とか神獣・白澤とか――位の高いものがいるのだ。
それなのに、わざわざネコウサイタチなんていう低級魔物を眷属にするなど、前代未聞であろう。
「して、その心は?」
「その子が私の眷属なら、あの水晶は全部私のもの痛いわね!!」
「欲望丸出しか! あのダンジョンとは適切な関係でいろと言っただろうが!」
「ユウ。あの子たちが水晶を売ってお金を得て、それでなにを買うの?」
「え? そんなもん、欲しいものを買えばいいだろ」
「言い方を変えましょうか。どうやってお金を使うの?」
「駄菓子屋へ10円持っていって、これちょうだい」
「言えるかぁぁ!!」
言えないか。そりゃ言えないわな。そんな客が来たら、駄菓子屋のココノツなら、それが盗まれたお金だと思って通報することだろう。
「いや、そんな限定した人の話じゃないんだけど。でもその通りよ。あの子たちにはお金の使い道がないのよ」
「そんなこと、考えたことなかったな。それが、眷属にすると解決するのか?」
「私が買ってあげればいいでしょう?」
「横領ボソッ」
「自分の眷属のものを横領してどうすんのよ。モロバレでしょうが!」
そうれもそうか。俺の魔王どもだって、俺の秘密は全部知っているくせに、俺に秘密にしてやがることがあるようなんだよな。
なんかちょっと損した気分になってきた。いつか締め上げて全部吐かせよう。
「最大のメリットはね、そうなると私があのダンジョンに入れるようになるということよ」
「あれ、いまは入れなかったっけ?」
「ダメだったの。私たち神側はあくまで入り口の番人という立場で、中には入れてもらえなかったの。人間もダメだって」
「以前、冒険者たちがさんざん魔物退治に入って、中で狼藉を働いたのがトラウマになっているのだろう。イリヒメはどうしても眷属にしたいのか」
「うん、可愛いよね、あの子たち」
そっちがメインです、って表情なんですけど!?
「スクナがうらやましくって。私にもあんなのが欲しいなって」
「そういうことなら、イリヒメにまかせよう。しかし、それには相当な時間がかかるだろう。まずは仲良くならないといけないだろうし」
「そうね、そっちも頑張ってみるよ」
あの妹がイリヒメの眷属か。でも、イリヒメがあのダンジョンに自由に入れるようになれば、研究の進みがうんと早くなるだろう。俺が反対する理由はない。ここは協力しておくべきだ。
「それなら、ネコウサには俺が……言っても無駄なので、スクナ経由でその話を通しておいてもらおう。やりやすくはなるだろう」
「うん、ぜひそうして。お願い」
そして無駄に引きずり回したアチラを連れて、俺はタケウチに帰って来た。
「識の魔法を使えるようになったのは嬉しいのですけど、いままでできたことができなくなっていたらと思うと、とても不安です」
「その代わり、新たにできるようになったこともあるはずだ。頑張ってくれ」
「ええ、まあ。そりゃ頑張りますけどね」
アチラに元気がない。俺が欲しかったのは、物質の改変(錬金術)ができたり、災害のときにフル稼働できる識の魔法師なのだが、現状ではなにができるのか分からない。ふわふわを作れるのは分かっているが、それはイリヒメの研究が進むまで封印だ。
しばらくはレベル上げに注力してもらおう。
「あれ? スクナはどこに行った?」
久しぶりにタケウチでゆっくりしようと思っていつもの食堂にやってきたのだが、ここにいるはずのスクナがいない。
「ユウ、それどころではないのヨ。スクナはシャインから呼び出しくらって慌てて帰って行ったヨ。でも、我らもそれどころでないのヨ、オウミは?」
「オウミは俺を転送してすぐ疲れて寝た。ちょっと魔力を使い過ぎたらしい。ところでお前の話はさっぱり分からんのだが、スクナはホッカイ国に帰ったのか?」
「帰るのがずいぶん遅れたようだヨ。シャインが慌てていた。もう学校が始まっているヨ。しかし、それどころではないのだヨ。オウミっ」
スクナはお別れのキスもなしに帰ってしまったのか。学校が始まったのなら仕方ないが、なんか片腕をもがれた気分である。執事とは、リアルに片腕なのだなと痛感した。
「キスとかしている場合ではないヨ。それどこではないのだヨ、オウミ!」
「ミノウ、それ3回目なノだ。なにがあったノだ?」
「あ、起きたか。お主もやはり忘れていたようだヨ。もう5月になったのだヨ」
「5月がどうし……あああっ!! しまった。もうその季節なノか!?」
「いったい5月になにがあるんだ?」
「「年に1度の魔王会議なノだヨ」」
「なんだそれ?」
「名前の通りなノだ。魔王が集まって、えぇと、いろいろと話し合うノだ」
「いろいろ、とは?」
「それはもう、いろいろだヨ」
「だから、具体的には?」
「魔王が集まるノだ」
ダメだ、さっぱり分からない。
「それってただの観光旅行じゃないのか?」
「とととんでもないノだ! あれは大切な行事なノだ」
「そうだヨ。国中の魔王が7人集まるM7なのだヨ」
なんだその魔王サミット。魔王同士の決めごとなんてあるのだろうか。領地はアメノミナカヌシノミコトが決めたという話だし、魔王が勝手に徴収もできないだろうし。
でも、力のある魔王が集まったら。暴力沙汰になったり……はしないだろうな、こいつらのことだ。だが。
問題は起こすだろうなぁ(フラグ)。
「なんにしても、お前らはすぐに行かなきゃいけないわけだな」
「「そうなノだヨ」」
「場所はどこだ?」
「今年はカンサイになっているヨ」
「その会議は1日で終わるようなものか?」
「いつも2泊3日なノだ」
「ということは、3日間の眷属休みが必要ということだな」
「おおっ。ユウは話が早いノだ。我は以前の約束通り、有休を取るノだ」
「分かった。これまで頑張ってもらったからな、ふたりとも3日間、息抜きをしてこい」
「「さんざん遊んで来るノだヨ!!」」
やっぱり遊びじゃねぇか!
ということはだ?
冒険者編は終わったということかな?
終わったようなノだ。
終わり方がとてもだらしがないのだヨ。
いつものことだよやかましいわ!
冒険者編 完 ←
「あ、ああ。やってくれ、イリヒメ」
「ふわふわはアチラが作った。スクナの自転車はミノウ様が作ったけど、それを動かせるようにしたのはネコウサ。もしくは使えるようにした」
「そうだな」
「ということは、自転車にせよふわふわにせよ、宙に浮かせるアイテムを作るのには、識の魔法が必要ではあるけれど、魔力はそれほど必要ではない?」
「それはどうだろう。本人の魔力は少なくても、精霊の力を使うのが識だそうだから、それを使ったのかも知れない」
「でも、レベルが低いのでは使える精霊の力も少ないのでなくて?」
「ハルミはほとんどない魔力で、鉄とかをじゃんじゃん斬ってたからなぁ」
「それは魔刀のほうに魔力があったからでは?」
「なるほど、そうかも知れない。そうすると、どうなる?」
「魔王の杖? からふわふわにするのには、たいして魔力は必要ないということでしょ?」
「そういうことになるな。それまでには膨大な魔力やら法力やらが投入されているが」
「最後のほんのちょっとの一押しをしただけよね?」
「そうとも言えるな。すると?」
「あの、ふわふわは、最終形態ではないかしら」
「最終形態? あれで打ち止めってことか?!」
「そう。ほら、あの水晶ってね、魔力を注ぐと最初はどんどん色が変わるでしょ。そして最後には透明の結晶になる。そのとき、形状も変えられるわけだけど、そうしてできたものに、識の魔法をほんのちょっぴり加えると」
「ふわふわになるのか。だとするとあの自転車はどういうことだ? 形状を保ったまま浮いているぞ?」
「あ、そうか。あれは不思議ね。もしかして、最終形態に行く途中で止まっている状態なのかしら?」
「ミノウの魔力を込めてできた自転車。それを操っているのが魔力には乏しいネコウサか。最終形態になる少し前の段階と考えれば納得できるな」
「ということは?」
「あの自転車、いつかはふわふわになってしまうのか」
「かも知れない、って話ですけどね」
「だとすると、このふわふわの増産はわりと簡単なのかも知れないな」
「そうなるわよね。ああぁ、私、この実験もやってみたいわぁ。ユウ、予算なんとかならない?」
「うむ。ふわふわに誰にでもが乗れるようにする、という条件を付けさせてもらうが、それなら年200万出させよう」
「よっしゃぁ!! それでやってみるわ」
まるで雲に乗るような話である。いや、例えではなく現実的に。
しかし、もしあれを人が自由に乗り降りできるようになれば、アラビアンナイト的魔法の絨毯が、この地で誕生することになるのだ。絨毯ではなく雲だけど。
これが普及すれば、足の不自由な人、病人、お年寄りには福音となるだろう。歩くのが嫌いなふとっちょさんにも使ってもらえるだろう。これはカイゼンではない。社会の革新だ。そして、俺はボロ儲けだわははは。
そうなれば、もう馬車なんて必要がなくなるかもな、あはははは。
ノだ
「そんな予算は出せませんよ!!」
ノだ
「良いではないか、良いではないか」
ノだ
「良くありませんって。うちの事業を根本からぶち壊すようなこと止めてください」
ノだ
「それは考え方ひとつだ。壊れるどころか、事業拡大になるんだぞ」
ノだ
「どうしてですか?」
ノだ
「道の整備されたところは馬車のほうがずっと早い。しかし」
ノだ
「ふわふわは道の悪いところもそれなりに運べるんだよ」
ノだ
「トヨタ家で、その両方を作れと?」
ノだ
「いや、そうじゃない」
ノだ
「両方じゃないと言いますと?」
ノだ
「ハイブリッドだよ」
ノだ
「なんですって?」
ノだ
「世界で最初のハ」
ノだ
「ブリッドの馬」
ノだ
「車を作る」
ぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぇ ほほほほよにょんにょんよん~
「あれ、オウミ、接続が切れちゃったぞ? お前、まだ完全回復してなかったのか」
「途中で、切れた、ノだ。ふわふわの移動で、魔力を使い過ぎたノだ。魔力をかけたまま寝たのが、失敗だったノだふにゃふにゃ」
ふわふわは動かすのにはわずかな魔力で良いそうだが、それでもずっと使い続けると消耗するわけだ。まあ、ゆっくりお休み。
「ということで、レンチョンは難色を示した」
「はぁ、ダメですか」
「まあ、落胆するな。完全にダメというわけではなさそうだ。200万ぐらいなんとかなるだろう。あの水晶をイリヒメが誰かに売るという手もあるぞ」
「それなんだけど、ユウ」
「なんだ?」
「現在のダンジョンの管理者って、ネコウサの妹なのでしょう?」
「ああ、そうだ。それが?」
「その子、私の眷属になってくれないかしら?」
意外な申し出であった。イリヒメは神である。神と魔物は、本来なら触れあう対象ではない。神の眷属ならもっと他に――例えば龍神とか神獣・白澤とか――位の高いものがいるのだ。
それなのに、わざわざネコウサイタチなんていう低級魔物を眷属にするなど、前代未聞であろう。
「して、その心は?」
「その子が私の眷属なら、あの水晶は全部私のもの痛いわね!!」
「欲望丸出しか! あのダンジョンとは適切な関係でいろと言っただろうが!」
「ユウ。あの子たちが水晶を売ってお金を得て、それでなにを買うの?」
「え? そんなもん、欲しいものを買えばいいだろ」
「言い方を変えましょうか。どうやってお金を使うの?」
「駄菓子屋へ10円持っていって、これちょうだい」
「言えるかぁぁ!!」
言えないか。そりゃ言えないわな。そんな客が来たら、駄菓子屋のココノツなら、それが盗まれたお金だと思って通報することだろう。
「いや、そんな限定した人の話じゃないんだけど。でもその通りよ。あの子たちにはお金の使い道がないのよ」
「そんなこと、考えたことなかったな。それが、眷属にすると解決するのか?」
「私が買ってあげればいいでしょう?」
「横領ボソッ」
「自分の眷属のものを横領してどうすんのよ。モロバレでしょうが!」
そうれもそうか。俺の魔王どもだって、俺の秘密は全部知っているくせに、俺に秘密にしてやがることがあるようなんだよな。
なんかちょっと損した気分になってきた。いつか締め上げて全部吐かせよう。
「最大のメリットはね、そうなると私があのダンジョンに入れるようになるということよ」
「あれ、いまは入れなかったっけ?」
「ダメだったの。私たち神側はあくまで入り口の番人という立場で、中には入れてもらえなかったの。人間もダメだって」
「以前、冒険者たちがさんざん魔物退治に入って、中で狼藉を働いたのがトラウマになっているのだろう。イリヒメはどうしても眷属にしたいのか」
「うん、可愛いよね、あの子たち」
そっちがメインです、って表情なんですけど!?
「スクナがうらやましくって。私にもあんなのが欲しいなって」
「そういうことなら、イリヒメにまかせよう。しかし、それには相当な時間がかかるだろう。まずは仲良くならないといけないだろうし」
「そうね、そっちも頑張ってみるよ」
あの妹がイリヒメの眷属か。でも、イリヒメがあのダンジョンに自由に入れるようになれば、研究の進みがうんと早くなるだろう。俺が反対する理由はない。ここは協力しておくべきだ。
「それなら、ネコウサには俺が……言っても無駄なので、スクナ経由でその話を通しておいてもらおう。やりやすくはなるだろう」
「うん、ぜひそうして。お願い」
そして無駄に引きずり回したアチラを連れて、俺はタケウチに帰って来た。
「識の魔法を使えるようになったのは嬉しいのですけど、いままでできたことができなくなっていたらと思うと、とても不安です」
「その代わり、新たにできるようになったこともあるはずだ。頑張ってくれ」
「ええ、まあ。そりゃ頑張りますけどね」
アチラに元気がない。俺が欲しかったのは、物質の改変(錬金術)ができたり、災害のときにフル稼働できる識の魔法師なのだが、現状ではなにができるのか分からない。ふわふわを作れるのは分かっているが、それはイリヒメの研究が進むまで封印だ。
しばらくはレベル上げに注力してもらおう。
「あれ? スクナはどこに行った?」
久しぶりにタケウチでゆっくりしようと思っていつもの食堂にやってきたのだが、ここにいるはずのスクナがいない。
「ユウ、それどころではないのヨ。スクナはシャインから呼び出しくらって慌てて帰って行ったヨ。でも、我らもそれどころでないのヨ、オウミは?」
「オウミは俺を転送してすぐ疲れて寝た。ちょっと魔力を使い過ぎたらしい。ところでお前の話はさっぱり分からんのだが、スクナはホッカイ国に帰ったのか?」
「帰るのがずいぶん遅れたようだヨ。シャインが慌てていた。もう学校が始まっているヨ。しかし、それどころではないのだヨ。オウミっ」
スクナはお別れのキスもなしに帰ってしまったのか。学校が始まったのなら仕方ないが、なんか片腕をもがれた気分である。執事とは、リアルに片腕なのだなと痛感した。
「キスとかしている場合ではないヨ。それどこではないのだヨ、オウミ!」
「ミノウ、それ3回目なノだ。なにがあったノだ?」
「あ、起きたか。お主もやはり忘れていたようだヨ。もう5月になったのだヨ」
「5月がどうし……あああっ!! しまった。もうその季節なノか!?」
「いったい5月になにがあるんだ?」
「「年に1度の魔王会議なノだヨ」」
「なんだそれ?」
「名前の通りなノだ。魔王が集まって、えぇと、いろいろと話し合うノだ」
「いろいろ、とは?」
「それはもう、いろいろだヨ」
「だから、具体的には?」
「魔王が集まるノだ」
ダメだ、さっぱり分からない。
「それってただの観光旅行じゃないのか?」
「とととんでもないノだ! あれは大切な行事なノだ」
「そうだヨ。国中の魔王が7人集まるM7なのだヨ」
なんだその魔王サミット。魔王同士の決めごとなんてあるのだろうか。領地はアメノミナカヌシノミコトが決めたという話だし、魔王が勝手に徴収もできないだろうし。
でも、力のある魔王が集まったら。暴力沙汰になったり……はしないだろうな、こいつらのことだ。だが。
問題は起こすだろうなぁ(フラグ)。
「なんにしても、お前らはすぐに行かなきゃいけないわけだな」
「「そうなノだヨ」」
「場所はどこだ?」
「今年はカンサイになっているヨ」
「その会議は1日で終わるようなものか?」
「いつも2泊3日なノだ」
「ということは、3日間の眷属休みが必要ということだな」
「おおっ。ユウは話が早いノだ。我は以前の約束通り、有休を取るノだ」
「分かった。これまで頑張ってもらったからな、ふたりとも3日間、息抜きをしてこい」
「「さんざん遊んで来るノだヨ!!」」
やっぱり遊びじゃねぇか!
ということはだ?
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終わったようなノだ。
終わり方がとてもだらしがないのだヨ。
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