異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
310 / 336

第310話 第6章 魔王会議 その前に

しおりを挟む
 魔王会議の開催場所は毎年持ち回りであり、今年はカンサイ国となっている。

 ここはカンサイ国でも最大の都市・ナニワ市にある、魔王・マイドの別邸である。魔王が集まった部屋は、来賓室であるらしい。

 もうみんなが集まったころだろうと、満を持して会議開催時間の10分前に入ってきたのはマイドであった。

「みなさん、お待たせ……ってまだ集まってないやん?!」

 魔王は全部で7人いる。ニオノウミ国のオウミ、ミノ国のミノウ、エチ国のイズナ、イセ国のイセ、カンサイ国のマイド、ヤマト国のヤマト、それにホッカイ国のカンキチ。以上である。

 そのうちの2名、カンキチとヤマトがまだ到着していなかったのである。

「おぉ、マイドか。久しいな。今回は世話になるヨ」
「ミノウか! 久しぶりの参加やん。しばらく姿を見なかったが、いったいなにをしとったん?」
「ちょっと、いろいろあったヨ。でも、これからはちゃんと出るヨ」

「どもなノだ。さっそくいただいているノだ。キャラメルは歯にくっついて食べにくいノだ。あと、甘みが足りないノだ」
「オウミはいつも文句から始まるな。それなら食べなきゃいいやんか」
「出たものは食べないと失礼ノだ」
「食べておいて文句言うほうが、ずっと失礼だと思うやん?」

「マイド、今年はお世話になるゾヨ」
「去年はイズナのとこで世話になったな。そのお返しは今年するつもりやん。ゆっくりしていってくれ」

「まだ、ホッカイとヤマトが来てないようだな」
「イセは良く来るから懐かしくはないな。そういえば昨日からこっちに来ていたそうやん。うちに泊まれば良かったのに」
「そうはいかん。これは仕事だがあれは私用だったのだ。この辺の古い神社を巡って挨拶してきた。付き合いのある神社もあるしな」

「ケンカしている神社も多いようやん?」
「ああ、一番古い神社はどこかという話になると、どうしてもな」
「魔王の中ではイセが最古参やろ。そんなことで争わなくても」

「性分でな、きっちり片を付けないと落ち着かんのだ。それにしてももう10分前になるのに、クラークとヤマトはまだ到着もしてないのか。けしからんやつらだな」

「相変わらずお主は固いな。そういえば、クラークはカンキチと名前を変えたそうやん」
「なに、名前を変えたのか? いったいどうしてまた?」

「なんでも、ある人間の眷属になって、そいつに名前を付けてもらったそうやん」
「なんだそれは? 魔王が人間ごときの眷属にか?!」

「あ、それ、我もだヨ」

「はぁぁ?!」
「どういうことだ、ミノウ」

「どうもこうも。クラーク……カンキチだけじゃないヨ。我も眷属になったということヨ」

「「はぁぁ!?!??!」」

「ちょっ! 簡単に眷属になったとか言うが、お前には魔王として矜持ってものはないのかっ!! そんなやつは魔王の権利剥奪だぞ!!」

「落ち着けイセ。魔王の指名はオオクニの権限だ。いまはお主ではないぞ」
「そ、それ、それはそうだが。人間の眷属になったものなどに、魔王としての仕事ができるはずが」

「あ、我もなっているノだ」
「「オウミ、お前もか!!!!」」

「な、なんだ、なんなんだ。いったいどういうことだ。いまは魔王が人間の眷属になるのが流行っているのか。乃木坂がどこにあるのか知らないとおっさん扱いされるのか!」

「なんの話ノだ?」
「それは地名ではないヨ。乃木神社近くにある坂のことを」

「そんなことはともかくだ! えぇと。まずはカンキチ? から聞くが、なんていう人間の眷属になったんだ? 有名なやつか?」
「ユウ、というやつだヨ」
「ユウ? 知らんな。どこかの御曹司か? 魔法使いか?」

「12才の少年なノだ」
「なんでオウミが返事をする? お前も知っているのか? ってただの12才のガキだと?!」

「「知ってるもなにも、同一人物なノだヨ」」

「同一人物? 誰と誰が?」
「我とオウミとカンキチが眷属になった相手だヨ」

「「「はぁぁぁぁ!?」」」

「おま、お前ら、ちょっと、待ってくれやん。お前らそろいもそろって、そのユウとかいう子供の眷属になった、とでも言うつもりやん?」

「「「そうなノだヨゾヨ」」」

「待て待て。ひとり増えたぞ!? イズナ、お前もか?!」

「イズナはどさくさに紛れて入ってくるでないノだ。お前は違うだろうが、ぺしぺしばし」
「良いではないか、我だって似たようなものだゾヨ、ばりばりばりぼり」
「あ、そういうことは我も混ぜるのだヨぽかすかぽんたん」

「止めろ!!!!!」
「「「はいっ!」」」

「はぁはぁ。お主らの仲が良いのは分かっているが、いまは我らの疑問に答えるやん」
「分かったノだ。なにから聞きたい?」

「俺から質問させてくれ。そのユウという人間の眷属になったのは、お前ら……ミノウとオウミとカンキチとイズナの4名なのか?」
「いや、イズナは違うヨ」

「似たようなものだゾヨ。我は、ユウの部下であるウエモンという魔法使いの眷属になったゾヨ」

「ややこしいな。ということはそのユウというやつは、オウミとミノウとカンキチを眷属にして、さらにイズナを眷属にした人間の上司であると?」
「イセは物わかりが良いノだ。さすがなノだ」

「そこで褒められても嬉しくねぇよ。どうしてそんなことになったんだよ。ユウってのはたかが選手……じゃない人間だろ?」
「いま、老害っぽい暴言が聞こえたヨ?」
「気にするな」

 そいつ、このニホンを征服するつもりじゃないのか? という疑惑をイセは持ったようである。

「それを最初から説明するよりも、見せたほうが早いと思うのヨ。な、オウミ」
「分かったノだ。これを見るノだ。まだできたばかりなノだが、これはすごいものなノだ」

 オウミは、ふわふわを取りだし、それに乗って見せた。

「な、なん、なんだそれは?!」
「オウミは自分の魔法で浮いているやん?」
「それなら珍しくはないが、そうは見えん」

「これはふわふわというノだ。なにもしなくても勝手に浮くノだ」

「「「はぁぁぁぁぁ?!?!?!?!?!」」」

「なんでイズナまで驚いているヨ?」
「ワシは聞いてないぞ、そんなもの。まさか、まさかそれもユウが作ったのか?」

「「なんだって?! ユウってのは、そんなものを作れるやつなのか?!」」

「一度に質問しないで欲しいノだ。これは我が作ったノだ。しかし、これを作る権利はユウにものになっているノだ」
「なんでだよ!」

「それは、これを作る過程で、ユウという人間がポイントになっているからだヨ」
「そ、そんなものを人間が作ったのか」
「作ったのは我なノだ。気持ちよいノだよ、ほれほれ、ふわふーわ、ほいほいノだ」

「おぉぉー、確かに浮かんどる。魔力なしで浮かぶなんて信じられやん」
「オウミが作ったのに、なんで人間になんか権利をやったのか、俺には理解不能だ」
「オウミには再現ができないからだヨ」

「再現ができない?」
「オウミにはこれをもう作れないヨ。これを作る下地をユウが揃えたヨ。それでいま、この作り方を研究しているヨ」
「なるほど、まったく分からん」

「ついでにいうと、これもユウの発明だヨ。ほれっ」

 ミノウが魔刀を取りだし軽く一閃すると、テーブルの上に置かれて灰皿がまっぷたつになった。

「おおっ!? なにをする、ミノウ!」
「この刀は、離れたところから斬ることができるヨ」

「そ、そ、それは8万もする工芸品……」
「えっ?」
「昨日、ようやく手に入れたばかりだったのに……」

「驚いたのはそっちかヨ?! だが、すまんかったヨ。弁償するヨ。良い感じの塊だったので、つい試し切りしちゃったヨ」

「え、弁償してくれるならいいが。それにしても、その刀はすごいやん。その距離でなんで刃が届くのだ?」

「見えるものなら斬れるゾヨ。我も持っているよ、ほいっ」

 すかっ。と今度は湯飲みが斬れた。

「あぁぁぁ、そそそそ、それは有田焼ぃぃぃぃ」

「んじゃ、我もやるノだ、ぺいっ」

 すかっ。と大皿が斬れた・

「あぁぁぁ、そそそそ、それは古瀬戸ぉぉぉ」

「お前ら、この部屋中の調度品を全部壊す気か!」
「あぁぁ、我が別邸の価値が下がってしまったやん!!」
「いや、それほどのことではないだろ?」

「弁償してくれるんだろな! チラッ」
「「すまんかった。いくらノだゾヨ?」」

「ぱちぱちでぱち。お安くしときまっせ。こんなもんで」
「ふむふむノだ」
「ワシにはソロバンの目は読めん。いくらになってる? オウミ」
「我に分かるはずないノだ」

「いまふむふむって言ったではないか!!」
「分からないからふむふむと言ったノだ!! やんのか」
「ややこしい言い方をする出ないゾヨ!! やってやろうじゃ」

「お主ら、争いはやめるヨ。ソロバンには両方足して120万と出ている……こら、マイド。お主、そうとう盛ったであろう」

「盛ったわけではないやん。大事な皿や湯飲みを斬られて、傷ついた我の心の分まで請求しただけやん」
「慰謝料まで請求する魔王があるか! お前も商人なら正しい価値を請求しろ!!」

「「「イセは固いな?!」」」

「あれ? なんでそこでお前らが声を揃えるんだよ! オウミとイズナは俺に感謝すべき側じゃないのか? 俺を孤独にするなよ」

「なんというか、こういう値のやりとりも楽しみのひとつなんだゾヨ。我の斬った湯飲みは5万、オウミのは11万ってところであろう?」

「へい、その通りでおま。イズナはそういうの強いな」
「ワシのとこも、交易で成り立っておる領地だからゾヨ。ものの値段はある程度詳しいゾヨ。エチ国にはこれといった商品はいままでなかったから」

「いままで?」
「ああ、今年から小麦の生産を始めるゾヨ。そのための資金をユウが出してくれて、できた小麦もユウが全部買ってくれることになっているゾヨ。来年は税金も払えそうだゾヨ」

「「誰なんだよ、そのユウってやつは???」」

「ともかく、弁償するノだ。マイドのいつもの口座に振り込むノだ」
「あ、我も振り込もう」
「そうだった、じゃワシも」

「お、おう。そんなに急がなくてもいいが。安いものじゃないのに、金払いが良くなったものだな」

「ユウのおかげで我が領地は儲かっているヨ」
「我もいろいろおこぼれをもらっているノだ。ソロバン作りのアイデアが採用されてインセンティブもらったり、運搬部長としての手当を支給されたり。いろいろ現金収入があるノだ」
「ワシもウエモン経由でいろいろ収入になっているゾヨ。あのドリルではずいぶん儲かったゾヨ」

「「誰なんだよ、そのユウってやつは???」」

「それ、2回目だヨ。ユウはカイゼン士、というものらしいヨ」
「カイゼン、ってなんだ?」
「本人は、問題解決のプロだと言っておったゾヨ」

 問題解決のプロ? そんな職種がこの世にあるのか。しかし、それならもしかして、あの問題も?


 続くノだ
 どんな問題なのだヨ?!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

処理中です...