異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第329話 クマノが侵攻を開始

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「俺としては具材は叉焼だけでもいいぐらいだが、スクナは具だくさんのほうが好きなのか?」
「うん。やっぱり野菜もたくさん摂ることが大切だもの」
「スープにはコラーゲンたっぷりなのに、女性とは欲張りなものだな」

「おーい。イセから連絡が来てるんだが?」

「それはそうよ。いつの時代も女性は健康と美しさを求めるものなの」
「7才児がかよ!? 俺には分からん世界だ。まあいいや。具はスクナにまかせた。アク抜きだはけしっかりやって、スープの味に影響を与えないようにしてくれ」
「了解です」

「いやだから。前話のヒキはいったいなんだったんだ?」

「あ、最近出番のなかったエースじゃないか。ハルミとはどうなってんだ?」
「いや、どうなってるって言われても。朝食前に筋トレ、晩には食後に筋トレを一緒になってやってうるさいわっ」

「相変わらず仲のよろしいことですね」
「スクナさんまでからかわないくださいよ。それより、ユウ。イセから急報だぞ」

「凶報ではないノか」
「どっちでもいいですよ! 緊急事態だ、ユウ」

「どうせクマノが攻めて来るって情報だろ?」
「そうだ。あと数日のうちには決戦になりそうだと書いてある」

「「はぁ!?」」

「早ぇよ!! いや、遅せぇよ!!」
「どっちだよ!!」

「攻めてくるのが早くて連絡が遅いんだよ! 準備するこっちの事情も考えやがれ。それにまだ6月になったばかりだぞ。中旬って言ってたじゃないか。もう田植えは終わったのか?」

「終わっているはずはない。向こうも焦っているのだろう。ミノやオワリがイセについたと、思い込んだのかも知れない」
「うぅむ、それは困った。まだラーメンは開発中だし、量産の準備なんかまるでできていないのに」

「いや、ラーメンは別に関係ないだろ? 普通に食糧を持っていけば」
「関係大ありなんだ。ラーメンなくしてこの戦争は止められない」

「それほどのこと?! ラーメンなんてたかが食べ物だろ?」
「たかが食べ物が世界を救うのだ」
「世界は救わなくていいが、イセは助けに行くぞ」

「うぅむ。時間稼ぎが必要になってしまったか。こうなると、武力行使もやむなしだな。となるとエースとハルミの出番か」

「とはいっても、俺はもう近衛大将ではないからな。率いる軍など持ってない。わずかに、シキ研についてきた連中の中に多少使えるものがいるぐらいだ」
「どのくらいの兵力がある?」
「すぐに戦力として使えるものは14人だ。それだけ連れて行く」

「それにハルミを足せば、敵の1,000人ぐらいはなんとかなるだろう」
「おいおい。それはいくらなんでも……あり得るかも知れない、ハルミさんなら」

「だよな。関ヶ原のときよりも、ハルミの斬撃には磨きが掛かっているし」
「一撃でものすごい数の斬撃を飛ばせると聞いたが」

「ああ、それが発動できれば、の話だけどな」
「発動できれば? 難しい技なのか?」
「難しいというか恥ずかしいというか」

 練習するように言っておいたが、まだやっていたという報告は受けていない。サボりやがって、それでも俺の護衛か。

「お主がいらんことをするもノだから」
「なんですかそれ? それよりユウ、時間がない。急いで準備するぞ。ユウも魔王様たちを総動員してくれ。今回はオワリもミノも国軍は出せない。戦力は純粋にこのシキ研だけだ。ところでハルミさんはいまどこにいる?」

「この時間だと、まだ第2会議室ではないですか……」
「ああ、そうかスクナ。また今日もアレか」

 俺が参加を許されなくなった例のアレである。代わりにミヨシが監視役として中にいる。

「またアレって?」
「素っ裸で男とふたりきりの部屋の中……あ、おい! どこへ行く?!」

 最後まで聞かずに走って行った。あんなに急いでいた戦争の準備はいのかよ。

「ミヨシがいるからふたりきりではないノだ。しかしエースにとってはハルミが最優先なノだろう」
「やはり、ハルミに惚れているのか」
「すごい強い子供が生まれそう」

 エースとハルミ。お似合いだと言えなくもないのだが、なんか心に引っかかるものがある。別に俺が困ることななにもない。揉めるおっぱいがふたつ減るだけのことだ。それはそれでかなりの痛手ではあるが。

 ……スクナはそんな目で俺を見ないように。

 それにエースが面倒を見てくれるなら、俺に迷惑は掛からなくなるだろう。何度も骨折させられたが、そんな悲劇はエースに押しつけられる。良いことのほうがずっと多そうだ。
 だけど、なんか引っかかるんだよなぁ。

「ユウさん?」
「あ、スクナ。そうだ、俺たちも準備をしよう」
「ラーメン、どうするの?」
「できる範囲のことをするしかない。スクナ、プロジェクトメンバーを集めてくれ。ミヨシも出てこられるだろう」

 そしてあーだこーだと、細かい打ち合わせをする。

「スープは3日も煮込むヒマはないから、8時間くらいで火を止めよう。それなら、何食分できる?」
「それでも1日に300は難しい。当面は250ってところ」

「場所はユウのペントハウスを明け渡してもらったから、充分なスペースがあるけど、時間が足りないわね」
「待て待て待てミヨシ。俺のペントハウスってなんだ?」

「スクナが屋上にユウの専用部屋を作ったのよ、聞いてないの?」
「ホッカイ国に戻る前に、ベータさんにお願いしておいたのよ。まだ、行ってなかったのね」

 行ってないどころか、その存在があることさえ聞いていな……そういえばそんなことスクナが言っていたような?

「まあ、それはいい。ともかく寸胴が置ける場所はあるわけだな」
「ええ、あそこなら最大30個は置けるわね」

 そんな広いスペースが俺の部屋だったのか! なんか忸怩たるものがある。また俺の部屋がなくなったのだ。一度も入ったことさえないのに。一度も履かずに盗まれたヒッコリーのようだ。

「スキー小唄なノだ」
「良く知ってるな」
「スキーをやってるとき、ミノウがいつも歌うノだ。おもろい歌なノだ」
「そういえば、スキーを作ってもらったんだっけな」

 グジョウのときのご褒美である。

「それで麺はどのぐらい供給可能だ、モナカ」
「はい、麺の生地なら500食分までならなんとかなります。ただ、そうなるとミヨシさんの負担が」

「あら、私なら大丈夫よ。なにかを切るお仕事なら徹夜だって平気だもの」
「ウエモン。お前にはできないか?」
「え? 私がオウミヨシ使っていいのか?」
「そうじゃなくて。あの魔バイトで切れないかなと思って」

「ああ、あれか。どうだろ。あとでやってみる」
「そうしてくれ。麺の太さは多少目をつぶる。縮れ麺になればいい」
「やるだけやってみる」

「ベータ。タレはどうだ?」
「いま、部下が大量仕込みをしています。レシピ通りのものなら1,000食だっていけますよ」
「そうか、それは助かる」

「じゃ、最後に具だが、これはもうあるものを使うとしよう。スクナ、日に250食出せる具にはなにがある?」
「叉焼を250食使うと1週間でなくなります。次のものが入荷するのは1週間後なのですよ。ネギや卵ならなんとでもなります」

 ふむ。日に250食ならできるということだ。1週間後には500食ぐらいまではいけそうだ。

 だが、いますぐもっと増やしたい。足りないのはスープか。それに叉焼も足りなくなる。それを増やすには。。。。

 そうだ。こうしよう!

「よし、ウエモン、入れ物だが、大きめの茶碗を用意できるか?」
「ああ、それなら瀬戸物屋にいくらでもある。買ってくればいいか?」

「それを1,000個ほど用意してくれ」
「ユウさん、まさかそれにラーメンを? それではあまりに小さいのでは?」

「そうだ、小さくするんだ。なにもお腹いっぱいにしてやる必要はない。叉焼も1杯につき2枚にしよう。それならもっと保つだろ?」

「それなら叉焼は1月近く保ちますから、次の入荷で繋がりますね」
「スープは半分になる。500食できる」
「そのサイズでこれから増産して、最終的には日に1,000食を目標とする。できるな」

「「「できます!」」」
「よし、それで進めてくれ」

「でもそんな程度の量では、お腹が一杯になるどころか、呼び水になりかねませんよ? かえって兵士の士気を下げることになりませんか。いまの量でも充分とは言えないぐらいです。それを半分にするなんて」 とベータは言う。

 そこにハルミを強奪? したエースが帰ってきた。ハルミの顔は真っ赤だが、なにがあったのかはあえて聞くまい。

「俺の経験上からもベータ様に賛成だ。兵士は肉体労働者だ。ともかく良く食うんだよ。それはユウの比じゃない。なまじっか食べさせるぐらいなら、我慢させたほうがマシだ。味よりも、まずは量だ」

「どうやらベータもエースも、大きな勘違いしているな」
「え? どういうことですか? ラーメンはイセやミノの兵士たちに食べさせる食糧なのでしょう? それで士気をあげるんでしょ?」

「全然違う。食べるのは敵の兵士たちだ」

「「「「はぁぁぁ!?」」」
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