異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第335話 ケンカをさせないためには

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「ということでだな、アマテラス。こんどイセ国で剣舞大会をやるのだよ」
「やれば?」
「……なんの興味もなっしんぐかよ」
「ええ、まったくなっしんぐよ?」

「あのウズメが出るのだが」
「え? あら、そう。それは残念ね」
「残念?」
「ちょっと見たかったけど、ただの剣舞なら、見たってどうせ」

「どうせ?」
「ほにゃほにょにょん、でしょ?」
「俺に分かるように言ってくれ」

「どうせ脱がないんでしょ? って言ったのよ!」
「最初にそう言えよ。ウズメが脱ぐのがそんなに重大事項かよ。そうだろうとは思ったけど。それについては、ちょっと俺に案があるのだが聞いてくれるか」
「なによ」

「ちょっと耳を貸せ。じつはほにほにには、ほにゃららのほいほいというものがあってだな」
「あぁん、あん、あぁぁ」
「おかしな声を出すな! それでな、それをほれほれしてだな」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ」

「聞いてんのか!!」
「聞いてる聞いてる。息がかかるとくすぐったいの。普通に話しなさいよ。誰も聞いてないでしょうが」

「それでだな、それをほれはれして、ハルミやウズメにほにほにほにでほっほー」
「な、なるほど。それは面白いイベントになりそうね」
「だろ? それなら見たくなるだろ?」

「もう一声ね」
「というと、なにかいい案があるのか?」

「私が結界を作るから、こうしてああしてああすれば、ほら、ふたりの特性が生かせるでしょう?」
「なるほど。それにほにほにがあればナニの心配はいらないし観客も喜ぶか。よし! それで行こう!」
「で、それはいつから始める予定なの?」

「明日の昼から始めて、メインイベントは夕方になる予定だ」
「じゃあ、その頃になったら行きますわ」

「もっと早く来て、見て回ればいいじゃないか? お祭りだぞ?」
「他のことには興味ないし」

「こんなものがあるけど、食べたくないか? オウミ。用意した例のもの」
「ほい、ノだ。アマテラス、イセラーメンというノだ。これが箸。食べるノだ」

(なんか勝手に名前がついてんぞ?)
(呼び名がないと不便なノだ。これから種類は増えるノであろう?)
(増える予定だけどな。でもそれ、イセの食材なんかほとんど入ってないが)
(イセで最初に作ったから、イセラーでいいノだ)
(待てっ。いま、名前がいっそう短くなったぞ?!)

「箸ぐらい知ってるわよ……なにこれ。暖かいそうめんみたい。それがどうしてイセラー? メンなの? お腹が空いてたからちょうどいいずるずる……!? ずるずる?! ええっ!? ずるずるずるずるずるずるずる。これはいったい。ずるずるずるなにこれおいしい! ねえ、もっとないの? おいしいけど量がぜんぜん足りな……」

「じゃあ、当日をお待ちしております」
「またなノだ」

「ちょっとちょっと! 待ちなさいよ!! この食べ物もっと……くそっ、逃げやがった。ぺろぺろぺろ。残り汁でさえもこのおいしさ。なんなのよ、これ。イセがなんだっけ? ペロペロ」

「こら。どんぶりをなめるとか、はしたないぞアマテラス!」
「あら、アメノミナカヌシノミコト様。最近よく姿を現しますのね」

「あのユウが来たと聞いたので、飛んできたのじゃが、もう帰ってしまったか。なんじゃ、その入れ物は?」

「人間が来たぐらいで、どうしてアメノミナカヌシノミコト様が飛んでくるのかしら。あのユウっていったいなにもの?」

「いや、その、やつはいつもうまいものを持ってくるのでな。気になって」

「じゃあ、これもそのひとつということね、ユウが置いて行ったのよ。すごく芳醇な味わいの……イセラー……とかいったわね。麺の細いうどんのような。あぁ、いますぐにでも食べたい」

「またなんか作ったのか、あの男は。でもお主、たったいま食べたばかりではないのか」
「また作った? ということは、他にもまだおいしいものがあるのかしら。アメノミナカヌシノミコト様?」
「ユウは創意工夫が好きなやつでな、いろいろ……ワシはもう持っておらんぞ?」

「ユウの創作物だったのね。いままでに食べたことのないほどの美味ではあったけど、もう少し量が欲しかったなぁ」
「長年生きているお主がそこまで言うのか!? しまった、少し来るのが遅かったか。イセラーとはいったいどんな食べ物なのだ?」

「まだこのどんぶりに少し残っていますけど、なめてみます?」
「なめるかっ!!」

「ものすごく複雑な味わいのスープだったわ。あのレシピ、盗んでこようっと」
「穏やかじゃないの。それ、ユウのとうきょときょきょかきょきょになっておらんのか?」

「そうでした。まだそんなめんどくさい制度があるのね」
「なくなるわけなかろう。それをなくしたら、お主らの神としての地位も危うくなるのじゃぞ」

「私の地位なんか、もうあってないようなものですけどね。仕方ない。それならあのイセラーってものを、ここで作らせましょう」
「そんなに気に入ったのか。ここで作らせるならワシも協力するぞ。店とか土地とか必要なら提供しようではないか」

 俺の知らないうちに、ここでもラーメン店を格安で出店できそうな状況が、勝手にできあがっているようである。

「それはステキですこと。それならアメノミナカヌシノミコト様もお祭りに出席すればいいじゃないですか。ユウが主催のようですよ」
「この季節にお祭りとは珍しいな。それはミノ国でか?」

「いえ、イセ国ですって」
「イセ国じゃと? だがイセはいま、戦争の真っただ中のはずじゃが?」
「そうなのですか?」

 お前のせいで、とは言えんわな。

「ユウは確かにイセ国でお祭りをやると言ったのじゃな?」
「ええ、それは間違いありませんわ」
「それにお主を誘ったのか。なにかあるな、これは」

「私はイベントを見に来いって誘われました」
「ワシ、誘われておらんのだけど」
「そんなしょんぼりしなくても。別に来るなとも言われてないのでしょう?」

「それはそうじゃな。一族郎党引き連れて遊びに行くとするか」
「そんなことして大丈夫ですか?」

「1年に1日ぐらい、イズモを神無月にしても良いであろう。10月にはここで皆をおもてなしするのじゃから」

「いいと思います!」
「あら、オオクニさん、いたのですか」
「そのラーメンとやら、私がお毒味係をつとめましょう」
「タケは出しゃばるな! いえいえ、その役は私がやりましょう」
「いやいやいや。それは私がしますわ」
「「「じゃあ、俺が」」」」

「やかましい!! 皆、ひっこんでおれ。ワシに毒見なんぞいるわけないじゃろ。だが、お祭りに行くのなら仕事を片付けておくのじゃよ。少しでも残っていたらその者は居残りじゃからな」

「「「了解でさ!!」」」

 昔と違って皆がやる気になっておる。怠けるものは見なくなったのう。変われば変わるものじゃ。それだけでもユウの功績は大きいのに、この上にイセでなにをするつもりじゃろう?



「これでアマテラスはうまくいったノだ?」
「ああ、これでやつは必ず来る。あとはオヅヌとどうやってブッキングさせるか、だが」
「調理でもするノか?」

「それはクッキングだ。できれば試合会場で隣り合わせにしてやりたいものだがな」
「血を見ることになりそうなノだ」

「大衆の目があるのに、そんなことになるわけないだろ。ふたりともお偉いさんだろ?」
「オヅヌは自制すると思うノだが、アマテラスはするだろうか?」

「そう言われると自信がない。剣舞そっちのけで揉められても困っちゃうな。隣同士に座らせるってのはまずいか」
「危険なのは間違いないノだ」

「ケンカされるとそれまでの苦労が無駄に終わってしまう。ケンカをさせないためにはどうするか……」
「考え中ノだ?」

「仲良くまでは無理だとしても、せめてケンカをしない……ん? ケンカをしないか。ケンカをしなきゃいいじゃないか。そうだ! いいことがある!」
「なんか思い付いたノだ?」
「ケンカをさせればいいじゃないか!!」
「お主はいったいなにを言っているノだ?!」

「だから、ケンカをさせないようにするために、ケンカをさせるんだよ!」
「ニホン語でOK?」
「やかましいわっ!」
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