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第3話 めっき
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「これが、お、俺? うっそぉ?!」
「自分を鏡で見て何がウソだよ。そんな面倒くさいウソを誰がつくっていうんだよ」
俺は混乱している。通じない話。腰に剣を差した女子高生(っぽい子)。俺を子供扱いするこの連中をひとりも知らない。VSOPではなくウイルとかいう酒。そしてこの俺の顔。身長。髪型。
俺だって現代に生きる人間だ。ラノベもマンガも多数読んでいる。そろそろ気づくべきときが来たのだ。
鏡は、左右を反対にすることはあってもウソはつかない。これが、今の俺の真実なのだ。
ここは、俺がいた世界とは別のカラクリで成り立つ世界。そう、あの有名な「異世界」なのだ。しかも別の誰かと入れ替わったということを、俺は受け止めないといけないのだろう。
まだまだ疑問は多い。見た目中学生ぐらいの俺が居酒屋で酒を飲んでいたこと。どこかに務めていたらしいこと。それに対して誰も咎めようともしないこと。俺の言葉がそのまま通じていること。俺はこのユウという少年と入れ替わったのか上書きされたのか。
そういう設定は、後から追い追い分かるようになってくるのだろう。だからここでは追求しない。設定説明が面倒くさいからサボっているわけじゃないんだからね?
ということで自分を納得させて俺は考える。ここが異世界だとして、今の俺がしなければいけないことは何だろう。
それは簡単だ。この世界について知ることだ。周りの様子からして、どうやったら帰ることができるのかを聞いても答えられるとは思えない。
そもそも俺を誰かと勘違いしている人たちに、どこへ帰るのだと言われたら答えようがない。
それならば、ここはひとつ。
「じゃあ、記憶喪失ってことで?」
じゃあって何だよ! 自分で言うな!! と全員に思い切り罵倒された。くっ、そんなことぐらいで負けるもんか。あ、そうだ。
「で、困っていることっていったい何だ?」
はっ、と皆が我に返る音がした。これは我ながら名案であった。うまいぐあいに話の腰が折れた。
「そうだった、それを言うためにここに連れてきたんだ」
「いったい俺に何をさせようと」
「あんたは、めっきに詳しいそうだな」
めっき? 詳しいかだと? それはどうだろう。こちらの人の知的水準が分からないから、詳しいよと言ってしまって良いものだろうか。
それよりこの人たちの言うめっきは、本当に俺の知っているめっきのことなのか。メッキ、鍍金。このめっきだよな?
ちなみに、めっきは外来語ではない。鍍金という和製漢語である。だからメッキと書くのは間違いだ。電子部品業界などではもう必須となった表面処理技術のひとつである。それなら多少のことは知っているが。
「詳しいかどうかは分からんが、何をめっきするんだ?」
じじいは、何を言っているのかこのアホは、という顔をした。何を言っているのだこのじじいは、という顔でお返ししてやった。ぐぬぬぬぬ。とにらみ合っていると青年が言った。
「めっきと言えば金めっきに決まっているだろ。それ以外にできるはずないだろ」
つまりは金めっき以外には、めっき技術はない世界だということか。ほら、だんだん設定が出てくるでしょ?
……それはともかくとして、金めっきしかないのなら、おそらくそれは装飾品ということであろう。
「金めっきをさせる側のほうは何だ?」
「ああ、それは剣だよ。この子が持っているような」
といって、双子の片割れに視線を向ける。え? という顔をしたが、空気を察知したのか自分の剣を抜いてテーブルの上に置いた。
置かれた剣を、俺はしげしげしげとひとつ多めに観察する。ソリはなく両方に刃がありほぼ左右対称だ。そして刀身は細く柄にはこてこてとした装飾が施されている。これはレイピアと呼ばれる片手剣であろう。
「材質は鉄だよな。これに金めっきするだけなら簡……重っ!! 何だこれ、めっさ重いぞ」
「これしきのものが重くてどうする。鍛え方が足らんぞ」
はい、鍛えたことなんかありません。それはあっちの優もこっちのユウも同じだったようだ。
「社長、ユウは子供だしデスクワーク専属だから仕方ないですよ。ヤマシタ工房では机上の天才って言われてたんですから」
「けっ。たかだか3kg程度のレイピアひとつ持てないようで、男が勤まるかよ」
「勤まるかどうか、そこのおねーちゃんで試してみましょか?」
わ、わ、わ、ワシの大切な孫娘に手を出しやがったらその首と胴体を切り離してやるからなー、と言ってあばれる爺さんを今度は全員で押さえつけていた。
孫娘だったのかい。ところで、このままではとても不便である。それぞれ自己紹介をしていただこう。
私はハルミ。14才双子の姉だ。身長は164cm、体重はそこそこ。3サイズは秘密だが、ぽんきゅっぽんで名高い騎士の見習いである。
私はミヨシ。同じく14才双子の妹。身長、体重その他も姉さんと同じ。家事手伝いで攻めより受けです。
なんか不適切な単語が混じってないか?
僕はソウ・タケウチ(竹内宗)。タケウチ工房の跡取り息子22才。タケウチ工房は祖父が建てた工房で、主に武器や防具を作っている。しかし最近は大きな戦争もないので、武器はもっぱら装飾用ばかりになっている。
そして最後が
「じじい ボソッ」
ちゃちゃを入れるなぁぁ。ワシがこの工房の創始者で社長のミタケ・タケウチ(竹内御嵩)じゃ。77才独身。息子は家出して行方不明。孫のソウが工房の跡取りとなる。
いや、じじいが独身とかそんな情報いらないから。
「で?」
「ん? どうした、ユウ」
「俺の説明は?」
「自分でやれ!!!!」
「自分を鏡で見て何がウソだよ。そんな面倒くさいウソを誰がつくっていうんだよ」
俺は混乱している。通じない話。腰に剣を差した女子高生(っぽい子)。俺を子供扱いするこの連中をひとりも知らない。VSOPではなくウイルとかいう酒。そしてこの俺の顔。身長。髪型。
俺だって現代に生きる人間だ。ラノベもマンガも多数読んでいる。そろそろ気づくべきときが来たのだ。
鏡は、左右を反対にすることはあってもウソはつかない。これが、今の俺の真実なのだ。
ここは、俺がいた世界とは別のカラクリで成り立つ世界。そう、あの有名な「異世界」なのだ。しかも別の誰かと入れ替わったということを、俺は受け止めないといけないのだろう。
まだまだ疑問は多い。見た目中学生ぐらいの俺が居酒屋で酒を飲んでいたこと。どこかに務めていたらしいこと。それに対して誰も咎めようともしないこと。俺の言葉がそのまま通じていること。俺はこのユウという少年と入れ替わったのか上書きされたのか。
そういう設定は、後から追い追い分かるようになってくるのだろう。だからここでは追求しない。設定説明が面倒くさいからサボっているわけじゃないんだからね?
ということで自分を納得させて俺は考える。ここが異世界だとして、今の俺がしなければいけないことは何だろう。
それは簡単だ。この世界について知ることだ。周りの様子からして、どうやったら帰ることができるのかを聞いても答えられるとは思えない。
そもそも俺を誰かと勘違いしている人たちに、どこへ帰るのだと言われたら答えようがない。
それならば、ここはひとつ。
「じゃあ、記憶喪失ってことで?」
じゃあって何だよ! 自分で言うな!! と全員に思い切り罵倒された。くっ、そんなことぐらいで負けるもんか。あ、そうだ。
「で、困っていることっていったい何だ?」
はっ、と皆が我に返る音がした。これは我ながら名案であった。うまいぐあいに話の腰が折れた。
「そうだった、それを言うためにここに連れてきたんだ」
「いったい俺に何をさせようと」
「あんたは、めっきに詳しいそうだな」
めっき? 詳しいかだと? それはどうだろう。こちらの人の知的水準が分からないから、詳しいよと言ってしまって良いものだろうか。
それよりこの人たちの言うめっきは、本当に俺の知っているめっきのことなのか。メッキ、鍍金。このめっきだよな?
ちなみに、めっきは外来語ではない。鍍金という和製漢語である。だからメッキと書くのは間違いだ。電子部品業界などではもう必須となった表面処理技術のひとつである。それなら多少のことは知っているが。
「詳しいかどうかは分からんが、何をめっきするんだ?」
じじいは、何を言っているのかこのアホは、という顔をした。何を言っているのだこのじじいは、という顔でお返ししてやった。ぐぬぬぬぬ。とにらみ合っていると青年が言った。
「めっきと言えば金めっきに決まっているだろ。それ以外にできるはずないだろ」
つまりは金めっき以外には、めっき技術はない世界だということか。ほら、だんだん設定が出てくるでしょ?
……それはともかくとして、金めっきしかないのなら、おそらくそれは装飾品ということであろう。
「金めっきをさせる側のほうは何だ?」
「ああ、それは剣だよ。この子が持っているような」
といって、双子の片割れに視線を向ける。え? という顔をしたが、空気を察知したのか自分の剣を抜いてテーブルの上に置いた。
置かれた剣を、俺はしげしげしげとひとつ多めに観察する。ソリはなく両方に刃がありほぼ左右対称だ。そして刀身は細く柄にはこてこてとした装飾が施されている。これはレイピアと呼ばれる片手剣であろう。
「材質は鉄だよな。これに金めっきするだけなら簡……重っ!! 何だこれ、めっさ重いぞ」
「これしきのものが重くてどうする。鍛え方が足らんぞ」
はい、鍛えたことなんかありません。それはあっちの優もこっちのユウも同じだったようだ。
「社長、ユウは子供だしデスクワーク専属だから仕方ないですよ。ヤマシタ工房では机上の天才って言われてたんですから」
「けっ。たかだか3kg程度のレイピアひとつ持てないようで、男が勤まるかよ」
「勤まるかどうか、そこのおねーちゃんで試してみましょか?」
わ、わ、わ、ワシの大切な孫娘に手を出しやがったらその首と胴体を切り離してやるからなー、と言ってあばれる爺さんを今度は全員で押さえつけていた。
孫娘だったのかい。ところで、このままではとても不便である。それぞれ自己紹介をしていただこう。
私はハルミ。14才双子の姉だ。身長は164cm、体重はそこそこ。3サイズは秘密だが、ぽんきゅっぽんで名高い騎士の見習いである。
私はミヨシ。同じく14才双子の妹。身長、体重その他も姉さんと同じ。家事手伝いで攻めより受けです。
なんか不適切な単語が混じってないか?
僕はソウ・タケウチ(竹内宗)。タケウチ工房の跡取り息子22才。タケウチ工房は祖父が建てた工房で、主に武器や防具を作っている。しかし最近は大きな戦争もないので、武器はもっぱら装飾用ばかりになっている。
そして最後が
「じじい ボソッ」
ちゃちゃを入れるなぁぁ。ワシがこの工房の創始者で社長のミタケ・タケウチ(竹内御嵩)じゃ。77才独身。息子は家出して行方不明。孫のソウが工房の跡取りとなる。
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「で?」
「ん? どうした、ユウ」
「俺の説明は?」
「自分でやれ!!!!」
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