異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第4話 俺にそっくり

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 仕方がない。俺の自己紹介をしよう。

 人当たりは悪く協調性は皆無。威張っているやつが大嫌いで、人にあれこれ指示されるのはもっと嫌い。自分の言うことを聞かないやつは死ねば良いと、常々思っている。

 合理主義者で直感力に優れデータの解析力も高い。だいたいの問題は集めたデータを見ているだけで原因が分かってしまい、持ち前の発想力で改善案を出し解決する。

 問題をいつまでも放っておく無能なやつには我慢できないので、いつも優しく罵倒してやることにしている。それなのにどうして俺はいつも嫌われるのだろう。

 あったりまえだぁぁ!!! というもう慣れた一斉ツッコみ、乙である。そんな12才である。え? 12才なの、俺?

「あんたはまだ、幼少組でしょ。計算力がすごいっていうので、特例でデスクワークな仕事に就かせてもらったんじゃないの」

 とハルミが言った。この子たちと俺は幼友達であるそうだ。しかし俺は5才でヤマシタ工房とやらに住み込みで働くようになったため、顔を合わせることはめったになくなった。
 そのうち、ハルミは12才で騎士見習いの修行をすることとなり、ますます縁遠くなった、ということだそうだ。

「へぇぇ。俺って神童なのか」
「6才の頃はね。今はただのはた迷惑な机上の天才さん」
「それ、褒めてんのか貶してのかどっち?」

「それがあんたのこれまでの評価だ。だが、うちの工房には今、その才能が必要なんだ。助けてくれないか」
「いいよ、別に」

 え? という空気か部屋を包み込む。なんでだよ。自分で頼むとか言っておいて、俺がOKしたらなんでこんな空気になるんだよ。

「まだ条件とか提示していないが、そんな簡単に言って良いのか、OKという前提で話を進めて良いのか?」
「なにか問題でも?」
「もちろんこちらにはない。でもあんたにとっては、今まで務めたヤマシタ工房は辞めることになるんだが」
「そうなのか。でもいいよ、別に」

 なんか俺、そこでイジメられてたらしいしな。どうせ一面識もない(覚えていないというか知らないというか)人しかない会社だ。なんの未練もない。俺の才能をかってくれるのなら、そちらのほうがいいに決まっている。

「それだと、あんたは今までの給料を1円ももらえないことになるんだが」
「いいよ、べ……なんだって??!!!」

 驚いたのなんのって。

「こっちでも通貨は円なのか!!」

「驚くところがおかしい。なんで通貨なんかに驚いてんだよ」

 ちょっとこの異世界がスキになったぞ。

「まだ酔ってんだから、黙って契約しちゃえばよかったのに。わざわざ教えるなんてアホな跡取りだ」

 このじじいは相変わらず嫌いだ。

「それよか分かっているのか。5才から今までの7年間、ただ働きをしたことになるんだぞ。年季明けは来年だからな」
「そこんとこ、もっとくわしく」

 ソウの解説によればこんな感じだ。この世界では子供は通常なら8才で学校を卒業する。大人ではないが、大人に準ずる扱いになるのだ。男は仕事に就くこともできるし家督を継ぐこともできる。女は嫁に行ける。それが8才だ。

 俺は特別に認められて5才から働いていたらしい。……それって幼児虐待じゃね? 働かされていただけじゃね?

 8才で働きにでるかどうかは、その家庭の事情に左右される。裕福な家であるなら、家庭教師を雇ってさらに教養を深めたり、礼儀作法などと習わせたりすることもある。

 そして13才で完全に大人と同じ権利を得る。元の世界でいう成人のことだろう。

 8才から13才までの5年間は、いわゆる丁稚奉公だ。その間は仕事を覚えるのに費やされるという名目で、わずかなお小遣いが支給される以外は収入はない。

 ユウは捨て子であった。この迫間(ハザマ)村――現在地のことである――の村長宅の前に捨てられていたのだ。実は同じような境遇の子は他にもたくさんいる。村長は村の孤児を代表して育てているようなものだ。

 村長が個人的孤児院の運営者である。慈善活動と言って良いかもしれないが、その子らは8才になればただ同然で働きに出されるのであるから、村にとっては貴重な人材供給の場所でもある。
 その年齢の子供はどの会社でも欲しがる金の卵なのである。

 ユウは5才の頃には計算機を使わず7桁の足し算引き算をこなしていた。日本でのそろばんでいうなら3~4段くらいの技量に相当する。
 同世代の子供たちが虫取りなどに興じるのを横目に、ひたすら読書に励んだ。日に数冊という凄まじい読書量を誇った。

 それらのことが高く評価されて、ヤマシタ工房という村一番の大企業(建築業)に特例でもって丁稚奉公できたのである。
 そして6歳のときには、材木の新しい加工法を編み出して、ヤマシタ工房に大きな利益をもたらしたのだ。机上の天才という二つ名はそのときに付いたものだ。

 しかし、生来の人付き合いの悪さや態度の横柄さがネックとなり、ここ数年は得意なデスクワークではなく、苦手な肉体労働ばかりをさせられていた。

 だが、そんな中でユウはある発明をした。釘や接着剤を一切使わずに、木材を組み合わせるだけで1軒の家を建てることが可能になるという画期的な技術だった。

 だがそのためには高度な加工技術が必要であり、対応できる職人は少なかった。さらに、1軒の家を建てるのに必要な材木は、ユウの工法にすると数十種類にも及んだ。

 現場の作業者にはどれとどれを組み合わせれば良いのか、まったく分からないという問題も起きた。種類が多いということは、それぞれの在庫を常に持たないといけないというジレンマもあった。

 ユウの発明を使った工法で家を建てている最中に、その事件は起こった。現場が拒否したのである。複雑過ぎる組み合わせに、これならただの角材で釘を使ったほうがずっと早いと言い出し、ユウ加工のされた材木をすべて破棄したのである。

 それを聞いたユウは烈火のごとく怒った。なんで俺の言う通りにやれないんだ、加工の形状ぐらい覚えれば良いことだろうと。
 10才児が中年のベテラン作業員にである。

 この件でユウは仕事仲間から総スカンを食らい、発明はお蔵入りとなった。それからユウはあらゆる仕事から外されて、ただ工房の事務所で本を読むだけという身になったのである。

 もちろんそんな境遇がいつまでも続くはずはない。タダ同然で使えるとはいえ、食費の面倒を見るのは会社なのである。少しでも働くと思えばこそ雇っているのに、これでは足手まといにしかならない。だから現場に行かせ下働きばかりをさせていたのだ。

 ヤマシタの社長はそのときはすでにユウが最初にやった発明のことを忘れていた。それが当たり前になっていたからである。コロンブスの卵でも手品でも同じである。ネタが分かって慣れてしまうとそれは当たり前のことになるのだ。

 ユウの食費など、その利益に比べれば微々たるものだ。ユウにそれだけの才能があるのだから、うまく使えばこれから先も利益を出す発明をいくらでもしてくれる、とは社長は考えなかった。
 その利益の上に自分の会社が成り立っているのに、あれはまぐれだと思い込んだのである。

 ユウへの嫌がらせが始まった。この世界の慣例では、丁稚奉公が開けるとそれまでの報酬を慰労金という形でまとめて支払うことになっている。
 勤続年数を考えると(ユウの発明による利益を入れなくても)たいした金額ではない。社長はそれさえも惜しんだ。その前に追い出してしまえ、それが社の方針となった。

 そして陰湿なイジメが続いたことに嫌気が差して、ユウは会社を抜けだし居酒屋に入った。そこで生まれて初めてのウイル(アルコール度4.5%)を飲んだのが、つい先ほどのことである。

 そして、俺と入れ替わった。

 ちなみに、こちらでは酒を飲むのに年齢制限はない。ユウは丁稚ながらも社会人であり、支払い能力さえあれば誰にも咎められることはない。結婚も可能であるし当然SEXも自由だ。

 それにしても。

「そいつはまるで、俺にそっくりだな」

「このページは最初からお前の自己紹介だけどな」
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