異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第13話 ヒキに注目

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「おい、じじい。めっきラインをもうひとつ作ってくれないか?」

 この俺のこのひと言から、会議は活気づいた。というより振り出しに戻ったというか。

「ユウ、あんたも無茶を言うな。もうウチには投資に使える金がないんだ。このまま設備投資を続けると本業が回らなくなる」

 財務の問題かあ。それを持ち出されると反論のしようがない。せっかく思いついた俺の案は、試すこともできず廃案かな。

「ユウ、どういうことだ? もうひとつラインを作って何をする?」

 おや、じじいは乗り気だぞ。

「やってみたいことがあるんだ。うまく行くかどうかは分からないが」
「分からないって、あんたは人ごとだと思って」
「ハルミはちょっと黙ってろ。ユウ、そのやってみたいことを説明してみろ。その内容次第ではワシに考えがある」

 よし、乗ってきた。だが、まだアイデアの段階だ。どこまで話せば良いだろう。たったいま思いついたことだから、熟考する時間がない。

 こういうとき、思いついた計画をすべて人に話すのは良くないのだ。計画が少しでもうまく行かなかったときに面倒なことになる。最悪の場合、そこで打ち切りになることも多い。

 俺はそれを経験で良く知っている。そして、得てして思いつきは思いついた通りには行かない。

 しかし。俺には別の意味で確信がある。この思いつきの「方向」は間違っていないという確信である。途中で微調整は必要になるだろう。でも、この方向に進めて行けば必ず最後にはうまく行く。

 問題はそこまで、このじじいをだまし続けられるかどうかということだ。ええい、ままよ。出たとこ勝負だ。

「下地が鋼だから、金めっきの乗りが悪いと思うんだ」
「それはそうだろうな。普通の鉄ならもっときれいにめっきできるものな。ハルミの剣だったら、ユウの出した条件でそこそこの品質で金めっきができるだろう。だが、剣の材質を変えるわけには行かないぞ」

「それは当然だ。お客さんから預かった剣だからな。だから」
「だから?」
「まず、別の金属をめっきしよう」

 はぁぁぁぁ!!?

 ふむ。この反応からすると、これは新技術のようだな。

「前処理で工夫するのかと思っていたが、めっきの上にまためっきするということか」
「その通り」
「だが、それは……」
「それは?」

「し、しかしだな」
「しかし?」

 ふっふっふ。どうだじじい。ぐぬの音もでまい。

「そ、そんなこと、いままでやったことはない……ぞ」
「そりゃそうだろう。だからこそ、やってみようということだ。新技術の開発ってのは、そういうもんだろ?」

「そ、それで、うまく行く保証はあるの?」

 リスクを嫌う傾向は、女性の方がより強いという。ハルミの心配はもっともだ。ここはひとつ、安心させておくべきであろう。

「まったく、ない」

 ないんかーーーーい!!! とツッコまれた。

 そんなもんがあれば、こんなドキドキハラハラしながら話してねぇよ!! どんだけ俺が不安と戦ってると思ってんだ。と、心だけで返事をする。

「でも、面白いアイデアよね、それ」

 いままで発言したことのないミヨシが言った、リスクを嫌う気持ちの強い女性だが、腹をくくるのは男よりもずっと早いともいう。

 ミヨシさんナイスです、という視線を送った。すごく喜んでいるように見えた。ちょっと怖い。横で睨んでいるハルミはもっと怖い。

「面白い、で商売はできんのだよ」
「元はと言えば、社長が面白そうといって始めたのがめっきだったのでは?」

 やーい。1本とられてやんの。慣れない現実主義者を気取っても、普段の行動を知っている連中には通用しないってことだ。やーい。

 じじいがむすと黙った後を受けて、ソウが言った。

「ユウ、ということは鋼の上に金以外のものをめっきする、ということだな。そのめっき材料に、何かあてはあるのか?」

 そんなもんがあるわけないだろ。たったいま思いついたアイデアなのだぞ。これからいろいろ試してみて、決めるのはそれからだ。

「ああ、ある。そこは俺にまかせてくれ」

 えぇぇぇぇぇ!? これは俺の魂の絶叫である。

 口からのでまかせを言っちゃった。もうなんとでもなりやがれ。

 もしかすると、疲れた俺はつい適当なことを言ってしまったのかもしれない。

 あれ、これ12話と同じヒキ?!
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