異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第45話 婚約破棄?!

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「それではこれで、じゃかすか包丁を作ることにします」

 鋳型が完成した。わずか45分と20秒であった。どうしてこうなったのかと言えば、鋳物はタケウチ工房にとってありふれたものであったからである。つまり、包丁の形になるように作って終わりであった。
 あとは溶けた鉄(ステンレス)をじゃかすか流し込めばいいのだ。

 ということで、ヤッサンの弟子のふたり(いつ紹介すんねん)は、じゃかすかとステンレス包丁作りに精を出しているわけである。

 ……まあ、こういうこともあるさね。

「じゃあ、あとはよろしく頼む。ということで、お前らの紹介はいずれまた今度ということで」
「「えええっ!! 楽しみにしていた人もいたかもしれないのに、酷いっすよ!」」

 大丈夫。誰も楽しみになんかしていないから。そもそも、こんなことを簡単にやってのけたおまいらが悪い。それにこういうことは、多少ひっぱったほうがおもろいねんで。

 そこへ。

「ユウ!!!!」
「あぁびっくりしたぁ。どうした、ここんとこぜんぜん出番のなかったハルミさん」

「悪かったわね。ユウがミヨシばっかり依怙贔屓するからよ。ミヨシには専用の包丁を作っておいて、私との約束はどうなったのよ! もうあと2週間しかないのよ!」
「あと2週間だと?! それはそれは、おめでとうございます」
「だ、だ、誰が出産予定日の話をしてるんだあぁぁ! 剣技大会だ、剣技大会!」

 ちょっとからかっただけなのに、面白い子。

「はぁはぁ。もうそろそろ作ってもらわないと、剣技大会に間に合わないではないか。私は片刃の剣は使ったことがないのだ。練習だって必要だろ」
「分かった分かった。ちょうど錆びない包丁の量産目処はついたし、ミヨシ専用の魔包丁もできたしな。これからはハルミの刀制作に注力するよ、まずは練習用から作らないといけないか」

「そうか、それは良かった。忘れられたのかと思って、私はもう心配……ぐずずっ、で心配で……」

 泣くほどのことかよ! まずは金の算段がついてから取りかかると最初に……ん? ハルミ? 目が乾いてんぞ?

「あれ、バレちゃった。てへぺろ」

 やかましいわ! ミヨシがいらん智恵をつけやがったな。ヘタな演技しなくてもいいから練習をしてろ。

「練習しようにも、いまの私にはこれしかないのだ」

 と言って愛用のレイピアを見せられた。

「そうなのか、これ1本だけしか持っていないのか」
「私の年でそう何本も持てるはずはないだろ。これだけだよ」
「そういうものか、ところでなんかさ」
「なに?」

「最初に見たときより、ちょっと細くなっているような?」
「ああ、それは毎日手入れをしているからな」

「なんで手入れすると細くなるんだよ!」
「削るからに決まっているだろが!!」

「どうして削るんだよ!!!」
「切れなくなったからに決まってるだろ!!!!」

「どうして切れなくなるんだよ!!!!!」
「使って鈍(なま)ったからに決まっているだろ!!!!!!」

 ちょっとタンマ。キリがないからこの辺でやめておこう。!の数が多いほうが勝ちとか、そんな判定基準はないんだぞ。

「そのレイピアで毎日なにを切ってるんだ?」
「そこいらに生えてる木を適当に」
「それは、燃料にするためにってことか?」

「馬鹿な。切ったばかりの木が燃料になるものか。あれは落ちて乾いた小枝や倒木を拾ってくるものだ」
「そりゃそうだよな。ゆるキャンでもそんなようなこと言っていた。じゃあ、なんで?」

「そこに、木があるから?」
「そんな名言っぽいが言い古されたセリフを、よくサラッと言えるもんだな。そんなんで森の木を切るなよ。自然破壊か!」
「剣技の練習だ!!」

 分かった。分かったから!を増やすな。そうでなくても、この作者は!が多すぎると苦情がでてるんだから。

(それにしては、減らすつもりはないようなノだ?)

 あれをやると簡単に文字数が増えてやかましいよ。

「剣技大会って、確かこの街を挙げてやるお祭りの一大イベントって言ってたな?」
「ああ、年に1度の収穫祭があってな。そこで幼少組、少年組、青年組に別れて剣技を披露するんだ。私は今年から少年組だ。気合いがバンバンに入ってんだよ」

 収穫祭。いままで季節には触れてこなかったが、どうやら俺がここに来たとき、季節は夏の終わりごろであったらしい。

 いま不意に思いついたから書いている、というわけではないのだ。決して忘れていたわけでもないのだ。設定は小出しにするという、原理原則に従ってだな。

(その言い訳はまだ長くなるノか?)

 はい、すみません。考えていませんでした。思いつきで書いてまーす。

 ということで、収穫祭である。ここは港町なのであまり実感はわかないが、コメや野菜を作る農家さんも少なからずいる。その人たちにとっては、収穫も終わってやっと一息ついてのびのびとできる、そんなうれし恥ずかしお祭りなのである。

(うれしは分かるが、なんで恥ずかしなノか?)
(人間にはいろいろあるんだよ)

「その剣技大会ってのは、具体的にはなにをするんだ?」
「特に決まったものはない。個人個人が考えて、この1年間で学んだことや身につけた技術を観客の前で披露するんだ。剣技大会という名前にはなっているが、別に剣技には限らない。名前は戦乱の時代の名残だ」

「ハルミは、当然剣技を見せるんだよな? いったいなにをするつもりだ?」
「そ、それなんだが。それも相談に乗ってくれ。まだ決めていないんだ」

「去年はなにをした?」
「去年は木を切った」
「ほほぉ。どんな風に?」
「ステージの真ん中に直径10cmぐらいの木を立てて、それをスパッと」

「切ったのか」
「切れずに10mぐらいすっ飛んで行った……」
「お、おう……」
「剣は思い切り曲がった……」
「おぉ……」
「去年の剣技の中では、一番受けたと大評判に……」
「お……」

「だ、だから! だから今年は絶対にリベンジするのだ! 私は燃えているのだ!」
「分かったから落ち着け。お前のレイピアは、材質はなんだ?」
「鉄」

「えっと、鋼(ハガネ)じゃなくて?」
「鋼は高いから買ってもらえなかった。ただの鉄だ。だけどヤッサンが最終仕上げをしてくれたので、刃はとても良く切れるのだ」

「なるほど。だからマグロは切れるわけだ。だけど、強度がないからある程度の硬さのあるものになると、まるで歯が立たないと」

「そ、その通りだ。ユウ、なんとかしてくれるんだろ? あのダマク・ラカスで私の剣を作ってくれるんだろ?」
「それはダメだ、ハルミ」

「な、なんでダメなのよ!! ミヨシには作ってあげたくせに、私には作れないというのか! どうしてよ。胸のサイズなら同じだぞ。尻は私のほうが大きいぞ。私が婚約者持ちだからか。私がひゃにゃにょにゃにゃ」

 ぐに~んと、指を口に入れて広げてやった。これでもうしゃべれまい。そんなやかましエロいことを言うのはこの口か。

「いひゃいでふ」
「落ち着けってのに。ミヨシのは包丁だ。だから硬ければいいんだよ。それでも限度ってものはあるが、もろいということをそれほど考える必要がないのが包丁だ。分かるか」
「わかひひゃふ」

「だから、硬くするためにダマス……ええいもう、ダマク・ラカス綱を使ったんだ。それはうまくいった。だが、ハルミのは刀だ。もし刀をあれで作って去年と同じことしたら」

「おなひことをひひゃら?」」
「刀が粉々に砕け散る」
「ひょぇぇぇ」

(もういい加減に手を離してやって良いのではないノか)

 こうすると落ち着いて話を聞いてくれるものだから、つい長引かせてしまった。

「以前にもちょっとだけ言ったが、良く切れる刀を作るためには、切る部分の硬さと、それを支える部分の柔軟性の両方が必要なんだよ」
「うぅん、聞いただけでもとても難しそうだ。だけど、ユウはそれができるんだろ?」

 作ったことはないし作り方もろくに知らないから、とても断言はできないが。

「まあ、まかせときな」

 ……なんで断言してるんですかね俺?

 女の子の前で格好つけたがる癖というのは、男の業病のようなものである。そして、失敗してはあとでこっぴどく振られるところまでがワンセットである。

 まあ、今回は相手がハルミだから振られるもなにもない。ただ、少し苦情という風当たりが強くなるぐらいのことで大変危険じゃねぇか!?

 慰めるのはソウの役割だからなんとかしてもらえるとは思うが、俺は黙ってそれを横で見ているだけでこんちくしお。

(ひとり言が多いノだ)
(俺はひとり言で打線が組めるレベルだからな)

「私、願掛けをしているのよ」
「願掛けってどんな風に?」
「うん。今年、もし剣技で失敗したら、ソウとの婚約を取り消すって」

 おいおい。それはあかん、ソウが可哀想すぎるだろ。ハルミの一方的な都合(感情?)でそんな決心をされたとソウが知ったら……。

「どうしたの? 急にキョロキョロして?」
「嫌な予感がするんだ。こういうときは、きっとやつがいる」
「誰よやつって?」

 |柱|ω・`)ノ ヤァ

「ヤァじゃねぇよ! やっぱりいたか、ミヨシ、いつからそこにいた?!」
「じゃかすか作る、辺りからかな」

 それ、ハルミがこの部屋に入ってくる前じゃねぇか。ってかこのページの一番最初じゃねぇか。そんな前から潜んでいたとか、お前は忍者か、匂わない屁か。

「おかげで面白いことが聞けちゃった、えへ」
「えへ、じゃないっての。このことは誰にも話すんじゃないぞ」

「もちろんよ。私はそんなに口の軽い女じゃないわよ」
「そ、そうか。それならいいが。あのシオさん事件以来、俺はちょっと女性不信気味でな」

「私は大丈夫だけど」
「私 は?」
「さっきから、そこで青くなって聞いてるソウはどうなのかしら?」

 お前もいたんかーーい。いたのなら、ハルミをなだめろ。婚約者としての矜持というか責任というか義務があるだろ。ただ青くなっているのが仕事じゃないだろ。

 ふたりが婚約破棄することは別にどうでもいいけど、俺に余計なプレッシャーがかかるのは嫌なのだ。

(ずっと思っていたが、お主の本音はすがすがしいまでにクズなノだ)
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