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第64話 ええっ、それも斬るの!?
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舞台にはゼンシンが上がっている。刀のチェックのためだ。そしてOKの合図とともに刀をハルミに返す。
「これから、この鉄の棒を3本束ねたものを斬ってご覧に入れます」
まだ先ほどの熱気も覚めやらぬ会場は、ハルミのさらなる発言にざわめきを増す。
まさか、まだこの上があるのか。3本だって? それはいくらなんでも無謀だろう。5cmが3本ということは何センチになるんだ? 計算ぐらい自分でしろよ。単純な足し算じゃダメだろ。それよりあの剣だ、おかしくないか? ああ、俺も気づいていた。なんであんなに反っているんだろう。失敗作じゃないのか。それに片刃みたいだな。
よいぞよいぞ。そういううわさ話は大好物だよ。どんどんやってちょうだいませませ。
(ネタが古いノだ)
オウミ、やかましいよ。うわさ話が広まれば広まるほどに、この刀は神秘のものとなる。そうすると、どんなに金を払ってでもその秘密を知りたいという人が現れるい違いない。そしたら高値で売れるのだ、うっしっし。
さあハルミ、あと一踏ん張り、頼むぞ。
舞台に3本の鉄の棒がセットされた。
(ん? ユウ。5cmの鉄の棒が12cmの穴に3本も入るノか?)
(9.33cmの穴* があれば入るよ)
(くっ、この暗算野郎め!)
(伊達にそろばん4段ぐらいの技能の持ち主じゃねぇよ、ふっふっふ)
(なんか悔しいノだ)
ハルミはゆっくりと鉄の棒に近づく。そろそろ間合いに入ったかな、と思う間もなく再びそれは唐突に始まった。
ギンッ。という鈍い音が小さな火花を伴って会場に
(もう、それはいいのではないノか)
(我も、もう飽きたのだヨ)
こらえ性のない魔王たちだなもう。分かったよ、ここはすっとばそう。
見事に寸断された3本の鉄を、アチラが持って会場の人に見せて回る。
手に取って見たいという人には手渡しもする。切り口まで見せれば、もうインチキとかマジックだとか、疑う人もいなくなるだろう。
よくやった、ハルミ。それでいい。もう戻ってきてよいぞ。これから広場に移動してオークションによる即売会……ハルミ? どうした。なんで突っ立ったままだ??? おーい。
「みなの者、聞いてくれ。いま私は鉄を斬って見せた。だが、この中には斬った鉄がニセモノではないかと疑う者もいるのではないか?」
ないない、いないから、そんなやついないから。なんのために切り口を見せたと思ってんだ。軟鉄ではあっても、あれは正真正銘の鉄だ。中をくり貫いてあるわけでも混ぜ物がしてあるわけでもない。これから顧客になろうって人たちに、わざわざ疑惑を持たせてどうするよ。
現場のノリで予定外のことすんじゃねぇよ。やめてくれぇ。誰かハルミを止めてくれえぇぇぁぁぁぁ!!
「そこでこちらから提案だ。この中に自分の剣を斬ってみろと思うものはいないか? この斬鉄のハルミがそれもたたき切って見せようではないか」
もうだめだ、完全に酔ってやがる。自分にだけじゃなくあの刀にもだ。しかも自分のことを斬鉄のハルミとか言ってやがる。ミノウ、あれはお前の責任だからな。
「ユウさん、大丈夫なのでしょうか」
「ゼンシン、俺が知るわけないだろ。俺はアドリブには弱いんだよ!」
しかし会場の反応はいまいちであった。よく考えれば当然のことだった。
自分の持つなけなしの剣をこの場に出して、斬ってくださいなんて言えるやつがそうそういるはずがないのだ。
斬られたらその剣は終わりだ。傷がついただけでも価値は半減だ。そんなリスクを負ってまで、誰が自分の剣を提出などするものか。
よし、このままでいい。申し出がなかったということで終わりにして、オークション会場に。
「分かった。私の剣を提供しよう」
おおおっ!! というざわめきが起こる。ひぃぃぃ!! と俺は悲鳴を上げる。止めてくれよ。どこのどいつだ、そんな酔狂なやつは。
もう会場は完全に暖まったのだ。この温度のまま広場に連れて行き、6本のニホン刀を売りさばけばそれでいいのだ。
それでいいのに。ハルミのアホにこの酔狂おっさんめ。ところで、誰だこいつ?
「あ、あれは。トヨタ侯爵様だ……」
じじいが言った。知り合いか。しかし、なんだそのいかにも金を持ってそうな名前のおっさんは。
「知らんのか。となりの領地で一番の資産持ちとされる貴族様だ。超有名人だぞ」
「そんな人がなんでこんな小さなお祭りに来てんだよ」
「もしかすると、金めっきに関係したことかもしれんな」
「え? 金めっきって。そんなにあの話は広がっているのか?」
「貴族の情報伝達は凄まじいものがあるからな」
ふむ。そうか。これはいい買い手になるかもしれないな。来てくれたことはむしろ好都合だ。だがそれはこの難題をクリアしての話だ。
「たまたまであるが、今ここに1本の剣を持ってきているのだ。それでも良いか?」
「あ、ああ。かまわない。どんな剣だ?」
大金持ちが持っている剣。それはまずいぞ。いくらニホン刀でも限度というものがある。あの鉄の棒は軟鉄だ。だから簡単に斬れたんだ。相手が炭素鋼なら、斬れるかどうか俺にも分からない。たぶん無理だ。
(どんな剣なのだろう、楽しみなノだ)
(貴族が持っているぐらいだから斬馬とぉぉぉぃぃ)
(いい加減にそこから離れろ!)
(ミノウはそればっかりなノだ。我はロンギヌスのやぁぁぁぁぇぇ)
(それは槍だ!)
トヨタ侯爵が従者に命じて持ってこさせたのは、とても短い剣であった。しかし、太さが半端ない。
「これはグラディウスと呼ばれる剣なのだが、やってみるかね?」
さすがのハルミもこれには怖じ気づくだろう。ってか怖じ気づけ。ここで引いても別に恥ではないのだ。それよりこのあとの商売のことを。
「分かった。それも斬って見せよう」
考え……るわけはなかったね。もうシラネ。
*計算式 √3×2.5 + 2×2.5
「これから、この鉄の棒を3本束ねたものを斬ってご覧に入れます」
まだ先ほどの熱気も覚めやらぬ会場は、ハルミのさらなる発言にざわめきを増す。
まさか、まだこの上があるのか。3本だって? それはいくらなんでも無謀だろう。5cmが3本ということは何センチになるんだ? 計算ぐらい自分でしろよ。単純な足し算じゃダメだろ。それよりあの剣だ、おかしくないか? ああ、俺も気づいていた。なんであんなに反っているんだろう。失敗作じゃないのか。それに片刃みたいだな。
よいぞよいぞ。そういううわさ話は大好物だよ。どんどんやってちょうだいませませ。
(ネタが古いノだ)
オウミ、やかましいよ。うわさ話が広まれば広まるほどに、この刀は神秘のものとなる。そうすると、どんなに金を払ってでもその秘密を知りたいという人が現れるい違いない。そしたら高値で売れるのだ、うっしっし。
さあハルミ、あと一踏ん張り、頼むぞ。
舞台に3本の鉄の棒がセットされた。
(ん? ユウ。5cmの鉄の棒が12cmの穴に3本も入るノか?)
(9.33cmの穴* があれば入るよ)
(くっ、この暗算野郎め!)
(伊達にそろばん4段ぐらいの技能の持ち主じゃねぇよ、ふっふっふ)
(なんか悔しいノだ)
ハルミはゆっくりと鉄の棒に近づく。そろそろ間合いに入ったかな、と思う間もなく再びそれは唐突に始まった。
ギンッ。という鈍い音が小さな火花を伴って会場に
(もう、それはいいのではないノか)
(我も、もう飽きたのだヨ)
こらえ性のない魔王たちだなもう。分かったよ、ここはすっとばそう。
見事に寸断された3本の鉄を、アチラが持って会場の人に見せて回る。
手に取って見たいという人には手渡しもする。切り口まで見せれば、もうインチキとかマジックだとか、疑う人もいなくなるだろう。
よくやった、ハルミ。それでいい。もう戻ってきてよいぞ。これから広場に移動してオークションによる即売会……ハルミ? どうした。なんで突っ立ったままだ??? おーい。
「みなの者、聞いてくれ。いま私は鉄を斬って見せた。だが、この中には斬った鉄がニセモノではないかと疑う者もいるのではないか?」
ないない、いないから、そんなやついないから。なんのために切り口を見せたと思ってんだ。軟鉄ではあっても、あれは正真正銘の鉄だ。中をくり貫いてあるわけでも混ぜ物がしてあるわけでもない。これから顧客になろうって人たちに、わざわざ疑惑を持たせてどうするよ。
現場のノリで予定外のことすんじゃねぇよ。やめてくれぇ。誰かハルミを止めてくれえぇぇぁぁぁぁ!!
「そこでこちらから提案だ。この中に自分の剣を斬ってみろと思うものはいないか? この斬鉄のハルミがそれもたたき切って見せようではないか」
もうだめだ、完全に酔ってやがる。自分にだけじゃなくあの刀にもだ。しかも自分のことを斬鉄のハルミとか言ってやがる。ミノウ、あれはお前の責任だからな。
「ユウさん、大丈夫なのでしょうか」
「ゼンシン、俺が知るわけないだろ。俺はアドリブには弱いんだよ!」
しかし会場の反応はいまいちであった。よく考えれば当然のことだった。
自分の持つなけなしの剣をこの場に出して、斬ってくださいなんて言えるやつがそうそういるはずがないのだ。
斬られたらその剣は終わりだ。傷がついただけでも価値は半減だ。そんなリスクを負ってまで、誰が自分の剣を提出などするものか。
よし、このままでいい。申し出がなかったということで終わりにして、オークション会場に。
「分かった。私の剣を提供しよう」
おおおっ!! というざわめきが起こる。ひぃぃぃ!! と俺は悲鳴を上げる。止めてくれよ。どこのどいつだ、そんな酔狂なやつは。
もう会場は完全に暖まったのだ。この温度のまま広場に連れて行き、6本のニホン刀を売りさばけばそれでいいのだ。
それでいいのに。ハルミのアホにこの酔狂おっさんめ。ところで、誰だこいつ?
「あ、あれは。トヨタ侯爵様だ……」
じじいが言った。知り合いか。しかし、なんだそのいかにも金を持ってそうな名前のおっさんは。
「知らんのか。となりの領地で一番の資産持ちとされる貴族様だ。超有名人だぞ」
「そんな人がなんでこんな小さなお祭りに来てんだよ」
「もしかすると、金めっきに関係したことかもしれんな」
「え? 金めっきって。そんなにあの話は広がっているのか?」
「貴族の情報伝達は凄まじいものがあるからな」
ふむ。そうか。これはいい買い手になるかもしれないな。来てくれたことはむしろ好都合だ。だがそれはこの難題をクリアしての話だ。
「たまたまであるが、今ここに1本の剣を持ってきているのだ。それでも良いか?」
「あ、ああ。かまわない。どんな剣だ?」
大金持ちが持っている剣。それはまずいぞ。いくらニホン刀でも限度というものがある。あの鉄の棒は軟鉄だ。だから簡単に斬れたんだ。相手が炭素鋼なら、斬れるかどうか俺にも分からない。たぶん無理だ。
(どんな剣なのだろう、楽しみなノだ)
(貴族が持っているぐらいだから斬馬とぉぉぉぃぃ)
(いい加減にそこから離れろ!)
(ミノウはそればっかりなノだ。我はロンギヌスのやぁぁぁぁぇぇ)
(それは槍だ!)
トヨタ侯爵が従者に命じて持ってこさせたのは、とても短い剣であった。しかし、太さが半端ない。
「これはグラディウスと呼ばれる剣なのだが、やってみるかね?」
さすがのハルミもこれには怖じ気づくだろう。ってか怖じ気づけ。ここで引いても別に恥ではないのだ。それよりこのあとの商売のことを。
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