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第79話 見えない刀
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見慣れた練習場に、見慣れた鉄の棒が設置……待てこら。
「おいおい。いきなり鉄を斬る気かよ!」
「ハルミ、それはいくらなんでも無謀だろう。いつもの丸太にしておきなさい」
じじいがまっとうなことを言っている。俺と意見が合うなんていつ以来だ?
「まぁまぁ。ここは黙って見ていてくださいよ、皆さん。丸太切りはこのあとでお目にかけますから」
そう言ったのはヤッサンだ。ハルミのやることには信用できないが、ヤッサンが言うと説得力が違う。ここは、黙ってみているべきところなのだろう。
そんなことを知ってか知らずか、ハルミの表情はいつもより紅潮しているように見える。剣技大会のときでも見せなかった興奮ぶりだ。
そしていつものコピペ……はもう止めておくとして、ハルミが鞘に手をかける。
おいおい。その位置では刀が届くはずないだろ。それはハルミのいつもの間合いよりも遠いぐらいだ。あの短い刀で届くはずがなかろう。
それとも、そこからさらに踏み込む新技なのか、まさかその小刀を投げつける技を開発し……キンっ!
届きそうにない位置からハルミの刀が走ると、短い金属音を残して、鉄の棒は切り口から滑るように真下に落ちた。踏み込むことも投げることもなかった。いつもの位置で、いつものスイングである。それなのに鉄が斬れた。
しかも斬った鉄が真下に落ちた? そんな見事に斬れたのか。まるでワラの束を切ったときのようだ。
「いま、どうやって切ったんだ?」
「一瞬、わずかに火花が散ったようには見えたが、あの位置から届くはずはないよな」
「おいオウミとミノウ。お前らいま、なんか変なことしなかっただろうな?」
「してない、してない、してないノだ。なんでも我らのせいにするな。あれは確かにハルミが切ったノだ」
「なんだ変なこととは、失敬な。なにもできるはずがないヨ。我らもあの刀を見るのはいまが初めてだし。結果が怖くてあれ以来近づかないようにしていたのだから」
なんの結果が怖いんだ? しかし、なさけない魔王もあったものである。
真っ先に動いたのはヤッサンだった。そして切り口を皆に見せるように突きつける。
「どうだ、これ。見事なもんだろ」
俺は切り口を確認するために鉄の棒に近づく。そして差し出された切り口に触って見る。冷たいままだ。通常なら、飛び散った火花の分くらいは暖かくなっているものだが、その様子はない。
それどころか、この切り口で手が切れるのではないか、というぐらい見事に切れている。かえりもなく見事なエッジである。黒曜石*を叩いて割ったときのような切り口だ。
*黒曜石:非常に硬く割ると鋭利な刃物のようになる。縄文時代にはナイフややじりなどに使われた。
いままでに作ったニホン刀で丸太を斬った場合でも、ここまでの切れ味を出したものはない。俺は改めてハルミの刀を見る。短いままだ。届くはずのない刀が、鉄をこんな見事に斬ってみせた。
これが本当の斬鉄刀なのか?
「どうやったんだ? 俺には見えなかったぞ」
「ハルミはいつものように、この刀を振っただけだ。斬ったのは間違いなくあの刀だよ」
「どうして、そんなことができる?」
「それは、我がかけた魔法のおかげなノだ」
「なにを言う。我の魔法が効いてるに決まっているヨ」
うまくいったとなると、お前らは態度急変だな。だが、俺が知りたいのはそんなことじゃない。
「ハルミ。届いていないはずの刀が、届いた理由を教えてくれないか」
技術者としての俺の興味はその1点である。切れ味も確かにすごいが、それはいままでのニホン刀の延長線上にある結果にすぎない。
俺の興味は、あの短い刀がどうして鉄の棒に届いたのか、である。それは常識の延長線上にはない現象だ。
「私にも分からない。だけど、ヤッサンがいつもの位置でいつものように振って見ろ、って言うものだからその通りにしただけなんだ。そしたら簡単に斬れちゃった。いまはそれを再現しただけだ」
「斬れちゃったっておま……。じゃあヤッサン、どういうことか教えてくれ。分かっているんだろ?」
「実は、この刀を打っているときに、不思議なことが起こったんだ」
と言ってヤッサンはその顛末を語った。
「ヤッサン。魔鉄ができました。できましたけど……」
「おう、ゼンシンできたか。なんだ、どうした?」
「ええ、この魔鉄は分類ができないようです」
「ミノウ様に魔法をかけてもらった鉄だよな」
「えっと、オウミ様も魔法をかけたようなことを言われていましたが」
「そうなのか。聞いてた話と違うな。まあいい、それで、その鉄はいつものように4つには分けられないということか?」
ゼンシンはまだ6分割の仕方を教わっていないため、できる分類は4つまでである。
銑鉄は大きな鉄の塊ではなく、破片の状態で存在している。
オウミの覚醒魔法により還元されてできた鉄は、最初の段階では塊であるが、それがすべて同じ品質のものではない。
その塊をゼンシンが加熱し伸ばし、冷えてからそれを叩く。そうすると、簡単に割れるものやそうでないものなど、多種の鉄が存在していることが解るのだ。
ゼンシンは、その硬さや割れ具合などで4つに分類して、ヤッサンに供給することになっている。
「いえ、それが4つどころか、ひとつしかないのです」
「え? 硬いのとか柔らかいのさえもないのか?」
「ええ、叩いても砕いても同じなのです。しかもスラグさえでませんでした。すべてがこの真っ黒な鉄になりました。試しに少しだけ溶かしてもみましたが、それでも違いが見つけられませんでした」
「スラグさえ……それじゃ歩留まり100%じゃないか。そんなことがあるのか……。まずは見せてくれ」
「はい、これです。ヤッサンには分かりますか?」
「ふむ。これもこれも、同じものにしか見えないな。接着用なら叩くと音が違うのだが、どれも同じ音だ。だけど、叩いた音が妙に高いな」
「音が高い、のですか?」
「ああ、甲高い音がする。これじゃまるで風鈴だ」
「ほんとだ、キレイな音がしますね」
「分類は不可能だ、諦めよう」
「それではどう組み合わせますか?」
「いや、組み合わせる必要はないだろ。どうせ、すべてが魔鉄だ。これを全部溶かして1本の刀を作ろう。それがニホン刀になるかどうかは、神様の……あ、魔王様の思し召しか」
「はい、そうですね。それしかなさそうです」
そうして必要な量の鉄を使って、ヤッサンが叩いて伸ばしてニホン刀を作った。
その段階までは通常通りだった。叩いてゆくと色も普通の鉄の色になった。ただ、魔鉄を打つヤッサンは、ずいぶんと扱いやすい鉄だなというイメージを持った。
自分が想像した形に簡単に変形してくれるのだ。だからこれは柔らかすぎて、刀としては使い物にならないかもしれないという危惧を抱いた。
「オウミヨシの場合は、磨きをしているときに色が真っ黒になった。しかし今回はそこでもなんの変化も見られなかったんだ」
「長さもか?」
「ああ、長さも形もいつものニホン刀そのものだった。ただ、少しだけ軽い感じはしたかな。だからといってそんな短剣のレベルではないが」
「それよりも、色の変化が見られないのがおかしいとは思った」
「最後まで変化はなかったようだな。色は」
「ああ、そうだ。色はな」
「そのあとはゼンシンのほうが詳しいだろ?」
「はい、そうですね。ここからは僕のほうから説明します。ヤッサンから受け取ったニホン刀に、いつものように泥を塗って焼き入れ専用の窯の中に入れました」
「焼き入れ専用の窯? なんてあったか?」
「あ、それは僕が作りました。温度が下がらないように周りを粘土で囲って、風を送りやすくしただけの簡単な窯ですが」
「こいつのアイデアと実行力にはいつも驚かされるよ。最初はかまどの中で火をたいて突っ込んでいたのだが、それだと熱効率が悪いと言って作りおった」
ヤッサンの弟子を見る目が微笑ましい。
「焼き入れは、いつも通りにできたんだな」
「はいそうです。ところが窯の中でおかしなことが起こったんです」
「そこでか。どんな風にだ?」
「刀が見えなくなりました」
「は? 短くなったんじゃなくて?」
「はい。焼き入れするときは、刀のなかご*の部分を火箸で挟んで持つんですが、その部分は見えてました。ただ、火の中にある部分だけが見えなくなったのです」
*なかご:刀の柄を差し込むための部分。通常、目釘という穴が開けてある。
「目の錯覚?」
「最初は僕もそう思いました。でもどれだけ見てもなにもないようにしか見えませんでした。重さは確かに手で感じていましたから、なくなってはいるはずはありません。魔鉄だからどんな色になるのか分からないとヤッサンから聞かされていましたので、もしかしたら透明になったのかと思ったりしました」
「ふむふむ。興味深い話なノだ」
「見えない刀とか、わくてかなのだヨ」
お前ら、自分たちに当事者責任があることを忘れているだろ。
「そして取り出すと、それは真っ赤に焼けた鉄の色でした。いつも通りです。そしてすぐさま水の中にじゅぅっと」
「焼き入れしたわけだな」
「はい。その瞬間にこんな風に」
と、ハルミの刀を指さして言った。
「なりました」
「それがいま、ハルミの手にちんまりと持たれたてる刺身包丁誕生の瞬間だっだだだだだ。小指は逆方向に曲げるなって言っただろ!!」
「いくらユウでも、私の愛刀をバカにしたら許さない」
「分かった分かっただから離せ!! また乳揉むぞ!」
「ああ、これはなにか失敗したな、と思いました」
お前は冷静か。こっちにはツッコみなしか。
「それでヤッサンを呼んでふたりで観察したんです」
「俺もそれを見たときは思わず笑ってしまったよ。なんか可愛くてな」
「可愛い刀か、なるほど確かに可愛い。これはハルミよりもオウミやミノウに似合いそうだな」
「持てないことはないノだ。ノだが、ハルミが手放すようにはとても思えんノだ」
ハルミは鬼の形相で、刀を持ったままこっちを睨んでいる。取り上げやしないから心配すんな。ってか、なんで俺だけ睨む?
「ゼンシンから受け取った刀だが、持った感触も短剣そのものだった。最初にあったはずの重さはどこへいったのか、考えられることはひとつしかない」
「そうです。重さまで減ったのなら、焼き入れで折れたとしか考えられません。しかし、それにしては見事に刃がついたままです」
「おかしいな、と思いながら、ちょっと刀を振ってみたんだ。手首でちょいちょっと、軽くな」
「異変はそのとき起こりました」
異変ってなんだ? もったいつけて次話にまで引っ張るほどの大異変なのか??
「おいおい。いきなり鉄を斬る気かよ!」
「ハルミ、それはいくらなんでも無謀だろう。いつもの丸太にしておきなさい」
じじいがまっとうなことを言っている。俺と意見が合うなんていつ以来だ?
「まぁまぁ。ここは黙って見ていてくださいよ、皆さん。丸太切りはこのあとでお目にかけますから」
そう言ったのはヤッサンだ。ハルミのやることには信用できないが、ヤッサンが言うと説得力が違う。ここは、黙ってみているべきところなのだろう。
そんなことを知ってか知らずか、ハルミの表情はいつもより紅潮しているように見える。剣技大会のときでも見せなかった興奮ぶりだ。
そしていつものコピペ……はもう止めておくとして、ハルミが鞘に手をかける。
おいおい。その位置では刀が届くはずないだろ。それはハルミのいつもの間合いよりも遠いぐらいだ。あの短い刀で届くはずがなかろう。
それとも、そこからさらに踏み込む新技なのか、まさかその小刀を投げつける技を開発し……キンっ!
届きそうにない位置からハルミの刀が走ると、短い金属音を残して、鉄の棒は切り口から滑るように真下に落ちた。踏み込むことも投げることもなかった。いつもの位置で、いつものスイングである。それなのに鉄が斬れた。
しかも斬った鉄が真下に落ちた? そんな見事に斬れたのか。まるでワラの束を切ったときのようだ。
「いま、どうやって切ったんだ?」
「一瞬、わずかに火花が散ったようには見えたが、あの位置から届くはずはないよな」
「おいオウミとミノウ。お前らいま、なんか変なことしなかっただろうな?」
「してない、してない、してないノだ。なんでも我らのせいにするな。あれは確かにハルミが切ったノだ」
「なんだ変なこととは、失敬な。なにもできるはずがないヨ。我らもあの刀を見るのはいまが初めてだし。結果が怖くてあれ以来近づかないようにしていたのだから」
なんの結果が怖いんだ? しかし、なさけない魔王もあったものである。
真っ先に動いたのはヤッサンだった。そして切り口を皆に見せるように突きつける。
「どうだ、これ。見事なもんだろ」
俺は切り口を確認するために鉄の棒に近づく。そして差し出された切り口に触って見る。冷たいままだ。通常なら、飛び散った火花の分くらいは暖かくなっているものだが、その様子はない。
それどころか、この切り口で手が切れるのではないか、というぐらい見事に切れている。かえりもなく見事なエッジである。黒曜石*を叩いて割ったときのような切り口だ。
*黒曜石:非常に硬く割ると鋭利な刃物のようになる。縄文時代にはナイフややじりなどに使われた。
いままでに作ったニホン刀で丸太を斬った場合でも、ここまでの切れ味を出したものはない。俺は改めてハルミの刀を見る。短いままだ。届くはずのない刀が、鉄をこんな見事に斬ってみせた。
これが本当の斬鉄刀なのか?
「どうやったんだ? 俺には見えなかったぞ」
「ハルミはいつものように、この刀を振っただけだ。斬ったのは間違いなくあの刀だよ」
「どうして、そんなことができる?」
「それは、我がかけた魔法のおかげなノだ」
「なにを言う。我の魔法が効いてるに決まっているヨ」
うまくいったとなると、お前らは態度急変だな。だが、俺が知りたいのはそんなことじゃない。
「ハルミ。届いていないはずの刀が、届いた理由を教えてくれないか」
技術者としての俺の興味はその1点である。切れ味も確かにすごいが、それはいままでのニホン刀の延長線上にある結果にすぎない。
俺の興味は、あの短い刀がどうして鉄の棒に届いたのか、である。それは常識の延長線上にはない現象だ。
「私にも分からない。だけど、ヤッサンがいつもの位置でいつものように振って見ろ、って言うものだからその通りにしただけなんだ。そしたら簡単に斬れちゃった。いまはそれを再現しただけだ」
「斬れちゃったっておま……。じゃあヤッサン、どういうことか教えてくれ。分かっているんだろ?」
「実は、この刀を打っているときに、不思議なことが起こったんだ」
と言ってヤッサンはその顛末を語った。
「ヤッサン。魔鉄ができました。できましたけど……」
「おう、ゼンシンできたか。なんだ、どうした?」
「ええ、この魔鉄は分類ができないようです」
「ミノウ様に魔法をかけてもらった鉄だよな」
「えっと、オウミ様も魔法をかけたようなことを言われていましたが」
「そうなのか。聞いてた話と違うな。まあいい、それで、その鉄はいつものように4つには分けられないということか?」
ゼンシンはまだ6分割の仕方を教わっていないため、できる分類は4つまでである。
銑鉄は大きな鉄の塊ではなく、破片の状態で存在している。
オウミの覚醒魔法により還元されてできた鉄は、最初の段階では塊であるが、それがすべて同じ品質のものではない。
その塊をゼンシンが加熱し伸ばし、冷えてからそれを叩く。そうすると、簡単に割れるものやそうでないものなど、多種の鉄が存在していることが解るのだ。
ゼンシンは、その硬さや割れ具合などで4つに分類して、ヤッサンに供給することになっている。
「いえ、それが4つどころか、ひとつしかないのです」
「え? 硬いのとか柔らかいのさえもないのか?」
「ええ、叩いても砕いても同じなのです。しかもスラグさえでませんでした。すべてがこの真っ黒な鉄になりました。試しに少しだけ溶かしてもみましたが、それでも違いが見つけられませんでした」
「スラグさえ……それじゃ歩留まり100%じゃないか。そんなことがあるのか……。まずは見せてくれ」
「はい、これです。ヤッサンには分かりますか?」
「ふむ。これもこれも、同じものにしか見えないな。接着用なら叩くと音が違うのだが、どれも同じ音だ。だけど、叩いた音が妙に高いな」
「音が高い、のですか?」
「ああ、甲高い音がする。これじゃまるで風鈴だ」
「ほんとだ、キレイな音がしますね」
「分類は不可能だ、諦めよう」
「それではどう組み合わせますか?」
「いや、組み合わせる必要はないだろ。どうせ、すべてが魔鉄だ。これを全部溶かして1本の刀を作ろう。それがニホン刀になるかどうかは、神様の……あ、魔王様の思し召しか」
「はい、そうですね。それしかなさそうです」
そうして必要な量の鉄を使って、ヤッサンが叩いて伸ばしてニホン刀を作った。
その段階までは通常通りだった。叩いてゆくと色も普通の鉄の色になった。ただ、魔鉄を打つヤッサンは、ずいぶんと扱いやすい鉄だなというイメージを持った。
自分が想像した形に簡単に変形してくれるのだ。だからこれは柔らかすぎて、刀としては使い物にならないかもしれないという危惧を抱いた。
「オウミヨシの場合は、磨きをしているときに色が真っ黒になった。しかし今回はそこでもなんの変化も見られなかったんだ」
「長さもか?」
「ああ、長さも形もいつものニホン刀そのものだった。ただ、少しだけ軽い感じはしたかな。だからといってそんな短剣のレベルではないが」
「それよりも、色の変化が見られないのがおかしいとは思った」
「最後まで変化はなかったようだな。色は」
「ああ、そうだ。色はな」
「そのあとはゼンシンのほうが詳しいだろ?」
「はい、そうですね。ここからは僕のほうから説明します。ヤッサンから受け取ったニホン刀に、いつものように泥を塗って焼き入れ専用の窯の中に入れました」
「焼き入れ専用の窯? なんてあったか?」
「あ、それは僕が作りました。温度が下がらないように周りを粘土で囲って、風を送りやすくしただけの簡単な窯ですが」
「こいつのアイデアと実行力にはいつも驚かされるよ。最初はかまどの中で火をたいて突っ込んでいたのだが、それだと熱効率が悪いと言って作りおった」
ヤッサンの弟子を見る目が微笑ましい。
「焼き入れは、いつも通りにできたんだな」
「はいそうです。ところが窯の中でおかしなことが起こったんです」
「そこでか。どんな風にだ?」
「刀が見えなくなりました」
「は? 短くなったんじゃなくて?」
「はい。焼き入れするときは、刀のなかご*の部分を火箸で挟んで持つんですが、その部分は見えてました。ただ、火の中にある部分だけが見えなくなったのです」
*なかご:刀の柄を差し込むための部分。通常、目釘という穴が開けてある。
「目の錯覚?」
「最初は僕もそう思いました。でもどれだけ見てもなにもないようにしか見えませんでした。重さは確かに手で感じていましたから、なくなってはいるはずはありません。魔鉄だからどんな色になるのか分からないとヤッサンから聞かされていましたので、もしかしたら透明になったのかと思ったりしました」
「ふむふむ。興味深い話なノだ」
「見えない刀とか、わくてかなのだヨ」
お前ら、自分たちに当事者責任があることを忘れているだろ。
「そして取り出すと、それは真っ赤に焼けた鉄の色でした。いつも通りです。そしてすぐさま水の中にじゅぅっと」
「焼き入れしたわけだな」
「はい。その瞬間にこんな風に」
と、ハルミの刀を指さして言った。
「なりました」
「それがいま、ハルミの手にちんまりと持たれたてる刺身包丁誕生の瞬間だっだだだだだ。小指は逆方向に曲げるなって言っただろ!!」
「いくらユウでも、私の愛刀をバカにしたら許さない」
「分かった分かっただから離せ!! また乳揉むぞ!」
「ああ、これはなにか失敗したな、と思いました」
お前は冷静か。こっちにはツッコみなしか。
「それでヤッサンを呼んでふたりで観察したんです」
「俺もそれを見たときは思わず笑ってしまったよ。なんか可愛くてな」
「可愛い刀か、なるほど確かに可愛い。これはハルミよりもオウミやミノウに似合いそうだな」
「持てないことはないノだ。ノだが、ハルミが手放すようにはとても思えんノだ」
ハルミは鬼の形相で、刀を持ったままこっちを睨んでいる。取り上げやしないから心配すんな。ってか、なんで俺だけ睨む?
「ゼンシンから受け取った刀だが、持った感触も短剣そのものだった。最初にあったはずの重さはどこへいったのか、考えられることはひとつしかない」
「そうです。重さまで減ったのなら、焼き入れで折れたとしか考えられません。しかし、それにしては見事に刃がついたままです」
「おかしいな、と思いながら、ちょっと刀を振ってみたんだ。手首でちょいちょっと、軽くな」
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