異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第101話 じっくり観察を

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「おおっ。ふと気づいたらもう101話なノだ」
「毎日更新乙であるヨ」
「これも我らのがんばりのたまものなのだゾヨ」

 勝手なこと言ってんじゃねぇよ! ご愛読ありがとございます。この話、まだまだ続きます。


「さて。こっちの準備は着々と整っているぞ。そっちはどんな感じだ、エース」
「ええ? ユウ。もうできたって? まさかそんな早く?」

「こっちはノズルさえできてしまえば、設置するだけだからな。もう、ネジ穴は開いているから、はめ込んであとは水量調整するだけで完成だ」

「レクサス、工事を急がせてくれ。ノズル斑はもうできちゃってるらしいぞ」
「分かってますよ。目一杯急がせてます。だけど、あと3日は必要ですね」

 まだ3日かかるか。今日が工事開始の初日だから、延べ4日ってことか。壁を作り直しているのだから、そんなもんだろうなぁ。

「そ、そんなもんって。ユウ様、これだどれだけ大変な工事が分かってるんですか」
「え? 知らないよレゴリス。だけど最初に、全部作り直したら2週間って言ってたじゃないか。それで壁の長さが1/3になったのだから、ざっくり5日ぐらいでできる計算だろ? それを急がせて4日ぐらいになったのなら、だいたい良い線じゃないの?」

「レクサスです。月の石じゃありません……え? あ、そう、まあ計算ではそうですけど」

(どうしてこのお方はこんなに計算が速いのだろう。まだ元服前だというの不思議な子だ。異世界ってのはそういう人間ばかりがいるところなのだろうか?)

 壁の長さが1/3になったから、工期も1/3になるだろうってのは強引な計算だ。配管を考えればそんな単純計算ってわけにはいくまい。
 だが、概算なんだから細けぇこたぁ良いんだよ。だいたいあってりゃ世の中回るんだ。

(大げさな言い方をすれば、フェルミ推定をしたとも言えます)

 しかし、こちらが完了したというのはエースの勘違いである。今朝はまだ100個ほど届いただけだ。

 しかもどうしても吹きの悪いノズルも混じっているので、それをリジェクトしながら設置して、完了したのは90個ほどだ。設置箇所はまだ半分以上残っている。

 だが、この分なら明日には残りの150個が届くだろう。それも歩留まりが90%とすれば、30個ほどが保守用部品となる。それだけあればしばらくは保つだろう。これはサービスだ。在庫が残り少なくなったら発注してもらえば良い。

 最初はいちいち配管に接続して実施していたノズルの選別も、洗い場の蛇口にホースをつないでノズルにお湯を通すことで選別が可能になった。おかげで100個を1時間で設置できる手順が完成したのだ。

 この方法に気づいたのはアチラだった。うむ、いい弟子に育ちつつあるな。そのおかげで、ノズルの設置時間はほぼ半減した。明日、残りの分が届けばすぐに終わるだろう。あとは水量の調節だけだ。

 ちなみに不埒者対策であるが、それは簡単なことだ。受付で宿泊名簿に記入してもらうときに、宿泊者ごとにラベルを渡す。それがこの旅館におけるその人の番号だ。

 そして、入浴の際にはその番号のロッカーに衣類を入れてもらう。ラベルは鍵になっていて、それを身につけて入場してもらうのだ。場所は手首でも首からかけてもいい。

 もし、男湯から女湯に(その反対は考えなくていいよね?)噴水を乗り越えようとするやつがいたら、見つけた人にそのラベルのナンバーを通報してもらう。

 その瞬間、そのナンバーのロッカーはロックされる。不埒ものは裸のまま外にでるか、そのままお縄になるのを待つか、それしかなくなる。

 そして罰金を課す。こういう場合、罰則ない規則では意味がないのだ。いくらいにするのかは旅館にまかせることにしたが、宿泊料金の倍ぐらいは徴収してもらいたいものだ。その高さがそのまま抑止力となる。

 支払いを拒否したら警察に通報である。そこでこってり絞られれば良い。さらに、犯人の個人情報は近隣温泉地と共有し、この辺りの温泉地にはすべて出禁(二度と泊まれない)処置とする。

 その前に、この水流を乗り越えようとする猛者がいるかどうか疑問だけどな。誰もがつい手で触ってみたくはなるだろうが、その瞬間に(男としての)殺人的圧力の前にひれ伏すことであろう。性転換を望んでいる人がいたら知らんけど。

 ということで今日から3日間。することがなにもない。どないしよ? 完成状態を確認する必要があるから帰るわけにもいかないし。

 タケウチの他の連中は、壁の設置を手伝っているが、俺にはやれることが全然ない。暇だ。そこにミヨシがやってきた。

「ユウ。いまなにしてる?」
「あ? ああ、ミヨシか。ひまぽよ」
「なにそれ?」

 あ、しまった。俺が広めてどうするよ。

「いや、違う。暇だなって思って」
「そうだろうと思った。こちらも手が空いてる人がいるので、侯爵が出かけないかってお誘いがあったのよ。ユウも付き合ってよ。私も馬車が出るまで暇なの」

 ノズル設置隊はもう仕事がない。壁作りを手伝っていた連中にしても、最後の仕上げの段階に入ると資材を運んだりする人手はそれほど必要でないらしい。

 ましてや、切るしか脳のないハルミに至ってはすでに粗大ゴミだ。放っておくとまた押し入れに籠もりかねない。

「おっ、近くに遊べるような場所があるのか?」
「侯爵様が近くのお寺巡りしないかって言ってるのよ」

「ふーん。行ってくれば? いだだだだだ」
「ひまぽよなあんたが行かないでどうすんのよ!」

「いだだ。耳を引っ張るなっての。俺にはそんな爺臭い趣味はねぇよ。そういうのが好きなのはゼンシンぐらいだろ」
「ゼンシンは工房に戻っちゃってるしね。私もそんなの全然知らないのに侯爵に誘われちゃったのよ」

「なに。エースがミヨシを誘っただと? なんというか、けしからん?」
「なんで?マークがつくのよ。でも、あの人の狙いは私じゃないのよ」

「それなら良い……なにが良いんだ?」
「なにをひとりで完結してるのよ。どうやら侯爵様はハルミ姉さんにお熱みたいなのよ」

 なにその歪んだ三角関係。ソウに勝ち目がないじゃないか。

「あららマジでか。しかしハルミを誘いたいのにミヨシを誘っているのか? なんつーまどろっこしいことを」
「一番暇なハルミ姉さんを私に誘えってことよね。その回りくどさが貴族たるゆえんよねぇ」

 それにしたって迂遠すぎるだろ。この姉妹、仲が良いとは言ってもいつも一緒にいるって感じじゃないのに。

 まるで、将を射んとする者がまず馬の蹄鉄を打つ、ぐらいに回りくどい。

「それでは永遠にたどり着けそうにないヨ」
「ミノウ様もそう思われますよね。あの人、ああ見えて女性には奥手なのかしら」
「へぇ。やり手で通ってると思っていたエースに意外な弱点があったな。これは将来使えるネタになるかな」

「なにに使うのよ、そんなもの。そういうわけだから、一緒に行こうよ。ハルミ姉さんを私が誘って3人で行ったら、私がひとりで邪魔者になっちゃうじゃないの」

「うにゃぁぁ。気が進まないけど、ひまぽ……暇なのは確かだしな。行くとするか」
「良かった。じゃあ、4人で行きましょう!」

 なんだかミヨシが嬉しそうだ。今日はじっくりとふたりで。

 エースとハルミを観察しよう。

「そういうことじゃ、ないと思うのだヨ」
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