異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第116話 ある意味危険な魔人の登場

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「お前は魔王のくせに、初級魔法である召喚魔法も知らないのか?」
「俺は医者だと言っておるだろうが。医療に関係ない魔法なんぞに興味はないのだ」

 きょ、きょおぉみぃ?

「きょ、興味がないと学ばないなんてことが、ここではアリなのか。許されるのか。だから文字も発達しないのか。学校の必須科目になっていそうなものなのに……ん? クラークは学校は行ってないのか?」
「行ったよ」
「なんでそこで教わらない?」

「ユウ、こやつが通ったのは普通の人間の学校だ。そこでは魔法なんてカリキュラムはないヨ」
「そうなのか。だから読み書きはできるんだな。じゃあ魔法学校ってのは?」

「それは魔法の専門学校だ。俺の家は代々ずっと医者の家だから、最初から一般の学校に行かされていた。本が読めなくては医者になれないからな。魔法が使える子供だということは分かっていたと思うが、それだけで魔法学校に行かされはしなかった。俺も特に望まなかったし。だいたい魔法学校は就職率が低いしな」

 世知辛いな、おい。

「それで、どうやって魔法を学んだんだ?」
「図書館で本を読んでたら、自然にできるようになった」

 天才かよ!!

「魔王だよ?」

 分かったから。妙な自慢をするな。

「しかし、魔法の本を読んだのなら、召喚魔法なんて最初のページに出てくるものだろうヨ。なんでそれをスルーした?」
「言っただろ。俺は治療に使える魔法を探してたんだよ。治療に関係ない魔法なんか興味はない」

「きょ、きょっ、きょかきょきョ?」
「ホトトギスの泣き声になってんぞ」

「クラークは興味のあること以外にはまったく関心を示さないやつだ、という設定も終わったことだし、話を本筋に戻そう」
「設定ってなんだ?」

「そこはツッコまないの。しかしそれなら話は簡単じゃないか。ミノウ、クラークに召喚魔法を教えてやれよ。それで眷属を何人が作ってもらったら俺たちの用はなくなる。それを見届けたら帰ろう」

「召喚魔法は初級から上級まであるのだヨ。クラークに初級中級なんかは必要ないだろうから、上級だけ教えるのだヨ」
「その魔法の名前から察するに、誰かを召喚することができるのだな? それは俺が選べるのか?」

「召喚に特定の個人を選ぶことはできんヨ。上級は上級の魔物を召喚できるというだけだヨ」
「ほぉ、そうなのか。上級の魔物というとドラゴンとかも呼べるのか?」
「怖えぇよ! そんなでかいのがここに来たら、建物が全部ぼろぼろだぞ」

「ドラゴンはホッカイにはいないのだヨ。あれは熱帯から温帯の淡水水域にしか生息していないのヨ」
「ふう、それは良かった。だけどなにが出るのか分からんのは、怖いな」

「お主はすでに2回もやったではないか」
「そのうち1回は頼まれたんだけどな。ドジな魔王に」
「ヨ」
「お前は誤魔化すときもそれか!?」

 そして作法だかヘンテコな呪文だかを教わって、クラークが召喚魔法をぶっ放した第1回目。

「にゃー」

 ネコかよ!!

「可愛いではないか。ちなみに魔ネコだぞ。一般の生き物が召喚されることはないからな」

 そういう設定なのね。

「ユウはさっきから設定とかうるさいな。ともかく、これはこれで置いといて」
「置くとくのか?」
「これだって可愛い魔物ではないか。次行くぞ!」

 ちなみに、魔王の場合は生涯に3回までという制限はないそうだ。魔力の尽きるまで召喚できるらしい。そして第2回目。

「コンっ!」

 キタキツネかよ!!

「可愛いではないか。ちなみに魔キタキツネだぞ」

 ああ、もうそれは分かったから次に行け。

「じゃあ、これも置いとくぞ」
「もう、好きにして」

 それから10数回、召喚魔法を行ったが、やってくるのは小動物ばかり。可愛いのはいいが、いま必要なのはペットじゃない。実務のできる魔人だ。ここを動物園にしてどうするんだ。

「いい加減に疲れてきたぞ。これでは埒があかん」
「仕方ない。それでは10回分を一度にできる集団召喚魔法を教えるのだヨ」

 なんだその10連ガチャ。

「これを使うと10回分の魔力で、11回の召喚ができてお得なのだヨ」

 有料の11連ガチャじゃねぇか!!

 最後の力を振り絞って、クラークは教えられたガチャ……集団召喚魔法をぶっ放した。

 そして出てきたのがこれらである。

 魔キタキツネ3,魔ネコ2、魔エゾリス2、魔スーパーマン1、魔モモンガ2、魔エナガ1であった

「なんでも魔をつければいいってものではな……待て待て待て待て?! ちょっと待て。いま、ものすごく違和感のある名前がひとつあったぞ?」
「おぉぉ、クラークよおめでとう! ついに最高レア度の虹キャラ魔人が当たったヨ!!」

 当たった言うな。あと、虹キャラも止めてあげて。

「それよりもっとツッコみどころがあるだろ? なんだ魔スーパーマンって? そんな魔人、俺は聞いたことがないぞ」

「弾丸(たま)よりも早いのだヨ」
「実家にいたタマは老齢でたいして早くはなかったが」

「機関車よりも強いのだヨ」
「帰還者より強くても、たいしたことはなさそうだが。そもそもどこから帰ってきた?」

「高いビルなんかひとっ飛び」
「いとこのビルの身長はまだ1メートルちょっとだが」

 なにこのかみあわない会話。それより良いのかそれ。この話は常々危ない橋を渡っていると評判なのに、それはやりすぎちゃうやろか。
 ある意味とても危険な魔人(の名前)だぞ。すぐにリリースしたほうが。

「魔王様のご召喚にあずかり光栄です。私などでよろしければ、どうかお使いください」

 やる気満々だよ、この魔人。

「うむ。その前に聞こう。お前にはどんな能力がある?」
「だからそれはさっき我が言ったヨ、タマよりもきゅぅぅぅぅ」
「お前はしばらく黙ってろ」

「私は読み書きそろばんを一通り。それに、空が飛べます」
「おおっ、空が飛べるのか?! それはすごいな」
「時速91キロメートルで」

 おいっ!!! なんか混ざってるぞ。

「そうだ、まだ名前を聞いていなかったな」
「ケントと申します」

 あぁ、やっぱりな。と俺とミノウは顔を見合わせてつぶやいた。

「私のほうからも質問があるのですが、よろしいですか?」
「ああ、なんでも聞いてくれ」
「クラーク様は、これからこの国をどうされたいのでしょうか」

「もちろん、豊かで人々が笑って暮らせる土地にしたと思っておるぞ」

(ついさっきまで、人を滅ぼすとか言っていたくせにヨ)
(ここは大人の対応で黙っているべきなのだろうな)

「それは良かった。それなら私の能力も生かせると思われます」
「ほほぉ。空を飛ぶ以外の能力があるのか。それはいったいなんだ?」

「イモ掘りです」

 はい?

「イモ? イモを掘るのが得意なのか」
「はい、そりゃもう、ロボットのように掘ってご覧にいれます」

(おいおい、えらくマイナーなゴンスケが出てきたぞ)
(我も知らないのだ、なんなのだそれヨ)

「その前にイモを植えないといけないだろ?」
「はい、もちろんそれも得意です。こちらでは主にジャガイモですが、その畑作りから収穫までをすべておまかせいただければ、何トンでも作ってご覧にいれます」
「蒸かしたジャガイモは俺も大好きだが、かといってイモばかりをそんなに作ってもなぁ」

 イモ掘りが得意なロボット……じゃない魔人かぁ。こちらの世界には変わったのがいる……あれ? 俺はお菓子が欲しかったんだよな。

 まず欲しいのはケーキ類のための薄力粉小麦だ。次が別件用だがモナカに増産を命じた強力粉だ。そしてウエモンに作らせているちょこれいとのための砂糖。砂糖はケーキにも必要だ。

 うどんやお好み焼き用の中力粉はそれなりに作られているので、これについては特に手をつける予定はない。パンも作りたいが、これは主食だからコメ好きな俺としてはそれほど緊急性を感じていない。優先はお菓子なのである。

 しかし。

 お菓子は砂糖と小麦、それにカカオだけでできるわけではない。それを、いま唐突に思い出した。

「なあクラーク、話の途中悪いけど俺からも質問していいかな?」
「ああ、なんだユウ?」
「ここのジャガイモって、毎年どのくらの量を生産している?」

「あ、クラーク様。それは私のほうからお答えしましょう。去年はかなり豊作でしたので、約21万トン獲れました」
「ふむ。それはこの土地でほとんど消費しているのか?」
「いえいえ。ここにはそんなに需要はありません。人口が少ないですから。半分以上はエチ国に出荷してます」

「エチ国? イズナの国じゃないか。あそこの人はそんなにジャガイモが好きなのか?」
「そんな需要がエチ国にあるわけないヨ。おそらく流通の問題だと思うのだヨ」
「はい、その通……。はっ!? そ、そのお姿はもしやミノウ様?!」

「ああ、もうそのくだりは読者も飽きてるから。飛ばしてくれ。流通の問題ってなんだ?」
「そ、れ、は、で、す、ね」

「だめだこりゃ。ミノウ、お前が知ってるなら代わりに話してくれ。こいつはしばらく使い物にならん」

「分かったのだ。我にまかすのだ。ここホッカイ国とエチ国は海運で繋がっているのだヨ。距離は遠いが船なら大量に物資が運べる。エチ国にはいい港があるので、それで取引量が多いのだろうヨ」

「ということはだ!!」

「「「あああっ、びっくりしたぁ! 」」」

「それは好都合だ!! あ、驚かせてすまん。クラークと、それにケントといったな。お前らに注文がある」
「なんだユウ。なんか文句でもあるのか?」

「文句じゃねぇよ。注文って言っただろ。そのジャガイモを量産して俺に売ってくれ。現状の生産量の倍ぐらいなら買っても良いぞ」

「「はぁぁぁぁぁ?!!?!?!?」」
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