150 / 336
第150話 エルフの黒剣士
しおりを挟む
長いトンネルを抜けると、そこは。
「雪国だったノか?」
雪国だった。
「まじなノか!」
案内されるままについてゆくと、いくつもある分岐点を右に曲がり左に折れ、そしてまた右に回って壁をよじ登り(なぜに?)、腹ばいになって進んでまた右に曲がり……もう忘れた。
そんなことを30分ほど繰り返してようやく着いた洞窟の先は。
「雪国だったノだ」
「ああ、雪国だな」
「予想以上に雪国ですね」
「わぁい、すごいすごぉぉい。雪だるまがいくらでも作れるよーー」
ひとりはしゃいでいるやつ(スクナ)がいるが、ついこの間、温泉郷で見た白い悪魔がそこにはうずたかく積もっていた。
その悪魔を切り開いて道ができている。洞窟の細い道を抜けると、また細い道だった。ただし、壁は雪である。空は抜けるように青い。
「マツ、これはこの間積もった雪なのか?」
「この間? いやここは11月に入るといつもずっとこんな調子だ。今年はまだ少ないほうだな」
「どんだけ豪雪地帯だよ!」
「私の里でもここまでは滅多に積もりませんよ」
「わぁぁい、こんなにたくさんの雪だ雪だ-」
お前は元気か。イシカリ辺りではここまで積もらないのかな? しかし、問題はそんなことよりもだ。
「寒い寒い寒い」
上着を洞窟の入り口に置いてきたので、今は厚手の下着を3枚ほど重ね着した上にいつもの作務衣姿だ。ここにずっといたら軽く死ねる。
俺は外にでた途端、思わずユウコとスクナを抱きしめた。
「「あぁん」」
「ふたりとも、妙な声を出さないように。寒いからもうちょっとくっついてい歩いてくれ」
「「あぁぁん」」
「おかしな連中だ。このぐらい寒いうちには入らないぞ」
「お前は慣れてるからだよ! こんなとこに5分いたら俺は凍死する自信があるぞ」
「そうか。じゃ、遺体は春までそのまま放置しておこう」
「放置するな!! その前にへぇっくしっ、なんか着るものとかないのか」
「もうすぐそこだ。根性のないやつだなぁ。そんなんでどうして魔王様を眷属にできたんだ?」
「そんなこと俺も知らないいっくしょんよ、ぐずずっ」
「ほら、着いたぞ。ここが私たちの里だ」
「……ユウコ。エルフの里ってのはだいたいこういうものか?」
「い、いえ。さすがにここまでは……」
茅(かやぶき)屋根に薄っぺらい板を張り付けただけの壁。目で見ても隙間があることが分かる。この気候でこんな住居で暮らしてゆけるものなのか。寒冷地仕様のエルフなら大丈夫なのか。お前らは100%化学合成オイルか。キハ56系か。
「ねぇ、なんであの屋根はあんなに尖っているの? そういうお年頃?」
「屋根に反抗期はねぇよ。あれは雪を落とすために角度をつけているんだろ」
「イシカリあたりはそれほど雪は降らないからな、こういうのは珍しいか」
「うん、でもなんか格好いいね、あの家の形好き」
「そうか」
「茅葺き屋根か。作るのが大変そうだ」
「3年に1度は葺き替えないといけないから、材料を集めるのが大変だ」
「我は見たことなかったノだ。瓦というのは使わないノか?」
「瓦は高いのですよ。ただで手に入る茅でないととてもとても」
ああ、またこれである。すべては金だ。この調子じゃエルフは滅びるぞ。
「まあ、中に入れ。囲炉裏に火を入れるように言ってあるから、暖まってくれ」
「おぉ、それは助かる。早く入ろう」
板の間にムシロを引いただけの部屋の中央に、囲炉裏が切ってある。
胡座をかいて座り、手をかざすとその部分だけは暖かい。しかし部屋は密閉度が低く、あまり暖かくない。いや、むしろ寒い。足下からは冷たい空気が這い上がってくる。
タケウチ工房がどれだけ恵まれていたかを痛感した。
「まあ、くつろいでくれ。今、お茶を入れさせる」
「暖房はこれが限界なのか?」
「ああ、来年の春までこのぐらいだぞ。まだ寒いのか?」
「寒い寒い寒いってか冷たい床が冷たいそして寒い」
「まったく軟弱なやつなノだ。我なんかいまだにビキニで平気なノだぞ。ほれ」
「自慢して見せなくていい。それ、ミヨシに作ってもらったやつだろ。フリルまでつけやがって、モデルにでもなるつもりか」
「ステキですよ、オウミ様」
「マツ様はあれからどうされていたのですか?」
「あれから?」
「ええ、200年ぐらい前に、人間とエルフとの戦争があったと聞いてます。そのときエルフ軍を率いたのがマツ様と習いました」
「ああ、あれか。もう遠い過去のことだが、私は負傷してここの住人に助けられたのだ。戦いがどうなったのかを見届けることもできなかった」
「エルフは負けました。それでもマツ様の奮闘のおかげで、不平等条約は解消されました。エルフは救われたのです」
「ああ、それはあとから聞いた。人もおかしな生き物だ。戦争に勝ったくせに自分から利益を放出するとはな」
「それも、マツ様が人を恐れさせるほどの戦いぶりを見せつけたからですよ。おかげでエルフの生活はずっと楽になったそうです。私の里でもマツ様は英雄として語り継がれています」
ふむ、歴史にはよくある話のようだ。この話を膨らませて想像すると、一部の人の権力者が圧政を敷いた。それに耐えかねて反乱を起こしたエルフを率いたのがマツだ。
その騒乱によって、その上の組織(どんなのかは知らんが)まで情報が及び、圧政を止めさせたのだろう。圧政を敷いた権力者は処分されているはずだ。良くて左遷、へたすりゃ打ち首かな。そんなやつは死罪でも一向にかまわん。
しかしそれも、大規模な反乱があってこその成果だ。マツの活躍は大いに誇っていいだろう。
「ここに魔王がいれば、そんなことになならなかっただろうにな。気の毒なノだ」
「はい、クラーク様がもっと早くここの魔王になっていただけていれば……あれ? まさか、ユウはクラーク様をどこかに連れて行く気ではあるまいな?」
「さぁ?」
「止めてくれ! クラーク様のおかげで今は平穏な暮らしができているのだ。頼むから連れて行かないでくれ」
「分かった分かった。クラークの名前、今はカンキチな。カンキチの気持ちはまだ確認していないが、ここに残るように言っておこう」
「そうか、それだけはぜひ頼む」
「ところで、そろそろ本題に入りたいのだが」
「ん? あ、そうだ。お主らはなにか目的があってここに来たということだな。扉まで切り刻んで」
「それは悪かったってば。ちゃんと弁償するから。ところで、あれは治すのにいくらぐらいかかるんだ?」
「あれは高級な魔岩を加工したものだからな」
また出たよ。魔木に魔岩か。なんでも魔をつければ良いってものじゃないだろ。
(え? ダメなんですか?)
(作者はもっと異世界のことを勉強すべきなノだ)
「もったいつけるなよ。で、いくら必要だ?」
「そうだな。思い切りふっかけて」
「ふっかけるな! 適正な料金を言え」
「そうだな。7円50銭いただこうか」
「なっ。な?」
「ちょっとふっかけすぎたか。仕方ない。5円に負けといてやろう」
「いや。待て。ここではその5円でいったいなにが買えるんだ?」
「針が1本買えるかな。ここでは作れないから貴重なのだ」
ユウコとスクナ。そこで抱き合って泣くな。相手には意味が分からないと思うぞ。そんな里でよくこの厳冬の中、生き残ってきたものだな。
「マツ様。それは、それはいくらなんでも安すぎます。そんな、そんな、そんなことでわぁぁぁぁぁん」
「マツ様。私、寄付するから。毎月のお小遣いからここに寄付するから。もっともっとわぁぁぁぁぁぁん」
「おいおい。お主らはいったいなにを泣いておるのだ? なんだ寄付って」
「やっぱり通じてないようだな。こいつらのことはしばらく放っておいてくれ。その金額で手を打とう」
「「えええっ!!」」
「そうか、それは助かる」
「それから、聞きたいことがあるのだが」
「ああ、いいとも」
(残してきた連中はどうなったノだろう?)
(そんなもんはあとで良い)
(きゅっ)
「この里とあの洞窟とは、いったいどんな関係があるんだ?」
「あそこはこの里への出入り口のひとつだ。ただし裏側だけどな」
「そこに、以前は軍の備蓄品を置いてあったという話だが」
「ああ、エルフと人間が仲直りした証として、生活圏の接点となるあの洞窟を人間側の倉庫として提供したのだ。そしてその管理をエルフが請け負った。その管理費をエルフの生活の糧にしていたのだが」
「人とエルフとの取り引きがあったのか。それで今は?」
「詳細は分からんが、人間界でなにかがあったようだ。不意に連絡が途絶えた。しかいその後は別の人間が入ってくる様子はなく、ずっとそのままになっている」
「その収入もなくなったわけだな。ということは、この里に管理費を払えば、あそこに物資を置いてもエルフに管理してもらえるということか?」
「なに? あそこを使う気なのか。それなら請け負うぞ。ところでなにを置くつもりだ?」
「主に食料となるものだ。とりあえずジャガイモやトウモロコシは決まっているが、まだ増えるかもしれない。それとそれを加工した……加工? 加工か。エルフって料理は得意だっけ?」
「料理が苦手なエルフはおるまいが、それよりトウモロコシやジャガイモとはまた安価なものばかりだな。管理費のほうが高くつかないか?」
「ちなみに管理費はおいくらでしょう」
「そうだな。ひとりにつき、月に10円でどうだ?」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」」
お前らやかましい!!! 商談の邪魔をするな!
「なんなんだ、そいつらは?」
「涙腺が弱い生き物なんだよ。放っておいてくれ。それは荷物の出し入れも手伝ってくれると考えて良いか?」
「ああ、良いだろう。荷物は多いのか?」
「そうだな。ざっくりの話だが最初は10数トンになるだろう」
「はぁ!? そんなにか? もう戦争もないのに、いったい誰がそんなに食べるんだ?」
「いや、それは売り物だから。これからだんだん増えて行くことになる。最終的には数100トンレベルになると予測している」
「ほぉぉ。それは豪快な計画だな。しかし、それだけの量を管理するとなると、人数はどのくらい必要だ?」
「まずは3人を選出してもらいたい。作業や俺のやり方に慣れてもらう必要があるんだ。その3人が育ったら彼らには指導員の役を果たしてもらう。最終的には50人以上が必要となるだろう」
「そんなにか!! それは助かる。ともかく冬場は仕事がなくて困っているのだ」
「じゃあ、3人をまずは選んでおいてくれ。今月末ぐらいには稼働させるので、それまでに頼む」
「それは分かった。それではこちらかも質問があるのだが、良いか?」
「ああ、なんでも聞いてくれ」
「たかがジャガイモやトウモロコシを保管するぐらいで、そんな高級を払って、お主のとこは採算が合うのか?」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁん」」
「だからなんなのだ、こいつらは?!」
「いいから放っておいてあげて。そういう年頃なんだよ。採算とかはこちらが心配することだから、気にすんな」
「心配なのだよ。こちらとしては、そういうことはなるべく長く続けてもらいたい。すぐに終わってしまっては困る。というか現在困っているからな」
「その心配はもっともだが、その話をする前にちょっとお願いしたいことがあるんだが」
「なんだ?」
「さっき別れた連中をここに呼べないか?」
「ああ、さっき報告があった。お主ら3人だけじゃなかったんだな。あと3人いたようだが、仲良く風呂に入っているそうだぞ」
「「「はぁぁぁぁっ!?」」」
こちとらこんな寒い思いをして交渉に当たっているのに、あいつらはぬくぬくと温泉に浸かっていやがるのかという、明らかに非難のニュアンスを込めた『はぁ?!』の三重奏であった。
ってか、お前らもう涙はいいのか?
「雪国だったノか?」
雪国だった。
「まじなノか!」
案内されるままについてゆくと、いくつもある分岐点を右に曲がり左に折れ、そしてまた右に回って壁をよじ登り(なぜに?)、腹ばいになって進んでまた右に曲がり……もう忘れた。
そんなことを30分ほど繰り返してようやく着いた洞窟の先は。
「雪国だったノだ」
「ああ、雪国だな」
「予想以上に雪国ですね」
「わぁい、すごいすごぉぉい。雪だるまがいくらでも作れるよーー」
ひとりはしゃいでいるやつ(スクナ)がいるが、ついこの間、温泉郷で見た白い悪魔がそこにはうずたかく積もっていた。
その悪魔を切り開いて道ができている。洞窟の細い道を抜けると、また細い道だった。ただし、壁は雪である。空は抜けるように青い。
「マツ、これはこの間積もった雪なのか?」
「この間? いやここは11月に入るといつもずっとこんな調子だ。今年はまだ少ないほうだな」
「どんだけ豪雪地帯だよ!」
「私の里でもここまでは滅多に積もりませんよ」
「わぁぁい、こんなにたくさんの雪だ雪だ-」
お前は元気か。イシカリ辺りではここまで積もらないのかな? しかし、問題はそんなことよりもだ。
「寒い寒い寒い」
上着を洞窟の入り口に置いてきたので、今は厚手の下着を3枚ほど重ね着した上にいつもの作務衣姿だ。ここにずっといたら軽く死ねる。
俺は外にでた途端、思わずユウコとスクナを抱きしめた。
「「あぁん」」
「ふたりとも、妙な声を出さないように。寒いからもうちょっとくっついてい歩いてくれ」
「「あぁぁん」」
「おかしな連中だ。このぐらい寒いうちには入らないぞ」
「お前は慣れてるからだよ! こんなとこに5分いたら俺は凍死する自信があるぞ」
「そうか。じゃ、遺体は春までそのまま放置しておこう」
「放置するな!! その前にへぇっくしっ、なんか着るものとかないのか」
「もうすぐそこだ。根性のないやつだなぁ。そんなんでどうして魔王様を眷属にできたんだ?」
「そんなこと俺も知らないいっくしょんよ、ぐずずっ」
「ほら、着いたぞ。ここが私たちの里だ」
「……ユウコ。エルフの里ってのはだいたいこういうものか?」
「い、いえ。さすがにここまでは……」
茅(かやぶき)屋根に薄っぺらい板を張り付けただけの壁。目で見ても隙間があることが分かる。この気候でこんな住居で暮らしてゆけるものなのか。寒冷地仕様のエルフなら大丈夫なのか。お前らは100%化学合成オイルか。キハ56系か。
「ねぇ、なんであの屋根はあんなに尖っているの? そういうお年頃?」
「屋根に反抗期はねぇよ。あれは雪を落とすために角度をつけているんだろ」
「イシカリあたりはそれほど雪は降らないからな、こういうのは珍しいか」
「うん、でもなんか格好いいね、あの家の形好き」
「そうか」
「茅葺き屋根か。作るのが大変そうだ」
「3年に1度は葺き替えないといけないから、材料を集めるのが大変だ」
「我は見たことなかったノだ。瓦というのは使わないノか?」
「瓦は高いのですよ。ただで手に入る茅でないととてもとても」
ああ、またこれである。すべては金だ。この調子じゃエルフは滅びるぞ。
「まあ、中に入れ。囲炉裏に火を入れるように言ってあるから、暖まってくれ」
「おぉ、それは助かる。早く入ろう」
板の間にムシロを引いただけの部屋の中央に、囲炉裏が切ってある。
胡座をかいて座り、手をかざすとその部分だけは暖かい。しかし部屋は密閉度が低く、あまり暖かくない。いや、むしろ寒い。足下からは冷たい空気が這い上がってくる。
タケウチ工房がどれだけ恵まれていたかを痛感した。
「まあ、くつろいでくれ。今、お茶を入れさせる」
「暖房はこれが限界なのか?」
「ああ、来年の春までこのぐらいだぞ。まだ寒いのか?」
「寒い寒い寒いってか冷たい床が冷たいそして寒い」
「まったく軟弱なやつなノだ。我なんかいまだにビキニで平気なノだぞ。ほれ」
「自慢して見せなくていい。それ、ミヨシに作ってもらったやつだろ。フリルまでつけやがって、モデルにでもなるつもりか」
「ステキですよ、オウミ様」
「マツ様はあれからどうされていたのですか?」
「あれから?」
「ええ、200年ぐらい前に、人間とエルフとの戦争があったと聞いてます。そのときエルフ軍を率いたのがマツ様と習いました」
「ああ、あれか。もう遠い過去のことだが、私は負傷してここの住人に助けられたのだ。戦いがどうなったのかを見届けることもできなかった」
「エルフは負けました。それでもマツ様の奮闘のおかげで、不平等条約は解消されました。エルフは救われたのです」
「ああ、それはあとから聞いた。人もおかしな生き物だ。戦争に勝ったくせに自分から利益を放出するとはな」
「それも、マツ様が人を恐れさせるほどの戦いぶりを見せつけたからですよ。おかげでエルフの生活はずっと楽になったそうです。私の里でもマツ様は英雄として語り継がれています」
ふむ、歴史にはよくある話のようだ。この話を膨らませて想像すると、一部の人の権力者が圧政を敷いた。それに耐えかねて反乱を起こしたエルフを率いたのがマツだ。
その騒乱によって、その上の組織(どんなのかは知らんが)まで情報が及び、圧政を止めさせたのだろう。圧政を敷いた権力者は処分されているはずだ。良くて左遷、へたすりゃ打ち首かな。そんなやつは死罪でも一向にかまわん。
しかしそれも、大規模な反乱があってこその成果だ。マツの活躍は大いに誇っていいだろう。
「ここに魔王がいれば、そんなことになならなかっただろうにな。気の毒なノだ」
「はい、クラーク様がもっと早くここの魔王になっていただけていれば……あれ? まさか、ユウはクラーク様をどこかに連れて行く気ではあるまいな?」
「さぁ?」
「止めてくれ! クラーク様のおかげで今は平穏な暮らしができているのだ。頼むから連れて行かないでくれ」
「分かった分かった。クラークの名前、今はカンキチな。カンキチの気持ちはまだ確認していないが、ここに残るように言っておこう」
「そうか、それだけはぜひ頼む」
「ところで、そろそろ本題に入りたいのだが」
「ん? あ、そうだ。お主らはなにか目的があってここに来たということだな。扉まで切り刻んで」
「それは悪かったってば。ちゃんと弁償するから。ところで、あれは治すのにいくらぐらいかかるんだ?」
「あれは高級な魔岩を加工したものだからな」
また出たよ。魔木に魔岩か。なんでも魔をつければ良いってものじゃないだろ。
(え? ダメなんですか?)
(作者はもっと異世界のことを勉強すべきなノだ)
「もったいつけるなよ。で、いくら必要だ?」
「そうだな。思い切りふっかけて」
「ふっかけるな! 適正な料金を言え」
「そうだな。7円50銭いただこうか」
「なっ。な?」
「ちょっとふっかけすぎたか。仕方ない。5円に負けといてやろう」
「いや。待て。ここではその5円でいったいなにが買えるんだ?」
「針が1本買えるかな。ここでは作れないから貴重なのだ」
ユウコとスクナ。そこで抱き合って泣くな。相手には意味が分からないと思うぞ。そんな里でよくこの厳冬の中、生き残ってきたものだな。
「マツ様。それは、それはいくらなんでも安すぎます。そんな、そんな、そんなことでわぁぁぁぁぁん」
「マツ様。私、寄付するから。毎月のお小遣いからここに寄付するから。もっともっとわぁぁぁぁぁぁん」
「おいおい。お主らはいったいなにを泣いておるのだ? なんだ寄付って」
「やっぱり通じてないようだな。こいつらのことはしばらく放っておいてくれ。その金額で手を打とう」
「「えええっ!!」」
「そうか、それは助かる」
「それから、聞きたいことがあるのだが」
「ああ、いいとも」
(残してきた連中はどうなったノだろう?)
(そんなもんはあとで良い)
(きゅっ)
「この里とあの洞窟とは、いったいどんな関係があるんだ?」
「あそこはこの里への出入り口のひとつだ。ただし裏側だけどな」
「そこに、以前は軍の備蓄品を置いてあったという話だが」
「ああ、エルフと人間が仲直りした証として、生活圏の接点となるあの洞窟を人間側の倉庫として提供したのだ。そしてその管理をエルフが請け負った。その管理費をエルフの生活の糧にしていたのだが」
「人とエルフとの取り引きがあったのか。それで今は?」
「詳細は分からんが、人間界でなにかがあったようだ。不意に連絡が途絶えた。しかいその後は別の人間が入ってくる様子はなく、ずっとそのままになっている」
「その収入もなくなったわけだな。ということは、この里に管理費を払えば、あそこに物資を置いてもエルフに管理してもらえるということか?」
「なに? あそこを使う気なのか。それなら請け負うぞ。ところでなにを置くつもりだ?」
「主に食料となるものだ。とりあえずジャガイモやトウモロコシは決まっているが、まだ増えるかもしれない。それとそれを加工した……加工? 加工か。エルフって料理は得意だっけ?」
「料理が苦手なエルフはおるまいが、それよりトウモロコシやジャガイモとはまた安価なものばかりだな。管理費のほうが高くつかないか?」
「ちなみに管理費はおいくらでしょう」
「そうだな。ひとりにつき、月に10円でどうだ?」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」」
お前らやかましい!!! 商談の邪魔をするな!
「なんなんだ、そいつらは?」
「涙腺が弱い生き物なんだよ。放っておいてくれ。それは荷物の出し入れも手伝ってくれると考えて良いか?」
「ああ、良いだろう。荷物は多いのか?」
「そうだな。ざっくりの話だが最初は10数トンになるだろう」
「はぁ!? そんなにか? もう戦争もないのに、いったい誰がそんなに食べるんだ?」
「いや、それは売り物だから。これからだんだん増えて行くことになる。最終的には数100トンレベルになると予測している」
「ほぉぉ。それは豪快な計画だな。しかし、それだけの量を管理するとなると、人数はどのくらい必要だ?」
「まずは3人を選出してもらいたい。作業や俺のやり方に慣れてもらう必要があるんだ。その3人が育ったら彼らには指導員の役を果たしてもらう。最終的には50人以上が必要となるだろう」
「そんなにか!! それは助かる。ともかく冬場は仕事がなくて困っているのだ」
「じゃあ、3人をまずは選んでおいてくれ。今月末ぐらいには稼働させるので、それまでに頼む」
「それは分かった。それではこちらかも質問があるのだが、良いか?」
「ああ、なんでも聞いてくれ」
「たかがジャガイモやトウモロコシを保管するぐらいで、そんな高級を払って、お主のとこは採算が合うのか?」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁん」」
「だからなんなのだ、こいつらは?!」
「いいから放っておいてあげて。そういう年頃なんだよ。採算とかはこちらが心配することだから、気にすんな」
「心配なのだよ。こちらとしては、そういうことはなるべく長く続けてもらいたい。すぐに終わってしまっては困る。というか現在困っているからな」
「その心配はもっともだが、その話をする前にちょっとお願いしたいことがあるんだが」
「なんだ?」
「さっき別れた連中をここに呼べないか?」
「ああ、さっき報告があった。お主ら3人だけじゃなかったんだな。あと3人いたようだが、仲良く風呂に入っているそうだぞ」
「「「はぁぁぁぁっ!?」」」
こちとらこんな寒い思いをして交渉に当たっているのに、あいつらはぬくぬくと温泉に浸かっていやがるのかという、明らかに非難のニュアンスを込めた『はぁ?!』の三重奏であった。
ってか、お前らもう涙はいいのか?
1
あなたにおすすめの小説
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる