異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第149話 エルフの隠れ里

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「心配するな。俺はこの扉を開けるつもりはない」
「「え? それってどういう?」」

「開けるのがダメなら、切ってしまえばいいだろ。ここには、切るなとも中に入るなとも書いていない」

 そしてオウミが切り刻んだその扉の向こうには。

 なにがあったのか。俺たちが確認することはできなかった。その前に落ちたからである。

「「「きゃぁぁぁぁぁっ」」」

 という悲鳴が洞窟にこだました。そしてすぐに、くぐもったどさっという音が続いた。

 俺たちのいる足下が崩れ落ちたのだ。いや、正確にはフタが開いたいうのが正しいようだ。俺たちが落ちたあと、そこは元の状態に戻ったのだから。

「あいったたたたた。なんだこれ、落とし穴か。ケツ打った。痛たたた。お前らも一緒に落ちたのか。スクナは大丈夫か」
「うん大丈夫だよ。これで一緒に落ちた仲になれたね」

「どんな仲だよ! 痛たたたた。ユウコも一緒か」
「ええ、私もユウさんにつかまってたから ポッ」

 ポッじゃない、ポッじゃ。それより俺につかまっていたくせに、なんでお前らだけ平気で立っていられるんだ?

「我が落ちる寸前に重力制御魔法をかけたからなノだ」
「「オウミ様、すごーい。ありがとうございます。おかげで無事に着地ができました」」

「待て!? なんで俺にはそれかかってないんだ? 痛たたた」
「詠唱の時間が足りなかったノだ。女性を優先したノだ」

 ご主人様の俺を優先しろよ。ケツが割れたじゃないか痛たたた。しかし、なんで壁を切り刻んだのに、落とし穴に落ちないといけないのだ。
 どういう因果関係だよ。切った壁の向こうに行きたかったのに。あっちになにがあったのかすごい気になるじゃないか。

「ユウさん、立てますか? ほら、手につかまって」
「あっ、ずるい。私につかまって」
「あ、ああ。すまんな。なんとか立てそうだ。痛たたた」

 また連行される囚人の状態で、俺は落ちてきた天井を見上げてみる。そこにはそれらしい痕跡が見当たらない。上の光が漏れる様子もない。ただの岩石だ。

 高さは3m程度だろう。死ぬほどの高さではないが、俺が着地できるような高さではなかった。

 オウミの助けがなければ、このふたりも同じであっただろうに。俺だけ痛い目にこんちくしお。

「これは罠なのかな?」
「どうでしょう。それならもっと深くしそうなものですね。魔物などもいないようですし」

「しかし、ご招待にしては乱暴だが」
「でもここは、我が魔法かけなくても明るいノだ」

 ほんとだ。明るいということは、こちらを迷わせるつもりはない、ということか。罠にしては親切すぎるな。

「道は一方にしかないようだ。ということは、ここを歩いて来いってことだよなぁ」
「ですよねぇ」
「なんか、相手の思惑に乗ったみたいで気にくわないな」

「でもユウさん。行くしかないのでは」
「ますます気にくわない。ユウコ。こっちの反対側には扉とかなさそうか?」
「そっちからはなにも感じません。でも」

「でも?」
「なんかすぐそこに誰かが来ているような」

 怖っ! さまよえる亡霊か? なんか出たらオウミ頼むぞ。

「ななななな、なんで我なノだ。幽霊ならユウコが得意であろう」
「どどどどどうして私が得意なのですか。ダメですよ、そういう意味不明なものはエルフは苦手です。そうだ、この子を盾にとりましょう」
「きゃきゃきゃきゃ。私は普通守ってもらう側でしょうがぎゃわぎゃわぎゃわ」

「ずいぶんと賑やかな連中がやってきたものだな」

「で、で、出たーーー!!! おいオウミなんとかしろ!!」
「なにを言っているいるノだノだ。ここはエルフの出番であろうが」
「なんで私よー。私だって怖いのよ。きゃぁーー逃げてーー」

 そこには全身を黒い防具で固めた偉丈夫が立っていた。身長は180cmはあるだろう。がっちりした体型、長い漆黒の髪を無造作に後ろに垂らし、アゴと口元に髭を蓄えた顔はいわゆるイケメンである。男の俺が見ても格好が良い。惚れてまうやろ。

 背中には長い剣を背負っていた。見るからに強そうな剣士である。なんかしたら切られそうである。

 話し方は穏やかだが、その声にはこちらの心まで見通すような威厳に満ちていた。道ですれ違ったら思わず土下座してしまいそうだった。しないけど。

 しばらくは誰もまともに返事もできなかったのだが。

「あなたは誰ですか?」

 さすがは俺のスクナだ。いいぞ、頑張れその調子だ。

「まともなのはこんな小さな子供だけか! 情けない人間もあったものだな。私はここの管理人・マツというものだ。お主の名は?」
「私はスクナ。すぐそこのイシカリ大学の生徒よ。あなたはここでなにをしているの?」

「イシカリの生徒か。それにしては小さいな。なにをしているはこちらが聞くセリフだ。ここにどうやって来た?」
「小さいはほっといてよ。上の扉を切り刻んだら落ちちゃったの、てへ」

「扉を切り刻んだだと!? それで落ちちゃったの、てへ。で済ますつもりか!」
「はい、それはごめんなさい。でも、扉を開けるなと書いてありましたが、切ってはいけないとは書いてありませんでしたよ?」

「だから開ける代わりに切り刻んだのか! どんな思考をしているのだ。……それよりどうやったらあの固い花崗岩の扉が切り刻めるのか、そのほうが不思議だ。まさか、ウソをついているのではあるまいな?」

「切り刻んだのは我なノだ。その子は悪くないから勘弁してやって欲しいノだ」
「おま……あなたは、まさか? あの有名な?」
「そうなノだ。その有名な」
「ミノウ様ですか!?」

「ばかたれぇぇぇ!!! あんなのと一緒にするのでないノだ。我はオウミ。水を司る魔王であるぞ」
「そ、そ、それは失礼をいたしました。話に聞くミノウ様に良く似てらっしゃるのでつい。えっと、あなたが扉を切り刻んだだと? 水の魔王様なのに? どうやって?」

「それはこのきゅぅぅぅ」
「それ以上言うな。こいつは俺の眷属だ。俺が指示して扉を切らせたんだ。マツとやら、扉を切ったことは悪かった。俺が弁償するから許してくれ」

「眷属だと? 魔王をか? い、い、いったいお主は何者なのだ?」
「俺はユウ。不思議な縁があって、このオウミと、さっき話に出たミノウ、それにこのホッカイ国の魔王・クラーク……今はカンキチと名前が変わったが、その3人とも俺の眷属にしてはいるが、ただの通りすがりのそれはそれは愛らしい12才の少年だ」

 この際だから、眷属は全員を紹介しておいた。ここを倉庫に使うのならこいつとは長い付き合いになるだろうから、どのみちいつかは会うことになる。そのときにいちいち驚かれていては面倒くさい。

(面倒くさいというより、作者がよく忘れるから最初に書いておこうという作戦ではないノか?)
(やかましいよ)

「ミ、ミノウ様を? それにクラーク様まで? 眷属? ウソ……じゃないよな。それがウソだったらお主ら、ここから生きて出られないと思え」
「それは間違いないノだ。我が保証するノだ」

「オウミ様が……。そうおっしゃるのなら、本当のことなのでしょうね。しかし普通の人間が。どうしてそんなことに?」

「「さぁ?」」
「さぁ、って言われても」

「まあ、そんなことはともかく、マツにはいろいろ教えて欲しいことがあるのだが」
「はい。どうにも合点がいかないこともありますが、とりあえず危険はないと判断しました。我々の住み処に案内します。そこで詳しい話をこちらにも聞かせてください」
「俺には敬語はやめてくれ。くすぐったくてしょうがない」
「分かった、そうしよう」

(マツはお前をミノウと間違えていたな。ユウコもミノウを知っていたし。ミノウはホッカイ国とは縁が深いのかな?)
(そのようなノだが、我も知らないノだ。こんなとこまで遊びに来る暇があるなら我も誘うべきなノだ)
(いや、それはどうでもいい。それとニホン刀のことをあまり他人に話すな)
(了解なノだ)

 灯のついた通路をマツの先導で歩いて行く。それまで黙っていたユウコが突然叫んだ。

「思い出した!! マッツ様だ!? マッツ様でしょ!? マッツ様ですよね!?」

 なにその三段活用。

「お主は私を知っているのか? 名をなんという?」
「やっぱりそうだ。エルフの英雄、漆黒の剣士・マッツ様ですね。私はユウコ。トウヤコのエルフ族です」

 マッツ? なんで真ん中に小さいツを入れないといけないんだ?

「トウヤコのエルフだったのか。ナカシマ翁はご健在かな?」
「はい。マッツ様。ものすごく元気です。あと700年は生きると言っています」
「ここではマツと名乗っている。その呼び方は止めてくれ。ナカシマ翁め、あと700年とは大きく出たな、あはははは。あの人らしい」

「なんだ、マツはエルフだったのか?」
「ああ、そうだ。ここはエルフの隠れ里だ」
「エルフって女性しかいないと思っていた」

「なにを言う? 私は女性だぞ?」
「「えぇぇぇぇぇ?!」」

「もう卵を3つ産んでるからな。ユウコはまだか?」
「はい、まだまだのようです」

 マツは女性だったのか。その体格で? その髭で?

「エルフには男はいないのか?」
「いるよ。ただ数はとても少ない。三毛猫の雄ぐらいの確率だ」

 ものすごいレアだということは分かった。オークションにしたらすごい値がつきそう。

「さて、着いたぞ。ここが私たちの隠れ里だ」

 長いトンネルを抜けると、そこは

「雪国だったノか?」
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