異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
155 / 336

第155話 酵母菌……だと?

しおりを挟む
 ここはイシカリ大学の俺たちの部屋である。洞窟の部屋と違ってとても寒い。しかし広いので、イテコマシの出荷やエルフ薬の整理など、作業をするのにはとても便利なのである。

「くりんぱっ」

 くるくるくる、ころりん。あ、入った。

「くるりんぱっ」

 くるくるくる、ころりん。あ、入った。

 うん、ひとりでやると必ず入るな。

「くるりん痛っ」
「なにをひとりでやってるんですか!」
「あ、モナカか。暇なら付き合えよ。ほら、このコマ貸してやるから」

「私は自分のじゃなきゃ嫌です。それより、そこ邪魔だから片付けてください」

 邪魔者扱いされた。俺、所長なのにな(´・ω・`)

「しょんぼりしてもダメです。そこでイテコマシの発送準備するんですから、どこか別のテーブルに移動してください」

 へーい。じゃ、あっちに移動しよう。部屋が広いだけではなく、テーブルもたくさんあるのだ。

「くるりんぱっ」

 くるくるくる、ころりん。あ、入った。

「くるりんぱっ」

「あ、ユウさん、そこ邪魔です」
「今度はスクナか。お前はなにしてんの?」

「エルフ薬の在庫を分別してます。種類が多いのに、全部同じ瓶に詰めてあるんですよ。間違えたら大変なのでひとつひとつにラベルを付けているところです。種類ごとに並べたいのでテーブルをあけてください」

 へーい。じゃ、あっちに移動しよう。テーブルならいくらでもある。

「くるりんぱっ」

 くるくるくる、ころりん。あ、入った。

「おいユウ。そこ邪魔」
「カンキチお前もか……」
「お前に言われてエルフの里にあるイエローコーンをありったけ買ってきたんだよ。他に置く場所がないからそこをあけてくれ。それと請求書はシキ研に回すから払ってやってくれ」

 余計なことかとは思うけど、シキ研とはシキミ研究所のことである。俺の研究所である。念のため。

「分かった。事務処理はあとでモナカにやってもらう。おっ! すごいじゃないか。そんなにたくさんあるのか?!」

「これでもまだ一部だ。あと200Kgほどはあるぞ。エルフの里でイエローコーンは毎年大量に生えるそうだ。一応、ヒエールの材料になるのでだいたい春までは保存しているらしい。だが、ほとどが余るからタダでいいからもらってくれと言われた。でも魔王の立場としてはタダってわけにはいかんから、格安で買うと言っておいた。値段はあとでユウが交渉してくれ」

「わかった。しばらくはとうもろこしの1/10ぐらいで我慢してもらおう。それでも喜んでくれるはずだ。爆裂コーンにすればけっこうな付加価値がつくから、販売が軌道に乗ったらもっと高くできるだろう。ところでなんだヒエールって?」

「熱冷まし薬のようだ。まだほかにも「トンデケ」薬とか「シシャトメ」薬とか「シュクダイワスレボウシ」薬なんかもあるそうだ」

 待て待て。いろいろ気になる名前があったぞ?

「ヒエールは分かるとして、なんだトンデケって?」
「痛み止めらしい」

 痛いの痛いのとんでけーか。やかましわ!!

「シシャトメは下痢止めだろう。シュクダイワスレボウシってなんだ?」

「ああっ。あれ、エルフが作っていたのね!!」
「そうだったの! 私も何度あの薬のお世話……被害にあったことか」

「あれ、スクナもそうだったの? あなたは優秀って聞いていたのに」
「私はよく忘れ物をするんですよ。でも、モナカ先輩こそ伝説になるほどの発見をしたそうじゃないですか」

「私が得意だったのは微生物だけよ。でもスクナは全教科で満点をとったんでしょう?」
「だけどその微生物で、新しい酵母菌を発見したんですよね。私なんかただの教養課程です。覚えるだけの簡単な勉強です」

 いや、簡単じゃないから。それにしても、ふたりとも相当な才媛だったんだな。よくぞシキ研に来てくれたものだ。

「で、そのシュクダイワスレボウシ薬ってのはどういう効能があるんだ?」
「「ものすっごい苦いんです!!!」」

 はぁ?

「苦いだけ?」
「はい。それはもう思い出しても背筋が凍るほどの苦さで」
「あれ、毒じゃないのが不思議なくらいの苦さですよね」

「それがなんでシュクダイワスレ薬なんだ?」
「「忘れたら、それを飲まされるんですよ!!」

 ああ、そういう……。ただの罰ゲームじゃねぇか! それ、薬である必要なんかあるんか。ほとんど青汁飲ませる罰ゲームの世界だ。

 ところで、今の話の中で、ちょっと気になる話題があったんだが。

「モナカ、その酵母菌ってのはどういうものだ?」
「あ、ああ。あれはですね、ほんとに偶然に見つけたのですが、温度や湿度への耐性がとても強い菌なんです。高温でも低温でも乾燥させても死なないという、生命力にあふれた酵母菌なのです」

「すごいじゃないか。それなら発酵させるときに温度や湿度の管理が楽だろうな」
「ええ。その上に発酵力も強くて短時間で発酵が完了します。味噌などの増産に役立っているようです」

 そんなすごいことやってたのか。ただ、俺のセクハラ行為を止めるだけのやつじゃなかった……待て? いまなんて言った?

「モナカ。その酵母、乾燥に強いって言ったか?」
「はい、言いました。それがなにか?」

 それなら使えるかもしれない。天然酵母でもできないことはないが、時間がかかるのが欠点だ。いつか酵母を探そうと思っていたのだが、それがこんな近くにあったとは!

「モナカ。その酵母、すぐ手に入るか?」
「ええ、私のいた研究室に行けばいくらでもあると思いますが、この季節では使い道がありませんよ? 味噌や醤油にしてもお酒にしても、仕込むには遅すぎます」

「いや、ある。あると思う。それ、少しでいいから手に入らないか?」
「じゃ、ちょっと見てきましょう。100グラムぐらいならすぐにもらえると思いますが、そのぐらいでいいですか?」
「充分だ。じゃあ、もらってきてくれ」

「でもあの、私、まだ仕事が残っていて」
「最優先事項だ! それ、全部後回しでいい。それとスクナもそれ後回しでいい。ちょっとこれから言うものを準備してくれ」

「「ええ? じゃ、この続きはどうしましょう?」
「カンキチ、ケント、ジョウ。お前らでやってくれ」

「えええ? たまに出演できたと思ったらそれですか」
「今日の出荷分だけを優先してくれればいい。それ以外は後回しだ。それより、酵母があったんだよ、酵母が。あとでうまいもの食わせてやるから」

 ???? という無言の当惑もあったが、うまいものを食べさせると言われて急にやる気になったようだ。

 俺はいつも自分の欲望を最優先にして突き進むのである。

 くるりんぱ、なんかしている場合ではないのである。

「みんなが働いているときに、さんざんひとりでやっていたようなノだが?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...