異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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15 飛脚

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 陽が大分傾いた辺りで、目的地であるセリアの街が見えてきた。何とか間に合いそうだ。

 だいぶ疲労がたまっていたが、ラストスパートをかける。同じようにセリアの街を目指して歩く旅人たちをごぼう抜きにして、無事に日没前に到着した。

「おい、大丈夫か?」

 衛兵さんに心配されてしまうくらい疲労困憊だったが、まだ仕事が残ってる。寝ちまうわけにはいかない。

「オランド商会へ行きたいんだ。場所を教えて欲しい」

 描いてもらった地図を手に街へ入って行くと、商会はすぐに見つかった。こぢんまりした二階建ての建物に看板がかかっている。

「ごめんくださーい」

 扉を開けると同時に飛んできたグラスが、額を直撃した。

 …地味に痛い……

「さっさと帰んな!   あんたらなんかにこの店好きにはさせないよ!!」

 同年代とおぼしき、燃え立つような赤毛をポニーテールにまとめた少女が、仁王立ちでこっちを睨んでいる。他にも五、六人いたが、いずれも非好意的な視線を向けて来ている。

「…ホントに帰っていいか?   オランドさんから頼まれた物を届けに来たんだが」

 多少嫌味っぽくなってしまったのは勘弁して欲しい。マジで痛かったから。

「え!?」

 預かった書類を取り出すと、一同揃って顔色をなくした。

「確認して、受け取りにサインしてくれ」

 少女に書類を渡す。中身を確認した少女は、今にも泣き出しそうに顔を歪めた。

「…ほ、本物だぁ……間に合ったんだあ!」

 少女の言葉に、室内が歓声で満たされる。

 無事に仕事を果たせたわけだが、皆の歓喜に同調する気にはなれなかった。疲れ過ぎてて、気持ちに余裕がない。というか、眠い……

「受け取り」

「は、はい。すぐに」

 書きながら少女は何か言いたそうに俺を見たが、口よりも先に扉が荒々しく開かれた。

「今日こそはここから出てってもらうぜ!」

 どうやら悪役登場らしい。

 少女を含めた店の人たちがそっちに気を取られたタイミングで、受け取りだけ回収して退散することにした。これ以上ゴタゴタにつきあう余裕はなかったのだ。

 背後で起きる騒動には関わらず、この街の冒険者ギルドを訪ね、依頼完了の手続きをする。本来なら王都のギルドに報告するのだが、時間制限のある依頼だったので、報告が必要になるらしい。

「大変でしたね。本当にお疲れ様でした」

 受付嬢さんの笑顔に癒される。

「新しいスキルが増えてますよ」

「え?」

 カードを確認すると、スキル欄に≪飛脚≫の記載が増えていた。

 なるほど。スキルって、こうやって増えていくのか。

 与えられたスキルが全てじゃないとわかったのは、召喚勇者としては残念な俺的にはいいニュースだ。向上の余地があるとわかればモチベーションになる。

 でも、細かい検証は明日にしよう。今日は疲れた。

 ギルドで紹介してもらった宿に入って、ベッドに身を投げ出す。

 眠りに落ちる寸前、脳裏に浮かんだ顔に語りかける。

「シルヴィア~、俺、頑張ったぞ~……」
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