異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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20 まあ、今更だよな……

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「男性が女性に懐剣を贈るのはーープロポーズです」

「はい?」

 意味がわからん……

「男性が女性に懐剣を贈るのは『貴女に永遠の愛を誓う。この言葉に偽りある時はその剣で殺されても構わない』という決意表明になり、女性が懐剣を受けとるのは『もしも貴方が先立つ時は、私はこの剣で胸を突いて後を追います』って誓いになるんです」

 何それ、怖っ…んでもって、重っ……

 かろうじて口にするのは避けたが、正直ちょっと退いた……

「そんな顔しないでください。本当にやるわけじゃないですから」

「そ、そうだよね……」

 実はちょっと疑っている。

「コータロー様の世界ではプロポーズの時に渡す物はあるんですか?」

「俺たちの世界では指輪かな。婚約指輪。で、結婚したらお揃いの結婚指輪をする」

「それ、素敵ですね。こちらの世界でも流行らせましょう」

 イリスさんの夢見る乙女的な表情はとても珍しい。思わず見入ってしまった。

「そ、そんなに見ないでください」

「いやいや、いいもの見せていただきました」

「もう、姫様に言いつけますよ」

「それはご勘弁」

「と、とにかく、懐剣にはそういう意味があるので、渡すときにはちゃんと覚悟をーーって、コータロー様には愚問でしたね」

「まあ、今更だよな」

 苦笑するしかない。

「でも、そうなると、先走らない方がいいのかな?   一応お試し期間なわけだし」

「いいから行ってください」

 目力のこもった視線で睨まれた。

「今すぐ行ってください」

「わ、わかりました」



 シルヴィアの部屋の前で立ち止まる。あんな話を聞いた後だと、妙に緊張しちまう。

 プロポーズに似たことは以前にもしたし、その時から気持ちは変わっていない、と言うか、もっと好きになってる。確実に距離は縮んでいるし、シルヴィアも同じ気持ちでいてくれているとは思うが、それでも緊張はしてしまう。

 ひとつ深呼吸。

 ノックをすると、扉の外にまで伝わってくるほどとっちらかった物音がした後、ゆっくりと扉が開かれた。

「ただいま」

「おかえりなさい!」

 俺の顔を見て表情を輝かせてくれるのは、なんと言うか、こう…幸せな気持ちになるな。

「入っていい?」

「うん。入って」

 ソファーに腰を下ろしてすぐ、イリスさんが飲み物を持ってきてくれた。

 ただ、これは侍女としてとかそういう理由ではないな。これまでに見たことのないような、満面の笑みを浮かべている。

「…どうしたのですか、イリス?」

 シルヴィアが不審に思うレベルの笑顔って……

「何でもありませんわ、姫様。ええ、何でもございませんわ。この後とーっても幸せな未来が待っているかも、なんてーーおほほほほ」

「な、何です?   怖いんですけど……」

「いえいえ、どうぞお気になさらず。私のことは空気とでも思っていただいて、お話なさってください」

 この人、こういう人だったのか…っていうか、聞いてるつもりか!?

 軽く睨むと、イリスさんは「てへぺろ」をして見せて退出した。最後までニヤニヤしてやがったな。

「どうしたんでしょう、何か様子がおかしかったようですが……」

「変な物でも食べたんじゃないかーーそれよりも、シルヴィア、大事な話があるんだ」

「は、はい」

 俺の緊張が伝染したか、シルヴィアが背筋を正した。

「これを」

 懐剣をシルヴィアの前に置いた。

 シルヴィアの目が見開かれる。

「…これって……」
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