異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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22 馬並み? いえいえ、馬以上ですよ

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 いつの間にか、称号が増えていた。

『馬並み?   いえいえ、馬以上ですよ』

「…何ですか、これ……?」

 依頼受付の際にこれを見たルミさんに訊かれたのだが、俺にも何のことやらさっぱりわからない。

 ひとつだけわかってる、というか、確信しているのは、どうせロクでもないことなんだろうということ。

「そう言えば、何かで聞いたことがあるな。馬のナニはとてつもなくでかいって」

 ギルド職員の一人がとんでもないことを言い出した。

「はあ!?」

「ナニ?」

 ルミさん、そこを掘り下げるのはやめましょう。穢れますよ。

「そんなにすごいのか?」

「いやいや、そんなことないってば」
 
「だから、一体何の話をしてるのよ!?」

「ナニだよ、ナニ」

 そこまで言われて、やっとルミさんも答えに行き着いたらしい。顔が赤くなった。

「コータローさん、サイッテー」

「俺!?」

 理不尽極まりない。

「何でそんな称号着けてるんですか」

「俺が着けたわけじゃないぞ」

「む、それもそうか……」

 どうやら無用の疑いは晴れたようだが、話はどんどん迷走していく。

「何でこんな称号が着いたのかしら?」

 いいよ、もう。放っといてくれ。こんなの名乗るつもりもないから。

「あ、まさかーー」

 何を思いついたか知らんけど、聞きたくない。

「その馬並みで姫様をーー」

 飛びついて口をふさいだが、時すでに遅し。

 要らん注目が集まる。いたたまれない……

 そんなどうしようもない空気の中、言い出しっぺの職員がまた要らんことを口走る。

「ルミさん、馬並みじゃないよ。馬以上だよ」

「ああ、そうね。それで姫様メロメロにされちゃったのね」

「全然違えよ。おまえら、不敬罪で投獄されろ」

 背筋に悪寒が走った。居合わせた女性冒険者たちの、獲物を狙うような視線が怖い。

 深みを増していくカオスに匙を投げようとした時、ギルドにジャックが入って来た。

「おお、コータロー。我が商会の恩人よ」

「大袈裟だよ。こっちこそジェシカさんには世話になった」

「それは何よりだ」

 ジャックは得意のニヤリ笑いを見せた。

「コータローのことはしっかり宣伝しておいたからな。すぐに依頼が来るようになるだろう」

「そりゃありがたいが、宣伝?」

「ああ、馬より早い配達便だと言ってある」

 ピン、と来た。

 それは俺だけじゃなかったみたいだ。皆の顔でわかる。

「…もしかして、そのやりとりの中で馬並みとか、馬以上って話が出なかったか?」

「よく知ってるな。もしかしてもう依頼がきたのか?」

「…そういうわけじゃない」

 激しい脱力感で思わず座りこんでしまいそうだった。

 ジャックに責任はない。ギルドの二人が勝手に暴走しただけだ。

「…ルミさん」

「あたし!?」

 全部とは言わないが、半分くらいは責任あるよね。

 釈然としないようだが、周りの目も俺の味方だった。

「すみませんでした」

「何かあったのか?」

「気にしないでくれ。ひっじょ~にくだらない話だ」

 これにて一件落着、とは行かず、どこからか漏れ出した無責任な噂が一人歩きして、しばらくの間好奇の視線で見られるようになってしまい、居心地の悪い思いをすることになった。
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