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23 召喚勇者
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いつものように配達の依頼を終えてギルドに戻って来ると、何やらざわついた雰囲気だった。
「どしたん?」
ルミさんに訊くと、困ったように隅の方にできていた人だかりを指差した。
「ちょっと厄介なことになってて……」
「勇者?」
「そう。肩がぶつかったとかで……」
「ガキか……」
こんなくだらない話を聞くことが増えた。
俺とは違い、最初から魔王討伐のために召喚された正真正銘の勇者がいる。この国には十人まではいないようだが、大陸全体では百人程度いるらしい。正直、そんなにいるのか、と思う。
この世界には魔王伝説があり、二百年に一度、北の果てにある魔大陸に魔王が生まれるのだという。例外的におとなしい魔王もいたりしたらしいが、大抵はこちらの大陸へと攻め込んで来て、激しい戦いになるそうだ。
その際に大きな戦力になるのが召喚勇者である。
勇者としては落ちこぼれの俺でさえ、この世界の人と比べたら、圧倒的なステータスを持っている。元々戦闘目的で召喚された連中のステータスは、戦うために生まれて来たのかと思うほど高い。所謂チートというやつだ。
伝承による魔王の降臨は来年に迫っており、この国のみならず、大陸全体が戦に備える空気があった。
当然召喚された勇者は手厚くもてなされる。ただ、それが故に勘違いする輩も出てくるという話だ。今騒ぎを起こしているのは、そんな手合いだ。
「おまえ、僕が勇者だってわかってるのか?」
膝を着いた冒険者を見下ろす勇者の表情は、肥大したプライドに歪んでいるように見えた。
「…もうしわけ…ございません……」
悔しげに声を絞り出す冒険者。
「口だけだね。反省の色なんてまったく見えないじゃないか」
「やなヤツだな、あいつ」
完全に勘違いしてやがる。
「僕はね、魔王を倒すために喚ばれた勇者なんだよ。君の不注意で僕に万が一のことがあって、魔王討伐に影響が出たら、どうするつもりだい?」
「……」
俯くばかりで反論できずにいる冒険者が気の毒だ。立場上言えないだけで、言いたいことは山ほどあるのだろう。
「…ひどい……」
ルミさんだけじゃなく、周りの皆が「何とかならないか」とやきもきしている。
「ひとつ確認。あの人が悪いわけじゃないよな?」
「直接見てないからはっきりは言えないけど、ディーンさんは変な因縁を着けたりする人じゃないわ」
「俺見てた。勇者の方からディーンにぶつかっていったんだ」
「了解」
「コータローさん、どうするつもり?」
「このまま見てるだけってわけにいかないでしょ」
「危険ですよ」
「危ないことするつもりはないよ。俺、戦闘力はカスだからね」
自分で言ってて悲しくなるが、それが現実だ。まともに戦ったりしたら、瞬殺されるのがオチだ。
だからーー
「バッカじゃねえの?」
と言ってみた。
「どしたん?」
ルミさんに訊くと、困ったように隅の方にできていた人だかりを指差した。
「ちょっと厄介なことになってて……」
「勇者?」
「そう。肩がぶつかったとかで……」
「ガキか……」
こんなくだらない話を聞くことが増えた。
俺とは違い、最初から魔王討伐のために召喚された正真正銘の勇者がいる。この国には十人まではいないようだが、大陸全体では百人程度いるらしい。正直、そんなにいるのか、と思う。
この世界には魔王伝説があり、二百年に一度、北の果てにある魔大陸に魔王が生まれるのだという。例外的におとなしい魔王もいたりしたらしいが、大抵はこちらの大陸へと攻め込んで来て、激しい戦いになるそうだ。
その際に大きな戦力になるのが召喚勇者である。
勇者としては落ちこぼれの俺でさえ、この世界の人と比べたら、圧倒的なステータスを持っている。元々戦闘目的で召喚された連中のステータスは、戦うために生まれて来たのかと思うほど高い。所謂チートというやつだ。
伝承による魔王の降臨は来年に迫っており、この国のみならず、大陸全体が戦に備える空気があった。
当然召喚された勇者は手厚くもてなされる。ただ、それが故に勘違いする輩も出てくるという話だ。今騒ぎを起こしているのは、そんな手合いだ。
「おまえ、僕が勇者だってわかってるのか?」
膝を着いた冒険者を見下ろす勇者の表情は、肥大したプライドに歪んでいるように見えた。
「…もうしわけ…ございません……」
悔しげに声を絞り出す冒険者。
「口だけだね。反省の色なんてまったく見えないじゃないか」
「やなヤツだな、あいつ」
完全に勘違いしてやがる。
「僕はね、魔王を倒すために喚ばれた勇者なんだよ。君の不注意で僕に万が一のことがあって、魔王討伐に影響が出たら、どうするつもりだい?」
「……」
俯くばかりで反論できずにいる冒険者が気の毒だ。立場上言えないだけで、言いたいことは山ほどあるのだろう。
「…ひどい……」
ルミさんだけじゃなく、周りの皆が「何とかならないか」とやきもきしている。
「ひとつ確認。あの人が悪いわけじゃないよな?」
「直接見てないからはっきりは言えないけど、ディーンさんは変な因縁を着けたりする人じゃないわ」
「俺見てた。勇者の方からディーンにぶつかっていったんだ」
「了解」
「コータローさん、どうするつもり?」
「このまま見てるだけってわけにいかないでしょ」
「危険ですよ」
「危ないことするつもりはないよ。俺、戦闘力はカスだからね」
自分で言ってて悲しくなるが、それが現実だ。まともに戦ったりしたら、瞬殺されるのがオチだ。
だからーー
「バッカじゃねえの?」
と言ってみた。
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