異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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37 新生活

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 アンジェリーナとウェインの婚約破棄は、当然のことながら、王国内に大きな騒動を巻き起こすことになった。が、それほど長続きはしなかった。

 当初、面子を潰された公爵は激怒し、一戦も辞さずの構えだった。王国を二分する戦いに発展するかと思われたが、シルヴィアに対する暴言の他にも権力をかさにきた悪行の数々が明るみに出てきたことにより、大義名分を失った公爵側は急速にその勢いを弱めることになり、戦乱は未然に防がれる形になった。

 時を同じくして発表されたのが、シルヴィアの王族籍離脱である。これには王様が頑固に反対したのだが、最後にはシルヴィアが自分の意思ということで押しきった。

 そして今、俺とシルヴィアは城下の片隅で部屋を借りて、新しい生活を始めていた。

「…そのはずなんだが……」

「どうした、コータロー。渋い顔をして」

 背中をどついてきたのはカズサさん。いい具合に酔っぱらっているようだ。

「そうよお、こんな幸せな状況の何に不満があるわけ?」

 言いながらさりげなく手首の関節を極めてきたのはユキノさん。カズサさんのパーティーに所属する剣士だが、素手の格闘技にも通じていて、今みたいに酔うと人に間接技を仕掛けてくる困った人である。

「いてえってば。リョウさん、笑ってないで何とかしてよ。この人あんたの管轄でしょうが」

「悪い。酔ったユキノは止められん。大人しく犠牲になってくれ」

「ひでぇ」

 パーティーの前衛役リョウさんは、敵と相対した時には頼りになるが、そうでない時は至ってのんびりした人だ。大人なんだと思う。

 この三人が目下のところ、最もパーティーを組む回数が多い召喚勇者のメンバーだ。今日も日課と化した仕事終わりの飲み会の真っ最中。場所はいつもの通り、俺たちの家だ。

 きっかけは、メンバーが家に来た時にたまたまイリスさんがシルヴィアたちに料理を教えに来ていたことである。

 主従関係がなくなった二人は友人になった。そして家事一般に秀でたイリスさんをシルヴィアが師匠と仰ぐようになり、イリスさんの出入りが増えた。

 次に、元々イリスさんの友人だったルミさんが料理教室のメンバーとして加わった。

 その料理教室の日にパーティーメンバーがやって来て、イリスさんの料理の虜になってしまったのだ。

 以来毎日のように押しかけて来ては、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎを繰り広げている。酔い潰れて泊まっていくこともしばしばある。

 新婚生活の甘さはどこを探しても見当たらない……シルヴィアが楽しそうだからいいんだけどさ……

 俺たちの新婚家庭は、今日も夜まで賑やかだ。
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