異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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45 心の鏡

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 俺の支度は早々に終わり、今は控え室で暇を持て余していた。

 シルヴィアの方はまだ終わっていないようだ。

 控え室は、空間を切り離したかのような静寂に包まれている。周りの喧騒は伝わってこない。

 結婚か……これでもう元の世界に戻ることはないんだな……

 シルヴィアを娶るということは、そういうことである。

 覚悟はしていたし、誰に強制されたわけでもなく自分で決めたことだから後悔もない。

 ただ、さすがに何も感じないというわけにはいかなかった。

 これが感傷ってやつなのかな……

 元の世界でボッチだったわけではないし、精魂込めて頑張っていたこともあったから、いろんなことが中途半端になってしまうのを残念だと思う気持ちもある。

 でも、そういった諸々とシルヴィアを天秤にかけたらどちらに傾くかーーそんなの考えるまでもない。

 今の俺にシルヴィア以上に大事なものなどない。

 一番根本となる部分を再確認できたところで、シルヴィアの支度が整ったと連絡がきた。

 ほんじゃま行きましょうか。



 今回神父役を務めてくれる年配の神官さんとシルヴィアの登場を待ちながら、集まってくれた人たちを見渡してみた。

 一体何人いるんだろう。広場に入りきらないくらい集まって来ている。

 そこまで注目されるようなものではないと思うんだが。

 そんなことを思っていたら、嫌な言葉が聞こえてきた。

「シルヴィア姫って、すっげえブサイクなんだろ」

「王家の恥になるからって、あんまり表に出されないらしいじゃん」

「俺の友達が学校で一緒だったんだけど、空前絶後のレベルらしいぞ」

「何だよ、それ。かえってわかりづれえよ」

「だからそれを確かめに来たんだよ」

「そういうことかよ。いやに熱心に見に行こうなんて言い出すから、おかしいなと思ってたんだよな」

「それとさ、そんなブサイクと結婚しようっていうヤツがどんな物好きかってのも興味あったんだよな」

 こいつら、聞こえてねえと思って好き勝手言ってやがんな。

 一言言っておこう。

「えー、本日は私とシルヴィアのためにかくも大勢の方にお集まりいただき、誠に感謝にたえません。間もなく式を挙げさせていただくわけですが、ひとつだけ皆様にお断りしておかなければならないことがございます」

 関係者の皆さんは突然予定にない喋りを始めた俺に驚いたようだったが、幸い制止はされなかった。

「実は、シルヴィアには呪いがかけられています」

 当然のようにざわめきが起こる。

「シルヴィアにかけられているのは《心の鏡》という呪いです。これは、シルヴィアの見た目は、見た人の心を映すというものです。この呪いのせいでシルヴィアはとんでもないブサイクだなんて、謂れのない誹謗中傷を受けることになりました」

 更にざわめきが大きくなる。

「ステータスを見れる人がいましたら、私のステータスを確認してください。《真実を見抜く瞳》というスキルがあるはずです」

「本当だ……」

何ヵ所かで声が上がる。

「ちなみに、私の目には、シルヴィアはメチャクチャ美人に見えています」

 ここまで言っておけば、ガタガタ抜かすヤツもいなくなるだろう。騒げば自分の心が汚いって言ってるのと同じだからな。

 式の最中に余計なことを言われてシルヴィアが傷つくのだけは避けたかったので、ちょっと強引かとは思ったが、言わせてもらった。
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