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46 バージンロード

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 出入りのゲートの向こうから合図がきた。準備が整ったようだ。

 神官さんが進み出る。

「これよりタカスギコータロー、シルヴィア両名の結婚式を執り行います」

 宣言と同時に楽団がワーグナーの結婚行進曲を奏で始める。

 これに関しては、ユキノさんをはじめとする何人かの召喚勇者の人に感謝するしかない。俺じゃ出だしの部分しかわからんかった。

 ゲートのカーテンが開き、王様と腕を組んだシルヴィアが姿を現した。

 こちらの世界にはバージンロードを歩く風習はないそうで、これをお願いした時の王様のはしゃぎっぷりは、狂喜乱舞といった感じだった。

 今も一生懸命威厳のある表情を作ろうとしているようだが、唇の端がヒクヒクしており、一歩間違えると変顔になりそうだ。そこは素直に笑っちゃった方がいいような気がするのは俺だけか?

 シルヴィアの方は、ちょっと澄ましたような顔をしているが、抑えきれない幸せが滲み出ている。

 さいっこーに可愛いぜ、シルヴィア。

「ちょっとちょっと、なんなのよ、あのシルヴィアは」

 聞こえてきた声に一瞬どきっとしたが、続く言葉に胸を撫で下ろした。

「あの可愛さは反則でしょ」

「綺麗なのはわかってたけど、今日の綺麗さはちょっと言葉にできないわ」

 カズサさんにユキノさん、ナイス。リョウさん、そんな顔してると、ユキノさんに怒られるぞ。

 三人の声が届く範囲では、青ざめた人が結構いる。自分の心は汚れているのか、と自省しているのかもしれない。

「シルヴィア、綺麗だよ」

 カズサさんの言葉には、シルヴィア本人はもちろん、王様がメチャクチャ喜んだ。威厳を保つのは諦めたようで、親バカ全開の蕩けきった笑顔になっている。

 バージンロードを早足で歩くヤツはいないが、それにしたって遅いぞ。きっと王様が少しでもこの時間を引き延ばしたくてわざとゆっくり歩いてるんだろう。

 それでも、歩みを止めなければいつかはゴールは訪れる。

 非常に名残惜しそうにしながらも、ここで駄々をこねるような真似はせず、素直にバトンタッチしてきた。

「娘を、頼む」

「はい」

 手を取り、神官さんの前に進む。

「新郎タカスギコータロー、新婦シルヴィア、両名からの申し出により、ここに婚姻の縁を結ぶーーこの縁結びに異議のある者は?」

 どこからも声は上がらない。

「よろしい。それでは、誓いの言葉をーー新郎タカスギコータロー、汝は病める時も健やかなる時も、妻シルヴィアを愛し慈しみ、結ばれた縁を守り続けることを誓うや?」

「誓います」

「新婦シルヴィア、汝は病める時も健やかなる時も、夫タカスギコータローを愛し慈しみ、結ばれた縁を守り続けることを誓うや?」

「誓います」

「よろしい。大神もご照覧あれ。今この時より二人は夫婦となったーーおめでとう」

 通常この世界の結婚式はこれで終了らしい。

 が、俺にとっては、まだ続く。
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