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57 フラグを立ててはいけません
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「実は俺、ダンジョンって初めてなんですよね」
「そうなのか?」
「それじゃあ遠近感に気をつけてね。明るい太陽の下と暗い洞窟の中じゃ物の見え方がだいぶ違うから」
「了解です」
俺のすぐ後ろでシルヴィアも頷いている。当然、シルヴィアも初めてだ。
「特に狭い場所だと得意の撹乱戦術が使えなくなるからな」
確かにそうだ。狭いだけじゃなく、ここまで足下がデコボコだと、フットワークが使えない。
ってことは、ダンジョン内だと俺って単なる雑魚?
地味にへこむな、それ……
足下が悪くても走れるような訓練が必要だな。
足の裏に神経を集中し、体重移動の仕方によって重心がどう動き、足捌きにどんな影響が出るかを意識しながら歩く。
はじめのうちはぎこちなかったが、少し歩くと動きがスムーズになるのが実感できた。
お、いい感じだ。
何となく身体が軽くなったような感覚を楽しんでいたところに魔物が現れた。でかい蜘蛛の魔物ーージャイアントスパイダーだ。って、何のひねりもない。
「俺がいきます」
でかいだけで、それほど強くない魔物なので、足を試すのにうってつけの相手なのだ。
正面から接近し、脚が降り下ろされた瞬間に真横に跳ぶ。俺の動きについてこれない蜘蛛が動きを止めた隙に、左の腹を切り裂いた。
とどめを刺してから、皆の方を振り返る。
「どうでした?」
「おお、良かったんじゃないのか? 少なくとも俺の目には違和感はなかったぞ」
「よっしゃ。それじゃあガツガツいきましょうか」
何度か戦闘を繰り返した後、目的地である鉱床に到着した。回層的にはかなり深く潜って来たはずだが、魔物との遭遇が覚悟していたほどない、というか拍子抜けするくらい少なかった。
何となく不気味なものを感じるが、口に出してフラグが立つのも嫌だったので、黙っていた。
皆同じように感じていたらしく、無駄口はまったくたたかない。ガンテスさんは早速採掘に取りかかり、俺たちは周囲の警戒にあたる。
ガンテスさんの採掘は順調なようで、時折喜色に満ちた声が上がる。
魔物の方もまったく現れない。ただ、これを順調と言っていいのか微妙なところだ。一度でも現れてくれればまだ落ち着けるのだが、こうまで鳴りを潜められると、緊張が高まる一方だ。
「……」
誰かが大きく息を吐いた。
それで、皆緊張しているのが自分だけではないとわかって、苦笑めいた雰囲気が生まれた。
「このまま何事もなく終われそうですね」
「「「「あ……」」」」
どこか遠くで尖った棒か何かをを地面に突き立てるような音が聞こえたーー気がした。
ついでに、その棒についた旗が翻るのが見えたーー気がした。
あー、やっちゃったなぁ……
非難の視線は、言ったシルヴィアではなく、俺に集中した。
そりゃそうだ。シルヴィアにはフラグなんて概念がないわけだから、俺が教えとかなきゃいけなかった。非難は甘んじて受けよう。
「…ゴメン……」
「え、わたし何かやっちゃいました!?」
空気で悟ったシルヴィアがわちゃちゃする。
「何でもない。気にするな」
「でも……」
シルヴィアの言葉を遮るように、何かを引きずるような音がダンジョンの奥から聞こえてきた。
今度は空耳じゃない。何かがこっちへ近づいてきている。
「そうなのか?」
「それじゃあ遠近感に気をつけてね。明るい太陽の下と暗い洞窟の中じゃ物の見え方がだいぶ違うから」
「了解です」
俺のすぐ後ろでシルヴィアも頷いている。当然、シルヴィアも初めてだ。
「特に狭い場所だと得意の撹乱戦術が使えなくなるからな」
確かにそうだ。狭いだけじゃなく、ここまで足下がデコボコだと、フットワークが使えない。
ってことは、ダンジョン内だと俺って単なる雑魚?
地味にへこむな、それ……
足下が悪くても走れるような訓練が必要だな。
足の裏に神経を集中し、体重移動の仕方によって重心がどう動き、足捌きにどんな影響が出るかを意識しながら歩く。
はじめのうちはぎこちなかったが、少し歩くと動きがスムーズになるのが実感できた。
お、いい感じだ。
何となく身体が軽くなったような感覚を楽しんでいたところに魔物が現れた。でかい蜘蛛の魔物ーージャイアントスパイダーだ。って、何のひねりもない。
「俺がいきます」
でかいだけで、それほど強くない魔物なので、足を試すのにうってつけの相手なのだ。
正面から接近し、脚が降り下ろされた瞬間に真横に跳ぶ。俺の動きについてこれない蜘蛛が動きを止めた隙に、左の腹を切り裂いた。
とどめを刺してから、皆の方を振り返る。
「どうでした?」
「おお、良かったんじゃないのか? 少なくとも俺の目には違和感はなかったぞ」
「よっしゃ。それじゃあガツガツいきましょうか」
何度か戦闘を繰り返した後、目的地である鉱床に到着した。回層的にはかなり深く潜って来たはずだが、魔物との遭遇が覚悟していたほどない、というか拍子抜けするくらい少なかった。
何となく不気味なものを感じるが、口に出してフラグが立つのも嫌だったので、黙っていた。
皆同じように感じていたらしく、無駄口はまったくたたかない。ガンテスさんは早速採掘に取りかかり、俺たちは周囲の警戒にあたる。
ガンテスさんの採掘は順調なようで、時折喜色に満ちた声が上がる。
魔物の方もまったく現れない。ただ、これを順調と言っていいのか微妙なところだ。一度でも現れてくれればまだ落ち着けるのだが、こうまで鳴りを潜められると、緊張が高まる一方だ。
「……」
誰かが大きく息を吐いた。
それで、皆緊張しているのが自分だけではないとわかって、苦笑めいた雰囲気が生まれた。
「このまま何事もなく終われそうですね」
「「「「あ……」」」」
どこか遠くで尖った棒か何かをを地面に突き立てるような音が聞こえたーー気がした。
ついでに、その棒についた旗が翻るのが見えたーー気がした。
あー、やっちゃったなぁ……
非難の視線は、言ったシルヴィアではなく、俺に集中した。
そりゃそうだ。シルヴィアにはフラグなんて概念がないわけだから、俺が教えとかなきゃいけなかった。非難は甘んじて受けよう。
「…ゴメン……」
「え、わたし何かやっちゃいました!?」
空気で悟ったシルヴィアがわちゃちゃする。
「何でもない。気にするな」
「でも……」
シルヴィアの言葉を遮るように、何かを引きずるような音がダンジョンの奥から聞こえてきた。
今度は空耳じゃない。何かがこっちへ近づいてきている。
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