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73 自然の摂理
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一旦王都に戻り、諸々の雑事を片づけた後、俺たちは旅に出た。
これと言って明確な目的のある旅ではないが、とりあえず南を目指した。理由は単純で、これから季節は冬に向かっていくので寒いのを忌避したということだ。
女性陣に揃って暖かいところがいいと言われたら、それに従うしかないわけで、実は北に行ってみたかった俺の希望は、口に出されることもないままに消えていった。
ま、いいけどね。
初日ということもあり、皆足取りは軽い。変に追われても嫌なので、国境を越えるまでは強行軍の予定だ。
「シルヴィアは国の外に出たことあるの?」
「ないです」
「じゃあ皆初めてか」
「ワシは北のフォードの出身だ」
そんなガンテスさんも南へ行くのは初めてとのことで、これから行く先は全員にとって未知の世界になるようだ。
「食べ物が美味しいといいなあ」
「そこよね」
「お魚食べたいんだけど」
「あー、それ」
「今までお肉は美味しかったんだけど、いかんせん魚の少なさが……」
「そこはマジで期待してる」
話が弾みながらだと疲労を感じることも少なく、旅程がはかどる。陽気とあいまって、気分が浮き立つ。
「こうしてると、こないだまでの殺伐とした空気が嘘みたいだな」
「このままのんびり過ごせればいいんだけどね」
そうはいかないことは皆わかっていた。それでも言わずにいられない。ただ、あえて言わせてもらうなら、それは世間一般で言うところのフラグである。
とは言え、立った瞬間に回収とはならず、この日は何事も起こらぬまま、夜営と相成った。
「今日は大分距離稼げたな」
「このままなら三日後くらいには国境を越えられそうね」
「そうね。ただ、そのためにはちゃんとご飯を食べて、しっかり睡眠とって、体力を回復させないとね。間違っても、夜中にまで体力を使うような暴挙に出ちゃダメよ」
ユキノさんのからかうような言葉に、シルヴィアは赤くなった。
まてまて。宿でならともかく、周りに皆がいるようなテントの中でできるほど俺は図太くないぞ。周りが気になって集中できないし、下手すりゃ勃たん。
「何だ、新婚さんから刺激をもらえるかと思ってたのに……」
のぞく気満々かい。
頭痛がしてきた。
とりあえず見張りの順番だけ決めて、最初の見張り番となったカズサさんを除いた他のメンバーは早々に眠りに就いた。
「手、繋いでていい?」
もちろん否やはない。指を絡めてしっかりと繋ぐ。
「こうやって外で寝るのって初めてだから……」
「そっか」
空いていた右腕をシルヴィアの頭の下に差し込むようにしながら抱き寄せる。腕の中にすっぽり収まるその身体は、いつものように温かく、柔らかい。
…う、ヤバい……
自然の摂理が訪れた。
敏感にそれを察したのだろう。シルヴィアが艶然と微笑む気配がした。
真っ暗で、実際には何も見えない。見えないのだが、表情は容易に想像できた。想像できたら、ますます堪らなくなってしまった。
繋いでいた手をほどいて、シルヴィアの背中にまわす。シルヴィアもそれに応えてくれて、より温もりが伝わってくる。
これで我慢なんてできるわけがない。
周りが気になるもんだとばかり思っていたのだが、俺のムスコは俺が思っていたより遥かに図太かったらしい。
「…シルヴィア」
「はい」
「声、出しちゃダメだぞ」
「…肩、噛んじゃうかも……」
「いいよ」
とは言ったもののーー
見張り交代の時間までに両肩とも歯形だらけになってしまったのは、ご愛嬌で済ませてしまっていいものなのだろうか?
これと言って明確な目的のある旅ではないが、とりあえず南を目指した。理由は単純で、これから季節は冬に向かっていくので寒いのを忌避したということだ。
女性陣に揃って暖かいところがいいと言われたら、それに従うしかないわけで、実は北に行ってみたかった俺の希望は、口に出されることもないままに消えていった。
ま、いいけどね。
初日ということもあり、皆足取りは軽い。変に追われても嫌なので、国境を越えるまでは強行軍の予定だ。
「シルヴィアは国の外に出たことあるの?」
「ないです」
「じゃあ皆初めてか」
「ワシは北のフォードの出身だ」
そんなガンテスさんも南へ行くのは初めてとのことで、これから行く先は全員にとって未知の世界になるようだ。
「食べ物が美味しいといいなあ」
「そこよね」
「お魚食べたいんだけど」
「あー、それ」
「今までお肉は美味しかったんだけど、いかんせん魚の少なさが……」
「そこはマジで期待してる」
話が弾みながらだと疲労を感じることも少なく、旅程がはかどる。陽気とあいまって、気分が浮き立つ。
「こうしてると、こないだまでの殺伐とした空気が嘘みたいだな」
「このままのんびり過ごせればいいんだけどね」
そうはいかないことは皆わかっていた。それでも言わずにいられない。ただ、あえて言わせてもらうなら、それは世間一般で言うところのフラグである。
とは言え、立った瞬間に回収とはならず、この日は何事も起こらぬまま、夜営と相成った。
「今日は大分距離稼げたな」
「このままなら三日後くらいには国境を越えられそうね」
「そうね。ただ、そのためにはちゃんとご飯を食べて、しっかり睡眠とって、体力を回復させないとね。間違っても、夜中にまで体力を使うような暴挙に出ちゃダメよ」
ユキノさんのからかうような言葉に、シルヴィアは赤くなった。
まてまて。宿でならともかく、周りに皆がいるようなテントの中でできるほど俺は図太くないぞ。周りが気になって集中できないし、下手すりゃ勃たん。
「何だ、新婚さんから刺激をもらえるかと思ってたのに……」
のぞく気満々かい。
頭痛がしてきた。
とりあえず見張りの順番だけ決めて、最初の見張り番となったカズサさんを除いた他のメンバーは早々に眠りに就いた。
「手、繋いでていい?」
もちろん否やはない。指を絡めてしっかりと繋ぐ。
「こうやって外で寝るのって初めてだから……」
「そっか」
空いていた右腕をシルヴィアの頭の下に差し込むようにしながら抱き寄せる。腕の中にすっぽり収まるその身体は、いつものように温かく、柔らかい。
…う、ヤバい……
自然の摂理が訪れた。
敏感にそれを察したのだろう。シルヴィアが艶然と微笑む気配がした。
真っ暗で、実際には何も見えない。見えないのだが、表情は容易に想像できた。想像できたら、ますます堪らなくなってしまった。
繋いでいた手をほどいて、シルヴィアの背中にまわす。シルヴィアもそれに応えてくれて、より温もりが伝わってくる。
これで我慢なんてできるわけがない。
周りが気になるもんだとばかり思っていたのだが、俺のムスコは俺が思っていたより遥かに図太かったらしい。
「…シルヴィア」
「はい」
「声、出しちゃダメだぞ」
「…肩、噛んじゃうかも……」
「いいよ」
とは言ったもののーー
見張り交代の時間までに両肩とも歯形だらけになってしまったのは、ご愛嬌で済ませてしまっていいものなのだろうか?
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