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74 シルヴィア様ですか?
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場合によっては国境を越える時に一悶着あるかなと思っていたのだが、拍子抜けするくらいあっさりと通過できた。
国境を越えたからと言って、空気や風景が急に変わるというわけではないのだが、気分的にはリフレッシュされた。
心のどこかで追っ手がかかるかもという不安があったわけで、国境を越えたことでその可能性は大幅に減り、皆に一息つかせていた。
ただ、追っ手がかからなくても、トラブルに巻き込まれることはある。
「ーー!?」
「ん……?」
最初に反応したのは、様々に優れたツブラだった。
「悲鳴。争う声が聞こえる」
「行くわよ!」
カズサさんが、一瞬の迷いも見せずに即決する。
「先行する」
状況確認と判断が俺の仕事だ。現場を見て、介入するのかしないのか。するとしたらどちらに与するのか、その判断は俺に任されている。
「気をつけて!」
シルヴィアの声を背に駆け出した俺に並ぶ影があった。
「わたしも行く」
ツブラだった。
「助かる」
ウチのパーティで一番強いのは、どう見てもツブラだ。心強いことこの上ない。
「コータロー、走るの早いね。わたしでもついていくのがやっとだよ」
「これしか取り柄ないからな」
「そんなことないよ。コータローはね、すごく興味深いよ。他の人とは全然違うの。善いものも悪いものも、色んなものを引き寄せる、不思議な体質? なの」
「それを今言われても……」
そんなことを言われたら、向かってる先に厄介事が待ってる気しかしない。
「大丈夫だよ。コータローは、わたしが召喚契約を結びたいと思った人なんだから」
「サンキュ。それじゃあツブラの人を見る目は確かだってことを証明できるように頑張らないとな」
そんなやりとりをしている内に現場が見えてきた。
「ーー盗賊だな」
「盗賊ね」
二十人ほどの盗賊が、一台の馬車を襲っていた。
馬車を準備できる時点である程度の財力は保証されたようなものだ。それがごくわずかな護衛のみで移動しているとなれば、盗賊どもにとっては格好の獲物だろう。
どちらに味方するかは打ち合わせるまでもない。
「俺が突っ込んで撹乱するから、掃討頼むな」
「うん、任せて」
まあ、いつものやり方だ。
トップスピードで戦場に乱入する。
いつものように剣を振るったのだが、オリハルコンの剣は今までとはまったく切れ味が違った。一太刀だけで十分なダメージを与えられた。
双剣を振る姿はまさに無双状態。あっという間に盗賊は壊滅した。
「掃討頼むな、って言われたけど、必要ないじゃない」
ツブラに呆れられた。
「ごめん」
俺自身、装備を変えただけでここまで戦闘力が上がるとは、思ってもみなかった。
「あ、あの……」
恐る恐るといった感じの声をかけられた。馬車に乗っていた人らしい。何となく、イリスさんに似た印象だ。
「あ、ありがとうございました。本当に助かりました」
「間に合って良かったです。後から来る仲間に治癒魔法の使い手がいるので、怪我した人は言ってください」
「え? 治癒魔法?」
「はいーーああ、来たかな」
シルヴィアたちが見えてきた。
「大丈夫?」
「ああ。盗賊だった。怪我人診てあげて」
「はい」
シルヴィアは手際よく怪我人を治していく。
声をかけてきた女性は、呆然とシルヴィアを見ている。
「…治癒魔法にその美貌……もしかして、シルヴィア様ですか?」
この言葉から、新たな展開が生まれることになった。
国境を越えたからと言って、空気や風景が急に変わるというわけではないのだが、気分的にはリフレッシュされた。
心のどこかで追っ手がかかるかもという不安があったわけで、国境を越えたことでその可能性は大幅に減り、皆に一息つかせていた。
ただ、追っ手がかからなくても、トラブルに巻き込まれることはある。
「ーー!?」
「ん……?」
最初に反応したのは、様々に優れたツブラだった。
「悲鳴。争う声が聞こえる」
「行くわよ!」
カズサさんが、一瞬の迷いも見せずに即決する。
「先行する」
状況確認と判断が俺の仕事だ。現場を見て、介入するのかしないのか。するとしたらどちらに与するのか、その判断は俺に任されている。
「気をつけて!」
シルヴィアの声を背に駆け出した俺に並ぶ影があった。
「わたしも行く」
ツブラだった。
「助かる」
ウチのパーティで一番強いのは、どう見てもツブラだ。心強いことこの上ない。
「コータロー、走るの早いね。わたしでもついていくのがやっとだよ」
「これしか取り柄ないからな」
「そんなことないよ。コータローはね、すごく興味深いよ。他の人とは全然違うの。善いものも悪いものも、色んなものを引き寄せる、不思議な体質? なの」
「それを今言われても……」
そんなことを言われたら、向かってる先に厄介事が待ってる気しかしない。
「大丈夫だよ。コータローは、わたしが召喚契約を結びたいと思った人なんだから」
「サンキュ。それじゃあツブラの人を見る目は確かだってことを証明できるように頑張らないとな」
そんなやりとりをしている内に現場が見えてきた。
「ーー盗賊だな」
「盗賊ね」
二十人ほどの盗賊が、一台の馬車を襲っていた。
馬車を準備できる時点である程度の財力は保証されたようなものだ。それがごくわずかな護衛のみで移動しているとなれば、盗賊どもにとっては格好の獲物だろう。
どちらに味方するかは打ち合わせるまでもない。
「俺が突っ込んで撹乱するから、掃討頼むな」
「うん、任せて」
まあ、いつものやり方だ。
トップスピードで戦場に乱入する。
いつものように剣を振るったのだが、オリハルコンの剣は今までとはまったく切れ味が違った。一太刀だけで十分なダメージを与えられた。
双剣を振る姿はまさに無双状態。あっという間に盗賊は壊滅した。
「掃討頼むな、って言われたけど、必要ないじゃない」
ツブラに呆れられた。
「ごめん」
俺自身、装備を変えただけでここまで戦闘力が上がるとは、思ってもみなかった。
「あ、あの……」
恐る恐るといった感じの声をかけられた。馬車に乗っていた人らしい。何となく、イリスさんに似た印象だ。
「あ、ありがとうございました。本当に助かりました」
「間に合って良かったです。後から来る仲間に治癒魔法の使い手がいるので、怪我した人は言ってください」
「え? 治癒魔法?」
「はいーーああ、来たかな」
シルヴィアたちが見えてきた。
「大丈夫?」
「ああ。盗賊だった。怪我人診てあげて」
「はい」
シルヴィアは手際よく怪我人を治していく。
声をかけてきた女性は、呆然とシルヴィアを見ている。
「…治癒魔法にその美貌……もしかして、シルヴィア様ですか?」
この言葉から、新たな展開が生まれることになった。
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