異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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「もしかして、シルヴィア様ですか?」

「はい。シルヴィアですが?」

 シルヴィアがきょとんとしていると、女性は勝手にとっちらかった。

「あ、あああああ、ももも申し訳ございません。とんだご無礼を!」

 どこがご無礼だったんだ?

 俺たちまで呆気にとられてしまう。

「このご無礼、どうかわたしの指でお許しを!」

 懐から取り出した短剣で自分の指を切り落とそうとし始めた。

「わー、ちょっと待って待って!?」

 慌ててシルヴィアがその手を押さえる。俺も手を貸して、何とか惨劇は防げた。

「あんた一体何考えてんだ!?」

「え?   でも召喚勇者様の流儀では粗相をはたらいたらエンコ詰めるって聞いたんですが」

「……」

 ここまで激しい脱力感を覚えるのは久々だ。まさか異世界でそんな専門用語を聞くことになろうとは…どうやら「ヤ」のつく職業の方も召喚されてるらしいな。できるだけ会わないようにしたいが……

「わたし、召喚勇者じゃないから!」

「あ、でも、目上の人だし……」

「わたし平民!   単なる冒険者!   もう王女でも何でもないから!!」

 肩で息をしながら、シルヴィアは絶叫した。

 …可哀想に。涙目になってるよ。

 頭を撫でてやると、本格的に泣き出した。

「ふええん、怖かったよおー」

「よしよし」

 あやしてやりながら、ぶっ飛び姉ちゃんを諭す。

「指を詰める必要はねえから、その物騒な物はしまってくれ」

「本当にいいんですか?」

「そういう慣例を守ってる人たちがいるのは確かだが、あくまで特殊な人たちだからな。召喚勇者が全員そうだとは絶対に思わないでくれ」

 同類とは思われたくない。

「で、あんた一体何なんだ?   シルヴィアに用でもあったのか?」

「そ、そうでしたーーここで会ったが百年目、って…あれ?   何か違う……?」

 大分残念な人のようだ。まともに取り合わない方がいいな。

「怪我人の手当ては終わった?」

「はい」

「じゃあ出発しましょうか」

「あああああ、待ってくださいぃ」

 残念な女性はシルヴィアにすがりついた。

「シルヴィア様にお願いしたいことがあるんですぅ」

「お願い?」

「会っていただきたい方がいるんです」

 シルヴィアの眉がピクリと跳ねた。

「申し訳ありませんが、わたしもう結婚してますので。間に合ってるというか、わたしにはもったいないくらいの素敵なダンナ様なのでーー」

 嬉しいことを言ってくれてるけど、シルヴィアもかなりとっちらかってるね。

「ち、違います。会っていただきたいのは女の子です。うちの姫様です」

「姫様!?」

 さすがに驚いた。
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