異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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95 思惑

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「シルヴィアは本当にいいの?」

「正直言えば複雑だけど、他人事とは思えないし…ミネルヴァさんなら上手くやっていけるんじゃないかと思うから」

 そう言ってシルヴィアは頷いた。

「何ていい人なんだ。天使だな」

 まあ、自慢の嫁さんだ。

「シルヴィアがそう言うなら真面目に考えてみる。でも、はっきり言って、上手くやれる自信はないぞ」

 そこははっきりさせておきたい。そんなに器用に立ち回れるとは思えないから、どちらか、あるいは両方にイヤな思いをさせてしまうかもしれない。

「そこは受け入れるしかないでしょうーーコータロー、一人で抱え込まないでね。あなたは優しいからわたしたちに負担をかけないようにと考えるけど、これについては必ず相談して。三人で乗り越えていかなければダメだと思うから」

「わ、わかった」

 何だかシルヴィアに妙な迫力を感じた。

「ブライト様、ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「この件に関して、王家の意向はどのようなものなのでしょうか?   政略結婚の思惑などはクリアになるのでしょうか?」

 現実的な話ってのは、いつだってドライだよな。

「それについては問題ない。と言うか、現状嫁ぎ先としてこれ以上は望めないだろう」

「そんなことはねえだろう」

 笑い飛ばそうとしたのだが、ブライト王子の顔は真剣そのもので、混ぜっ返したりできる雰囲気ではなかった。

「本気でそう思っているなら、少し自分に対する認識を改めた方がいい。これから先、おまえとよしみを通じるためならどんな代償も厭わないという国も出てくるはずだ」

「マジで?」

「マジで」

 あくまでも大真面目にブライト王子は頷いた。

「考えてもみろ。神獣の主にして妻は大陸屈指の大国の王女。所属するパーティは腕利き揃いで、自身は魔族と戦って生き残るーーそんな人材が近くにいたら、おまえならどうするよ?」

「…とりあえず味方につけたくはなるな」

「そういうことだ」

 自分ではそんなごたいそうなつもりはないのだが、こうやって聞かされると、俺って結構とんでもなかったりするのかな……

「だからな、ゲスな言い方をすると、この国にとってミネルヴァの話は渡りに船なんだよ」

「むむ……」

 安心する一方で釈然としないものもある。

「ところで」

 あごに手を当て小首を傾げる、可愛らしい仕草でシルヴィアが口を開いた。

「今さらなんですが、この話、ミネルヴァ姫は承知してるんですよね」

 その質問に、ブライト王子がフリーズした。

「え?   勝手な話だったの、今の」

「ミネルヴァの気持ちは聞くまでもない。見てればわかる」

「でも、確認してないんだ?」

「うう……」

 しょうがねえな、ったく。

「じゃあ俺からプロポーズするよ。政略結婚みたいに扱われるのはイヤだろうから」

 多分それが最善のはずだ。

「すまん」

「コータロー」

 シルヴィアがマジな顔で言う。

「ん?」

「ふられないでね」

「……」

 それはイヤだな……
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