異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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 二人で連れだって歩くと、四方八方から様々な視線が飛んできた。

 俺に向けられるのは、九割羨望、一割。

 ミネルヴァにはビックリが一割、誰だあれが九割。

「意外と気づかれないものですね」

「気づかれないと言うより、想像もつかないってことじゃないか?」

「なるほど」

 ミネルヴァはとても楽しそうだ。これまで受けていたのとは真逆の視線が、嬉しくて仕方ないらしい。

 俺たちが向かったのはブライト王子のところだ。執務中とのことだったので、取り次ぎを頼んだ。ちょっとした悪戯心で、俺の名前しか告げなかった。

「どうした、珍しいじゃないか」

「紹介したい人がいてな」

 ブライト王子の目がミネルヴァへ移る。

「!?」

 目が瞠られる。

 …ヤバい…笑いをこらえるのがツラい……

「は、はじめまして。美しいお嬢さん。オルタナ王国王太子のブライト・オルタナです。よろしければ城内に部屋を用意させますので、ゆっくりご逗留ください」

 初めて見るようなニコ面でブライト王子が食いついてくる。

 …は、腹痛ぇ……

「まあ、よろしいのですか?」

 ミネルヴァが澄まして答える。おいおい、随分と演技派じゃねえか。

「この後のご予定はいかがですか?   準備をさせますので、お昼をご一緒しましょう。ウチのシェフは腕利きですからね。きっとお楽しみいただけると思いますよ」

「ありがとうございます。それではお願いいたしますわ。お、に、い、さ、ま」

「え?」

 ダメだ。こらえきれん。

 たまらず吹き出してしまった。

「え?   え?」

 絶賛大混乱中のブライト王子は、未だ現状把握に至っていない。

「まだ気づいてくれないんですか、お兄様。わたし、ミネルヴァですよ」

「え?   ミネルヴァ?   嘘だろ……?」

「本当です。コータロー様が呪いを解いてくださいました」

「……」

 ブライト王子に睨まれた。

「…一生根に持つからな」

「悪かったよ。あそこまで突っ走るとは思わなかったんだよ」

「…忘れろ」

 地獄の底から響くような声で、ブライト王子は言った。

「そうですね。実の兄に口説かれたというのは、一般的には黒歴史ですよね。うん、忘れましょう」

 ナチュラルにブライト王子の精神力を削っていくミネルヴァ。

「…うう……」

「口外はしないから心配しないでくれ、お義兄さん」

「おまえに兄と呼ばれる筋合いはーーって、え?」

 事態に気づいたブライト王子がフリーズした。

「どうする、ミネルヴァ。お義兄さんは反対みたいだ」

 我ながら悪いなー、と思いつつ、そんなことを言う。

「そうなんですか、お兄様?」

「そんなわけあるか!   誰が言い出しっぺだと思ってるんだ」

「え?   そうだったんですか?」

「ああ。確かに、最初に言い出したのは王子だったな」

「ありがとうございます、お兄様」

「…恩を仇で返された気分だよ」

 ブライト王子は大きくため息をついた。



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