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101 妻の心得

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 次に俺たちが向かったのは、シルヴィアのところだった。

 こちらはさすがに経験者だけあって、ミネルヴァを一目見ただけで全てを察してくれた。

「わたしがこう言うのは変かもしれないけどーーおめでとう、ミネルヴァ。それと、これからよろしくね」

「…本当によかったんでしょうか?   シルヴィア様にとっては迷惑な話ですよね」

 やはりミネルヴァにとってシルヴィアは気後れする相手なんだろう。少々腰が退けているようだ。

「そんなことないわよ」

 シルヴィアはこっちがビックリするくらいあっけらかんとしている。

「多分これから色々見えてくると思うけど、コータローってね、普通じゃないのよ」

「…シルヴィア?」

 何を言い出すつもりだ?

「異世界人って振り出しからして普通じゃないわけだけど、誰も気づいてくれなかったわたしたちの呪いを解いてくれたり、こともあろうか神獣と契約しちゃったりだとか、とにかくやること為すことが常識外れでしょ?」

「はい」

 褒められてんのかディスられてんのか微妙な感じなのがひっかかるな……

「そんなコータローが、普通の結婚じゃ満足できないかもっていうのは納得できなくもないのよ」

「ちょっと待て。さすがにそれは違うぞ!」

 慌てて否定する。今の言い分を認めたら、俺って単なる鬼畜じゃねえか。

「ああ、よかった。そこを否定してもらえなかったらどうしようかと思ってたの」

「あのな……」

 ガックリ脱力してしまう。

「試すような真似はやめてくれ。おまえたちを幸せにするって誓いに嘘偽りはないから」

「はい。本当にごめんなさい」

 シルヴィアは深々と頭を下げた。それからミネルヴァに向き直る。

「ーー聞いたわね。コータローはこういう人だから、安心して信じていいわ。ただ、さっきも言った通りコータローは普通じゃないわ。もしかしたら、英雄の相っていうのはコータローにこそあてはまるのかもしれない、とも思うわ」

「もしもし、シルヴィアさん、そこまで言われるとさすがにこっ恥ずかしいんだけど……」

 実際、悶絶する一歩手前の羞恥地獄なんだが。

「そういう人の妻になるんだから、ちょっとやそっとじゃ揺るがない覚悟をもって欲しいの」

「揺るがない覚悟……」

 ミネルヴァは神妙な顔を見せた。

「そんなに難しいこと言ってるわけじゃないわーー何があってもコータローを信じて、支えになれるかどうかってこと」

「それなら大丈夫です」

 きっぱり頷くミネルヴァ。

「こういうことも、これで終わりとは限らないわよ。他にも呪われたお姫様がいるかもしれないし」

「自分は受け入れてもらって、他の人は拒否するのはなしですよね」

 ミネルヴァの答えに満足したらしいシルヴィアは、ニッコリ微笑んだ。

「わたしたち、上手くやっていけそうね」

「よろしくお願いいたします、シルヴィア様」

「家族になるんだから、敬称はやめよ?」

「俺にもそれで頼む」

「ど、努力しまーー努力するわ」

 こうして、新しい家族が増えることになった。

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