異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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「…嘘だろ……」

 斃れた魔族を見下ろしつつ、俺はほっぺたをつねりたい気分に捕らわれていた。

 俺が魔族に圧勝って……魔族が弱いってわけじゃないよな……

 模擬戦じゃ負けてばっかりだったし、自分が強くなった実感なんてまったくなかったんだけど…これって、俺が強くなったと思っていいんだよな……

 これじゃさっき出した悲壮感って、滑稽以外の何物でもないな。

 本来なら喜んでいいところのはずだが、妙に複雑な気分だ。

 いたたまれなさを噛みしめていると、そこに魔族が姿を現した。

「まだいたのか」

 ってか、魔族が複数いるのって、ヤバいんじゃないのか!?

 潰せるなら潰した方がいいと思ったのだが、魔族の背後に大量の魔物が続いているのを見て、退治をあきらめた。ここは無理をする場面じゃない。

 さっさと退却する。

 幸い、追撃はなかった。こういうところを見ても魔族が統率していることがうかがえる。

 この先の戦い、厄介になりそうだな。

 ため息をついたところで思い出した。

 逃がした姉弟保護しなきゃ!

 せっかく助けたのに、この後野垂れ死にでもされたら寝覚めが悪い。

 魔物を引き回すために大分離れちまったが、子供の足じゃそう遠くへはいけないはずだ。

 予想通りのルート上で姉弟を発見し、合流する。

「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」

 そう言って労うと、緊張の糸が切れた姉が、ワッと泣き出した。

 しばらくあやしながら、弟の方から経緯を聞いた。

 ゴブリンやオークは時々出没してはいたものの、群れることはほとんどなく、村人だけでも十分に対応できるレベルだった。

 ところが、突然統率のとれた群れに襲われたのだという。不意を衝かれたこともあり、村人ではまったく太刀打ちできなかったらしい。

 そりゃそうだよな。魔族がいたんだ。戦いになるはずがない。こうして生き残りがいただけで奇跡みたいなもんだ。

 更に聞けば、身寄りがないらしい。となれば、ここで別れるわけにもいかず、王都まで連れていくことになった。

 王都での生活までは保障できないが、何の縁もないそこらの村に飛び込むよりはいいだろう。

「すみません。お手数をおかけする上に、何もお返しできるものがなくて……」

 泣き止んだ姉は、かなりしっかりした娘だった。この娘なら、働き口くらいいくらでも見つかるだろう。

「そんなことは気にしなくていい。見返りを求めてやってるわけじゃないから」

「つまらないものですが、わたしでよろしければいつでもお好きにしていただいて結構です」

「…そういうのやめような……第一、俺、妻帯者だから」

「ご、ごめんなさい」

「わかってくれればそれで。それより、名前教えてくれ。何て呼べばいいんだ?   ちなみに俺は高杉孝太郎、十八才。よろしく」

「セレスと言います。十六才です。よろしくお願いします」

「アンソニーです。十三才です。よろしくお願いします」

 二人と握手を交わし、俺たちは一路王都を目指した。

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